近年,自動車はさまざまな機器と接続されることにより,新しい価値を生み出すことが期待されている。今後は自動運転に向けて,V2Xと呼ばれる通信機能の搭載が予想されており,ますますIoTとしての重要な位置づけとなる。しかしながら,一方で現在販売されている自動車の多くが,セキュリティー対策が不十分であることが指摘されている。このため,今後はセキュリティー強化が必要とされている。本論では,自動車を取り巻くIoTと情報セキュリティーの課題について概説する。
博士課程在籍者(一部,修士を含む)を対象とした「移転可能スキル」についての意識調査(約500人が回答)を分析したところ,専門分野7:非専門分野3で専門分野を重視する者が半数を超えた。非専門分野の能力を12種類に分け,自分に「足りない能力」と「博士課程等で身に付けたい能力」は何か質問したところ,語学力を筆頭に,プレゼンテーションやコミュニケーションなど意思疎通・伝達能力,研究計画書・プロポーザル作成能力,プロジェクト管理能力を挙げた回答が多かった。しかし,「倫理」と答えた回答は最低数であった。この結果から博士人材の「倫理」に対する関心は,他の移転可能スキルに比べて低いと考えられる。「科学活動の質の保証」が求められる今日,研究倫理教育の制度的な普及だけでなく,博士人材の意識の向上が求められている。
日本では改正個人情報保護法が2015年に成立し2017年5月に施行された。データ主体の同意なしに流通できる匿名加工情報が導入されたが,どのような匿名化処理を施すべきか検討が続いている。EUでは全体の統一的なパーソナルデータ保護規則「一般データ保護規則」が成立し,2018年からの施行に向け,これに適合するプライバシー保護の方策が模索されている。本稿では,プライバシー保護技術を保護対象となる個人が,(1)質問者である場合に (a)質問者が誰であるか,および (b)質問内容自体,を検索エンジン側から秘匿する方法,(2)データベースに個人データが格納されているデータ主体の個人に関して識別を防ぐ場合に分けて,代表的なプライバシー保護技術を概観する。
日本国内において,機関リポジトリに登録されたコンテンツのメタデータは,junii2を標準的なメタデータスキーマとして,国立情報学研究所(NII)の学術機関リポジトリデータベース(IRDB)を介して広く流通している。近年の学術情報流通をめぐる国際的な状況の変化や技術的な発展に対応し,日本の学術成果の円滑な国際的流通を図るため,オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)では,junii2に代わる次世代のメタデータスキーマとして,2017年10月に「JPCOARスキーマ ver1.0」を公表した。本稿では,策定過程での議論も含め,新しいメタデータスキーマの考え方と概要を紹介する。
インターネットという情報の巨大な伝送装置を得,おびただしい量の情報に囲まれることになった現代。実体をもつものの価値や実在するもの同士の交流のありようにも,これまで世界が経験したことのない変化が訪れている。本連載では哲学,デジタル・デバイド,サイバーフィジカルなどの諸観点からこのテーマをとらえることを試みたい。「情報」の本質を再定義し,情報を送ることや受けることの意味,情報を伝える「言葉」の役割や受け手としてのリテラシーについて再考する。
第8回で取り上げる時事問題は,発生パターンによってメディアから提供される情報が異なることから,タイプ別に情報のあり方を考える。情報利用者の心得として押さえておくべき基本的な情報の側面についても解説する。