日本薬学会は1880年創立当初より学会論文誌を継続して刊行しており,現在は英文誌として『Chemical and Pharmaceutical Bulletin』と『Biological and Pharmaceutical Bulletin』の2誌と,和文が主である『薬学雑誌』を毎月発行している。これらの学会論文誌はいずれもJ-STAGEによりオープンアクセス誌として公開されている。また,2016年5月に試験的に公開された「J-STAGE評価版」に協力し,英文誌2誌をモデル誌として公開している。J-STAGE評価版は,スマートフォン等のモバイル端末での閲覧が可能となり,特に若い世代における閲覧の増加が期待できると考えている。
2016年3月,分野や地域を超えた研究データの共有を目指すResearch Data Alliance(RDA)の第7回総会が東京で開催された。本稿は,総会と関連イベントを時系列に沿って紹介する。RDA総会を通じて,欧州オープンサイエンスクラウド(EOSC)などの国際的な政策や課題が共有された。課題ごとに設置されるRDA分科会については,(1)全分野の研究者を対象としたデータサイエンス教育の構想,(2)研究データの相互運用のための法的枠組みの策定,(3)永続的なデータリポジトリ運営のための収益モデルに関する議論を取り上げた。RDA総会前後のイベントでは,日本のステークホルダーや多分野の研究者による活発な意見交換が行われ,アジアや国内のコミュニティーも発足した。RDAと同様に,分野や組織を超えてベストプラクティスや課題を共有することによって,日本のオープンサイエンスの取り組みが加速するだろう。