感染症学雑誌
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60 巻, 4 号
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  • 海老沢 功, 高柳 満喜子, 倉田 真理子, 城川 美佳
    1986 年 60 巻 4 号 p. 277-282
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1) 破傷風菌は川や池の湿った岸辺, 田や畑, 民家の庭から容易に分離される.種々の場所から集めた土100検体のうち破傷風菌が37株分離され, さらに14検体から破傷風毒素が証明された.その内乾燥した土1mgから10株の破傷風菌が分離された.0.1mgの土から破傷風毒素が証明されたものもある.ここで外傷を受けた患者は外科的処置を受けた後に破傷風にかかった.
    2) 破傷風菌は同一場所に何時も同一量の菌数を保っているものではない.また地表の方が地下深い所よりも破傷風菌は多い.
    3) 破傷風患者が発生した家の庭で, その患者が受傷後2年7ヵ月たってから, 50cmおきに採取した土10検体からは全て破傷風菌が分離された.
  • 多羅尾 和郎, 池田 俊夫, 林 和弘, 桜井 彰, 土屋 豊一, 伊東 達郎, 岡田 哲郎
    1986 年 60 巻 4 号 p. 283-292
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    現今の肝硬変症における肝性脳症の治療法は, 食事中の蛋白質の制限とlactulose投与が通常であるが, これらのみでは抑えられない難治性の脳症があり, それらにはFischer液の様な特殊アミノ酸制剤の投与が勧められているが, これらを外来患者に長期に投与することは社会的に困難である.一方, われわれは最近, 嫌気性グラム陰性桿菌は抑えるが, 好気性グラム陰性桿菌は抑えない非吸収性抗生剤のVancomycin hydrochloride (以下VCM) が肝硬変の肝性脳症に著効を奏する事を証明した.そこで今回われわれは, lactuloseの無効な肝硬変症の難治性脳症5例, およびlactulose投与により激しい下痢を来たし使用不能となった1例の計6例にVCM 2000mg/dayを投与し, その前後における臨床症状, 脳波所見, 血中アンモニア値および糞便内細菌叢の変動を検索した.その結果, vancomycin投与後, 全例で脳症の消失, 血中アンモニア値の下降をきたした.糞便の細菌叢の変動では, Bacteroidesを主とした嫌気性グラム陰性桿菌は, lactulose投与時には糞便1g当たり108~9個であったが, VCM投与後には103~6個に激減した.一方, 好気性グラム陰性桿菌数には両剤投与間に変化は無く106~9個であった.Lactulose無効の肝硬変の肝性脳症にVCMは有効であり, それはVCM投与によってBacteroidesを主とする嫌気性グラム陰性桿菌が激減することによると推定された.
  • 福本 晃, 桐島 輝子, 堀 明彦, 名取 弘道, 川井 一男
    1986 年 60 巻 4 号 p. 293-298
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1980年4月から1984年12月までの4年8ヵ月の間に当院に来院した散発下痢患者2,213例の糞便から612例 (27.7%) の腸管系病原菌が検出された.その内Campylobacter fetusは12例 (0.5%) であった.ちなみにC.jejuniは418例 (18.9%), C.coliは3例 (0.1%) 検出された.総病原菌に占める比率はC.fetus2%, C.jejuni68.3%, C.coli0.5%であった.
    C.fetus12例の内10例は臨床的には腸炎のみであったが, 2例は重篤な全身感染症を呈した.1例では下痢のほか悪寒高熱など伴う菌血症があり, 血液および糞便の双方からC.fetusを検出した.他の1例は胎内感染により出生時, 既に重篤な髄膜炎と胃腸炎を起こしていた母児垂直感染例で, 新生児の粘血便からも母親の分娩前後の糞便からもC.fetusを検出した.
    下痢患者の糞便ではC.jejuniのみならずC.fetusに関しても考慮すべきであると痛感している.
  • 深見 トシエ
    1986 年 60 巻 4 号 p. 299-303
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    下痢の主要な原因菌とされているCampylobacter jejuniの生物型別体系については現在までにいくつかの提案がなされている.それらのうちSkirrow & Benjamin (1980) 1) の型別体系は馬尿酸塩加水分解能と硫化水素産生能を基本とし, H6berら (1982) 2) は, 馬尿酸塩加水分解能, DNA加水分解能およびCharcol-yeast extract寒天での発育の有無を基本とした生物型別体系である.
    近年, Lior (1984) 3) は, 馬尿酸塩加水分解能, 迅速硫化水素産生能およびDNA加水分解能によって, C.jejuni, C.coli, C.laridisの新しい生物型別体系の提案をおこなった.
    そこで下痢患者から検出された307株のC.jejuniを供試し, Liorの方法による生物型分類を試み次の成績を得た.生物型1.178株 (58.0%), 生物型II.122株 (39.7%), 生物型III.3株 (1.0%), 生物型IV.4株 (1.3%) であり, 生物型1が最も多く検出され, 次に生物型IIであったが, 硫化水素産生性の生物型III, IVは極めて少なかった.
    この生物型別法は比較的容易に実施することができるため, Campylobacter感染症の疫学に有用と考えられた.
  • Escheriohia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaによるマウス全身感染について
    辻 明良, 宮崎 修一, 石井 哲夫, 五島 瑳智子
    1986 年 60 巻 4 号 p. 304-310
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    E.coliK.pneumoniaeおよびE.coliP.aeruginosaとの混合感染 (実験的敗血症) が, 単独感染に比べ菌力が増強することを実証し, その原因を感染菌のもつSOD (superoxi dedismutase) 活性および好中球貧食殺菌能をしらべることにより解析した.
    SOD活性がともに高いE.coliとK.pneumoniaeおよびE.coliP.aeruginosaの混合感染では, SOD活性がともに低い菌株での混合感染より, 死亡率が高く, 菌力の増強が認められた.このことは2種の菌を混合接種した好中球のin vitro貧食殺菌においても, SOD活性の高い菌株では殺菌率が低く, 単独接種の成績よりさらに低下することからも裏付けられた.
    E.coliK.pneumoniaeの混合感染で, SOD活性の高い株と低い株を混合すると低い株相互の混合よりも菌力は増強した.この組合せでは好中球の貧食殺菌がSOD活性の高い株に影響され, 本来SOD活性が低く食菌され易い株も殺菌率が低下することが実証され, 菌力の増強と明らかな相関を認めた.
    以上, 前記の菌種による実験的混合感染では, 単独感染に比べて菌力が増強され易いこと, およびその変動原因が菌のSOD活性に大きく依存することを明らかにした.
  • 荒島 功, 土屋 達行, 熊坂 一成, 河野 均也, 土屋 俊夫, 賀屋 秀男, 佐野 和三, 奥山 清子, 矢越 美智子, 村杉 栄治
    1986 年 60 巻 4 号 p. 311-314
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近経験したイヌの咬傷例1例, ネコの咬傷・掻傷3例計4例の創傷感染の起炎菌と思われる分離菌について生化学的性状, 化学療法剤に対する感受性等について調査した.その結果, 血液寒天培地に発育し, MacConkey寒天培地, BTB寒天培地に発育を認めず, オキシダーゼ, カタラーゼ, インドール, グルコース陽性, ヒツジ血液寒天平板上の溶血性, 運動性は陰性, ペニシリンに感受性であり, Pasteurella multocidaと同定された.これらは, いずれもアミノベンジルペニシリン, セブメタゾン, ゲンタマイシンなど多くの化学療法剤に高い感受性を示した.
    また, イヌ38頭, ネコ21頭におけるPasteurella multocidaの口腔内保有率について口腔内スワブの培養検査の結果はイヌ21.1%, ネコ71.4%の口腔内保有率であった.
    動物の咬傷, 掻傷例においては微生物検査を実施せずに治療が行われている場合が多いことを考慮すると潜在的にはかなりのPasteurella multocida感染症例が存在すると考えられる.今後ペットの増加に伴い, 咬傷, 掻傷によるPasteurella multocida感染症の増加する可能性が推測され, 欧米よりの報告ではPasteurella multocidaによる敗血症など重症感染症の報告もあり, 注意すべきと考えられた.
  • 後藤 延一, 堀内 三吉, 岡村 登, 稲垣 好雄, 小沢 加代子, 望月 明彦, 中谷 林太郎
    1986 年 60 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腸炎患者から分離された赤痢菌100株, 病原大腸菌25株, サルモネラ25株, カンピロバクター25株, ビブリオ25株 (腸炎ビブリオ10株, コレラ菌10株, その他5株) に対するNorfloxacin (NFLX) の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, NA, PPA, ENX, OFLX, CPFX, FOM, KM等と比較した.90%の菌株の発育を抑制するNFLXのMIC (MIC90) は, 赤痢菌, サルモネラに対しては0.10μg/ml, 病原大腸菌に対しては0.39μg/ml, 腸炎ビブリオとその他のビブリオに対しては0.20μg/ml, コレラ菌に対しては0.05μg/ml, カンピロバクターに対しては1.56μg/mlであった.これらの値を他のピリドンカルボン酸系の薬剤のMIC90と比較すると, NA, PPAのおおむね1/10以下, ENX, OFLXと同等ないしそれらよりやや低く, CPFXよりはやや高い傾向にあった.また, 3株のNA耐性赤痢菌は, いずれもNFLXに感受性であった.FOM, KMのMIC90は, 他のいずれの薬剤より高かった.
  • 森本 靖彦, 中村 秀次, 林 英二朗, 山本 英夫, 岸本 進, 山之内 孝尚, 山西 弘一, 高橋 理明, 川俣 順一
    1986 年 60 巻 4 号 p. 322-335
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年11月大阪大学医学部内で発症した腎症候性出血熱 (流行性出血熱, 以下HFRSと略す) の1例は, 31歳男子の内科医師であった.本例は発症2週間前に某教室の特殊ラット舎に約10分間立ち寄ったが, 直接ラットやその排泄物などには触れなかった.本例では発病第1日より臨床検査が実施され, 1ヵ月後の退院時まで症候, 臨床検査値の推移と共に抗HFRSウイルス抗体価の変動が追跡された.
    本例はわが国のHFRSには稀な比較的重症例で, 入院直後から播種性血管内凝固症候群 (DIC) の所見を示したため, 即時ヘパリンが投与された.著明な血清酵素値の上昇, 黄疸の発現が認められ, 尿蛋白が軽微であったにもかかわらず著しい腎機能障害を示し, 心拡大, 心筋障害, 心嚢液貯溜の所見もみられた.血液像, 電解質, 酵素値の変動のほか, 尿中β2-microglobulin及びN-acetyl-β-Dglucosaminidase, 血清酵素のアイソザイムなども検討され, HFRSの臨床診断に有用な多くの資料を得ることができた.
    抗ウイルス抗体価はHantaan76-118株及びB-1株について, 間接蛍光抗体法と血球凝集抑制反応とによって測定されたが, 抗B-1抗体価の上昇がより顕著であった.両方法による抗体価の変動はよく並行したが, 前者の方が鋭敏であり, 第3病日には1: 128に上昇し, 早期診断に適していることが知られた.なお, 抗体価の最高値は発病2週間以後に得られ, 1: 32, 000~64,000に達した.
  • 第1報基礎的検討
    鈴木 宏, 中村 明, 田口 英昭, 西村 和子, 宮治 誠
    1986 年 60 巻 4 号 p. 336-344
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, 増加傾向を示しているsystemic candidiasisの免疫学的血中抗原検出法として, 従来のELISA法より高感度のavidin-biotin系を用いたELISA法を開発し, マウスの感染実験を含めた基礎的検討を行なった.
    検出感度は, 精製マンナン抗原を正常人血清に加えて測定した場合, 1.2ng/mlで, bufferでは0.25ng/mlであった.抗体の特異性に関しては検討した主要敗血症原因菌11種とCryptococcus neoformans, Aspergillus fumigatusには交叉を認めなかった.しかし, Candida属中, C.tropicalis, C.guilliermondii, C.stellatoideaの3種には強い交差抗原性を示した.また, ELISA inhibition assayで精製マンナン抗原と抗体とが特異的に反応することを確認した.
    マウスの感染実験では, 血液培養は1例を除き陰性であったが, 26例中14例で抗原が検出された.Candidaの静注後早期で, 主病変が膿瘍のマウスでは, 高率に抗原が検出され, 膿瘍面積と血中抗原濃度には, 明らかな相関関係が認められた.一方, 病巣が広範囲におよんでも, 肉芽腫性病変を示すマウスでは, false negativeとなりやすく, 臨床応用する場合, 検体の採取時期が重要なポイントになると考えられた.
    以上よりavidin-biotin系を用いたELISA法は手技も比較的簡便で, 検出感度も優れており又, Calbicansについで重要なC.tropicalisとも強い交差反応を示すことよりsystemic candidiasisの早期診断法として, 臨床応用可能と思われる.
  • 副島 林造, 松島 敏春, 川根 博司, 二木 芳人, 川西 正泰, 中浜 力, 日野 二郎, 斎藤 玲, 中山 一朗, 富沢 磨須美, 武 ...
    1986 年 60 巻 4 号 p. 345-377
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    MK-0787/MK-0791の呼吸器感染症に対する臨床効果と, 安全性を客観的に評価する目的でpiperacillin (PIPC) を対照薬とし, 1日量をMK-0787/MK-0791は1g/1g, PIPCは4gにて14日間点滴静注を原則とするwell controlled studyを行い, 以下の結果を得た.
    1. 全投与症例は367例 (MKO787/MK-0791群183例, PIPC群184例) であったが, 小委員会による臨床効果判定対象例は301例 (MK.0787/MK-0791群155例, PIPC群146例) であった.
    2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではMK-0787/MK-0791群80.0%, PIPC群71.7%の有効率であり, 両薬剤間に有意差は認められなかった.一方, 主治医による効果判定では, MK-0787/MK-0791群82.0%, PIPC群72.0%の有効率を示し, 両薬剤間に有意差が認められた.3.小委員会判定による肺炎・肺化膿症群に対する臨床効果では, MK-0787/MK-0791群76.3%, PIPC群80.6%で両薬剤間に有意差は認められなかったが, 慢性呼吸器感染症群ではMK-0787/MKO791群83.5%, PIPC群63.0%の有効率で, MK-0787/MK-0791群が有意に優れていた.主治医判定でも同様の結果が認められた.
    4. 起炎菌別臨床効果および細菌学的効果は, 全症例では両薬剤問に有意差は認められなかったが, P.aedugimsa単独感染例では, MK-0787/MK-0791群が有意に優れていた.
    5. 副作用, 臨床検査値異常の発現率では両薬剤間に有意差は認められなかった.6. 小委員会判定による有用性は, 全症例および慢性呼吸器感染症群で, MK-0787/MK-0791群が有意に優れていた.また, 慢性呼吸器感染症群は, 主治医判定においても有意差が認められた.
    以上より, MK-0787/MK-0791は呼吸器感染症の治療に有用な薬剤であることが示された.
  • 尿路性器感染症における検討
    加藤 直樹, 坂 義人, 西浦 常雄, 熊本 悦明, 橋爪 壮, 小島 弘敬, 斉藤 功, 長田 尚夫, 野口 昌良, 中野 博
    1986 年 60 巻 4 号 p. 378-386
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chlamydia trachomatisによる尿路性器感染症の診断試薬としてのChlamydiazyme (米国Abbott社) の有用性を, 臨床検体を用いて検討した.本法はChlamydia属に特異的な抗体を用いる抗原検出酵素免疫法 (EIA) で, 測定には約4.5時間を要する.本法によるNet吸光度0.100以上をC.trachomatis陽性と判定し, これらの成績を細胞培養法の成績と比較検討した.
    未治療症例486例における培養法との陽性一致率 (sensitivity) は96.4%(132/137), 陰性一致率 (specificity) は92.3%(322/349) で, ともに高い値であった.このうち, 男性323例の陽性一致率は99.0%(102/103), 陰性一致率は91.4%(201/220) であった.一方, 女性症例163例の陰性一致率は93.8%(121/129) であったが, 陽性一致率は88%(30/34) で, 男性症例と比べやや低値であった.吸光度分布は陽性例の50.9%がNet吸光度2.00以上と高い値であった.治療前に培養とChlamydiazymeが共に陽性症例の抗菌薬投与中の成績は, 陽性一致率は98%(39/40) であったが陰性一致率が73%(16/22) と低値で, 治療中は培養陰性となっても抗原性は残りChlamydiazyme陽性となる傾向が認められた.保存日数は4℃ で1ヵ月以内であれば成績に影響はなかった.Chlamydiazymeは培養法との一致率が高く, かつ迅速, 簡便な診断法であり, 尿路性器におけるC.trachomatis感染症の診断に極めて有用と思われた.
  • 林 俊治, 市川 洋一郎, 加地 正郎, 安田 佳織, 横山 三男
    1986 年 60 巻 4 号 p. 387-389
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    M. pn.肺炎患者について, モノクロナール抗体を用いて末梢血のリンパ球サブセット分析を行った.正常対照群に比較してM. pn.肺炎患者ではOKT4+の減少, OKT8+の増加, OKT4/8比の低下がみられた.したがって急性期のM. pn.肺炎の末梢血では相対的にsupPressorT細胞優位の状態と考えられた.
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