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60 巻, 6 号
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記事
  • 松澤 孝明
    2017 年 60 巻 6 号 p. 379-390
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
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    「研究不正」は他の法令違反とは異なる原則や特徴を有しているため,「過失」から生じる場合が意外に多く,その対策として各国・地域では研究倫理教育が重視されている。現在,わが国の研究倫理教育は自国や自機関のルールに関するコンプライアンス教育(予防倫理の考え方による教育)が中心であると考えられる。しかし,研究不正の定義や各国・地域の研究公正システムには,各国・地域の国情や,国家イノベーションシステムの違いを反映して,国・地域による多様性が存在する。このような研究倫理における不均一性の存在は,研究活動のグローバル化に伴い研究不正が非意図的に発生するリスクを増大させる。また,研究機関間・研究分野間の移動や研究不正に対する時間的な認識の変化によっても同様のリスクは発生する。したがって,予防倫理による知識教育だけでは,このような非意図的に発生するリスクに十分対応できるのかは疑問であり,若手研究者の育成に当たっては知識に加え,新しい課題や状況に直面したときに適切な行動を選択できる能力を習得することが必要である。このため,博士課程における構造的訓練の実施など,研究倫理教育の指導方法の構造化が必要ではないかと考えられる。

  • 真野 浩
    2017 年 60 巻 6 号 p. 391-402
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
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    ウェアラブルデバイスや制御機器,センサー,スマートフォン,スマート家電などインターネットに接続する情報機器が急速に拡大し,これらを称してIoT(Internet of Things)時代の到来が広くうたわれている。しかしながら,現在普及しつつあるIoT産業の多くは,サービスとデバイスが密に結合した垂直統合型にとどまっており,本来インターネットのもつ自律分散,相互接続による創造的な産業革新を引き起こすには至っていない。そこで,開かれた真のIoTを実現するには,デバイスに依存しない自律分散型相互接続と,接続される情報のオーナーシップ,価値の配分,プライバシー,公平性を確保する仕組みが必要となる。本稿では,これらの課題を解決し,スケーラビリティーのある新しい情報流通交換の仕組みとして,オープンなデータ取引市場を実現する取り組みについて概説する。

  • 田中 浩也, 齋藤 和行, 守矢 拓海
    2017 年 60 巻 6 号 p. 403-411
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
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    3Dプリンターは「(モノづくりのための)製造技術」として,材料工学,機械工学,制御工学などの分野で研究が盛んであるが,デジタルデータからものをつくる技術であるから,当然,情報学とも不可分である。筆者らは,文部科学省COI (Center of Innovation)「感性とデジタル製造を直結し,生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点(中核拠点:慶應義塾大学)」を通して,3Dプリンターの先進的な技術開発を進めている。今回は,その中でも情報学的な研究課題といえるトピックを3点に整理し,それぞれについてどのような技術を開発しているかを報告する。また,近年話題のAI(人工知能)技術との連携の可能性についても議論する。

  • 山崎 重一郎
    2017 年 60 巻 6 号 p. 412-419
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
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    ブロックチェーンの定義に迫るためには,まずユースケースの具体化による知見の集積と分析が不可欠である。「ブロックチェーン・エコノミー」とは,ブロックチェーンを前提とする未来の経済圏だが,本稿では,コンセンサスとガバナンスの視点から,ブロックチェーン・エコノミーを題材にブロックチェーンの概念の整理と分析を試みる。ブロックチェーン技術は,仮想通貨を超えたより汎用的な技術的イノベーションとして期待されているが,ブロックチェーン技術を,仮想通貨を超えて拡張しようとすると,複雑なエコシステムが登場する。複雑なエコシステムを整理するために,技術,経済,法制度の3層に分けて分析した。

  • 高祖 歩美
    2017 年 60 巻 6 号 p. 420-428
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
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    日本において,大学や研究所等の学術研究機関では国際的な認知度の向上に資するとして,研究成果の国際情報発信に期待が寄せられており,近年,海外のマスコミに向けて英語のプレスリリースを提供する国際情報発信が盛んな段階といえる。一方で,英語圏の学術研究機関では,報道機関を介して研究成果を一般読者や視聴者に間接的に届ける情報発信から,自らが報道機関のように研究成果を一般読者や視聴者に直接届ける情報発信へと変化している段階といえる。本稿では始めに,研究成果の国際情報発信がここ数年で日本の学術研究機関で発展した様子を概説し,現状について触れる。次に,英国や米国の大学で行われている研究成果の情報発信を紹介し,日本のそれと比較する。さらに,日本の学術研究機関における国際情報発信の課題について触れ,課題の解決に向けて,今後検討すべき点について考察する。

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