紙パ技協誌
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51 巻, 7 号
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  • 白井 俊市
    1997 年 51 巻 7 号 p. 997-1005,013
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    我が国では年間約3,000万トンの紙・板紙が生産され, その原料として古紙が53%の割合で利用されている。古紙の回収は永い歴史を有し, 家庭からの古紙回収はチリ紙交換, 集団回収など, 独特のシステムが構築されている。欧米では, 1980年代後半から, 自治体が主体となって家庭からの古紙回収を開始するようになったが, それまでは民間業者が家庭から古紙を回収する我が国のようなシステムはほとんどなかったといえる。
    1980年代から我が国でも, 集団回収への助成を行ったり, 自治体自ら古紙回収を行う自治体が増加している。また, 自治体の一部では, 大規模建築物の所有者に対して事業系ごみの減量化を義務付けたり, 事業系ごみの全面有料化を実施するなどして, ごみの減量化のために間接的に古紙回収を促進しようという動きがみられる。
    更に, 家庭から排出される容器包装を消費者, 市町村, 事業者の責任分担によってリサイクルすることを目的に, 容器包装リサイクル法が1997年4月から段階的に施行されることになっている。紙製の容器包装としては, 飲料用紙パック, 段ボール, その他の紙製容器包装 (紙箱, 包装紙, 紙袋等) が対象となるため, 今後, 古紙回収は一段と促進することが予想される。
    しかしながら, 現状では古紙回収量の増加に伴い, 古紙需給の不均衡が顕在化してきている。紙リサイクルの促進は社会的な要請でもあるが, 古紙の均衡ある回収と利用を促進するための施策が求められている。
  • 石岡 直洋
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1006-1014,013
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    北米における古紙回収量や利用率の推移は上昇傾向にあり, 特に1980年代後半からはその伸びが著しい。これは廃棄物処理場スペース問題に端を発した行政指導に起因するところが大きい。
    北米の古紙処理設備は, 排水規制が緩やかで水の制約がなかった1960-70年代はウオッシャー法が主流であったが, 1980年代後半からは排水規制が一段と厳しくなったことから, 節水型のフローテーション法が主流となった。
    弊社関連会社である大昭和アメリカ社ポートアンジェルス工場は, 古電話帳リサイクルのパイオニアとして, 電話帳の生産から再生までのクローズド化を完成させた。1992年のスタートアップ以来, 予想通りの良好な品質が得られ, 各抄紙マシンにおいては40%以上の古紙配合率で, 問題なく操業を行っている。
  • ミューラー ベルンハルド
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1015-1031,014
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    ヨーロッパの古紙事情を説明するために, 古紙の再利用率が60%に達しているドイツの進展を例として取り上げる。
    1990年代初頭に公布された幾つかの法律は, 包装及び梱包用材料をリサイクルする経済的必要性を生じさせ, 産業界は効率的な回収システムを構築せざるを得なかった。包装及び梱包材料の場合と類似な法律に強制され, 印刷用紙の供給側と需要側は, 紙製造のための古紙利用を増加させる自主的な目標を発表した。目標の再利用率60%以上は, 当初の予定より6年早く, 1994年に達成された。
    古紙処理設備に関する記述は板紙と筆記印刷用紙に分ける。最初に板紙の離解と粗スクリーニング工程用標準的構成について述べ, そのようなシステムに必要とされる数種類の装置を紹介する。又高濃度離解工程を使用して必要とする機器の台数を徹底的に減らしたライナー原料処理装置についても記述する。
    新聞紙, 軽量コート紙あるいはスーパーキャレンダー紙での古紙使用が増加するのに伴い, フローテーション・マシン, 微細スリット・スクリーン及びディスク・ディスパーションの様な処理工程が最終原料の品質あるいは抄紙機の操業性を決定する原料処理システムでの重要なポイントとなっている。それ故, 新聞紙用標準的DIP工程の説明ではECO-CELLフローテーターとC-Bar型精選スクリーンに焦点を当てている。処理工程を単純に改造するだけで, この標準的システムはより高品質な紙あるいはティシュ・ペーパー用DIP原料の製造も可能とする。三次フローテーション工程を加えればこのシステムは雑オフィス古紙を処理することさえ可能で, バージンパルプの代わりとなる原料が製造できる。適切なリジェクト処理装置と逆洗浄水リサイクルを組み合わせた場合, 100%DIP原料の新聞紙を抄造している製紙工場での清水使用量は, 紙1トン当たり10m3以下をキープすることが可能である。
  • 岡 作次郎
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1032-1046,014
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    我が国の新聞古紙の回収率は67%と高く, 新聞用紙には約45%配合されている。新聞古紙パルプ (DIP) の製造工程は,「離解」「除塵」「脱墨」「洗浄」「漂白」に大きく分けることが出来る。
    近年, 新聞用紙の軽量化及びビジュアル化の進展に伴い, オフセット印刷の比率が増加し, それに伴って, 脱墨が難しくなっている。これに対し, 熟成の強化, ニーダーやディスパーザーなどの機械力によるインキ剥離が必要となっている。また, フローテーションに於いても, 浸透性, インキ剥離性の高い脱墨剤の使用と共に, G/L比の高い機種が指向されている。
    一方, 生活様式の多様化に伴い, 古紙に混入する異物は増加し, 特に製品の塵の増加や断紙の原因となる粘着物やホットメルトが問題となっている。これら異物は微細化しない早期に除去するのが望ましく, 異物の破砕の少ない高濃度パルパーや粗選スクリーンの強化, スリット化とその狭小化が指向されている。
    以上の他, 最近では古紙中のチラシ率が40%を超え, また, ニーダーやディスパーザー処理によって系内を循環する微細成分が増加し, 白色度に大きく影響している。これに対し, 晒前での前段フローテーション処理や循環白水の清澄処理は, 用水節減と白色度向上に効果的である。
  • 新井 勝
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1047-1053,015
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    最近では白色度70%を超える高白色新聞DIPが製造され, 中級印刷紙, PPC用紙, フォーム用紙, 微塗工印刷紙などに使用されている。
    高白色新聞DIPの品質としては, 白色度が70%以上であるということの他に, DIP中の黒ひげ (未剥離のインキ) およびチリが極力少ないことが要求される。
    一般的な新聞DIP, 白色度55-60%を製造する技術と, 高白色新聞DIPを製造する技術を比べると, 基本の原理としては大きく変わることはない。基本の原理とは大きく分けて, 離解, 除塵, 脱墨, 漂白である。高白色新聞DIPを製造するためには, 一般の新聞DIPの処理工程に比べ, 特に除塵, 脱墨, 漂白を強化する必要がある。
    (1) 離解工程: 異物除去効率向上のため, 補助のパルパースクリーンやドラム型のファイバーフローが使用される。
    (2) 除塵工程: 粗選工程, 精選工程でスリットスクリーンが使用され, 精選工程のスリットスクリーンのスリットサイズとしては0.15mmが使用されるようになってきている。
    (3) 脱墨工程: インキの剥離方法には大別して機械的処理方法と化学的方法があり, この二つの方法を上手く組み合わせることが重要である。機械的処理を主にした方法にはディスパーザー処理がある。化学的処理を主とした方法には熟成処理がある。この剥離したインキを工程内から除去する手段の一つとしてフローテーション処理を行うが, より効率がよく, 電力原単位の少ないフローテーターを採用する必要がある。フローテーターで除去し難い微細なインキ粒子を除去するには洗浄機が使用される。
    (4) 漂白工程: 新聞古紙を脱墨後, さらに白色度を高めるには酸化漂白または還元漂白を行う。酸化薬品としては過酸化水素が最も一般的である。還元薬品としてはハイドロサルファイトやFASなどが使用される。
  • 小林 克宏
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1054-1060,015
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    上質系DIP製造技術の現状について, 日本製紙伏木工場における色上DIPの操業経験を中心に述べる。上質系DIPの品質上の重点は白色度と同様にチリであるが, 近年印刷及び表面加工技術の多様化により, 現状設備では処理不可能な古紙が増加する傾向にある。この対策として開発した「パルパー段階でのチリ判定システム」について紹介する。このシステムによりチリ判定精度が向上し, 後段でのチリトラブルは減少したが, 未だ解消には至っておらず, 今後除塵設備の強化が必要である。またリサイクルを一段と促進し, 都市から発生する紙ゴミを減少するために「オフィス古紙の有効活用」が問題となっている。このアプローチとして実機テストを行った。その結果, 粘着物を主成分とするチリは多いものの高白色度かつ低灰分のDIPが得られた。発生源であるオフィスでの分別次第では貴重な古紙資源であると考えられる。
  • 飯田 清昭
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1061-1063
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 田中 宏一
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1064-1075,016
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    中性抄紙化を最初に手がけたのはヨーロッパであるが, 爆発的な勢いで中性抄紙へ転換が行われたのは, 米国であった。その勢いは当然日本にも影響を与え, 現在日本国内での中性抄紙転換は拍車がかかってきている。本報は, こ転換期の中での填料の状況, 特に軽質炭酸カルシウムを中心とした填料の状況を概説した。すなわち, 広く填料として使用されているタルク, カリオン, 重カル, 軽カル, 二酸化チタンについての粉体物性および紙へ内填したときの紙の強度, 光学特性の比較を行い, その中でも中性抄紙填料として注目されている軽質炭酸カルシウム (軽カル) について結晶形状別填料特性の比較および比較的安価に入手可能な紡錘状軽質炭酸カルシウムについて, 内填率と紙物性の比較またその粒子径別内填紙物性の比較を示した。軽カル填料は, 紙の白色度, 不透明度を高める特長を持つものの, 紙の強度, サイズ性が比較的低くなる欠点を示した。また紡錘状軽カルの内填率を増加させると白色度, 不透明度は向上したが, 強度, サイズ度は低下する傾向を示した。また粒子径は微粒になるにつれ白色度, 不透明度は向上したが, 強度, サイズ度は低下した。最後にパイロット抄紙機による塗工原紙の中性抄紙試験を行い下記の結果を得た。
    (1) 軽カル内填塗工紙は, 白色度, 不透明度, 白紙光沢度, 印刷光沢度がタルク内填塗工紙より高くなる傾向を示した。
    (2) インキ受理性はタルク内填紙の方が若干であるが軽カル内填紙のそれよりも高い値を示した。インキセット性には, 差は見られなかった。
    (3) 塗料組成物の塗工紙物性では, 全般的に紡錘状軽カル配合塗工紙が高い値を示した。
    中性抄紙填料としての軽質炭酸カルシウムは, 上質紙, 塗工原紙を中心にますます需要が増加する可能性が大きく, また酸性系中質紙用填料としての軽質炭酸カルシウムの応用も検討されてきている。
  • バイケマ ピーター, 中 徹雄
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1076-1081,016
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    日本の製紙会社も, 世界の製紙会社と同様に, ピッチに関連した品質問題, 操業性や生産性の低下などに頭を痛めている。本文では, 現在実用化されている様々なピッチ・コントロールの方法について, その長所や短所を論じた後, 工程中のピッチを最も効果的な方法でシート中に歩留まらせてそれを取り除く方法を紹介する。
    しかしこの歩留まりによるピッチコントロールはそのピッチ粒子をどのような大きさで, シート上に留め置くかが重要なポイントとなる。換言するならば, そのピッチ粒子を肉眼では判別できない状態で定着させる必要がある。
  • 伊藤 通弘
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1082-1083
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 黒液中の灰分の挙動
    中野 準三, 津田 祐子, 伊藤 秀司
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1084-1089,017
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    稲ワラの化学パルプ化においては, 多量に存在するシリカの問題を解決しなければならない。本報ではワラ類のシリカをFT-IRおよびX線法で測定するとともに, ソーダ蒸解の黒液に溶解した灰分 (主としてシリカから生成したNa2SiO3) を除去する目的で, 黒液の沈殿剤処理 (CaOまたはCaO+CaCl2) および黒液のpHによる溶出成分の分離性について検討した。
    結果を以下に要約する。(1) ワラ類のシリカはクリストバーライト型および石英型の結晶構造を有するが, 黒液から再生したシリカは非晶質のオパール型である。(2) 黒液に沈殿剤を添加すると, 灰分の約95%が除去できる。(3) 灰分の除去およびグリニンの分離には, 2段階のpH調整が有効である。
  • 機械パルプの光褪色抑制におよぼすフェノール性水酸基の影響
    伊藤 和貴, 足立 幸雄, 坪田 弘志, 沖 妙, 橘 燦郎
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1090-1097,017
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    機械パルプの光による色戻りにおよぼすフェノール性水酸基の影響について検討した。機械パルプをアセチル化すると, 色戻りは抑制された。未漂白GP (UGP), 未漂白TMP (UTMP) ではパルプ中のフェノール性水酸基が約11%アセチル基で保護されることにより, 色戻りは完全に抑制された。一方, 漂白GP (BGP), 漂白TMP (BTMP) ではパルプ中のフェノール性水酸基が各々16%, 29%アセチル化された場合にその色戻りが完全に抑制されることがわかった。GPおよびTMPいずれのパルプでも未漂白と漂白済みパルプでのこの差は, 各々のパルプの製造条件の違いに基づくリグニンの変質の程度とH2O2漂白によるパルプ中のリグニンの変質 (例えば, キノン, ハイドロキノンの生成等) に起因しているものと考えられる。しかし, 内容については更なる検討が必要と考えられる。UGP, BGP, UTMPおよびBTMPをアセチル化したパルプの差反射率は, アセチル化によりコントロールのそれよりも低下した。色戻りに影響すると言われている420-440nm付近のキノンの吸収が未処理 (コントロール) のそれに比べ大きく低下した場合には, 色戻りが大幅に抑制されるものと考えられた。
    アセチル化パルプをPTC併用KBH4還元した場合には, アセチル化のみを行った場合に比べ, 色戻り抑制効果の低下がみられた。これはアセチル化パルプのPTC併用KBH4還元時にアセチル基が一部脱アセチル化されたため, 色戻り抑制効果が低下したものと考えられた。
    これらの結果から, 機械パルプの光槌色にはフェノール性水酸基が大きく影響しているものと考えられた。
  • 短時間滞留アプリケータでしまを防止するための装置
    樫村 久男
    1997 年 51 巻 7 号 p. 1098-1102
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
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