ユネスコ(UNESCO)は文化遺産の保存を通じた文化多様性の保護を重点活動領域のひとつとしているが,デジタルで誕生する情報資料が急激に増加・多様化しそれらの保存が当面の大きな問題になっているなかで,2003年10月に開催された第32回ユネスコ総会においてCharter on the Preservation of the Digital Heritage(デジタル遺産保存に関する憲章(仮訳))を採択した。憲章は,デジタル遺産の範囲,アクセスの重要性と関連する問題,消滅を回避するための方策,加盟国に求められる施策,役割・責務,ユネスコの果たすべき役割などを規定している。憲章の紹介とともに制定に至る背景およびコンサルテーションの過程について解説し,さらに関連する勧告・宣言等についても言及した。