ヒト
Pseudomonas aeruginosa感染症の疫学的背景およびこの細菌による環境汚染の程度を知る目的で, 北九州市内を流れる紫川の
P.aeruginosaの分布状況を1978年に増菌法で2回, 1980年にメンブランフィルター法で6回調査した. それと共に紫川由来
P.aeruginosa 541株の血清群別とエラスターゼ産生能および481株の薬剤感受性を臨床分離株のそれと比較した.
増菌法では7月に上流水から85平板中41平板 (48.2%) に, 下流水から64平板 (75.3%), 9月には上流水から100平板中13平板 (13.0%) に, 下流水から69平板 (69.0%) に
P.aeruginosaの集落を形成し, 上流水よりも下流水から多くの
P.aeruginosaが得られた.メンブランフィルター法で測定した上流水と下流水の
P.aeruginosaの菌数はそれぞれ10
1と10
2であり, 上流水に比べて下流水の菌数は1桁高かった.
上流由来320株の血清群分布はE群 (57.8%), B群 (18.4%), C群 (6.6%) などであり, 下流由来221株ではG群 (30.3%) が最も多く1群 (20.8%), B群 (13.6%), E群 (8.6%), A群 (8.1%) の順で両者は一致せず, この点では下流由来株の血清群分布は, 既報の臨床由来株のそれに近似していた.
上流由来株のエラスターゼ産生率は99.4%, 下流由来株は95.9%と両者の数値の間に有意の差はなく, ともに高い産生率であった.
紫川由来
P.aeruginosa 481株はすべてGM, DKB, CLに対し感受性, ABPC, CEZ, CLDM, NAに対し耐性であった. CBPC, TCおよびMNCに対し上流由来株ではその93-99%が感受性であったが, 下流由来株では69~76%にとどまった.
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