感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
71 巻, 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 真崎 宏則, 出川 聡, 赤堀 英明, 池田 秀樹, 坂本 翅, 貝田 繁雄, 松本 慶蔵, 渡辺 貴和雄, 麻生 憲史, 田尾 操, 力富 ...
    1997 年 71 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    当院内科老人病棟においてMRSAが各種感染症の起炎菌として増加したため, 1991年10月より気道, 褥瘡および環境に重点を置いた本格的院内感染防止対策を開始し現在も継続している.対策の継続により菌血症および院内肺炎が明らかに減少したが, 老人病棟におけるMRSA保菌 (定着) 者の院内発生は依然として月に数名みられ, 上記以外でMRSAが定着しやすい部位として保菌者皮膚を検討しMRSAの検出頻度と保菌者皮膚での付着の意義を明らかにする必要性を感じた.
    今回対策継続中の1994年4月から1995年10月までの1年7カ月間にMRSA保菌者において鼻腔, 咽頭培養に加えて, 保菌者群28名の皮膚細菌叢を頭髪部, 右前腕部, 右鼠径部の3カ所について同一日, 同一時間帯に合計86カ所調査したところ, MRSAは28名中3名, 合計3カ所 (3/86: 3.4%) から検出された.
    今回の検討から対策継続中の老人病棟において, 入院中のMRSA保菌者群患者の皮膚を介したMRSAの院内汚染, 院内伝播の可能性は低いものと推察された.
  • 宮島 一郎, 佐田 通夫, 村島 史朗, 鈴木 宏, 近藤 重信, 伊藤 雄二, 川野 祐幸, 谷川 久一
    1997 年 71 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    福岡県はC型肝炎ウイルス (HCV) 抗体の陽性率が, 他の地域に比べて高く, 従って, 久留米大学病院では, C型の慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌の患者を治療する機会も多い.そこで我々は, HCV高度感染地区の医療従事者は, HCVに対する感染の頻度が高いか否かを明らかにするために, 久留米大学病院職員1638人を対象にHCV抗体の測定を行った.HCV抗体の陽性率は, 2.8%(46人), HBs抗原の陽性率は, 1.1%(18人) であった.HCV抗体の陽性率は, 福岡県における一般住民の陽性率と差がなかった.医療職種別, 性別でみたHCV抗体の陽性率にも差を認めなかった.一方, HCV抗体の陽性率は, 勤務年数が上昇するにつれて有意に上昇したが, この上昇は, 医療に従事していることが関連しているのではなく, 加齢の関与が考えられた.以上の結果から, HCV高度感染地区の医療従事者がHCVに必ずしも高率に感染しているわけではないことが明らかになった.
  • 木戸内 清, 柏俣 未尚子, 中村 千衣, 加藤 敏行, 水野 芳樹, 渡辺 晋
    1997 年 71 巻 2 号 p. 108-115
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    医療従事者の職務感染が問題になっているが, 事故の実態さえ明らかではない.1989-94年度の名古屋市立5病院での針刺し・切創事故の実態と東市民病院で取り組まれてきた事故対策について検討し, 事故の発生予防について考察した.5病院の6年間の事故報告総件数は257件であり, 年々増加していた.東市民病院では対策開始後の1年間の報告件数は対策開始前の年間報告件数の約2倍になり, 2年目の1994年度には約3倍になった.4病院 (1991-1994年度) 及び東市民病院での対策開始後1年 (1992-1993年度) までは, HCV汚染血による事故 (HCV針刺し事故) は年毎に増加し, 事故報告総数の70-80%を占めていた.しかし東市民病院での対策2年目 (1994年度) には, HCV針刺し事故は1993年度の22件 (48%) から15件 (25%) に減少した.対策開始後はEPINet日本版の採用により, 事故の原因器材や事故状況もより具体的に把握できた.事故報告制度を確立し, 事故内容を解析することが予防対策の基本であり, EPINet日本版の有用性を確認した.
  • マイクロプレート凝集反応法
    藪内 英子, 斉藤 厚, 二木 芳人, 田口 善夫, 山口 恵三, 河野 茂, 本田 武司
    1997 年 71 巻 2 号 p. 116-124
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    一般臨床検査室での実用を促進しレジオネラ症確定診断を容易にする目的で, Legionalla pneumo-phila血清群 (SG) 1とその亜群a, b, SG2-6, L. bozemanii, L. durnoffii, L. gormanii, およびL.micdadeiの5菌種, 6血清群, 2亜群の計11菌株の無着色加熱死菌抗原液 (デンカ生研) を用い, マイクロプレート凝集反応 (microplate agglutination test, MPAT) 法によって健康者98人, 通常の勤務をしている代謝異常者または腎機能障害者22人, 確定診断されたマイコプラズマ肺炎患者17例とChlamydia pneumoniae 肺炎患者9例, それ以外の細菌性肺炎患者32例の計178血清検体の抗体価を測定した.その結果から, これら5菌種6血清群2亜群に対する抗体価はいずれも対血清で4倍上昇して≧1: 128, 単一血清では≧1: 256をレジオネラ症診断のための陽性基準値とした.MycoplasmaとChlamydia pneumoniaeを含めた細菌性肺炎では. L. pneumophila SG 1bに対する抗体価が高い傾向があったが, 鑑別診断のための充実した検査を併用すれぼ, MPAT法はこの陽性基準値に則してレジオネラ症を確定診断するのに有用であることを明かにした. 生前気管内分泌物及び剖検肺の培養で夫々五. pneumophila SG3とSG6が検出され, 経日的に採取してあった血清でMPAT法による当該血清群に対する抗体価の有意上昇を証明した2症例の文献を引用・考察した.
  • 塚本 定三
    1997 年 71 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    大腸菌のK1抗原を調べるために, K1抗原に関係している遺伝子群のなかから特異性の高いneuSの領域についてPCR法を用いて検出する方法を考案した. そこで, 新生児髄膜炎, 敗血症, 尿路感染症などの非腸管系感染症から分離され, 同定依頼された大腸菌を対象としてO: H血清型別を実施し, K1抗原との関係を検討した. 検出頻度の高い血清型は髄液由来ではO7: H-, O16: H6, O18ac: H7, 血液由来はO16: H6であり, 尿由来はO1: H7, O16: H6, O18ac: H7, O75: H-の4血清型が占めていた. 由来が異なるにもかかわらず, 同じ血清型が高頻度で検出される傾向にあるこがわかった. これらの菌株のK1抗原を調べた結果, O1: H7, O7: H-, O16: H6, O18ac: H7の血清型あるはH6抗原, H7抗原を持つ株のほとんどすべてはK1抗原保有株であった.
  • 伊藤 輝代, 秋野 恵美, 平松 啓一
    1997 年 71 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腸管出血性大腸菌O157感染症患者に投与する最も適切な抗菌剤を検討するため, MIC及び抗菌剤存在下でのベロ毒素の放出を測定した. 供試薬剤として経口剤ABPC, CCL, CFDN, FOM, NFLX, NA, KM, MINO, DOXY, TCを用いた. 11株中2株が, ABPC, TC耐性であったほかは, いずれの薬剤にも感受性を示し, MIC値の上では, 殆どすべての薬剤が有効であった. 薬剤存在下でのベロ毒素の放出を測定した所, 薬剤の添加により毒素の著しい放出をもたらすグループ (ABPC, CCL, CFDN, FOM, NFLX, NA) と, 殆ど無添加の場合と変わらないグループ (KM, MINO, DOXY, TC) に大別された. 細胞壁合成阻害剤 (ABPC, CCL, CFDN, FOM) の場合は殺菌に伴ってVT1, VT2ともに菌体より放出された. キノロン系薬剤 (NFLX及びNA) の場合は, VT2のみ菌体より放出された. これに対して蛋白合成阻害剤 (KM, MINO, DOXY, TC) の場合は, VT1は薬剤無添加の場合と同様に, 測定に用いた逆受身ラテックス凝集反応の検出限界以下であり, VT2も薬剤無添加の場合と同等, あるいはそれ以下であった. この結果は, 蛋白合成阻害剤を使用すれば, 腸管出血性大腸菌O157感染症に於て, 毒素を放出させることなく, 殺菌あるいは増殖を抑制することができることを示唆している
  • 佐藤 洋一, 川名 尚, 石川 晃一, 本多 洋, 速水 正憲
    1997 年 71 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HTLV-1のキャリアーは九州を中心とする西日本の高率に分布し, 低率ながらも東日本にまで広く分布している. 今回は, 東日本の母子感染のハイリスク群を特定するべくHTLV-1キャリアー妊婦についてそのリンパ球を培養して抗原の出現を検討することにより, 感染病態を解析した.
    HTLV-1抗原は, PA法で陽性と判定した妊婦64検体中抗原陽性40検体 (62.5%), EIA法で抗体陽性と判定した検体55例中40検体 (67.8%) より抗原を検出した. WB法により抗体陽性の53例中40例 (72.7%), IF抗体陽性による62例では, 41例 (66.1%) にそれぞれ抗原が検出された. 抗体検出法によりやや差はあるが, 全体として約70%に抗原が検出された. IF抗体価20倍以上では14例中12例 (86%) で, 5-10倍では26例中16例62%で, 抗体価の高い方に抗原検出率が高い傾向があった.
    キャリアー妊婦40例から生まれた児のうち2例 (5%) の臍帯血リンパ球に抗原が検出された. 母体血中プロウイルスが陽性40例中より生まれた児のうち3例 (7.5%) が陽性であった. これらの児はいずれもリンパ球の培養により抗原が検出された母体より生まれており, このような母は母子感染のハイリスク群と考えられた.
  • 鈴木 孝世, 笹田 昌孝, 大熊 稔, 福原 資郎, 安田 典正, 天野 博之, 金地 研二, 大野 辰治, 川崎 俊彦, 湯本 義一
    1997 年 71 巻 2 号 p. 143-152
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    造血器疾患に併発した中等症以下の感染症の治療, および感染症の発症予防の目的で, lomefloxacin (LFLX) の単独療法を試みた. 登録症例55例中, 適格症例は51例であり, 治療群が40例, 予防投与群が11例であった. 各群における外来症例の割合は各々62.5, 63.0%であった. 治療群に対する奏効率は50.0%であり, 予防投与群における奏効率は81.8%であった. 尿路感染症, 呼吸器感染症, 敗血症疑いに対して有用性を認めたが, 消化器感染症, 蜂窩織炎については有効以上の症例は認めなかった. 悪性疾患に併発した感染症に対する奏効率 (46.4%) は, 良性疾患に併発した感染症に対する奏効率 (58.3%) に比し低い傾向にあった. 骨髄異形成症候群 (MDS) は, 治療群4例, 予防投与群5例の計9例が登録され, 奏効率はそれぞれ50.0, 80.0%であり, 9例全体では66.7%であった. 予防投与を施行せず抗腫瘍療法を行ったMDS全例に感染症が続発した.LELXは,compromised hostに移行し易い造血器悪性疾患の抗腫瘍療法時の感染予防に有用であると考えられた.登録症例に副作用は認めず,安全性が確認された.
  • 橋口 一弘, 田村 慎一, 倉田 毅, 神谷 斎, 石館 武夫
    1997 年 71 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1994-95年の冬期に北里研究所, 北里研究所病院および国立予防衛生研究所においてLTB#併用経鼻インフルエンザワクチンの抗体応答および感染予防に関する野外実験を行った.
    本研究の実施期間中A (H3N2) 型およびB型インフルエンザの流行が観察された.
    唾液中のIgA抗体および血清HI抗体価陽性者は対照群と比較し接種群に多い傾向が見られた. 特に3株中すべてにIgA抗体陽性者は46.7%(7/15名) であったが, 対照群では観察されなかった.
    インフルエンザ罹患者は, 接種群では16.7%(3/18名) であり, 対照群では42.9%(6/14名) であった.
    インフルエンザ罹患率, 抗体応答陽性率ともに対象者数が少なく有意差がなかったが, 傾向を持って接種群の方が有効であった.
    副作用は局所反応が主たるものであり, 軽度であった.
    これらのことよりLTB#併用経鼻インフルエンザワクチンはインフルエンザ予防に有効である可能性が示唆された.
  • 武居 和樹, 中西 幸司, 中澤 宗生, Zaw LIN, 山崎 伸二, 竹田 美文
    1997 年 71 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1989年1月-1991年7月の間に病性鑑定に持ち込まれた53例の死亡子牛のうち, 5牧場6例からVero毒素産生性大腸菌 (VTEC) を分離した. さらに死亡例が出た牧場および子牛の集団下痢が発生している牧場の下痢症牛および健康牛の糞便を調べた結果, 下痢症牛26頭中8頭, および健康牛58頭中9頭からVTECを分離した. 分離したVTECの血清型には, わが国や欧米で集団食中毒の原因となっている血清型が含まれていたが, O157: H7は含まれていなかった. VTECを分離した牛のなかにはアメリカから導入した成牛が含まれており, 導入牛を介してわが国にVTECが侵入していることが示唆された.
  • 徳田 均, 矢作 直也, 笠井 昭吾, 北村 成大, 大塚 喜人
    1997 年 71 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 57-year-old male was admitted to our hospital because of high fever, productive cough and dyspnea. Six days prior to admission he had an episode of drowning in a public bath. On admission chest X-ray showed wide-spread pneumonia causing severe respiratory distress for which mechanical ventilatory support was started. Despite chemotherapy including erythromycin and rifampicin his condition continued to deteriorate. Chemistry showed marked elevation of CPK and findings of acute renal failure. He eventually passed away with septic shock. During the course Legionellae remained negative with culture of broncho-alveolar lavage fluid. L. pneumophila serogroup 1 (SG1) antigen in the urine was not detected, and no elevation of serum antibody titer was noted. Culture of the material obtained from the lung abscess at autopsy revealed L. pneumophila SG6 and serum antibody titer against SG6 also was found to be extre mely high. With this evidence we concluded that this case of pneumonia was caused by L. pneumophila SG6. We believe this is the first reported case of the SG6 pneumonia in Japan.
    Another remarkable feature of this case was massive rhabdomyolysis pathol ogically confirmed after autopsy. Although the pathogenesis of this process has not been clarified, there are several case reports of rhabdomyolysis complicated with Legionnair's disease in the past. Therefore, we should bear in mind and pay careful attention while coping with this disease.
  • 田中 陽子, 裴 英徳, 林 純, 柏木 征三郎
    1997 年 71 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Psoas abscess is relatively rare and often difficult to make early diagnosis. We treated a patient suffering from hepatocellular carcinoma due to hepatitis C virus infection who was admitted to our hospital complaining of right inguinodynia and a high fever. Positive CRP test were seen. Staphylococcus aureus was detected from blood culture and he was treated for sepsis with antibiotic therapy. After starting treatment, his inguinodynia continued and abscesses were demonstrated in the right psoas muscle by pelvic computed tomography (CT). The abscesses were drained and a specimen yielded S. aureus on culture. After drainage, the symptoms improved and the abscesses disappeared on pelvic CT. Pelvic CT can be successfully used to diagnose psoas abscess and to monitor the efficiency of the treatment.
feedback
Top