感染症学雑誌
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79 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 松本 歩美, 細矢 光亮, 片寄 雅彦, 渡辺 清彦, 加藤 一夫, 鈴木 仁
    2005 年 79 巻 4 号 p. 249-253
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    小児の上咽頭から分離されたHaemophilus influenzae (以下H. influenzae) について, 耐性遺伝子の有無を調査し, 薬剤耐性遺伝子獲得の危険因子を明らかにすることを目的とした.
    2001年9月から2004年1月までに当科で分離したH. influenzae 172株を対象として, 最小有効濃度 (minimum inhibitory concentration, 以下MIC) を測定し, β-lactam産生遺伝子とpbg変異遺伝子の検索を行った.また対象株の保菌者全症例について, 年齢, 過去3カ月以内の抗生物質使用歴, 集団保育, 同胞, 基礎疾患の有無などの患者背景を後方視的に調査した.その結果, 過去3カ月以内の経口β-lactam薬使用が, pbp変異遺伝子を獲得する危険因子であることが明らかになった.β-lactamase非産生ABPC耐性H. influerizaeなどの耐性菌の蔓延を防ぐには, 小児科日常診療において, 経口セフェム系薬を繁用している現在の方法を再検討する必要があると考えられた.
  • 高山 直秀
    2005 年 79 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    近年海外赴任などの目的で出国する日本人の数は増加している.多くが渡航先にしているアジア地域などでは, 日本では発生がないかまれな感染症が常在している.こうした疾患のうち, 腸チフスと髄膜炎菌感染症は, 有効なワクチンが実用化されて予防可能となっているが, 日本では未認可のため入手困難である.国内で腸チフスワクチンと髄膜炎菌ワクチンに対する需要がどの程度であるかを知るためにアベンティス・パストゥール社製の不活化腸チフスワクチンとA・C・Y・W135群4価多糖体髄膜炎菌ワクチンを個人輸入し, 倫理委員会の承認を得た後, 希望者を募って接種を行った.2003年5月6日から2004年9月末日までの接種希望者は腸チフスワクチンが124名, 髄膜炎菌ワクチンが35名であった.腸チフスワクチン希望者の年齢分布は30歳代前半が23名, 20歳代前半, 後半, 30歳代後半が各21名であり, 出国先はアフガニスタンが46名, インドが15名, タイが8名などであった.髄膜炎菌ワクチン希望者は, 19~24歳が10名, 25~29歳が8名, 30歳代が13名であり, 出国先は米国, ギニア, 英国がそれぞれ6, 5, 3名であった.また渡航予定のない医師8名, 看護師4名が接種を希望した.現在日本では, 上記ワクチンはほとんど知られていないが, 少数の医療機関においてでも接種されるようになれば, その存在が広く知られ, 需要も増大するものと予測される.
  • 奥野 ルミ, 遠藤 美代子, 下島 優香子, 柳川 義勢, 諸角 聖, 大仲 賢二, 古畑 勝則, 福山 正文
    2005 年 79 巻 4 号 p. 260-269
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    これまで, わが国における劇症型レンサ球菌感染症患者から分離されたStreptococcus pyogenesについてT型別および発熱性毒素などの諸因子の検査を実施し, 疫学的検討を行ってきた.今回は, 劇症型由来株の薬剤感受性試験を行うとともに, 劇症患者, 患者関係者由来株と劇症患者以外の患者由来株についてパルスフィールドゲル電気泳動 (Pulsed-field gel electrophoresis: PFGE) 法による遺伝子解析を実施した.また, 菌側の因子の宿主に及ぼす影響を探る目的で, 患者から分離された菌株のT型および発熱性毒素 (streptococcal pyrogenic exatoxin) 産生性と患者の各臨床症状との関連性を検討した.その結果, β-ラクタム系薬剤に対する耐性株はみられず, その他の複数の薬剤に対して耐性を示したものも1株のみであった.T1型株のPFGEパターンは2種のパターンを示したが, 劇症型患者とその関係者由来株は事例ごとにいずれかのパターンを示し, その偏りはみられなかった.T3型株はPFGEによりI~Vの5種に分類され, 最も多くの株がパターンIであり, 劇症型患者および非劇症型患者由来株が認められた.しかしパターンIIおよびIIIを示した株は非劇症型患者由来株のみであり, パターンIVおよびVは劇症型患者由来株のみであった.また, 分離株のT型と発熱性毒素産生性との組合せごとに, 発現した臨床症状との関連性を検討した結果, T1-SPEB産生型と播種性血管内血液凝固 (disseminated intravascularcoagulation: DIC), T3-SPEA産生型と咽頭炎等の間に相関がみられたが, その関係を明らかにするには今後さらに, 菌側の因子と宿主との関係を詳細に検討していく必要がある.
  • 石畝 史, 京田 芳人, 望月 典郎, 布施田 哲也, 重屋 志啓盛, 泉谷 秀昌, 渡辺 治雄
    2005 年 79 巻 4 号 p. 270-275
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2003年9月に福井県内の下痢症患者から多剤耐性Salmonella enterica serovar Newport (S. Newport) が検出されたこと (感染症誌Vol.78No.11) から, 2003年4月~2004年11月に下水流入水から検出されたS.Newport株と比較検討した.多剤耐性株は2003年5月~2004年3月に県内3カ所の浄化センターの5検体から計9株確認された.これらの株は大きく2つのタイプI, IIに分けられ, I (3株) は11剤 (ABPC, TC, SM, CP, CVA/AMPC, Su, CTX, CET, CTRX, CAZ, CPDX) に耐性を示し, II (9株) はさらにSXTおよびSPTを加えた13剤に耐性を示した.KM, FOM, NA, GMおよびCIPにはいずれも感受性を示した.タイプ1およびIIは, PFGEパターンおよびプラスミド・プロファイルにおいても異なり, Iの各性状は上記の患者由来株とすべて一致した.また, PCRによって保有が確認されたblaCMY遺伝子のORF部分について, 塩基配列を決定したところ, 既報のblaCMY-2遺伝子の塩基配列と一致した.
    米国で検出頻度が増加している多剤耐性S. Nevvportと類似した耐性パターンを示す株が, 福井県内の下水から2種類検出され, うち1種類の性状が患者由来株と一致したことは興味深い.また, これら多剤耐性株が2地域の施設から検出され, 患者住所地もこの2地域以外であることから, 分布が広範囲に及んでいた可能性があり今後の動向に注意を要すると思われた.
  • 林 国樹, 内山 隆久, 岩田 美智子, 佐野 和三, 矢内 充, 熊坂 一成, 稲毛 康司
    2005 年 79 巻 4 号 p. 276-283
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    日本未発売のrespiratory syncytial virus (以下RSV) 迅速キットの1つであるImmunoCard STAT!TMRSV (Meridian Bioscience, Inc.米国, 以下ICSTAT!RSV) について, 鼻腔吸引液, 鼻腔洗浄液159検体を対象とし, 現在販売されているRSVテストパックおよびディレクティジェンEZRSVの各キットとの性能比較を行った.
    3種類のキットにおいて1法でも結果が不一致となった31検体についてNestedRT-PCR法にて確認を行ったところ, 陽性10検体, 陰性21検体であった.Nested RT-PCRによる結果を基準とした場合, ICSTAT!RSVの偽陰性は10検体中2検体 (2/10) で, 偽陽性率は21検体中2検体 (2/21), RSVテストパックの偽陰性, 偽陽性はそれぞれ0/10, 19/21, ディレクティジェンTMEZRSVの偽陰性, 偽陽性はそれぞれ10/10, 1/21であった.
    ICSTAT!RSVの最低検出感度は, A-2株では5.15×106TCID50/ml, Wash株では7.58×105TCID50/mlであった.日差再現性は良好で, 測定者の違いによる判定誤差, 赤血球による判定誤差なども認められず.迅速診断キットとして比較品と同等以上の性能であると考えられた.
  • 花田 三貴子, 今岡 治樹, 大下 祐一, 力丸 徹, 相澤 久道
    2005 年 79 巻 4 号 p. 284-289
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A 63-year-old woman was admitted to our hospital with fever and cough. Candidemia was diagnosed by blood culture and culture of IVH catheter. Although, the patient was treated with fluconazole, clinical symptoms and chest radiographic findings worsened. After micafungin was replaced with fluconazole, her symptoms, chest radiographic findings improved and stabilized. It is suggested that micafungin is useful for the treatment of candidemia associated with Candida parapsilosis.
  • 石井 義和, 坂東 政司, 大野 彰二, 杉山 幸比古
    2005 年 79 巻 4 号 p. 290-293
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A 75 year-old male was admitted to our hospital with high fever and dyspnea. He had traveled in Turkey 10 days before. His chest X-ray showed infiltrations in bilateral lower lung fields. His urinary antigen detection test for Legionella pneumophilia was positive. He was treated with pazufloxacin added to clarithromycin and his symptons were promptly resolved.
  • 坂本 光男, 加藤 哲朗, 佐藤 文哉, 吉川 晃司, 吉田 正樹, 柴 孝也, 小野寺 昭一, 保科 定頼, 小泉 信夫, 渡辺 治雄
    2005 年 79 巻 4 号 p. 294-298
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    We report a patient with leptospirosis caused by Leptospira borgpetersenii serovar Sejroe infection on Bali Island, Indonesia. This 33-year-old Japanese man had stayed at a resort hotel on the island from July 8 to July 13 2004. At the hotel, he swam in the pool, walked barefoot, and lied down in the grass. He developed a high fever and headache 7 days after completing his trip, and was admitted to our hospital on July 23. On admission he showed conjunctival suffusion and complained of myalgias. Laboratory findings included granulocytosis and elevated CRP.Plasmodiumspp. were not found in blood smears, and no pathogenic bacteria were isolated from blood or fecal cultures. We diagnosed the patient as leptospirosis upon detection of slender coiled organisms with characteristic morphology by darkfield examination of blood sample. Minocycline 100 mg i. v. b. i. d. showed excellent efficacy. A microscopic agglutination test (MAT) during the convalescent stage demonstrated a significant increase in antibodies against L. borgpeterseniiserovar Sejroe, confirming the diagnosis of leptospirosis. Despite occurrence of a pandemic of leptospirosis in certain Southeast Asian countries including Indonesia, information concerning pandemic disease is limited. In addition serovars of “imported” cases representing infection in pandemic areas differ widely from those in domestic cases. Adequate laboratory support therefore is crucial for accurate diagnosis of leptospirosis.
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