百日咳の流行状況を把握し, 公衆衛生行政に資する目的で, 1986年6月から1991年5月までの5力年間に, 福井市内の6病院小児科を受診した百日咳様患者を対象として, 百日咳菌分離を主に, 各種追跡調査を実施し, 菌陽性患者について以下の成績を得た.
1) 478名のうち83名 (男41名, 女42名) から百日咳菌を分離し得た. 2) 分離菌の血清型は1・3・6型80株, 1型2株, 1・4・5型1株であった.3) 83名のうち69名 (83.1%) が3歳未満のワクチン未接種児であり, ワクチン効果が示唆された. 4) 百日咳の臨床診断の目安とされる末梢血白血球数15,000/mm
3以上, リンパ球百分率70%以上を示す菌陽性患者は3歳以下の67名のうち33名 (49.3%) に過ぎず, これのみでの診断は難しいと思われた. 5) 患者の住所は, 県下8保健所管内のうち7保健所管内に分布した. 特に福井保健所管内を囲む4保健所管内に於いては, 調査期間内の合計患者数が当該地区の各々の人口に概ね比例していた. 6) 菌陽性患者数には明らかな年次変動が認められ, 福井県の百日咳流行予測調査 (感受性調査, 厚生省委託事業) 成績に似通っていた. 年次変動の要因は不明であるが百日咳の疫学としては, 今後, この点を追求する必要があると考えられた. 7) Stainer-Sholte変法培地を基に我々が試作したHG-SS培地 (仮称) の百日咳菌分離率はBordet-Gengou培地 (BG) 及びCyclodextrin. Solid-Medium (CSM) に比べ明らかに高く, コロニーの発育性状もCSMより良かった.
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