中性抄紙化を最初に手がけたのはヨーロッパであるが, 爆発的な勢いで中性抄紙へ転換が行われたのは, 米国であった。その勢いは当然日本にも影響を与え, 現在日本国内での中性抄紙転換は拍車がかかってきている。本報は, こ転換期の中での填料の状況, 特に軽質炭酸カルシウムを中心とした填料の状況を概説した。すなわち, 広く填料として使用されているタルク, カリオン, 重カル, 軽カル, 二酸化チタンについての粉体物性および紙へ内填したときの紙の強度, 光学特性の比較を行い, その中でも中性抄紙填料として注目されている軽質炭酸カルシウム (軽カル) について結晶形状別填料特性の比較および比較的安価に入手可能な紡錘状軽質炭酸カルシウムについて, 内填率と紙物性の比較またその粒子径別内填紙物性の比較を示した。軽カル填料は, 紙の白色度, 不透明度を高める特長を持つものの, 紙の強度, サイズ性が比較的低くなる欠点を示した。また紡錘状軽カルの内填率を増加させると白色度, 不透明度は向上したが, 強度, サイズ度は低下する傾向を示した。また粒子径は微粒になるにつれ白色度, 不透明度は向上したが, 強度, サイズ度は低下した。最後にパイロット抄紙機による塗工原紙の中性抄紙試験を行い下記の結果を得た。
(1) 軽カル内填塗工紙は, 白色度, 不透明度, 白紙光沢度, 印刷光沢度がタルク内填塗工紙より高くなる傾向を示した。
(2) インキ受理性はタルク内填紙の方が若干であるが軽カル内填紙のそれよりも高い値を示した。インキセット性には, 差は見られなかった。
(3) 塗料組成物の塗工紙物性では, 全般的に紡錘状軽カル配合塗工紙が高い値を示した。
中性抄紙填料としての軽質炭酸カルシウムは, 上質紙, 塗工原紙を中心にますます需要が増加する可能性が大きく, また酸性系中質紙用填料としての軽質炭酸カルシウムの応用も検討されてきている。
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