札幌市を含む石狩平野は,冬期季節風及び季節風末期時に,しばしば局地的大雪に見舞われることで知られている.一度,局地的大雪に見舞われると,各交通機関は麻痺状態になり,社会生活に与えるダメージはすこぶる大きい.そのため,局地的大雪の降雪域,降雪量,降雪時間を含む,正確な短時間予測の確立が要求されている.
この研究では,その目的のために構築された,札幌総合情報センターのX-バンドレーダーとマルチセンサーネットワーク(SNET)のデータを用いて,石狩平野の異常降雪域の把握及び地上付近で6cmh
-1以上の降雪強度を記録した時の解析を行った.
その結果,2シーズンにわたって異常降雪域が平野内のほぼ限定された同じ狭い地域に限られていることが明らかになった.また,4仰角のエコー強度の鉛直分布の時間変化から,10分間程度の短時間に,僅か数km
2の狭い範囲で,比較的静穏な条件下で異常降雪が出現する時,地上僅か200~400m上空で,急激にエコー強度が増加していることが明らかになった.これは,石狩湾上からの北西寄りの一般風と,内陸の丘陵地で放射冷却によって生成された下層の東風成分を持った冷気との間に形成された鉛直及び水平シアーによって,降雪粒子の急激な雪片化が促進されたものと推測された.この異常降雪が,大雪片によるとする考え方は,地上での目視観測結果及び雪片の落下速度とエコー強度の時間的な対応によっても妥当なものと考えられる.
抄録全体を表示