2003年9月に福井県内の下痢症患者から多剤耐性
Salmonella enterica serovar Newport (
S. Newport) が検出されたこと (感染症誌Vol.78No.11) から, 2003年4月~2004年11月に下水流入水から検出されたS.Newport株と比較検討した.多剤耐性株は2003年5月~2004年3月に県内3カ所の浄化センターの5検体から計9株確認された.これらの株は大きく2つのタイプI, IIに分けられ, I (3株) は11剤 (ABPC, TC, SM, CP, CVA/AMPC, Su, CTX, CET, CTRX, CAZ, CPDX) に耐性を示し, II (9株) はさらにSXTおよびSPTを加えた13剤に耐性を示した.KM, FOM, NA, GMおよびCIPにはいずれも感受性を示した.タイプ1およびIIは, PFGEパターンおよびプラスミド・プロファイルにおいても異なり, Iの各性状は上記の患者由来株とすべて一致した.また, PCRによって保有が確認された
blaCMY遺伝子のORF部分について, 塩基配列を決定したところ, 既報の
blaCMY-2遺伝子の塩基配列と一致した.
米国で検出頻度が増加している多剤耐性
S. Nevvportと類似した耐性パターンを示す株が, 福井県内の下水から2種類検出され, うち1種類の性状が患者由来株と一致したことは興味深い.また, これら多剤耐性株が2地域の施設から検出され, 患者住所地もこの2地域以外であることから, 分布が広範囲に及んでいた可能性があり今後の動向に注意を要すると思われた.
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