感染症学雑誌
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57 巻, 1 号
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  • 松崎 静枝, 片山 淳, 川口 信行, 田中 一成, 林 洋子
    1983 年 57 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, Campylobacter jehmi/coliによる急性腸炎が注目されており, 下痢患者から高い割合で分離されることが報告されている. 健康なヒトの保菌率についても多くの研究者が報告しているが, その多くが供試数が非常に少なくしかも短期間, 限られた集団について実施したもので, 健康なヒトの保菌率を把握するには不充分と考え, 1980年7月から1982年5月にかけ, 山口県内の健康なヒトを対象に, Campylobacter jehmi/coliの保菌状況を調査した. すなわち, 健康なヒト836名を対象に, 各個人に対し1~9回 (原則として2ヵ月に1回) 延3,357名について検便を行った. 陽性者については可能な限り翌月も実施したため, 検査総数は3,385名であった.
    C. jejuni/coliの保菌状況は供試3,357名中41名陽性 (保菌率1.22%) で, 冬に高い保菌率 (2.19%) を示したが, その理由は不明であった. また, 性による保菌率の差は認められなかった.
    年齢別には, 10歳代の保菌率 (4.17%) が20~50歳代の保菌率 (0.64~1.50%) に比べ高かった. これはCampylobacter腸炎が若年層に多いことと関連があると思われる.
    陽性者からの排菌は1-2ヵ月で消失し, 同一人が継続観察期間を除いて2度陽性を示すことはなかった.
  • ELISA法によるIgG, IgMおよびIgA抗体の検出
    宮田 義人, 勝川 千尋, 田中 勇, 原田 七寛
    1983 年 57 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    百日咳患者多発時 (昭和50~55年) の患者, 健康小児, 新生児膀帯血における百日咳菌特異抗体の応答について菌体凝集反応 (BA), 酵素抗体法 (ELISA) による解析を試みた. 患者におけるBA抗体の応答は10病日付近から認められ, 21~25病日で最高値に達して, その後やや低下して3ヵ月後にもみらのれたが, 6ヵ月後には消失した. ワクチン歴のある小児では患者群と同等のBA抗体価を保持していたが, ワクチン未接種群では全く認められない. 新生児膀帯血でのBA抗体は, 移行抗体と思えるものが少数存在していた.
    BAの陽性値は1:40≦であり, ELISA法による陽性値はIgG抗体0.45≦, IgM抗体0.30≦, IgA抗体0.34≦ (いずれもA490で表示) であった. 患者血清におけるIgG, IgMおよびIgA抗体は病初期より応答がみられ, 21~25病日で最高値に達した. IgG抗体の陽性率は15病日までは50-56%であり, 21-25病日で86%に達し, 以後抗体価は漸次低下するが6ヵ月まで陽性値がみられた. IgM抗体の陽性率は15病日まで65%とIgG抗体の場合より高く, 以後は80%以上を保ち31~60病日で急激に低下して66%になり, 3ヵ月後まで陽性値が認められた. IgA抗体はつねに低い陽性率で終始した. ワクチン未接種および膀帯血ではIgG抗体のみが20-23%陽性であるのに対し, ワクチン歴をもつ小児群ではIgG, IgMおよびIgA抗体のいずれもが高い陽性率 (91~100%) であった. ELISA法でIgG, IgM, IgA抗体のいずれか一種以上の検出をもって陽性と判定した場合の患者診断率は75-100%であり, BAによる診断率を凌駕していた.
  • 坂口 武洋, 坂口 早苗, 中村 磐男, 鏡 光長, 岡本 正孝, 安斎 博
    1983 年 57 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    32P標識病原性赤痢菌 (32P -Shigella flexneri 2b 17-A) と32P標識非病原性赤痢菌 (32P-Skigella flexneri2b 17-N) を用いて, 感染初期の菌の侵入状態および同種間の感染拮抗現象の発現時期について検討した.
    標識病原性菌をHeLa細胞に接触させると, 30分後から細胞に取り込まれる放射能は上昇し, 以後経時的な増加が認められた. これに対して, 標識非病原性菌では, 培養時間にかかわらず, 終始0分のときの計数率と同じであった. 標識病原性菌と標識非病原性菌または無標識非病原性菌を混在接触させた場合には, 60分後まで計数率の著明な上昇はみられず, 120分後でも標識病原性菌を単独に接触した時の放射能の約半分であった. しかし, この拮抗現象ではアルコールで処理した非病原性の死菌では観察されなかった.
    モルモットの腹腔Adherent細胞 (マクロファージ: MP) に標識赤痢菌を接触させると, 病原性・非病原性にかかわらず, すみやかに細胞の計数率は上昇し, 接触30分以内に頂点に達し, 以後著しい変動はみられなかった. 一方, 光学顕微鏡下で観察すると30分以後も貪食率の増加を示したが, これは主にMP内で菌が増殖したためと思われる. これらの標識病原性菌および非病原性菌を混在させても, MPの計数率は単独に接触させた場合と同様であった.
    以上, 標識赤痢菌の放射能を測定することにより, Skigella flexneri 2b 17-AのHeLa細胞感染をShigella flemeri 2b 17-Nが, 感染初期に抑制することを確認した.
  • 奥田 敬一
    1983 年 57 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒトPseudomonas aeruginosa感染症の疫学的背景およびこの細菌による環境汚染の程度を知る目的で, 北九州市内を流れる紫川のP.aeruginosaの分布状況を1978年に増菌法で2回, 1980年にメンブランフィルター法で6回調査した. それと共に紫川由来P.aeruginosa 541株の血清群別とエラスターゼ産生能および481株の薬剤感受性を臨床分離株のそれと比較した.
    増菌法では7月に上流水から85平板中41平板 (48.2%) に, 下流水から64平板 (75.3%), 9月には上流水から100平板中13平板 (13.0%) に, 下流水から69平板 (69.0%) にP.aeruginosaの集落を形成し, 上流水よりも下流水から多くのP.aeruginosaが得られた.メンブランフィルター法で測定した上流水と下流水のP.aeruginosaの菌数はそれぞれ101と102であり, 上流水に比べて下流水の菌数は1桁高かった.
    上流由来320株の血清群分布はE群 (57.8%), B群 (18.4%), C群 (6.6%) などであり, 下流由来221株ではG群 (30.3%) が最も多く1群 (20.8%), B群 (13.6%), E群 (8.6%), A群 (8.1%) の順で両者は一致せず, この点では下流由来株の血清群分布は, 既報の臨床由来株のそれに近似していた.
    上流由来株のエラスターゼ産生率は99.4%, 下流由来株は95.9%と両者の数値の間に有意の差はなく, ともに高い産生率であった.
    紫川由来P.aeruginosa 481株はすべてGM, DKB, CLに対し感受性, ABPC, CEZ, CLDM, NAに対し耐性であった. CBPC, TCおよびMNCに対し上流由来株ではその93-99%が感受性であったが, 下流由来株では69~76%にとどまった.
  • 神谷 和人, 杉原 久義
    1983 年 57 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    精製SPA免疫マウス腹腔より得たマクロファージ (含リンパ球) は精製SPAあるいは死菌体の添加により遊走が阻止されたが, 非免疫マウスのそれは阻止されなかった. 精製SPA免疫マウスより得た腹腔細胞, 脾臓リンパ球あるいは胸腺を正常マウスに移入し, 100LD50S. enteritidisで攻撃してもほとんど生存する (30日観察) が, 非免疫マウスよりのそれらを移入されたマウスは攻撃によりすべて死亡する.
    非免疫マウス脾臓リンパ球を正常マウスに移入し, 1日後に100LD50の菌量で攻撃すると, 3日後には血中で106/ml, 肝, 脾臓中では108/9の菌数に達しすべて死亡する. しかし免疫マウスの脾臓移入群の菌数はその域には達せず, しだいに減少し, ついには検出されなくなった.
    正常マウスをカラゲナン200mg/kgの割合で処理し, このマウスに免疫一マウス脾臓リンパ球を受身移入しても, 100LD50の菌量の攻撃を防御できず, マウスはすべて死亡した.
    免疫マウスの腹腔マクロファージはS. enteritidisに対する殺菌能が充進していた.
  • 猪狩 淳, 小栗 豊子, 小酒井 望
    1983 年 57 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1978年と1979年の2年間に, 11例のPseudomonas cepaciaによる菌血症を経験した. この11例について, 臨床細菌学的に検討した.
    11例全例に病院入院中に本菌による菌血症が発症し, その発症の患者側の要因として, 慢性消耗性疾患や大きな外科手術後が基礎疾患であり, さらに, 静脈内留置カテーテル, 多種類の広域スペクトルをもつ抗菌薬の投与などの治療上の操作が考えられた.
    患者由来のP. cepaciaはミノサイクリン, ゲンタマイシンには感性であり, アンピシリン, セファロリジン, テトラサイクリン, エリスロマイシン, コリスチンには耐性であった.
    P.capaciaは, 以前は病原性がないと考えられていたが, 今回の私共の検討結果はヒトに対して, 特にcompromised hostに対し, 病原性を示す細菌であることを示しているといえよう.
  • 山地 幸雄, 清水 康弘, 武内 安恵, 薩田 清明, 高橋 修和, 吉川 泉, 長田 正憲, パナスアンポール カンポール, ウイタヤセイ ...
    1983 年 57 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1979年8月から1981年8月までにタイ国およびマニラの患者から分離された136株のインフルエンザウイルスの抗原分析を, 感染フェレット血清を用いるHI試験により行なった. 1980年の雨季のタイおよびマニラでは, 主にH3N2が流行し, 1981年のタイでは, 主にHIN1が流行した. A/USSR/92/77およびA/Brazil/11/78様ウイルスは, タイでは日本より長期間存続した. N3N2の新しい変異ウイルス, A/京都/C-1/81様ウイルスは, 日本より6ケ月先立って, 1980年8月にバンコックではじめて分離され, 1981年1月および8月に再びバンコックで分離された. B型は, 1980年以降にタイ国およびマニラで分離され, それらは同じ時期の日本分離株と同様であり, 新しい変異ウイルス, B/志賀/75/81様ウイルスは, タイ国では日本より約6ケ月おくれて分離された.
  • 中村 明
    1983 年 57 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    H. influenzae typeb (H. infl. type b) およびS. pneumoniae髄膜炎例で体液中萸膜抗原の検出をStaphylococcal Coagglutination法 (COA) で試み, Counter Immunoelectrophoresis (CIE) の結果と比較検討した.
    COAのH. infl. tube b莢膜抗原 (PRP) 検出限界は16ng/mlであり, 市販抗血清によるCIEの結果 (125ng/ml) と比較して良好な感度を示していた.
    H. infl. tybe b髄膜炎例での検出成績は, 髄液ではCOA陽性19/23 (83%), CIE陽性19/23 (83%) であり, 濃縮検体を含む尿ではCOA陽性12/14 (86%), CIE陽性6/14 (43%) であった. このうち原尿ではCOA陽性4/6 (67%), CIE陽性3/6 (58%) で, 特に尿を検体とした場合にCOAの優位性を認めた. 髄液・尿での全体の診断率はCOA23/23 (100%), CIE20/23 (87%) であった.
    適合抗生剤による治療開始後の培養陰性化検体でも髄液で7日間, 5倍濃縮尿で15日間のCOA陽性期間を認めており, 先行抗生剤投与による培養陰性髄膜炎例での原因菌診断の可能性を示している.
    S. pneumoniae髄膜炎例では髄液でCOA5/8 (63%), CIE7/8 (88%) の検出率を示した. しかしこのうちのtype 14によるCIE陰性例ではCOAは陽性を呈した.
    以上より, COAがベッドサイドでの髄膜炎原因菌迅速診断に有用であり, 従って適合抗生剤の早期選択に役立つものと考える.
  • アスピリンとの比較
    藤森 一平, 河野 通律, 関田 恒二郎, 竹田 義彦, 荻原 宏治, 中川 浩, 伊藤 周治, 山崎 昭吉, 榎本 新市, 島田 佐仲, ...
    1983 年 57 巻 1 号 p. 62-81
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しい非ステロイド性抗炎症剤スプロフェン (suprofen) の急性上気道炎に対する効果および安全性を, アスピリンを対照薬として多施設二重盲検法により比較検討した. 1日投与量をスプロフェンは300mg, アスピリンは1.5gとし, 投与期間は4日間とした.
    その結果, 最終全般改善度 (中等度改善以上でスプロフェン群71.6%, アスピリン群61.9%) および全般有用度において, スプロフェン投与群がアスピリン投与群に比べ有意 (p<0.05) に勝っていた. 副作用は, スプロフェン投与群に3例 (2.9%), アスピリン投与群に7例 (6.8%) 発現したが, その発現頻度に有意差は認められず, また概括安全度にも有意差は認められなかった.
    以上の結果より, スプロフェンは急性上気道炎に対してアスピリンと比べ, 少なくとも同等か, より以上の有効性と安全性を示す有用な薬剤であると考えられる.
  • 斉藤 篤, 嶋田 甚五郎, 大森 雅久, 柴 孝也, 山路 武久, 井原 福宜, 北条 敏夫, 加地 正伸, 三枝 幹夫, 宮原 正, 上田 ...
    1983 年 57 巻 1 号 p. 82-112
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症に対するNetilmicinの有効性および安全性を評価検討する目的で, Sisomicinを対照とした二重盲検比較試験を実施した. Netilmicinは1回100mgを, Sisomicinは1回75mgを1日2回, 7日ないし14日間筋肉内に注射した. 1. 検討症例: 投与総症例は226例で, このうち小委員会は189例 (小委員会判定例) を, コントローラーは217例 (主治医判定例) を臨床効果判定の解析に採用した. 2. 臨床効果: 小委員会判定例の肺炎, 主治医判定例の肺炎, 肺化膿症および慢性呼吸器感染症では両群問に有意差は認められなかったが, 小委員会判定例の慢性呼吸器感染症では, Sisomicin群が有意 (p<0.05) に優れた成績であった.しかし, 呼吸器感染症全症例では小委員会判定例, 主治医判定例とも両群間に有意差は認められなかった.3.症状,徴候の改善度:いずれの項目においても両群間に有意差は認められなかった. 4. 細菌学的効果二菌種別および単独, 混合感染別にも両群間に有意差は認められなかった. 5. 副作用, 臨床検査値異常: 副作用は両群ともに3例ずつみられたが, その種類は他のアミノ配糖体系抗生剤にもみられるものであった. 臨床検査値異常については, 小委員会判定で好酸球増多例がNetilmicin群に有意 (p<0.1) に多く認められたが, 他の検査項目および主治医判定の全検査項目において両群間に有意差は認められなかった. 6. 有用性二呼吸器感染症全症例および疾患群別のいずれにも両群間に有意差は認められなかった.
  • 1983 年 57 巻 1 号 p. 127-129
    発行日: 1983/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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