ここ最近の傾向として, 新設のクラフトパルプ製造設備の数は, 一部東南アジア並びに南米の地域では増加が見られたものの世界的規模では明らかに減少傾向にある。一方その製造技術に関しては, この間にいくつかの目立った変化が見られた。特に蒸解技術に関する開発にはこの20年間に目覚しい進歩があった。今日ではパルプ品質並びに漂白性の向上をもたらす新蒸解システムが可能になっている。また漂白技術に関しても環境面への対応から漂白薬品消費量の低減並びに排出負荷の低減を目指して中濃度酸素脱リグニン技術の普及, 更にはその2段化への拡張, またTCFあるいはECF漂白への転換も進み, 現在では更にソフトECF漂白システムが推奨され導入されてきている。
さて現状を見てみると, クヴァナパルピングではこれらの新技術へのニーズに対応すべく開発を継続する中で, 特に蒸解技術については「Compact Cooking
TM」「Compact Cooking Xylan
TM」「Compact Cooking Con-Current
TM」及び「Kobudo Mari
TM」と称す一連の新システムを開発し, 現在推進している。また, 中濃度酸素脱リグニンシステムについてもその選択性の最適化と併せて設備費の低減をも計った「DUALOX
TM」と称す新システムを開発し既に実機運転に入っている。漂白技術についても「Prepox
TM」と称す加圧過水段, また中濃度オゾン段, 更には拡張型中濃度オゾン段を開発しそれらと組みあわせたシステムを提供している。今後を展望すると新設ラインの建設数は明らかに減少するであろうが, 設備の能力面では一層の大型化が進み一系列による最大処理能力は日産2,800~3,000ADT程度にまでなるものと予想される。またその他の要求として, 蒸解の歩留まりを向上させる技術, また既存設備の能力増大のみならず, 効率化, 品質向上をめざした部分更新を可能にする技術, また装置面では特に洗浄においてはより簡便で操作性のよいウオッシュプレスへの要望, 等々が出てくると考えている。クヴァナパルピングとしては当然これらニーズを視野に入れた開発を進めていくことになろう。
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