情報管理
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48 巻, 6 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
特集:情報管理と災害対策
  • 小川 雄二郎
    2005 年 48 巻 6 号 p. 311-319
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    記録資料の危機管理の考え方を総論として述べている。どのような情報をどのような媒体上に記録して保存しているのかによって,どのような事態に対して情報は脆(ぜい)弱性を持つのかを把握することが第一に必要であること,保存する情報には,その情報の管理する立場からの重要性の違いが存在すること,それらにしたがって危機管理対策がとられるべきこと,それらの検討の結果として,具体的な対策が初めて選択できることを述べている。
  • 菅野 泰子
    2005 年 48 巻 6 号 p. 320-332
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    情報システムと情報通信網が重要な社会インフラとなり,政治,経済,社会,生活を支えている現在,情報セキュリティ対策は必要不可欠である。企業や情報システムの抱える脆(ぜい)弱性(情報セキュリティにおける弱点)が,最悪の場合,企業の存続を脅かすほど巨大になる可能性は現実のものとして存在しており,経営者は,自社の情報セキュリティにおける脅威と脆弱性とリスクを見極め,適切なリスクマネジメントを行うことが不可欠である。そして,導入され,運用されている対策が有効であるかどうかは評価される必要がある。評価無くして,対策の実効性は担保できない。セキュリティ対策における評価には,「ISMS適合性評価制度による認証」「情報セキュリティ監査」「脆弱性検査(または脆弱性診断,脆弱性監査)」「セキュリティ対策ベンチマーキング」などが挙げられる。また,セキュリティ製品やシステムを評価・認証する制度として「ITセキュリティ評価及び認証制度」がある。このそれぞれについては,膨大な規格群と研究報告書,解説が公表されている。これらのキーワードに示される「情報セキュリティ評価」の全体像を,各評価の違いを明らかにしつつ,ベースとなる標準や規格等も紹介しながら,その概要を提示する。
  • 高木 和子
    2005 年 48 巻 6 号 p. 333-339
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    国際機関は図書館やアーカイブが所蔵する文書遺産保存の推進に取り組み,情報,保存,文書遺産などの専門家に災害管理の必要性を喚起してきた。災害を予防し,災害に対処するためにIFLA-PAC,ブルーシールド,UNESCOは他の国際機関との協力のもとに,ニュースレター,ガイド,マニュアルなどを発表しており,それらの多くはWebサイトから無料で入手可能である。IFLA-PACが行った国際的サーベイによれば,質問状に答えた国立図書館のうち,防災計画を持っているのは現在54%にすぎない。国際機関の諸プロジェクトや出版物が今後,各国における防災計画の成立に役立つことが期待される。
  • 小川 千代子
    2005 年 48 巻 6 号 p. 340-350
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    文書館,記録管理分野は,資料の確実な保管・保存を前提とした利用提供がその使命であり,業務の中核である。歴史資料を扱う文書館は外部利用者による所蔵資料利用のために資料の収集・保管・保存を行うのが業務であることから,阪神淡路大震災以後防災対策の必要性が強く意識された。そのため,文書館とその職員で構成する全国歴史資料保存利用機関連絡協議会が中心となり,防災対策のマニュアル開発が行われた。これに対し記録管理分野は少し様相が異なる。記録管理はあらゆる組織の日常業務そのものである。防災が記録管理の一部であることは知られているものの,防災対策そのものを個別に取り上げて記録管理分野のなかで議論されている様子は見られない。「阪神」以後に危機管理(リスクマネジメント)が叫ばれるようになった。意識としては,記録管理の防災は日常的なバックアップシステムなどを含め,リスクマネジメントに包含されたと見られている可能性がある。これとは別に,文書館に収蔵されていない非現用歴史資料については,災害発生後の災害対応として被災資料の救出は,主として利用者の立場にある大学の研究者らが「史料ネット」を組織するなどして行われている。この中から,災害復旧には生活インフラのみならず文化財救助も含めるべきであるとする考え方が生まれた。
  • 木原 一雄, 加藤 多恵子
    2005 年 48 巻 6 号 p. 351-355
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    日本をはじめ,地形的に地震発生の可能性のある地域での図書館の地震対策は喫緊の課題である。図書館での地震発生時での図書館,および図書館員の対応について述べる。図書館が地震に遭遇した場合,まずは図書館利用者,図書館スタッフの人命を守る,次に図書館資料を守ることである。いずれにしても図書館の免震構造,および図書館内の設備の耐震の工夫は重要である。その中でも書架の構造,固定などは地震発生被害を経験して,いくつかの教訓が得られている。日本の阪神淡路大震災,カリフォルニア州で発生した2件の地震に関連して図書館が遭遇した被害について触れた。
  • バゼル 山本登紀子
    2005 年 48 巻 6 号 p. 356-365
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    2004年10月30日,米国ハワイ州オアフ島にあるマノア渓谷に観測史上最悪の集中豪雨が襲った。流木や瓦礫(がれき)でふさがれたマノア川の橋が流れをせき止め,鉄砲水がハワイ大学マノア校キャンパスを直撃し,40施設が多大な被害を被った。中でも太平洋地域最大の研究図書館であるハミルトン図書館の受けた被害は20億円以上という大惨事となった。図書館機能を担う中枢部が全壊し,1世紀近くの年月をかけ収集し,保存してきた政府刊行物,地図,航空写真は泥水の中に埋没した。本稿はハミルトン図書館が体験したこの大災害の記録である。災害の実態,対応,復旧の実体験を関係者のインタビュー,災害記録等を基に紹介する。
  • 壊滅状態-応急措置-修復準備
    WEBER Jürgen, 吉次 基宣
    2005 年 48 巻 6 号 p. 366-370
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    アンナ・アマリア公爵夫人図書館の建物と収集品は,1998年以来ユネスコの世界文化遺産に登録されている。2004年9月2日のアンナ・アマリア公爵夫人図書館の大火は,第二次大戦後ドイツ最大の図書館火災であり,建物,美術品,書籍などに多大な被害をもたらした。このレポートでは,消火作業と書籍の救出の状況を説明し,被害を受けた図書の修復の準備状況について報告したい。
  • タイトラー イズミ
    2005 年 48 巻 6 号 p. 371-375
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    本稿ではオクスフォード大学図書館の緊急対策を紹介する。当大学にはボドリアン図書館をはじめとして大小さまざまな図書館が存在するが,近年大学の組織改革に伴ってこれら図書館の統合化が進み,2000年よりオクスフォード大学図書館サーヴィス(OULS)の名のもとに,大学組織の一部局として発足した。OULSの緊急対策は,最近再編成された資料保存保護担当部門(OULS CCC)の基盤業務のひとつとして,現在見直し・検討されている最中である。課題への対処の際の基本的姿勢・構想,また緊急対策プランに盛り込まれる項目の実際例を述べる。
  • 野口 幸生
    2005 年 48 巻 6 号 p. 376-381
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    自然災害,犯罪,テロ行為や戦争などが発生したとき,ライブラリアンやアーキビストはプロフェッショナルとしてその対応に参加することを求められる。したがってそのような事態が発生しないよう各機関で防災計画を準備していることはもとより,そのような事態が発生したとき,自然,人為にかかわらず,被害を最小限に食い止めるため,危機管理,その対応に準備万端であることは必定である。本稿では,ニューヨーク市に所在するコロンビア大学のメインキャンパスを背景にコロンビア大学図書館(Columbia University Libraries)の防災・危機管理計画について考察する。
連載:世界各国のIT政策
  • 兼子 利夫
    2005 年 48 巻 6 号 p. 382-389
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    世界的に1990年代からインターネットとPCが急速に普及し始め,産業活動はもちろんのこと一般社会にもその活用が広がりつつある。そのひとつのビジネス形態が,電子商取引である。各国の政府機関等では,これらの情報技術(Information Technology: IT)を積極的に政策に取り込み,自国のIT政策として展開している。本稿では,最初に英国のIT政策の経緯について記述する。そして,包括的なIT政策であるUK onlineについて概観する。さらに,内閣府に設置されたIT推進機関であるOffice of e-Envoy,Office of e-Envoyに代わる新しい組織である電子政府局,UK Onlineに代わる新しいオンライン・サービスであるDirect.govについて記述する。最後に,英国のITを含む科学技術政策を推進している貿易産業省の「5か年プログラム」について記述する。
視点
情報と規範
エラータ
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