日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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65 巻, 3 号
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  • 前田 好章, 秦 温信, 松岡 伸一, 中島 信久, 伊藤 東一, 長田 忠大, 佐野 文男
    2004 年 65 巻 3 号 p. 581-586
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    乳癌の術前診断における, 3次元画像を含むヘリカルCT診断の有用性が論議されているが,その正診率,有効性の評価は確立されていない.術前に乳腺ヘリカルCTを施行し,確定診断の得られた乳癌56例,良性疾患28例について病理診断との比較検討を行った.乳癌症例におけるヘリカルCTによる存在診断は96%(54/56)の症例で可能であり,質的診断は感度82%,特異度57%であった.腋窩リンパ節転移に対しては感度70%,特異度80%であった.ヘリカルCTによるEIC診断は感度71%,特異度86%であった.また,ヘリカルCTは今回施行された症例において,すべての多発病変を検出可能であった.ヘリカルCTは,乳癌診断において腋窩リンパ節転移, EIC診断において有効であり, 3D画像とともに乳房温存療法,センチネルリンパ節生検へ寄与しうることが示唆された.
  • 沖津 宏, 梅本 淳, 本田 純子, 沖津 奈都, 清家 純一, 谷田 信行, 門田 康正
    2004 年 65 巻 3 号 p. 587-593
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    Doxifluridine (5'-DFUR)が効率良く5-FUに変換されるためにはthymidine phosphorylase (TP)の発現が誘導される必要がある.進行胃癌を対象にDocetaxel (TXT)および5'-DFURによるTP・dihydropyrimidine dehydrogenase (DPD)の発現誘導を検討した.研究1 (n=11)はTXT 20mg投与前および1週後の癌および正常粘膜のTP, DPD量を測定した.研究2 (n=14)は5'-DFUR 1,200mg/日2日間投与前後の癌および正常粘膜のTP, DPD量を測定し,同患者に対しTXT 40mgおよびその5日後より5'-DFUR 1,200mg/日2日間投与しTXT投与1週後の癌および正常粘膜のTP, DPD量を測定した.癌組織のTP発現はTXT 40mg投与により誘導された(p=.0052)が,正常粘膜のTPは変動しなかった. DPD発現はTXT投与により癌組織では影響を受けなかったが,正常粘膜では40mg投与で低下(p=.0092)した. TP/DPD比はTXT投与により癌組織で上昇した(p=.0303).癌および正常粘膜におけるTP, DPDの発現は5'-DFUR投与による影響を受けなかった.胃癌症例においてTXTと5'-DFURの併用は相乗的な抗腫瘍効果の増強が期待できる.
  • 長屋 昌樹, 窪田 倭, 新美 浩, 佐藤 良太郎, 紺野 靖, 明石 勝也
    2004 年 65 巻 3 号 p. 594-600
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    1996年に外傷性肝損傷に対するTAE,保存的療法(CM),手術療法(OM)の治療選択基準を血圧,輸液への反応の有無, CT所見などをもとに作成し,鈍的III型重症肝損傷(本症)においてもこれに準じてきた.この選択基準が妥当か否かを検討した.またこの選択基準に,より詳細な情報および外傷の重症度を定量化する指標であるISS, RTSを加える必要性があるか否かも併せて検討した. 3群に選別された本症25例を対象とした. 18例(72%)が非手術療法群に選択され,方針の変更なく安全に治療が完遂できた.またOM群は他の二群に比し収縮期血圧, ISS, RTSで統計学的有意差を認めた. OM群では多発外傷の程度が重症であるため,相乗的に出血量が増加する.その結果,血圧低下をきたし,意識レベル,呼吸回数に影響を及ぼす.これよりISS, RTSは収縮期血圧で代用が可能であり,現行の基準の有効性が確認され,本症においても適応を誤らなければ非手術療法は可能である.
  • 根塚 秀昭, 薮下 和久, 渡邊 智子, 井口 雅史, 藤田 秀人, 山本 精一, 加治 正英, 前田 基一, 小西 孝司
    2004 年 65 巻 3 号 p. 601-607
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    大きさ2cm以下のTS1膵癌に関して手術成績を検討したので報告する.対象は過去17年間に当科で手術施行したTS1膵癌症例9例で,うち有症状例は5例,無症状例は4例(検診発見例3例)であった.術前画像診断上,腫瘤の描出には腹部US,不整膵管の描出にはERCPが有用であった.予後は癌死が5例,入院死亡が1例であり,生存3例はすべて5年以上無再発生存中である.累積生存率は1生率88.9%, 3生率, 5生率は44.4%であり,当科における膵癌全切除例の5生率6.8%に比較し予後良好であった. Stage別では, Stage I 3例, Stage III 6例であり, Stage III 6例中5例は術後短期間に癌死しておりStage III症例の予後は不良であった. TS1膵癌といえども, Stage III以上の症例に対しては, 2cm以上の膵癌と同様な治療戦略で臨まなければならないと思われた.
  • 須藤 学拓, 杉 和郎, 平澤 克敏, 梅森 君樹, 東 俊孝, 松田 英祐
    2004 年 65 巻 3 号 p. 608-612
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    目的:手掌多汗症に対する胸腔鏡下胸部交感神経節切離術の有用性と問題点を明らかにする.対象と方法: 1999年8月より当科にて手術を施行した47例を対象としアンケート調査を行った.内容は発汗状態・再発・創痛・代償性発汗・美容度・満足度とした.結果: 31例より回答を得た.術前の発汗状態(7段階評価)は手掌・足底いずれも5.6±1.6点であったが,術後は手掌が1.6±1.0点(右), 1.9±1.4点(左),足底は4.8±1.7点となった.再発は3例, 9.7%,代償性発汗は30例, 97%に認めた.創痛は2.8±2.6点(11段階評価)で,美容度では8.8±1.1点(10段階評価)であった.満足度は7.8±2.0点(同)であった.考察:本術式による手掌における効果は著明で,再発率・創痛・美容度・満足度は概ね良好であった.しかし代償性発汗がQOLを低下させていたことは今後改善すべき問題と考えられた.
  • 河本 真大, 高島 勉, 前田 清, 小野田 尚佳, 石川 哲郎, 若狭 研一, 平川 弘聖
    2004 年 65 巻 3 号 p. 613-615
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは乳頭部腺腫の1例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.左乳輪下外側寄りに鵞卵大の腫瘤を自覚したため当院を受診した.左乳腺E領域に鵞卵大,弾性硬,表面平滑,可動性良好な腫瘍を認めた.びらん,出血などは認めなかった.マンモグラフィーでは同部に15×25mm大の腫瘤陰影を認めた.超音波検査では左乳腺内に嚢胞内腫瘍と, fluid fluid levelを認め,乳癌が強く疑われた.穿刺吸引細胞診ではアポクリン化生を伴う乳頭状細胞集塊を認め,乳頭腫を疑い,左乳房円状部分切除術を施行した.術中迅速検査にて乳頭部腺腫と診断された.切除標本は嚢胞内腫瘍で10×9×10mm,充実性,弾性硬であった.病理組織学所見では乳頭状に増殖する腫瘍がみられ,偽浸潤像を伴っていた.上皮と筋細胞の二層性構造は保たれており,乳頭部腺腫との診断を得た.乳頭部腺腫の診断においては病変部位が大切であり,本例は診断に難渋した症例であった.
  • 長田 裕典, 甫喜本 憲弘, 間島 國博
    2004 年 65 巻 3 号 p. 616-619
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    乳腺の腺筋上皮腫(adenomyoepithelioma: AME)は腺上皮細胞と筋上皮細胞が増殖する極めて稀な腫瘍である.今回われわれは高齢者嚢胞内乳癌の同側乳房に併存したAMEの1例を経験した.症例は91歳,女性, 90歳時左乳房に31mmの嚢胞性腫瘤と11mmの充実性腫瘤を指摘, 1年後腫瘍の増大(それぞれ80mm, 15mm)にて受診,多発乳癌と診断し単純乳房切除術施行した.嚢胞性腫瘤は嚢胞内乳癌で非浸潤性乳管癌であった.充実性腫瘤は腺成分の間に筋上皮成分が充実性増殖を示し,免疫組織染色にて腺上皮はcytokeratin陽性,筋上皮はS-100蛋白, Vimentin陽性であり, AMEと診断された. AMEは本邦では自験例を含めて32例の文献報告があり,多くは術前確定診断されずに悪性の疑いとして治療されている.比較的中高年に多いが,なかでも本症例は最高齢であった.
  • 椎木 滋雄
    2004 年 65 巻 3 号 p. 620-624
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    好酸球増多症候群は原因不明の好酸球増多をきたし臓器への好酸球浸潤を起こすことが知られている.しかし,乳腺への好酸球浸潤は稀である.症例は45歳,女性.左乳房の腫大と乳房痛を主訴に来院した.臨床上,急性乳腺炎と考えられたが確定診断のため切除生検を施行し,病理組織診断にてeosinophilic mastitisと診断された.生検時の末梢血好酸球数は1,920/μlと増加していた.患者にはアレルギー疾患,寄生虫疾患はなく,骨髄穿刺検査, CT検査より腫瘍性疾患は否定された. 6カ月以上持続する好酸球増多は確認できていないが,自験例はeosinophilic mastitisを呈した好酸球増多症候群と考えられる.
  • 千賀 脩, 金子 源吾, 疋田 仁志, 堀米 直人, 平栗 学, 宮川 信
    2004 年 65 巻 3 号 p. 625-630
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    乳腺葉状腫瘍は比較的稀な疾患であり,乳癌合併例は極めて稀である.今回,われわれは良性乳腺葉状腫瘍に非浸潤性乳管癌を同側・同時性に合併した2例を経験したので報告する.症例1, 28歳,女性.良性葉状腫瘍の診断にて腫瘤摘出術を施行したところ,病理組織学的検査にて腫瘍内に非浸潤性乳管癌が存在した.症例2, 63歳,女性.急速に増大した巨大乳腺腫瘍に対して葉状腫瘍の診断にて周囲組織を含む乳腺腫瘍摘出術を施行したところ,病理組織学的検査にて,その近傍乳腺内に非浸潤性乳管癌が存在した.いずれの症例も追加切除は施行せず,現在再発の徴候はみられない.
    乳腺葉状腫瘍では同時,異時性を含めて癌合併の可能性を考慮し,十分な組織学的検索が重要であり,また局所再発もしばしば認められるため厳重なfollow upが必要である.
  • 藤井 雅和, 沖野 基規, 藤岡 顕太郎, 山下 勝之
    2004 年 65 巻 3 号 p. 631-635
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.主訴は労作時呼吸困難.平成10年6月に左乳癌に対し,定型的乳房切断術,平成13年4月に胸壁再発に対し,胸壁切除・再建術が施行された.平成14年10月,労作時呼吸困難が出現し,右胸水貯留が認められたため入院した.持続胸腔ドレナージが行われ, 500~2,000ml/日の胸水が排液された.胸水細胞診はclass IIIで細菌培養,結核検査も陰性であった.心不全所見は認めなかった.原因不明の難治性胸水として加療中に,腹部膨満感を訴えたため精査され,巨大な骨盤内腫瘤が発見されたが,発生臓器は不明とされた.平成14年11月に腫瘍摘出術が施行された.腫瘍は左右の卵巣より発達する乳癌の巨大転移巣であった.術後,右胸水は消失し,乳癌の両側卵巣転移による仮性Meigs症候群と診断された.われわれの検索しえた限りでは,乳癌原発の転移性卵巣腫瘍による仮性Meigs症候群の報告例はなく,本例が第1例目である.
  • 玄 東吉, 谷畑 英一, 林 政澤, 阿美 克典, 岡本 浩之, 大槻 将
    2004 年 65 巻 3 号 p. 636-641
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性. 2001年5月左乳房外側上に小豆大の腫瘤を自覚.摘出生検でスキルスパターンを呈する充実腺管癌と診断され,生検から二週間後,鏡視下乳房温存扇状切除術(Br+Ax)を施行した.癌残存組織やリンパ節転移はなかったが,術後5'DFURの経口投与と乳房内照射を行った. 2002年1月喘息症状の悪化と4月に両足のしびれが出現し多発性単神経炎症状を認めた.また,著明な好酸球増多症と高γグロブリン血症,リウマトイド因子および抗核抗体陽性を認めChurg-Strauss症候群(以下CSS)と診断された.約1年間のステロイド療法によりCSSは寛解したが, 2003年4月に多発性肝転移が認められ,現在化学療法施行中である. CSSは稀な疾患で乳癌を合併した症例は未だ報告されていない.乳癌術後にCSSを発症しステロイド療法で寛解した後,多発性肝転移をきたしたことから,自己免疫疾患における免疫学的異常が悪性腫瘍発現に関与しているのではないかと考えられた.
  • 有泉 憲史, 橋本 良一, 吉井 新平
    2004 年 65 巻 3 号 p. 642-646
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    64歳までほぼ無症状で経過したDarling I a型総肺静脈還流異常症の1例を経験した.術前の全肺血管抵抗係数は3.14単位と低値で,長期生存が得られた要因として重要な所見であると考えられた.根治手術は上方到達法を用いたが,良好な視野で自然な位置での左房-総肺静脈幹吻合が可能で,術後洞機能温存の点でも有用であった.
  • 西山 勝彦, 木村 研志, 由良 博
    2004 年 65 巻 3 号 p. 647-650
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性で元内科勤務医であった.そううつ病で入院中の胸部レ腺で右下肺野に異常陰影を指摘された.術前に確定診断が得られなかったが,緩やかな増大傾向を認めたために肺癌を強く疑い1999年3月4日右肺下葉切除,リンパ節郭清術を行った.術後病理学的診断でB9気管支の末梢から発生した腺様嚢胞癌であった.肺末梢に発生する腺様嚢胞癌の報告は少なく,文献的考察を加えて報告する.
  • 河島 俊文, 千野 修, 島田 英雄, 田仲 曜, 星川 竜彦, 幕内 博康
    2004 年 65 巻 3 号 p. 651-655
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    食道憩室の多くは無症状であり,外科的治療の適応となることが少ない.検診にて発見され,経過中に増大傾向を示した巨大横隔膜上憩室に対し手術を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は45歳,女性.検診の上部消化管造影にて横隔膜上憩室を指摘されたが自覚症状を認めないため経過観察されていた.以後,憩室の増大傾向を認めたために当院受診となった.食道造影で胸部下部食道左側壁に7.5cm大の嚢状憩室を認め造影剤の排出は不良であった.上部消化管内視鏡検査では下部食道左壁に憩室開口部を認め,憩室の内腔に食物残渣が貯留していた.以上より横隔膜上憩室と診断した.増大傾向と憩室内容の排出不良を認める圧出性憩室であるため手術を施行した.圧出性憩室の発生機序を考慮し経腹的に憩室切除術,食道胃接合部中心に5cmの粘膜外筋層切除術,胃底部縫着術を施行し良好な経過を得た.
  • 山口 由美, 柴田 俊輔, 石黒 稔, 万木 英一, 西土井 英昭, 村上 敏
    2004 年 65 巻 3 号 p. 656-660
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    患者は48歳,男性.全身倦怠感,浮腫を主訴に来院し,血液検査で貧血,低蛋白血症を指摘された.胃内視鏡検査で小ポリープが密生して巨大皺襞を形成している所見を認め,組織検査でHpの感染を伴う若年性ポリポーシスと診断した.自験例は蛋白漏出を伴う肥厚性胃炎であるメネトリエ病の範疇であると判断し,除菌療法や内科的治療を試みたが,内視鏡所見で進行性の経過をとり,症状の改善がなく胃全摘術を施行した.薬物治療に抵抗し,進行性の経過をとる若年性胃ポリポーシスにおいては,外科的治療も考慮すべきと考えられた.
  • 庄野 嘉治, 有井 一雄, 井上 正也, 堀内 哲也, 辻 毅, 田伏 克惇
    2004 年 65 巻 3 号 p. 661-664
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    患者は86歳の男性.以前より心窩部痛あり他院にて胃潰瘍の診断のもとH2受容体拮抗剤による治療を受けたが症状の改善を認めず,嘔吐,貧血を認めたため上部消化管造影検査と上部消化管内視鏡検査を施行,胃前庭小彎側を中心になだらかな周堤を伴った巨大潰瘍性病変と著明な壁の硬化,幽門狭窄を認めた.このため胃潰瘍,幽門狭窄症の診断のもと幽門側胃切除術を施行した.病理組織検査では潰瘍部の粘膜層から筋層にかけて術前の生検では検出できなかったカンジダ菌糸が多数存在したが悪性細胞は認めなかった.以上から,潰瘍を伴った隆起型胃カンジダ症と診断した.本症は日和見感染症として周知であるが, H2受容体拮抗剤との関係も示唆されており, H2受容体拮抗薬抵抗性の胃潰瘍については胃カンジダ症も考慮に入れて治療すべきである.
  • 阿部島 滋樹, 長谷川 直人, 菅野 紀明, 森山 裕, 川端 眞, 濱野 哲男
    2004 年 65 巻 3 号 p. 665-668
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    当初切除不能と診断された巨大胃gastrointestinal stromal tumor (以下GIST)に対しメシル酸イマチニブの投与により切除した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は66歳の男性,貧血の精査にて腹腔全体を占める巨大腫瘤と肝に転移を疑わせる多発病変を指摘された.生検にて胃GISTと診断され切除不能と判断,メシル酸イマチニブ400mg/日の投与開始した.
    投与後腫瘍は著明に縮小し,胃全摘,肝左葉切除,肝S6部分切除を施行した.切除標本ではすべての病巣が液状化(内部透明,漿液性)しており,病理組織検査でviable tumor cellは認められなかった.
    術後の遺伝子解析ではc-kit遺伝子Exon11に変異を認めた.
  • 足立 智彦, 岩田 亨, 伊藤 哲哉, 甲斐 信博, 戸田 修二, 坂口 洋司
    2004 年 65 巻 3 号 p. 669-673
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の男性.進行性の貧血を指摘され精査にて胃低分化腺癌・多発肝転移・癌性腹膜炎の診断を得た.このため経口抗癌剤(TS-1)内服を開始, 2週後の経過観察胃内視鏡生検にて胃絨毛癌の存在が指摘された.内服4週後には胃病巣の縮小,肝転移の縮小・消失,腹水消失がみられた.休薬2週後,胃部分切除(腫瘍摘出)・腸間膜播種巣・リンパ節サンプリング施行.病理検索にてそれらの標本内に生存癌細胞を全く認めず,抗癌剤治療の著効例であると判断された.
  • 上道 治, 長崎 秀彰, 笹屋 昌示, 根本 洋, 吉澤 康男, 真田 裕
    2004 年 65 巻 3 号 p. 674-678
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.心窩部痛を主訴に当科を受診し,胸部単純X線像で腹腔内遊離ガス像が認められ,入院した.穿孔性腹膜炎を保存的治療した後に行った上部消化管内視鏡検査で,多発性(6カ所)陥凹性病変が認められ,それら全てがGroup Vと診断された.胃全摘術(R-Y再建術),リンパ節郭清D2を施行した.病理組織学的検査では, IIc類似進行癌と5カ所の早期癌(0-IIc型)の他に独立した16カ所の0-IIb型早期癌を認め,同時性22多発胃癌と診断した. 22病巣の組織型は,高分化型管状腺癌が5病巣,中分化型管状腺癌が11病巣,低分化型管状腺癌が1病巣,印環細胞癌が5病巣と分化度の異なった癌病巣が混在する多彩な組織像を呈していた.
    近年同時性多発胃癌は増加傾向にあるが,ほとんどが2~3病巣であり,多彩な病理組織像を呈した同時性22多発胃癌は極めて稀であるため報告した.
  • 小林 平, 新原 主計, 横山 隆
    2004 年 65 巻 3 号 p. 679-682
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,男性.平成13年5月頃より腹部腫瘤を自覚,当院を受診した.腹部エコー,腹部CTにて胃大彎側,十二指腸左側,膵体部に接して6cm大の内部構造不均一な血管に富んだ腫瘍を認めた.腹部MRIにて胃十二指腸動脈の分枝が腫瘍の栄養血管であった.可動性良好なことより大網または胃原発の腫瘍を考え,画像上悪性が否定できないため開腹手術を施行した.手術時,腫瘍は十二指腸水平脚より発生し膵被膜に一部浸潤しており,十二指腸部分切除,膵部分切除術を施行した.病理組織学的には十二指腸の固有筋層より発生,免疫染色にてc-kit陽性, CD34陽性, S100蛋白陽性, SMA陰性,神経系への分化を示す低悪性度GISTと診断された.
  • 神谷 保廣, 坪井 謙, 中山 卓也, 小林 建司, 羽藤 誠記, 伊藤 昭敏
    2004 年 65 巻 3 号 p. 683-687
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.胃病変精査時,十二指腸乳頭部に一部陥凹を伴う隆起性病変を認め,超音波内視鏡検査で,乳頭部粘膜下層に境界明瞭な低エコー腫瘤像(1.8×1.3cm)が認められた.生検よりカルチノイドと診断した.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD-II)を施行した.術中,空腸起始部の腸間膜に2個リンパ節腫大があり,迅速生検でカルチノイドの転移であった.腫瘍は粘膜下層にとどまり,粘膜,リンパ管侵襲を認め,ソマトスタチン染色陽性であった. t2, n2 (13b, 14c, 14d), surgical stage III, cur Bであった.術後1年を経過するが無再発生存中である.十二指腸乳頭部カルチノイドの手術術式決定にあたり,腫瘍の大きさよりは,リンパ節転移の検索を行い,リンパ節郭清を重視した術式の選択が望ましい.
  • 田中 芳明, 深水 志生子, 朝川 貴博, 浅桐 公男, 疋田 茂樹, 溝手 博義
    2004 年 65 巻 3 号 p. 688-694
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    消化管穿孔により発症した新生児腸重積症の1例を経験した.在胎34週4日,切迫早産のため帝王切開で出生した出生時体重2,160gの女児.在胎32週に胎児腹水を指摘され, 1生日に消化管穿孔の診断で緊急開腹した.回腸狭窄と肛門側回腸の穿孔および内腔に腸管と連続性のあるポリープ様腫瘤を認めた.病理組織では腫瘤根部の筋層は肛門側回腸と連続して重積構造を呈し,口側腸管の重積に伴う遺残腸管と診断した.胎児腹水の既往,生後早期の発症から子宮内重積症と考えられ,周産期の低酸素状態が誘因と考えられた.本邦報告の新生児腸重積症38例の集計では,成熟児に器質的疾患の合併が多く,低出生体重児は全例が特発性で, 18例は1生日目までに発症し子宮内重積症と考えられた.成熟児は腸管虚血,器質的疾患の合併が,低出生体重児は腸管虚血が誘因と考えられた.また低出生体重児は穿孔,死亡例が多かった.
  • 小野田 恵一郎, 竹村 和郎, 朝野 隆之, 緒方 晴樹, 守屋 仁布, 山口 晋
    2004 年 65 巻 3 号 p. 695-698
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    小腸過誤腫はPeutz-Jeghers症候群において認めることが多いが,稀に非遺伝性で,色素斑の合併を欠く症例もみられる.今回われわれは小腸過誤腫による成人腸重積症の1例を経験したので報告する.
    症例は26歳の女性で,右下腹部痛を主訴として来院した.超音波,腹部CT検査にて腸重積症と診断され,緊急手術を施行した.拇指頭大の腫瘤を先進部とした回腸が上行結腸に嵌入していた.回盲部切除術を施行した.回腸の腫瘤は病理組織学的検索により過誤腫性ポリープと診断された.
    小腸過誤腫は画像診断で確定診断に至ることは困難で,腸重積やイレウスなどの腸閉塞症状や下血などの合併症がみられることで外科的切除となることが多い.
  • 佐々木 章公, 大野 靖彦, 山本 尚樹, 太田 和美, 須崎 紀一, 松尾 嘉禮
    2004 年 65 巻 3 号 p. 699-703
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    癒着性イレウスの術後に,減圧と腸管ステントとして留置したイレウス管が原因で発症した腸重積症を経験したので報告する.症例は61歳の女性. 30年前より急性腹症などで3回の開腹術を受けている.イレウスの診断でイレウス管を挿入.保存的に治療するも改善せず開腹術を施行し癒着剥離を行った.術中にイレウス管を回腸末端部まで挿入し術後も留置していた.術後5日目より突然イレウス管よりの排液が増量し嘔吐が出現した.造影検査でTreitz靱帯よりやや肛門側の空腸に全周性狭窄を認めた.腸管浮腫による通過障害と診断し経過観察したが軽快せず,再度イレウス管よりの造影と腹部CT検査で小腸腸重積症と診断した.術後15日目に再開腹術を行いTreitz靱帯より10cmの肛門側空腸に腸重積を認めたため腸切除術を行った.イレウス管留置中に嘔吐や排液の増量がみられる場合は腸重積の発症を念頭に置き,早期に診断治療が必要である.
  • 酒井 光昭, 五本木 武志, 福澤 淳也, 久倉 勝治, 飯田 浩行, 折居 和雄
    2004 年 65 巻 3 号 p. 704-707
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の東南アジア系外国人女性. 1カ月持続する咳嗽を主訴に近医受診,ガフキー2号の肺結核と診断され当院に紹介入院した.抗結核薬による治療開始9日目に腹膜刺激症状を伴う右下腹部痛と腹部膨満が出現した.画像所見で回腸から上行結腸までの腸管壁の肥厚と回腸の狭窄,中等量の腹水を認めた.絞扼性イレウスを否定できず緊急手術を施行した.開腹所見では回腸から上行結腸にかけて8カ所の全周性瘢痕狭窄と混濁腹水を認めた.そのうち狭窄の強い1カ所でイレウスをきたしていた.狭窄の強い3病変に対する回腸部分切除術と腹腔洗浄ドレナージを施行した.摘出標本の肉眼所見では多発性輪状潰瘍を認め,病理組織学的にラングハンス巨細胞と乾酪壊死を伴う類上皮肉芽腫を認めた.肉芽腫内に抗酸菌を認め腸結核と診断した.肺結核加療中においても腸結核によるイレウスを急性に発症する可能性があることを念頭におくべきと思われた.
  • 藤木 真人, 池田 博斉, 河本 和幸, 庭野 元孝, 佐野 薫, 小笠原 敬三
    2004 年 65 巻 3 号 p. 708-712
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性で, 12歳のときに腸重積にて開腹手術をうけPeutz-Jeghers症候群と診断されている.今回は,腹痛,嘔吐を主訴に来院し, CTにて空腸と回盲部の2カ所に腸重積を指摘された.小腸腫瘍による腸重積の診断にて開腹したところ,回盲部のみに重積を認めたため,これを解除し重積先進部の回腸部分切除術を行った.
    しかし術後5日目に腸重積の再発を認め,術後12日目に再手術を行った.開腹したところ,空腸に重積を認めたのでこれを解除し,今後の重積の再発予防のため,ポリープを可及的に摘除することとし,空腸に切開を入れて,内視鏡を挿入し, 10カ所のポリープ摘除を施行した.
    二回目の手術以降は,重積の再発を認めずに退院し,術後14カ月を経過した現在も再発を起こしていない. Peutz-Jeghers症候群では,小腸の腸重積や消化管出血を繰り返し,頻回の開腹術が行われる場合があるが,開腹下にポリープの内視鏡的摘除を行うことにより,腸重積や出血といった症状の無再発期間の延長を期待できる.
  • 森 俊明, 金子 哲也, 杉本 博行, 井上 総一郎, 竹田 伸, 中尾 昭公
    2004 年 65 巻 3 号 p. 713-717
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    患者は65歳,女性.右上腹部痛を主訴とし,多発肝腫瘍の精査のために受診した.腹部US, CT,血管造影の結果,肝内転移を伴った胆管細胞癌を疑い,門脈右枝塞栓後,肝右3区域切除術を行った.切除標本の免疫染色にて, Vimentin, SMA陽性, S-100, c-kit, CD34,サイトケラチンAE1, AE3陰性で肝平滑筋肉腫と診断された.術後下腹部CTで下大静脈の腹側に25×19mmの腫瘍を認め,原発巣である可能性も否定できず生検目的で腫瘍摘出術を行った.腫瘍は小腸間膜内に存在し,病理組織検査で平滑筋肉腫と診断された.以上より小腸間膜原発平滑筋肉腫,多発肝転移と診断した.術後7カ月経過しているが,再発兆候なく健在である.
  • 堺 浩太郎, 藤木 健弘, 倉持 均, 山田 勝博, 城崎 洋
    2004 年 65 巻 3 号 p. 718-721
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性.開腹の既往はない.嘔吐,腹部膨満を認めイレウスの診断で当院紹介入院となった.まず,減圧目的にイレウスチューブを挿入し保存的治療を施行した.その後の小腸造影では狭窄を伴う小腸ループ像を右下腹部に認め,内ヘルニアを疑いその原因検索と治療目的に腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を検索したところ盲腸後窩ヘルニアを認めたため,嵌入小腸の整復とヘルニア嚢の開放を行った.虚血性変化は認めず腸管切除は施行しなかった.腹腔鏡を用いた盲腸後窩ヘルニアの治療の報告はこれまでになく,自験例ではその有用性が示唆された.
  • 鯉沼 潤吉, 武山 聡, 笹村 裕二, 原 敬志, 沼田 昭彦, 子野日 政昭
    2004 年 65 巻 3 号 p. 722-725
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性.手術既往なし.腹痛と嘔気を主訴に当院救急外来を受診し,腹部X線写真上niveauを認めイレウスの診断で当院内科入院.イレウス管造影にて左下腹部にループ状の拡張した小腸と,その口側と肛門側に締めつけ様の狭窄が造影され,内ヘルニアを疑う所見を得た.またCTにて壁肥厚を伴う限局した小腸を認め,嵌頓小腸と思われた.その嵌頓小腸に連続する拡張小腸がS状結腸の左葉側に回り込むように位置しており,嵌頓部位をS状結腸間膜と同定.他に明らかな腫瘍性病変を認めず, S状結腸間膜内ヘルニアの診断に至った.手術は腹腔鏡下に行い, S状結腸間膜に約2cmの裂孔を確認.嵌頓した腸管を整復し,裂孔を閉鎖した.経過は順調で術後8日目に退院.本症の術前診断例および腹腔鏡下の根治例は稀であるので報告する.
  • 田中 修二, 小出 則彦, 塚原 明弘
    2004 年 65 巻 3 号 p. 726-729
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で既往に慢性腎不全,脳梗塞後遺症と統合失調症があり当院精神科に入院し透析を受けていた. 2003年8月27日,腹痛を認めたが自他覚的所見ともに軽度なため様子観察されていた. 8月29日,ショックに陥り腹部全体に筋性防御も出現したので外科併診され緊急手術が施行された.上腸間膜動脈の拍動を認めたが小腸に非連続性かつ分節状の壊死を認めnonocclusive mesenteric ischemia (NOMI)と診断し盲腸,上行結腸の一部を含め大量小腸切除術を行い一期的に吻合した.術後はエンドトキシン吸着療法により血圧の安定化が得られ縫合不全,短腸症候群なども認めず救命しえた. NOMIは今後人口の高齢化に伴い増加が予想される疾患であるので若干の文献的考察を加え報告した.
  • 小島 由光
    2004 年 65 巻 3 号 p. 730-734
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    53歳の男性患者が他院にて腸蠕動促進剤や浣腸の処置を受けた後,腹痛および嘔吐をきたし,腸閉塞が疑われ紹介された.腹部超音波検査で拡張した小腸と門脈ガスを認め,腹部CT検査でも同様であった.腹部理学的所見および血液生化学検査が比較的軽症を示していたために保存的治療を試みたが,漸次腹膜刺激症状およびアシドーシスの増悪を認めたため,発症18時間後に開腹術を施行した.開腹所見ではTreitz靱帯直後から約1mの空腸が壊死膨満しており,これを切除吻合したが,壊死腸管の病理診断では,腸管の出血性壊死を認めるものの腸間膜動静脈に血栓,血管炎などの特異な所見を認めず,非閉塞性腸管虚血症と診断した.腸管壊死に伴う門脈ガス血症は死亡率52%と予後不良であるが,重篤な基礎疾患を認めず,壊死腸管が広範に及ばない場合には,手術治療ならびに腸間膜血流の補助療法で良好な結果が得られる可能性が示唆された.
  • 野中 道泰, 吉田 晃治, 池尻 公二, 才津 秀樹, 朔 元則, 竹下 盛重
    2004 年 65 巻 3 号 p. 735-738
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性,主訴は肛門よりの腫瘤脱出. 1997年夏頃より血便,体重減少あるも放置していた. 1998年1月より粘血便持続のためオムツ使用.排便時に腫瘤が脱出するようになり近医受診し1998年2月18日当科紹介入院となる.排便時の脱出腫瘤は12cm大でカリフラワー様,軟らかく腫瘤の表面より粘液の排出を認めた.しかし電解質異常,脱水などdepletion syndromeは認めなかった.また腫瘤の還納は可能であった.精査後癌合併の可能性のあるvillous tumorの診断で経肛門的切除術を施行した.術後病理組織診断はcarcinoma in tubulovillous adenoma,深達度mであった.術後5年経過しているが狭窄所見,再発所見なく健在である.
  • 柴田 俊輔, 万木 英一, 山口 由美, 石黒 稔, 西土井 英昭
    2004 年 65 巻 3 号 p. 739-742
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.右下腹部痛で発症し同部位に拇指頭大の腫瘤を触知された.症状は一旦治まったものの19日後に再び痛みが出現した. CTでは回盲部の膿瘍を認めたが全身状態が比較的良好であったために,大腸癌の可能性も考えて大腸内視鏡検査を施行した.その結果,虫垂開口部に腫瘍を発見し生検標本の病理診断は腺癌であったため,虫垂炎を合併した盲腸癌の診断で手術を行った.開腹時虫垂は高度の炎症を伴い穿孔し周囲に膿瘍を形成していた.膿瘍腔も可及的に切除し, 3群リンパ節郭清を施行した.腫瘍は径22mmの2型で虫垂開口部はその潰瘍底にあった.病理組織所見はwell, a2, ly1, v2, n0でありstage II,根治度Aであった.術後9カ月目に腹膜播種再発によるイレウスとなり,空腸横行結腸吻合を行った.化学療法を行ったが初回術後から22カ月で癌死した.中高年者の虫垂炎症例には大腸癌の合併に注意すべきである.
  • 高野 学, 近藤 成彦, 小谷 勝祥, 松山 孝昭
    2004 年 65 巻 3 号 p. 743-746
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    直腸癌が原因と考えられる転移を伴わない孤立性の細菌性肝膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は53歳,男性.以前から下血があったが放置していた.平成13年7月12日,発熱と全身倦怠感を生じたため当院を受診した.超音波, CT検査で肝S5に2.0×1.5cm大の膿瘍を認め同日入院となった.下部消化管検査を施行したところ直腸に2型の腫瘍を認め,生検の結果は中分化腺癌であった.経皮経肝膿瘍ドレナージを施行し細菌検査ではKlebsiella pneumoniaeが検出された.細胞診検査では癌細胞は認められなかった.ドレナージ後下熱し,画像上膿瘍も消失したため8月6日全身麻酔下に直腸低位前方切除術を施行した.臨床的病期はSS, N1(+), P0, H0, M(-) Stage IIIaで,切除標本組織学的所見はss, n2(+), ly1, v0の所見であった.術後経過は良好で現在までに直腸癌の再発および肝膿瘍の再燃は認めていない.
  • 則行 敏生, 奥道 恒夫, 木村 厚雄, 赤山 幸一, 古賀 理恵
    2004 年 65 巻 3 号 p. 747-750
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は非定型抗酸菌感染,低肺機能,老人性痴呆を基礎疾患に有する87歳の女性患者で下血を主訴に来院し,直腸診で直腸に腫瘤を認め入院となった.入院後直腸脱状態になり,用手帰納が施行された.頻回に脱出し,脱出腸管の先進部に腫瘤を認め,生検でGroup 5:高分化型腺癌と診断された.骨盤CTではmultiple concentric ring, target likeと形容される多重なリングを直腸内に認め, S状結腸の陥入部が確認され, S状結腸癌を先進部にする腸重積,結腸脱と診断された.手術所見では, S状結腸癌を先進部としてS状結腸が直腸内で重積状態となっていた.重積の整復が困難なため,重積状態でのS状結腸切除を行い,全身状態を考慮し,ハルトマン術式を施行した.切除されたS状結腸では,中筒部分に腸管虚血を伴い,先進部はS状結腸癌(Borrmann 2型, 2×2cm, mp, ly1, v1, n0,中分化型腺癌)であった.術後イレウスを合併し,術後イレウス解除術を施行した.その後, MRSA肺炎から敗血症, DICとなり, 2003年1月8日死亡退院となった.典型的な画像所見(骨盤内CT所見)を呈した肛門より脱出したS状結腸癌腸重積の1例を経験したので報告した.
  • 山内 希美, 宮田 知幸, 岡田 将直, 仁田 豊生, 河合 寿一, 宮下 剛彦
    2004 年 65 巻 3 号 p. 751-755
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.平成13年5月5日から全身倦怠感,食欲不振が出現し下血を認めたため当院内科を受診した.カルチノイド症状は認めなかった.大腸内視鏡検査で下部直腸に1型腫瘍を認め,生検で低分化腺癌もしくは未分化癌と診断された.腹部CT検査で多発肝転移を認めた.腹会陰式直腸切断術とリザーバー留置術を行った.免疫組織染色のクロモグラニンA, NSEで陽性像を示し,内分泌細胞癌と診断された.化学療法を開始したが,平成14年1月5日死亡した.内分泌細胞癌は予後不良であり,低分化腺癌や未分化癌との鑑別が困難である.直腸内分泌細胞癌の本邦報告例は自験例を加えて37例であり,術前から肝転移を認めた症例は22例であった.早期癌の症例は5例あるがいずれも予後は不良であり壁深達度と予後の関連はないと考えられた.内分泌細胞癌は外科的切除が第一選択と考えられるが,予後は不良で何らかの補助療法が必要である.
  • 林 泰生, 山崎 高宏, 佐藤 裕英, 竹内 一雄, 今村 好章
    2004 年 65 巻 3 号 p. 756-760
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は86歳の女性.胆嚢結石症の診断にて当科に紹介入院.精査の結果,横行結腸癌,胆嚢結石症と診断し手術を施行した.術中,偶然に肝S6被膜下に径5mm大の白色結節性病変を認め,肝転移巣と診断し摘出術を施行した.術後病理組織学的検査では,被膜下に周囲肝組織との境界明瞭な,腺様構造を呈した胆管上皮細胞の増生およびその周囲の膠原繊維の増生からなる結節で,被膜は認めず,細胞の異型性,核分裂像,管腔の拡張およびムチン産生は認められなかった.免疫組織学的検索では,サイトケラチンNo 7, No 18, No 19が陽性であり胆管細胞由来であることが示唆された.以上より肝内胆管腺腫と診断した.
  • 杉本 克己, 林 永規, 古川 勝規, 鈴木 亮二, 宮崎 勝
    2004 年 65 巻 3 号 p. 761-765
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 73歳女性の胆嚢に原発したいわゆる癌肉腫の1例を経験した.癌肉腫とは,上皮性の癌腫部分と非上皮性の肉腫部分との混在からなる悪性腫瘍である. Humphreyらは,骨や軟骨や筋肉など特異的間葉系成分を含む悪性腫瘍を狭義の癌肉腫,肉腫様成分と同時に上皮への分化を示すものをundifferentiated spindle cell carcinoma,紡錘形細胞型未分化癌,すなわち,いわゆる癌肉腫として区別している.紡錘形細胞型未分化癌は扁平上皮由来の組織に発生することが多く,本来扁平上皮をもたない胆嚢での原発例は稀である.肉腫と上皮,両方の組織学的特徴を有するこの組織型は,腫瘍発生・分化からみて極めて興味深くここに報告する.
  • 中藤 嘉人, 須藤 隆一郎, 中安 清, 倉田 悟, 江里 健輔, 亀井 敏昭
    2004 年 65 巻 3 号 p. 766-770
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.心窩部痛を主訴に近医受診.超音波所見および白血球増多から急性胆嚢炎の診断で当院外科紹介となった.受診までの約6カ月間で10kgの体重減少を認めていた.その他生活歴・既往歴に特記すべきことなし.入院時右季肋部に圧痛を認めた.血液生化学検査では,白血球数, CRP,肝胆道系酵素の上昇を認めたが,腫瘍マーカー(CEA, CA19-9, DUPAN-2)の上昇は認められなかった.腹部超音波検査, CT検査にて胆嚢内に不均一に造影される腫瘤と肝十二指腸間膜内に著明に腫大したリンパ節を認めた. ERCPでは総胆管の拡張を伴う合流異常を認めた.リンパ節転移を伴う胆嚢癌の臨床診断にて,肝床切除を伴う胆嚢摘出術,膵頭十二指腸切除術を施行した(TNMstage III).病理組織学的検査では大細胞型の胆嚢未分化癌であった.
  • 渡邊 良平, 炭山 嘉伸, 柁原 宏久, 渡邉 学, 浅井 浩司, 若山 恵
    2004 年 65 巻 3 号 p. 771-775
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胆嚢管癌は稀な疾患であり,術前に正診することは困難である.今回われわれは,術後病理組織検査にて診断された胆嚢管癌の1例を経験したので報告する.症例は83歳,男性.腹痛を主訴に近医を受診後,胆嚢炎を疑われ当科紹介入院.胆石症,壊疽性胆嚢炎の診断にて同日緊急手術を施行した.開腹時,胆嚢壁は体部から底部にかけて壊死性変化を認めた.術中胆道造影では,悪性を示唆する所見は認められなかった.術後病理組織検査にて,胆嚢管に限局性に乳頭状構造を呈する上皮の増殖像を認め,乳頭状腺癌と診断された.追加手術の適応と考えられたが,高齢でかつ本人の同意なかったため外来経過観察とした.現在術後10カ月経過し,無再発生存中である.
  • 大沼 淳, 小原 充裕, 稲垣 光裕, 石崎 彰, 紀野 修一, 葛西 眞一
    2004 年 65 巻 3 号 p. 776-779
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.検診にて膵頭部の嚢胞性病変を指摘され当科紹介となった.腹部CT上,膵頭部に膵外突出型の直径約4cmの多房性病変を認めた.超音波内視鏡(EUS)上,嚢胞内部にdebrisの存在を疑った.血清中腫瘍マーカーはCA19-9, CEA, Span-1の上昇を認めた.悪性腫瘍を否定できず,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍の剥離は容易で核出術にて終了した.嚢胞は内部に黄色,粘調な液体と,おから様物質を有していた.病理組織像で嚢胞内腔面は重層扁平上皮,上皮直下間質にはリンパ組織が発達しており,膵リンパ上皮性嚢胞(LECP)の診断を得た. LECPは本邦報告例が66例と比較的稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告した.
  • 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 松山 隆生, 長谷川 聡, 長谷川 誠司, 仲野 明, 家本 陽一
    2004 年 65 巻 3 号 p. 780-784
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,男性.右下腹部痛,発熱を主訴に当院救急外来を受診し,大腸憩室炎の診断で入院となった.この際施行した腹部造影CTで偶然膵尾部に腫瘍を認め,大腸憩室炎軽快後手術の方針となった.術前画像所見では, CTで嚢胞および石灰化,造影効果を認めなかった.血管造影では腫瘤による脾静脈の圧排のみ認め,新生血管や腫瘍濃染像も認めず,静脈相でも著明な腫瘍濃染像を呈することはなかった.これらの画像所見よりsolid-pseudopapillary tumorを最も疑い,膵体尾部・脾合併切除術を施行した.病理組織診断では, chromogranin A陽性で,ラ島と類似性の高い部分もみられ,無症候性膵島細胞腫瘍と診断された.
    hypovascularな像を呈する非特異的な非機能性膵内分泌腫瘍が存在することもあり,膵腫瘍の診断に際しては,常にislet cell tumorも念頭におく必要があると思われた.
  • 丸山 聡, 鈴木 聡, 三科 武, 松原 要一
    2004 年 65 巻 3 号 p. 785-789
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.平成12年11月8日Treitz靱帯近傍の小腸悪性リンパ腫の多発穿孔に対して小腸切除術を施行した.術中および術後検査所見より悪性リンパ腫遺残が疑われたが,術後多臓器不全のため化学療法は施行できなかった. 12月3日(術後25病日)に経鼻胃管よりの出血,下血を認めた.上部内視鏡検査でVater乳頭部から十二指腸内への出血を認め, hemosuccus pancreaticus (HP)と診断した.血管造影では上膵十二指腸動脈末梢枝からの血管外漏出像を認めたため,動脈塞栓術を施行した.一時的に止血をみたが,その後再出血をきたし12月17日死亡した.本症例は,小腸悪性リンパ腫の穿孔術後にHPをきたした稀な症例であり,悪性リンパ腫遺残病変がHPの発症に関与した可能性が考えられた.
  • 舩渡 治, 佐々木 亮孝, 新田 浩幸, 上杉 憲幸, 菅井 有, 斎藤 和好
    2004 年 65 巻 3 号 p. 790-795
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の女性.右季肋部痛を主訴に近医を受診した.腹部超音波検査で膵頭部に腫瘤を認め,当科紹介入院となった.血液生化学検査にて異常は認めず,耐糖能異常もなかった.腹部CTで膵頭部に造影効果のある径15mmの腫瘤を認めた.膵体部,尾部は同定されなかった. ERPでは主膵管は膵頭部で途絶し,体部~尾部の主膵管は造影されなかった.膵体尾部欠損症に合併した非機能性膵島細胞腫の診断にて手術を施行した.切除標本では膵頭部に表面平滑な18×18mmの固い腫瘍を認めた.一部切除された膵体尾部相当の組織は黄色の脂肪組織で,膵組織の混在はなかった.病理検査ではlow-grade malignant islet cell tumor, nonfunctioning well-differentiated tumorと診断された.今回,膵体尾部欠損症に膵頭部の悪性膵島細胞腫を合併した極めて稀な1症例を経験したので報告した.
  • 輿石 直樹, 井出澤 剛直, 井上 亜矢子, 柴 修吾, 岡崎 護, 木嶋 泰興
    2004 年 65 巻 3 号 p. 796-800
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性,心窩部痛を主訴に腹部検査を行い,膵尾部に嚢胞性病変を指摘をされた.腹部CT検査で8cm大の単胞性の病変で,充実性部分に乏しく,膵仮性嚢胞と診断し,内視鏡的嚢胞穿刺ドレナージ術を施行した.嚢胞内容は粘液性で,細胞診で扁平上皮癌の診断となった.以上から嚢胞性変化を伴った膵原発腺扁平上皮癌と診断,膵体尾部切除を施行した.摘出標本で膵尾部に単胞性の嚢胞性病変を認め,嚢胞壁は扁平異型細胞ないし扁平上皮癌に被覆され,周囲結合織への浸潤を認めた.腺癌成分を認めなかった.膵原発の扁平上皮癌は著しく稀であり,予後は極めて不良と言われている.自験例は術後2年11カ月経過し,再発を認めなかった.極めて稀とされている膵原発扁平上皮癌の症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 渡邊 利広, 神賀 正博, 平井 一郎, 水谷 雅臣, 布施 明, 木村 理
    2004 年 65 巻 3 号 p. 801-805
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    内膀胱上窩ヘルニアは極めて稀であり,いまだ術前正診例の報告はない.今回われわれが経験した症例は,術前CTをretrospectiveに検討した結果,正診にいたる特徴的な所見を呈していた.この経験を踏まえ,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は腹部手術歴のない78歳,男性.腹痛,腹部膨満,嘔気が出現し,近医受診したところ,イレウスを認めたため,当院を紹介され受診した.腹部CT検査で拡張した小腸を認め鼠径ヘルニア嵌頓と診断したが,その後用手的に還納したと判断し,保存的に経過観察した.しかし,次の日のCT検査でも状態は変わらず腸管の嵌頓は改善されていないと判断し,緊急手術を施行した.開腹所見で回腸末端から約70cm口側の小腸の内膀胱上窩ヘルニア嵌頓による絞扼性イレウスと診断した.手術は回腸部分切除術,ヘルニア門の縫合閉鎖を行った.術後経過順調で第11病日に退院となった.
    原因不明のイレウスで発症した症例に対しては,内膀胱上窩ヘルニアも念頭において腹部CT検査を施行することが肝要であり,本症例のような特徴的な所見を呈していれば,術前に診断することが可能であると考えられた.
  • 國土 泰孝, 津村 眞, 村岡 篤, 立本 昭彦, 香川 茂雄, 鶴野 正基
    2004 年 65 巻 3 号 p. 806-809
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    大網捻転症は比較的稀な疾患で,術前診断は困難でこれまでに術前診断されたのは本例も含め10例のみである.今回術前診断しえた鼠径ヘルニアによる続発性大網捻転症を経験したので報告する.症例は66歳,女性.右下腹部痛のため近医受診し,急性虫垂炎の疑いで当科へ紹介.白血球増多, CRP, T-bil上昇を認めた.腹部CTで渦巻き状層状の腫瘤と外鼠径ヘルニアを認めた.腹部MRIではT1, T2強調画像で内部不均一で境界不明瞭な腫瘤を認めた.腹部USでは外部高エコー内部低エコーの腫瘤を認めた. CTより続発性大網捻転症と診断し,保存的治療を試みたが残存する壊死大網による癒着などの合併症や大網腫瘍も否定できず手術を行い,捻転直上の健常部分で大網を切離した.術後良好に経過し術後13日で退院した.術前診断にはCTが非常に有用であると考えられた.
  • 齊藤 直人, 山崎 達雄, 花輪 峰夫, 小山 勇
    2004 年 65 巻 3 号 p. 810-813
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    特発性大網捻転症は急性腹症として発症し,術前診断が困難とされる比較的稀な疾患で,現在まで本邦報告例は自験例も含め61例である.今回われわれは術前に診断が困難であった特発性大網捻転症の1例を経験したので報告する.症例は48歳,男性.右下腹部痛を主訴に急性虫垂炎の診断にて近医より紹介受診した.右下腹部に腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査にて上腹部にhigh densityを伴った渦巻き状,層状のfat densityの腫瘤を認め,緊急開腹術を施行した.術中所見では淡血性の腹水を少量認め,反時計回りに5回転捻転し循環障害に陥った暗赤色の大網を認め,壊死部を含む大網を近位部にて切除した.特発性大網捻転症は急性虫垂炎と類似した症状を呈するため,その鑑別には,圧痛点が限局し痛みに比べ発熱と白血球の増加が軽度な症例に対し,本症も考慮に入れ腹部CT検査を行う必要があると思われた.
  • 黒阪 慶幸, 桐山 正人, 伊藤 博, 竹川 茂, 小島 靖彦, 渡辺 騏七郎
    2004 年 65 巻 3 号 p. 814-817
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは出産後に発症した特発性大網捻転症の稀な1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は26歳の女性で,産後10日目より右下腹部に疝痛が出現した.出産した病院で卵巣捻転の診断で開腹手術を受けたが,悪性腫瘍を疑う腫瘤を認めたため当院へ転院となった.臍部に圧痛と筋性防御を伴う硬い腫瘤を触知した.白血球数は正常値であったが, CRPは軽度高値を示した.腹部CT検査では,脂肪濃度を含む渦巻き状の層状構造を示す腫瘤と右卵巣嚢胞を認め,大網捻転症と診断し,開腹手術を行った.臍直下に大網が収束し形成された径8×2cm大の腫瘤を認め,右卵巣とともに切除した.腹腔内には他に所見はなく,特発性大網捻転症と診断した.腹膜刺激症状の強さに比べ消化器症状がなく炎症所見も乏しい急性腹症をみた場合,大網捻転症も念頭におき,特徴的な所見を示す腹部CT検査を行うことが大網捻転症の鑑別診断に有用であると考えられた.
  • 笹原 孝太郎, 大上 英夫, 南村 哲司, 塚田 一博
    2004 年 65 巻 3 号 p. 818-821
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術時に腹膜播種を疑った魚骨による大網腫瘤の1例を経験したので報告する.患者は83歳,男性.主訴は腹痛.上行結腸癌と診断され,右半結腸切除術を施行した.大網腫瘤が存在し腹膜播種と判断し小腸部分切除,大網切除を併施した,結腸癌はwell differentiated adenocarcinoma, ss, ly0, v0, n0であり大網腫瘤は魚骨による肉芽腫と診断された.魚骨穿孔は緊急手術症例が多く,慢性型では原因不明の腫瘤と診断されることが多い.本症例では術前には腹腔内腫瘤は診断できなかった. CTを再検討した結果,大網腫瘤に一致して線状石灰化像が確認可能であった.腹腔内腫瘤では過剰な治療を避けるため鑑別疾患を考慮し,画像検査の詳細な再検討が必要である.
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