紙パ技協誌
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71 巻, 6 号
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省エネルギー特集 I
  • 目黒 敬人
    2017 年 71 巻 6 号 p. 591-592
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
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  • 川原 敬裕
    2017 年 71 巻 6 号 p. 593-597
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    当社は,「エコチャレンジ020」としてCO2排出量を2020年度までに1990年度比で32%削減することを目標に活動を推進している。また,当工場が位置する埼玉県では2010年より目標設定型排出量取引制度が導入され,2015~2019年度の5年間で基準年に対し13%のCO2排出量削減が要請されており,これらの目標を達成するために2016年1月より当工場では新たに木質チップバイオマス発電設備を導入し操業を開始した。運転実績としては,操業開始以降は都市ガス使用量ならびにCO2排出量を大幅に削減し,特に今年度のチップボイラーによるCO2削減量は基準年に対し約25%の削減となる見込みである。

    操業経験としては3件のトラブル事例「灰の付着による一次過熱器の閉塞」,「灰バンカブリッジおよび灰の固化」,「異物の炉内堆積」について報告する。灰に関するトラブルはいずれも試験的に使用した代替燃料の成分と浮遊燃焼が原因である。代替燃料の使用中止とチップ業者へ燃料チップ中の木粉低減を要請することで燃料改善を行い,過熱管への灰付着や灰バンカブリッジは改善された。異物の炉内堆積は,燃料中のアルミ等が炉内で融解し他の異物を取り込み塊となることで炉外へ排出されずに,砂の流動性を悪化させたというトラブルである。砂循環系統の調整によってある程度改善はされたが現状としては定期的に炉内点検を実施し異物を除去する必要があり,そのサイクルの見極めが課題である。

  • 松本 信行
    2017 年 71 巻 6 号 p. 598-604
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    地球温暖化の抑制の観点から,温室効果ガス排出削減が必要であり,廃棄物・廃水処理分野でも,エネルギー消費が少ない処理技術やこれまで利用されていなかった廃棄物や廃水の持つエネルギーを利用可能な形で取り出す新技術が求められている。工場で発生する廃水の処理法として最も普及しているのは活性汚泥法に代表される生物処理であるが,生物処理法で処理が困難な廃水は,重油などの燃料を用い,焼却処理する方法が採用されるのが一般的である。焼却処理は,安定した性能が得られる処理法であるが,燃料を大量に使用するためCO2を多く排出し,処理コストも高くなるという課題がある。

    当社は,生物処理ができないために焼却処理されている廃水に適用する新たな処理法として,水熱ガス化プロセスの開発,商用化を行った。このプロセスでは,独自に開発した触媒に高温・高圧にした廃水を通過させることにより廃水中の有機物を高速で分解処理するとともに,その処理過程でメタンを主成分とする可燃性ガスを創出することができ,廃水処理,エネルギー回収,CO2排出量削減を同時に実現することが可能となる。

    当社は,触媒の開発を行うとともに,ラボスケールおよびベンチスケールでの実験により,各種有機物の分解特性を確認し,基本プロセスの開発を行った。引き続いて,月島環境エンジニアリング株式会社と共同で,実機としても使用可能な規模のパイロットプラントを設計・製作し,実廃水が排出される工場に設置して約8,000時間の処理運転を行い,プロセスの有効性を実証した。パイロットプラントは,試験終了後も実機として継続して稼動し,運転時間は33,000時間を超えている。

  • 岡田 晴雄
    2017 年 71 巻 6 号 p. 605-609
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
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    北越紀州製紙株式会社関東工場市川工務部における,ガスタービンの効率改善事例を紹介する。ガスタービン建設以来15年が経過した時点で,外部環境の変化から収益性改善のために更なる効率改善が求められることとなった。ガスタービン運用における最適条件を模索し,高圧蒸気の投入量を可能な限り絞ることで大きなエネルギーコスト改善を達成する事が出来た。

    また夏場の気温上昇による負荷低下対策としての吸気冷却設備導入事例や,その他のガスタービンの発電コスト改善事例を紹介する。

  • ─環境に優しい水冷媒で温熱から冷水を効率良くつくる─
    内田 真
    2017 年 71 巻 6 号 p. 610-621
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    ナチュラルチラーとは,これまで「吸収式」と称されてきた冷温水発生機のことである。冷媒には自然界の水を使用し,高真空の蒸発器で水冷媒を気化して冷水をつくる仕組みで,冷媒の再生に加熱を必要とするため「温熱」を動力源とする。「温熱」は天然ガス等の燃焼ガスの他,生産余剰蒸気や廃熱,太陽熱温水等の再生可能エネルギーの活用も可能である。このナチュラルチラーの運転において,実は冷却水が安定運転と省エネの重要な鍵を握るが,冷却水には多くの課題を抱えている。しかしこれらはシステム的な新しい制御により解決でき,更なる省エネ量の上積みも可能で省エネの最大化が図れる。

    また最新のナチュラルチラーでは,高効率化はもちろん運転可能(温熱利用)領域の拡大が進んでおり,本機の新たな活用による省エネ化が期待出来る。

    省エネ化が進んだ今日,この先の省エネ化は,取りこぼしている省エネ可能部をいかに摘み取るか,諦めていた省エネ化を可能にするかであり,ナチュラルチラーにおいては,まさに省エネの最大化とナチュラルチラー最大の特徴である温熱の有効活用がこれに対応する。パリ協定が発効した今,極低炭素化社会の実現に向け様々な施策を着実,且つスピーディーに進めなければならないが,ナチュラルチラーがこの先の省エネ化に大きく貢献する。

  • 山森 明浩
    2017 年 71 巻 6 号 p. 622-626
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    王子グループでは環境に配慮した生産活動を継続する為,省エネルギー目標を掲げて着実に実施してきた。王子マテリアにおいても2002年発足以降,総使用エネルギー比で年間1.5%以上削減を目標に省エネルギー活動を実施してきており,毎年その効果を上げてきている。

    しかしながら,その省エネルギー活動は,各工場毎の活動であり,案件発掘の手詰まり感や人手不足といった課題に直面し,停滞する工場も散見されるようになってきた。

    そこで,王子マテリアでは,省エネルギー活動の更なる推進と,それらに従事する人材の育成を目標に掲げ,コンサルティング会社にも相談し,本社主導による省エネルギー推進組織を構築し,全社一丸となった活動を展開することで,大きな成果を得る事が出来た。

    本稿ではこれらの取り組みについて紹介する。

  • 土屋 孝道
    2017 年 71 巻 6 号 p. 627-631
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    1Bは2006年10月に運転を開始したバイオマスボイラで,石巻工場の中で一番新しいボイラである。新設時に石巻工場の他ボイラにおける省エネ事例は取り込まれていたが,排脱設備については過去の省エネ事例が取り入れられていなかった。それは過去に石巻工場の他ボイラで排脱循環液と給水の条件で熱交換器を設置した際,熱交換器で詰まりが発生し利用できなくなってしまったためである。過去に設置した熱交換器はいずれもプレート式であり,排脱循環液に含まれるスラリー液や灰との相性が悪く,詰まりを発生させてしまった。今回,1Bに排脱設備の省エネとして別方式の熱交換器設置を検討し,詰まりに強い特徴をもつスパイラル式熱交換器を用いた排脱循環液と給水による熱交換をすることとした。メーカーはクロセでクロセのスパイラル式熱交換器は弊社他工場でも導入実績があるが,排脱循環液と給水の熱交換条件における実績はない。また他社では排脱循環液と給水の条件での実績はあるが,伝熱面積262m2という大きさはクロセとして1基で製作できる最大級のもので他社でもこの大きさのものは導入されていない。熱交換器は2015年8月に設置され,同月より連続運転を開始し1年間問題なく操業を続けた。その結果1Bの給水が排脱循環液で加温され,脱気器使用蒸気削減による省エネルギーを実現した。

総説・資料
  • 長峰 大輔, 吉田 了, 川上 千明
    2017 年 71 巻 6 号 p. 632-635
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    2015年12月,国連気候変動枠組条約第21回締約会議(COP21)において1997年の京都議定書に代り,パリ協定が採択された。世界の温室効果ガスの排出量を21世紀後半に実質ゼロ都市,世界の気温上昇の目標値を産業革命以前のレベルから2度未満とする,更に,1.5度以下まで抑制することが地球温暖化リスクを減ずるとされ,努力が求められている。日本は,2030年までに,2013年比でCO2を26%削減するという国際公約をしている。紙パルプ産業は,巨大なバイオマス産業であり,低炭素社会に貢献するグリーンエネルギーを創る潜在能力を有する。アンドリッツは,創グリーンエネルギーに寄与する様々な技術を提案している。

  • 千葉 芳史
    2017 年 71 巻 6 号 p. 636-638
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    日本製紙株式会社秋田工場では,2015年5月に漂白における最適化システム(以下,APC)を導入した結果,最終白色度のバラツキ減少,白色度基準値低下に繋がり大きなコスト削減を果たした。漂白APC導入後も,適切な監視計器の管理,モデル式のズレ対応を行うことで,制御の安定性を確保できる。また,設備改造を実施しても,再度バンプテストを実施することで,制御の信頼性を維持することができる。

    秋田工場のLBKP漂白工程はDO-EP-D1のシーケンスである。漂白工程の制御は,従来,完成白色度の基準未達がないよう安全サイドでの薬品調整となっていた為,コスト削減の余地があり漂白APCを導入した。その結果,最終白色度のバラツキが減少し,白色度の下限値は従来と同じ状態で,平均値を下げることに繋がった。さらに各漂白段の効率向上・操業安定化が図られたことにより,高価な二酸化塩素を減らし安価な過酸化水素を増やす漂白へとシフトさせ,漂白工程全体の最適化を追究できた。

    漂白APC導入後も,材配変更等による漂白性が変化した際は手動介入が必要であるが,モデル式の再構築により制御の安定性を向上できる。また,監視計器の健全性を保つことが重要であるため,校正頻度上げて管理している。

    また,さらなる漂白コスト改善のため,2016年5月にDO段とEP段において,pH調整用薬品と漂白薬品を同時添加していた工程を,pH調整後に漂白薬品を添加できるように改造を行ったため,再度バンプテストを実施し,制御の信頼性を向上させる予定である。

  • 吉岡 芳美, 林田 豪一, 久保田 由美, 鈴木 裕之, 境 健自
    2017 年 71 巻 6 号 p. 639-643
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    近年の良質古紙の輸出傾向,国内の紙の消費低迷により,古紙の品質が低下傾向にある。また,紙の低坪量化とコスト削減の一環としての高灰分化も進められている。このような抄造環境の変化に伴う歩留低下が課題となっており,対応できる新規な歩留向上剤を設計するために,既存ポリマーが有する分布に着目した。

    本報告ではポリマー分布制御技術”セレクション”の概念とその技術の適用により高性能な歩留向上剤が得られたことを報告する。既存ポリマーには分子量・分子構造・電荷などに一定の分布が存在している。この分布の中から,凝集対象物に対し,歩留効果に有効な成分を組み合わせ,紙質に悪影響を及ぼす成分を排除し,構成するセレクション技術を確立した。この技術の適用により,主な凝集作用である橋かけ反応性と電荷中和反応性を高いレベルで両立し,最適な凝集状態を作り出すことに成功した。開発品は繊維と填料の凝集性能に優れることから,繊維長や填料配合の異なる紙料に対し,高い歩留効果と紙質改善傾向を発揮した。これらの結果は開発品が近年の抄造環境の変化に対し,幅広く対応可能であることを示している。

  • ─IIoT(Industrial Internet of Things)による操業改善─
    遠藤 明
    2017 年 71 巻 6 号 p. 644-647
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    生産現場でも「IIoT」(Industrial Internet of Things)として技術革新が及びはじめている。これは,ビックデータから操業解析した結果を操業にフィードバックしていく仕組みであるが,生産工場が抱える技能継承課題に有効な手段と考える。そのため弊社では,IIoTを用いた最適操業支援ソリューションを積極的に提案していく。

    IIoTの整備で,操業実績から熟練操作員の操業方法を解析することが可能となる。より良い操業をするためには,操業グループ単位で生産指標を比べることで,どのグループに習うのが良いのかを解析結果の数値やチャートを参考に検討することもできるようになる。さらに解析が進み,生産量/品質と複数の操作量の関係を数式で表すことができれば,最適化システムで操業者に操作指示することができるようになる。これは,今後のプロセス状態を推定した上で,あるべき操作を支援することだ。

    パルプ製造の工程では下記の特徴を考慮する必要がある。

    ・各工程で遅れ時間が大きい。

    ・チップ材質にて傾向が変化する。

    ・生産品種で工程指標値(品質指標など)が変化する。

    ・操作量変化は極力小さめでゆっくり変化させていく。

    最適化システムの課題は,導入することより維持することが難しい。そのため弊社では,モデルチューニングをサービスで提供し,必要なデータ解析が担当者に依存され,属人化することがないように提案している。

    最適操業支援ソリューションは,操業改善のPDCAサイクルを早く回すことで,コスト削減効果の持続を狙いとしている。これによりコスト削減効果を維持できるのである。

  • 第3回 日本における広葉樹利用
    飯田 清昭
    2017 年 71 巻 6 号 p. 649-660
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    1950年代までのパルプ原料は針葉樹で,それが不足していた日本では広葉樹の利用がどうしても必要であった。

    その頃,最大の製紙国でありながら,良質の針葉樹の不足するアメリカが広葉樹の利用を研究し,SCP次いでCGPを開発した。針葉樹不足に悩む日本は即座にそれらを導入し,CGPを新聞用紙に30%配合するまでに発展させた。これには高馬力のリファイナーの開発(アメリカとスエーデン)が要であった。

    丁度その頃から日本経済が急成長しはじめ,そのエネルギーとして輸入石油次いで石炭が使用され,それまで薪炭材として使用されていた広葉樹がパルプ材に転用できたことが後押しした。

    その広葉樹に着目し,そのクラフトパルプを漂白して上質紙を製造することが試みられ,優れた品質の上質紙が得られること,上質紙の需要が急増しつつあったことから,日本の製紙会社は一斉にLBKPの上質紙を生産しだした。それを支えるように,二酸化塩素による漂白,連続蒸解釜の開発,サイズプレスによる導管トラブル対策等の技術開発が組み合わさり,LBKPの上質紙が日本発の世界標準となった。

    一方,日本では需要増を満たすだけの原木が確保できず,チップ専用船による輸入が始まる。この輸入チップは日本の製紙産業の構造を大きく替えるものであった。それについては次回で考察する。

  • 2017 年 71 巻 6 号 p. 661-668
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル 認証あり

    San Nopco Limited has been developing and manufacturing functional chemicals such as defoamers and dispersants, and wetting agents for various industries. In 1966, we were founded as a joint venture between Nopco Chemical Company of the United States and Sanyo Chemical Industries, Ltd. of Japan. Since then it has been supplying various kinds of products adopting superior technologies from Germany and United States to be a unique company of Specialty Chemicals Manufacturer.

    Starting with local manufacturing of “NOPCO ESI” a lubricant for paper coating in 1968, and introducing “NOPCO 8034” a defoamer for paint and emulsion in the next year, San Nopco has been building a brand name reputation in both the Pulp and Paper business field as well as Paint business field.

    San Nopco creates many kinds of additives; defoamers, dispersants, reology modifiers, lubricants, wetting agents and releasing agents through our rich experience and proven performance for not only domestic customers’ needs but also overseas one. And we also aim to develop new business fields and become an excellent company with continuing growth. San Nopco brand has a high degree of market penetration and is used overseas in China, Korea, South East Asia countries, India, and Australia.

シリーズ:大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (117)
総合報文
  • 森田 直己, 植木 弘之, 本杉 友佳里
    2017 年 71 巻 6 号 p. 673-678
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    [早期公開] 公開日: 2016/09/22
    ジャーナル フリー

    連帳ロール紙に高速で印字するインクジェット印刷装置はデジタル印刷,すなわちバリアブル,オンデマンドを実現する手段として成長を続けている。印刷物としては低コストの用紙とインクを用いた中程度品質のカラー画像出力であり,少部数かつ宛名もコンテンツも個別対応するという差別化を図ったダイレクトメール,トランザクション,トランスプロモーションなどである。

    これらの印刷物には現在,水性インクジェット技術の基本となる「浸透」に適した用紙とインクが使用されているが,印刷業者がオフセットコート紙を併用したいと考えるのは当然の要求である。ここでコート紙では浸透が微量で速度が遅いため,乾燥と定着が問題となる。そこでインジェットで従来使われてきた水分の保湿剤をインク成分から除去することで乾燥を可能とし,続いてインクに樹脂を含有させることで色材の紙面定着を可能とし,本黒インクを用いオフセット印刷したコート紙への追い刷りなどの業務の提供を開始した。一方,高濃度のカラー印字においては,紙面上に着地したドット間で混色と移動が発生するため,インク単体の改善では対応できず,そのため用紙へプレコート層を形成しインクを紙面上で凝集させるシステムが開発されてきている。

    2016年drupaにおいてインクジェットメーカー各社から解像度1200DPIの装置が出揃いシングルパス方式でありながら高画質化が進展し,上記浸透しにくい用紙への印字定着技術も向上した。今後,インクジェット技術は印刷産業用途において様々なチャレンジに応えることでさらなる成長が期待できる。

研究報文
  • Roni Maryana, Akiko Nakagawa-izumi, Hiroshi Ohi, Keiichi Nakamata
    2017 年 71 巻 6 号 p. 679-687
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    [早期公開] 公開日: 2016/12/30
    ジャーナル フリー

    Effects of residual-lignin structure—expressed as the syringaldehyde to vanillin (S/V)ratio—on the enzymatic saccharification rate was studied as a key step of bio-ethanol production. Alkaline sulfite-anthraquinone (AS-AQ) and soda-AQ cooking methods were applied to delignification of sugarcane bagasse (SB)and oil palm trunk (OPT), and the resulting pulp samples were subjected to enzymatic saccharification. The S/V ratios of residual lignin in the pulp were determined by the nitrobenzene oxidation method. This study showed that the AS-AQ method is more suitable for delignification of SB than the soda-AQ method is. SB pulp released more glucose than OPT pulp did under the same conditions of cooking and saccharification. A decrease in the kappa number (residual lignin content) significantly increased the saccharification rate. In a comparison of AS-AQ pulp samples at the same kappa number (20), the SB pulp with a lower S/V ratio (0.68) yielded a higher saccharification rate (0.0327), whereas the OPT pulp(S/V ratio:2.56)yielded a lower saccharification rate (0.0252). In a comparison of SB and OPT, we found that syringyl-rich lignin kept in pulp results in a lower saccharification rate of the pulp samples prepared by the AS-AQ cooking method.

  • ロニ マルヤナ, 大井 洋, 中川 明子, 中俣 恵一
    2017 年 71 巻 6 号 p. 688-695
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    バイオエタノール生産の重要な一段である酵素糖化について,シリングアルデヒドとバニリン(S/V)比で示される残留リグニン構造が糖化速度におよぼす影響を調べた。アルカリ性サルファイト・アントラキノン(ASAQ)またはソーダ・AQ蒸解でサトウキビバガス(SB)とアブラヤシ幹(OPT)の脱リグニンを行い,得られたパルプを酵素糖化処理した。ニトロベンゼン酸化法によってパルプの残留リグニンのS/V比を定量した。SBの脱リグニンについては,AS-AQ法はソーダ・AQ法よりも適していた。同一の蒸解および糖化の条件では,SBパルプはOPTパルプよりもグルコース遊離量が大きかった。カッパー価(残留リグニン量)の減少は明らかに糖化速度を向上させた。同一カッパー価(20)のAS-AQパルプの比較では,S/V比がより小さい(0.68)SBパルプで大きい糖化速度(0.0327)が認められ,OPTパルプのS/V比は2.56で糖化速度は0.0252であった。SBとOPTの比較から,AQ-AQ蒸解パルプの残留リグニンのシリンギル核が多いと糖化速度が遅くなることが見出された。

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