国立国会図書館は国立国会図書館法に基づいて設置され,国会議員に対するサービス(国会サービス)を第一義的任務としている。本稿では,国会サービスの中心を担う,調査及び立法考査局の役割と組織について概観し,次いでその業務の中心である「依頼調査」と「予測調査」について,業務の実態を交えながら述べる。また,調査業務をより実効的なものとするために行うさまざまな取り組みや,内部での研修,外部との連携協力などについても紹介する。
研究データの共有に向けた研究コミュニティーの合意形成ならびにポリシー設計を,国家の枠組みを超えて包括的に実施しようとする活動が国際的に進行しているが,実際にはオープンデータ先進国の欧米豪においても,立場の違いからさまざまな言説が存在する。特に政策と実践とのギャップについては慎重に議論されており,研究現場の実態を把握するためにさまざまな調査が行われている。国内でも,急速に変化する国際動向に対応すべく,オープンサイエンスに関する議論が始まるようになったが,現在のところ,国内の研究現場の実態調査はまだほとんど行われていない。こうした背景から,本稿では地球環境情報分野の研究者の協力の下,研究データ共有に関する意識調査を実施した。本調査から,自身のデータの提供を前向きに考えている研究者であっても,さまざまな事情から完全な実現には至っていない実情等が明らかとなった。
世の中に存在するデジタル情報は爆発的に増加し続けており,インターネット上には計り知れない量の情報が存在している。しかし,私たちが生活している現実空間のほとんどは物理的な空間であり,人間が取得できる情報量は限られている。AR(拡張現実)は,ICT技術により現実空間に付加したデジタル情報を,可視化・見える化する新しい技術として,近年注目されている。ARは高度な要素技術の集合体であり,その進化は個々の技術の進化とともにある。AR表現を支える技術と仕組みの解説を主軸とし,そこから期待される用途,課題と可能性を導く。
今日,市場には多くの商品やサービスがあふれ,消費者には多様な選択肢が与えられている。一方,インターネットやスマートフォンの普及により,消費者は,どこにいても,商品・サービスの機能や価格を,瞬時にかつ簡単に比較・検討することができるようになった。購入や利用の決定に関する主導権が「買い手」に移る中,「売り手」は機能や性能,価格といった「伝統的」な要素だけで,自らを差別化することは難しくなっている。そこで重要になるのがユーザーエクスペリエンス(UX)だ。商品やサービスの購入や利用にまつわる一連の体験を快適で便利なものにできなければ,消費者の心をつかみ続けることは難しい。それゆえ,UXデザインは,意匠や機能のデザインにとどまる問題ではなく,経営を左右する重要な課題の一つになりつつある。
三重大学は,実践的な水産学教育・研究を通して,水産分野の6次産業化を地域に創出することが求められている。そこで三重大学では「マリンフードイノベーション創発ユニット構築プロジェクト」をスタートさせ,「拡張現実対応遠隔教育支援システム」と食の安全・安心に基づく「水産製造加工現場実習支援システム」の整備を行った。地域の活性化を図る目的を有する本事業の情報関連分野に着目して現状と方向性についてまとめる。