ヒト40%血清と好中球の存在下における臨床分離
P. aeruginosaの表層部の変化を, serotypeおよびpyocin typeをマーカーとして検討した.またそれらの変化に対応して, 各種の抗緑膿菌薬に対する感受性の変化の有無を調べた.さらにouter membrane protein (OMP) のprofileをSDS-PAGEにより評価した.
試験菌とした臨床分離
P. aeruginosaのうち, 数株は血清一好中球との24時間の接触により, serotype がparentとは異なる一種またはそれ以上のvariantを生じた.薬剤感受性およびOMPのprofileを同時に検討した3菌株のうち, 上記の菌表層マーカーが, 処理により変化しなかった
P. aeruginosa No.TA21では, 24時間までの各条件下で4種のβ-lactam薬, gentamicin, polymyxin Bおよびnorfloxacinなどに対する感受性は変化しなかった.また, これらの処理菌のOMPのprofileにも顕著な変化はなかった.
P. aeruginosa No.1-Sにおいて, serotypeが変化したvariantでは, 例外なく1~2のβ-lactam薬またはnorfloxacinなど, porinを経由して細胞内に移行する薬剤に対する感受性が増加した.この実験で得られた3種のvariantのうち2例では, porinを経由しないで細胞内に移行するgentamicinまたはpolymyxin Bに対する感受性が低下した.
P. aeruginosa No.1-Rは, 血清-好中球との24時間の接触の場合にのみ, serotypeおよびpyocin typeの変化したvariantを生じた.これらのvariantでは, 主として各種のβ-lactam薬に対する感受性が増加し, これに対応して, parentおよび処理によりマーカーおよび薬剤感受性に変化が生じなかった細胞のOMPには検出されなかった約45kdのOMP D
2が新しく出現した.
臨床分離
P. aeruginosaの一部には, 血清一好中球の作用で菌外層部が変化し, serotypeおよびpyocin typeが変化したvariantを生じる.この種の変化はまたOMPの変化を伴い, 主としてβ-lactam薬に対する感受性が増加し, ときにはgentamicin, polymyxinBなどのpoly-cationicな抗菌薬の感受性にも影響をあたえる.血清一好中球の作用により, これらの
P. aeruginosaでは, OMPのみでなくself-promoted uptake pathwayに関与する菌表層の性状にも影響を与えることが示唆された.
抄録全体を表示