紙パ技協誌
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69 巻, 10 号
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製紙技術特集II
  • 清水 和幸
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1045-1050
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    当社は,抄紙プレスパートで使用されるフェルト,シュープレスベルトおよびタンデムシュープレス用トランスファーベルトの三つの用具全てを開発,製造,販売している国内唯一のメーカーであり,最適な品質を提供する抄紙プレスパートのスペシャリストとして総合ソリューション提案を可能とする体制を整えている。1980年のシュープレス第一号機稼働以降,高生産性,操業効率改善のため,シュープレスは高速広幅化,高ニップ化が急速に進行し,1999年の革新的なトランスファーベルト付きノードローシュープレスマシン第一号機登場を経て,マシンの高速化が更に加速,抄紙用具の使用条件は,過酷化が進行した。
    全世界で900基以上のシュープレスユニットが稼働している現在に至るまで,当社は独自の技術でマシンや操業の技術革新と共に歩んできた。本報では,当社シュープレスベルトおよびトランスファーベルトの開発経緯をレビューすると共に,最新技術動向をご紹介する。
  • 小林 準, 佐野 秀樹
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1051-1056
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    国際的な競争がますます激化する紙パルプ業界にあって,板紙の生産性と品質を併せて向上させ,競争力を強化するためにさまざまな抄紙機が開発されてきた。
    抄紙機におけるフォーミングセクションは,ヘッドボックスにおける原料の分散,フォーマによる脱水・シート形成と,抄紙工程の初期の段階を受け持ち,紙の坪量,地合,強度,繊維配向といった紙が持つ基本品質のほとんどが決まってくるパートである。
    板紙用抄紙機におけるフォーミングセクションはおもに円網抄紙機と長網抄紙機から進歩発展してきた。円網抄紙機から発展してきたフォーマは,当社のウルトラフォーマシリーズとサクセスフォーマがある。全ての品種の板紙の生産に対応可能で,主な機種は7種類あり,それぞれの時代に即した機種を次々に開発し世に送り出し業界の進歩発展に貢献してきた。一方で,長網抄紙機ではハイブリッドフォーマやギャップフォーマなどのツインワイヤフォーマが出現した。ツインワイヤフォーマとはヘッドボックスから噴射された原料を2枚のワイヤにて挟み込み脱水を行うフォーマであり,このフォーマの出現により,抄紙機の高速化と紙の高品質化が加速された。
    本報では,円網抄紙機と長網抄紙機の変遷と,今年3月にスタートアップした抄紙機の改造事例を紹介する。
  • Harry Ritter, 永野 明仁, 岩田 弘
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1057-1062
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    国内紙市場規模の縮小傾向に加え紙市場の国際化に伴う低価格輸入品の増加及び使用原料の低質化への対応や,同業他社に対するコスト競争,品質競争が従来にもまして熾烈を極めており,日本の製紙業界にはかってないチャレンジが要求されている。
    製紙先進諸国に於いても抄紙機の淘汰や転抄など中・小型抄紙機の活用が見直され,長網抄紙機やオントップフォーマ長網部での地合向上による強度発現・長網部の脱水自動制御や広坪量範囲での最適化運転指向など機能向上が行われている。
    “IBS”社では,これらの要求に答える為長網テーブル上での脱水と繊維分散を個別に制御,DCSから各坪量・抄速に合わせテーブル上原料アクティビティを調整すると共に,真空制御システムの高機能化と簡素化で省エネを同時に達成した“iTABLETM”を開発し,すでに世界中で40台以上稼働させている。
    本システムは,地合指数値20~30%の地合改善により,薬品使用量・リファイニングエネルギ低減などの直接操業コストに影響するものから,エンドユーザが求める紙強度が約5~20%向上する等多岐の効果が確認,報告され,かつ投資回収も約1年以内と導入頂いた製紙会社各位から報告を受けている。先進的な製紙メーカはいち早く最高水準の技術・装置を導入し,品質と生産性の向上を実現している。
    本稿では,長網テーブル上の原料アクティビティコントロールの重要性を説明すると共に,その紙層形成過程を系統的なアプローチ手法による改善・改良を提案し,先進製紙諸国に於いて最高水準の品質と生産性向上で多くの実績を積み上げてきている“IBS”社の“iTABLETM”の概要及びフィルードデータについて報告する。
  • ―繊維特性からの紙強度予測とリファイナー管理―
    ユッカ ノケライネン, 佐藤 武志
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1063-1069
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    品質の改善とプロセスの最適化を検討する場合,プロセス管理のために信頼性の高い計測データが必要となる。製紙プロセス全体を検討するとき,そのパラメータはパルプ工程ではpH,カッパー価,導電率と白色度,原料調成工程ではフリーネス,繊維形態,繊維と灰分の原料濃度,ウェットエンド工程では歩留り,電荷および化学的特性である。
    本稿は抄紙工程における総合的な品質管理と最適化の可能性を提示する。例えば,ウェットエンド工程での白水制御によるプロセス安定化は,製品欠陥の減少,紙中灰分増加の実現によるコスト削減等の利益をもたらす。また,フィブリルのオンライン測定に基づいた紙の強度特性の予測について,フィンランドのオウル大学との共同研究結果を紹介する。評価分析はValmet MAPオンライン・ファイバー・アナライザーを用いて行われた。MAPの主な測定項目はフリーネス,濃度,繊維長,繊維幅,微細繊維,シャイブ,フィブリル,キンク,繊維粗度,ベッセル,フロック等である。MAPによる引張り強度予測のモデル構築のため,叩解のパルプ濃度とエネルギー原単位を変化させながら,ラボでの手透きシート引張り強度測定結果と,MAPによる全てのオンライン繊維特性測定変数の比較が約1箇月間行われた。
    これらのデータにより,Valmet Modelerソフトプログラムを用いて引張り強度予測モデルが完成し,この中でMAPのフィブリル化率測定と引張り強度との強い相関が実証された。その後,モデルの検証のため3つの独立したバリデーション試験が9箇月間に渡って行われ,高解像度画像解析によるオンラインの繊維フィブリル化測定により紙の強度特性のリアルタイムでの予測が可能であることがわかった。
  • ―製紙技術動向への対応―
    新部 典弘
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1070-1074
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    近年,製紙業界では操業効率がより重視されるようになっている。この実現のために,例えば,省エネ操業の適用パートの拡大,プレスの高圧化,操業速度の高速化,などが行われている。製紙用具メーカーとして,これら製紙業界の技術動向に対し素早く対応することは大変重要である。このため,当社では生産設備の最新化や搾水理論に基づくフェルトの高機能化に継続的に取り組んでいる。今回,これらの製紙技術動向に対応するために開発した以下の新製品について紹介する。
    新聞・印刷用紙の分野ではニップ脱水重視フェルトである(アクアシリーズを進化させて生まれた)「アクアスリート®」を,板紙分野では耐コンパクション性に優れた「マルチパスコンセプト」を,家庭紙分野では乾燥性と防汚性を両立させた「W―speeder」を紹介する。
  • 波多野 正信
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1075-1079
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    デポジットは製紙工程において操業上の問題として厄介な存在である。最近では古紙の悪化等によりピッチやスケールなど汚れは酷くなる傾向である。その対応策として薬品による対処法があり,薬品での対処法には外添法と内添法とがある。
    外添法は一般的に問題のあるワイヤーやフェルト,ロールにスプレーをしてその部分のみに対処する方法であり,洗浄法とパッシベーション法とがある。
    内添法は全工程のデポジットコントロールができる方法であり,分散安定化(Stabilization),定着(Microfixation),抱合脱粘着(Detackification)などがある。
    弊社ではこれらのデポジットコントロール剤の評価方法をCIA(Contaminent Image analysis)で行っている。これはソレニス社が開発した画期的な評価方法でありピッチをフィルムに付着させ画像処理によって評価する方法である。
    デポジットコントロール剤は単剤だけではなく「外添剤+内添剤」や「内添剤の二剤使用」など薬剤を併用することにより,トータル的なデポジットコントロールが可能となる。今回「無機分散剤+抱合脱粘着剤」添加において相乗効果が見られ,抱合脱粘着剤単剤より高い効果が認められた試験について報告する。
  • 山本 准司
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1080-1084
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    紙の地合は,強度特性や印刷時の着肉,裏抜け品質に関わる重要な紙質であり,特に近年の低坪量化や高灰分化に伴い,地合の製品品質への影響は大きくなっている。従って,地合を制御,改善することは,製品品質の向上に直結する。地合の形成には原材料条件(パルプ,添加薬品等),操業条件(原料濃度,J/W比,脱水バランス等),用具条件(ワイヤーの織り,通気度等)といった様々な要因が関わっているが,実際の抄紙における地合調整は,過去の経験や勘に頼っていた。
    ストロボ光源とCCDカメラを組合せたカメラ型オンライン地合計は,抄紙機上のフリーラン部分に設置することで,走行する紙の地合をリアルタイムで評価できる。従来の透過光やβ線を利用したラボ用地合計では,枠替え毎にしか地合が評価できず操業への反映に時間がかかったが,オンライン地合計は走行する紙の地合を連続測定するため,迅速なフィードバックが可能である。
    このオンライン地合計を,新聞用紙を製造する2台の抄紙機に設置し,操業条件と地合の関係を解析し,地合改善に取り組んだ。1台については,フォーマーにおける脱水装置の真空度を調整することで,対策開始から1週間以内に目標値を達成した。もう1台については,フォーマーの脱水条件の調整だけでは地合の目標値を達成しなかったものの,抄速の増速と原料の低濾水度化と組み合わせることで,地合を改善するに至った。
総説・資料
  • 清水 良三
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1085-1088
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    安全性とコストを考慮すると,製紙業界の主要目標のひとつは放射線を使用せずに水分量とファイバー量を測定することだった。Voith LSC TecoSensセンサーを使用することにより,ティッシュ抄造に於いて可能となった。
    現在,ティッシュ抄造過程でのオンライン坪量測定は,放射分析を用いた坪量センサーが通常使用される。放射性のベータ線を使用し,ティッシュの坪量がg/m2の単位で測定される。この技術は長期に渡り実証されてきたが,製紙会社は放射分析を使用しない信頼性の有る代わりのものを探し求めてきた。
    Voith LSC TecoSensにより,水分量とファイバー量を測定する一体型の赤外線光学センサーがティッシュ抄造に於いて使用可能である。このセンサーはQCS内にモジュール化されていて,ティッシュのこれら二つの物理的測定変数を同時に測定する。使用されている測定方法は赤外線分光法に基づき,フィラーを使用せずファイバーのみを使用するティッシュ抄造に特に適している。この方法は従来の放射分析測定に比べ,経済性と環境性の両方に於いて優れている。
    “TecoSens”とはTissue用のEcologicalそしてEconomicalなSensorという意味を持った造語です。
  • ―操業効率改善へ,隠れた敵の見える化!!―
    甲矢 佳己
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1089-1098
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    生産効率,良好な紙プロファイル,エネルギー消費およびコストの削減は,全ての製紙メーカーに共通する目標である。また製品のエンドユーザーにできる限りの満足を提供することは極めて重要であることは言うまでもない。
    iRoll(アイロール)は,紙品質の改善,ニッププロファイルの最適化,最終製品の最良な走行性を保証するための有益なツールである。iRollは抄紙機の主なプロセスおよび位置で利用でき,今まで見えなかったニッププロファイル,親枠の硬さプロファイル,張力プロファイルをオンラインで計測し瞬時に(1秒間に5プロファイル)ビジュアル化する。この特長により,潜在的な問題点を見える化でき,とった改善アクションによる効果も瞬時に把握でき,問題解決を加速させることが可能である。
    本報では紙,板紙,ティッシュマシンへの多くの適用例を通してその利点を紹介する。
    また低コストですぐに利用できる,iRollポータブルによる診断事例も併せて紹介する。
  • 第1回 洋紙の需要を生み出した社会
    飯田 清昭
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1100-1105
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    明治維新で西欧を目にした日本は,その社会システム,文化を取り入れようとする。それらの一つが,コストの安い活版印刷であり,物流を合理化する紙器であった。そして,それらの素材として,従来の和紙に代わって,洋紙が輸入された。それを国産化しようとして日本の製紙産業がスタートした。その国内の洋紙生産がテイクオフするのは,1905年頃で,最初の抄紙機を輸入してから30年を要したが,その後年率10%強で成長した。その需要を生み出したのが印刷産業で,同じ期間,金額で製紙産業と同規模あるいはそれ以上の成長を示していた。もう一つの需要先である紙器産業も,金額は洋紙生産の20%弱であったが,同じ割合で拡大していた。一方,輸入紙の量は横ばいで,その比率は1930年には生産の1割程度まで減少し,国産紙が市場を占めることとなった。
    その過程で,独自の日本モデルを作り上げることで,重要な産業の一つに成長した。その明治期以降の技術開発の軌跡を調査するのがこの報告の目的である。
    次回は,製紙産業の黎明期の様子を紹介する。
  • 2015 年 69 巻 10 号 p. 1106-1111
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    In late years many paper mills introduce a monitoring system and an investigation as a part of pest control management, but the performance itself often becomes the purpose. Even though a large amount of cost is spent on the investigation every year, a hygiene level and environmental improvement do not often advance as expected.
    IKARI SHODOKU CO., Ltd. recommends“the environmental diagnosis investigation”as well as highly advanced monitoring investigation system so that pest measures and sanitary supervision can be carried out more effectively. The exclusive apparatus which conducts an environmental investigation is used to find out the weak point of the facilities structure in order to make it possible to increase the efficiency of sanitation improvement activities.
    Since IKARI gives priority to the environmental protection, we advanced non-chemical pest control measures and developed a lot of original products such as“Clean Eco line GX”. The realization of the effective and effective pest measures in the paper mill is enabled by combining an environmental improvement design with basics of monitoring data.
シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (107)
研究報文
  • 上條 康幸, 杉野 光広, 宮西 孝則
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1116-1124
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    [早期公開] 公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
    実験用リファイナーを用いて数種類の広葉樹材チップと針葉樹材チップから,薬品前処理条件を変えてTMP(サーモメカニカルパルプ)を作製し,繊維形態と手抄シート物性を検討した。長繊維については,ルンケル比が高い繊維は紙層形成において変形しにくく,シート密度は低下した。すなわち,ルンケル比の高いチップは容積重が高いので,比重の高いチップから比重の低い紙ができたことになる。一方,密度が低いことから同一坪量であれば繊維間結合面積が減少し,シートの裂断長は低下した。微細繊維については,沈降速度が大きい微細繊維はフレーク状であり,繊維間結合への寄与は小さいのでシートの裂断長が低下したが,非結合面積が増加するため比散乱係数は増加した。沈降速度が小さい微細繊維はフィブリル化されており,シートの裂断長が増加し比散乱係数は低下した。広葉樹材CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)とAPTMP(アルカリ過酸化水素サーモメカニカルパルプ)は,針葉樹材TMPと比較して繊維長が短く,ルンケル比が高く剛直な繊維であり嵩高なパルプであった。シートの比散乱係数と裂断長の点から広葉樹材CTMPとAPTMPは,GP(砕木パルプ)とラジアータパイン材CTMPの中間に位置づけられることがわかった。製造法については,嵩高,光学特性を重視するならCTMPを選択し,強度,白色度を重視するならAPTMPを選択すべきである。樹種については,嵩高,不透明度を重視するなら高容積重材を選択し,白色度,強度を重視するなら低容積重材を選択すべきである。キタカミハクヨウは成長が早くリグニン含有量が少ない低容積重の広葉樹材で,他の広葉樹材と異なりその繊維はルンケル比が低くて細胞壁厚が小さく柔軟であった。キタカミハクヨウ材APTMPはラジアータパイン材CTMPと比較して,シートの裂断長と比引裂度は同等で高い白色度が得られた。
  • Yasuyuki Kamijo, Mitsuhiro Sugino, Takanori Miyanishi
    2015 年 69 巻 10 号 p. 1125-1133
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/01
    ジャーナル フリー
    Thermomechanical pulps were produced in a laboratory from various softwood and hardwood species by applying different chemical pretreatments to study fiber morphology and sheet properties. High-density hardwood chips produced mechanical pulp fibers with thick walls, which were hard to be collapsed in the sheet forming and resulted in bulky sheets. The Runkel ratio was a good parameter to characterize the cross sectional dimension of fibers and to predict the sheet bulkiness. The fibrillated fines increased fiber bonding of sheets while the flake-type fines improved the light-scattering coefficient. Wood species and chemical pretreatment conditions primarily determined the type of fines, which was characterized by the sedimentation velocity test.
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