日本臨床免疫学会会誌
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38 巻, 4 号
第43回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の229件中201~229を表示しています
一般演題(ポスター)
  • 山村 裕理子, 野村 祥久, 松浦 郁子, 藤田 計行, 西村 晋輔, 桃木 律也, 上野 明子, 丸山 啓輔, 平松 信, 山村 昌弘
    2015 年 38 巻 4 号 p. 367b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】重症型MPO-AAVに対する初期治療RTXの有効性と安全性を検討した.【患者】EUVAS重症型の顕微鏡的多発血管炎(MPA)と多発血管炎性肉芽腫症(GPA).平均年齢:69.8歳,CRP:15.9±8.2mg/dL,Cr:> 5.66mg/dL,MPO-ANCA:124±93U/mL,BVAS 23.5±9.1.症例1:MPA,71歳男,臨床重症度2群RPGN,肺気腫/UIP.症例2:MPA,74歳男,4群RPGN,肺胞出血.症例3:MPA,67歳女,4群RPGN,器質化肺炎.症例4:GPA,67歳女,上強膜炎/副鼻腔炎/肺肉芽腫,2群RPGN.【患者】全例ステロイドパルス療法,3例血漿交換で治療開始し,初期治療にステロイド(48.7±11mg)とRTX(3例600mg,1例700mg)を併用した.症例1,2はRTX4回実施,症例3,4はCMV腸炎とCMV再活性のため2回で中止,症例1,2もRTX終了後CMV再活性化あった.再活性化にはGCV先制治療を実施.全例BVAS寛解に到達し,迅速なステロイド減量が可能であった.【結論】重症型AAVに対するRTXの優れた有効性が示された.しかし腸炎発症1例を含め,全例にCMV再活性が誘発され,GCV先制治療が必要となった.AAVでは疾患重症度に関連した易感染性を認め,重症AAVではより厳重な感染症管理が必須である.
  • 片山 理人, 平野 亨, 濱野 芳匡, 熊ノ郷 淳
    2015 年 38 巻 4 号 p. 368
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】近年関節リウマチ(RA)におけるIL-33の知見が集積されつつある.我々は膠原病患者で血清IL-33濃度を測定し,臨床所見との関連を検討し,RAにおいてIL-33と患者総合VAS(Pt-VAS)とに関連を認めた.マウスではIL-33とnociception(痛覚過敏)に関する報告が多数認められているが,RAで疼痛に関しての報告はない.【目的】RAにおける血清IL-33濃度と疼痛(Pt-VAS)の関連を示す.【方法】血清IL-33濃度をRA患者でELISA法で測定し臨床所見との関連を検討する.【結果】IL-33をRA115例で測定した.IL-33濃度が感度(6.25 pg/ml)をcut offとすると37/115例でIL-33の上昇を認めた.RAにおいて,IL-33上昇群と非上昇群では抗CCP抗体154 [55.5,339] vs 53.4 [12.2,174](U/ml,p < 0.01),リウマチ因子211.5 [81.5,366.3] vs 46 [17,110](U/ml,< 0.001),血沈20.5 [10,51.5](mm/時,0.003)に有意差を認めた.罹病年数(0.40),MMP-3(0.49),腫脹(0.67)/疼痛(0.84)関節数,Pt-VAS(0.94),DAS28CRP(0.90)/ESR(0.13)では有意差は認められなかった.ただし,先行研究同様,抗CCP抗体陽性で生物学的製剤や免疫抑制剤の使用のない42例では,Pt-VASは62 [52,86] vs 46 [24,64.5](0.040)と有意差を認めた.【結論】RA患者で血清IL-33の上昇を認め,抗CCP抗体陽性,薬剤修飾の少ないRA症例では血清IL-33濃度とPt-VASに関連を認めた.
  • 吉原 理紗, 庄田 宏文, 久保 かなえ, 神田 浩子, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2015 年 38 巻 4 号 p. 369a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【introduction】Thrombotic microangiopathy(TMA)は全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する重篤な病態である.ADAMTS13活性の著明低下やインヒビター陽性の症例では血漿交換に加えてリツキシマブ投与の有効性が報告されている一方で,ADAMTS13活性が軽度低下に留まり,インヒビター陰性の症例に関する治療は確立していない.【Case】症例1 20歳女性 12歳時発症のSLE, APSでLN IIIA/C+V,ループス腹膜炎を合併.mPSLで加療するも溶血性貧血,血小板減少が進行.TMAと診断しPE+IVCYで寛解し,MMF併用で維持.症例2 43歳女性 36歳時発症のSLE, LN IV-G(A),ループス腸炎の悪化で入院.入院後溶血性貧血,血小板減少が進行しTMAと診断.PE+PSL+MMFで寛解.case 3 52歳男性 38歳時発症のSLE, APS.LN-Vによる蛋白尿の悪化傾向あり.S状結腸穿孔で入院し抗生剤と手術で軽快.経過中,溶血性貧血,血小板減少が進行.TMAと診断しPE+PSLで寛解,MMFで維持療法中.【Discussion】3例ともLNの悪化時,SLE高活動期にTMAを合併し,ステロイド治療開始後にもTMAは進行した.全例でADAMTS13活性は軽度低下,インヒビター陰性であった.神経症状は明らかでなかった.【Conclusion】SLEに合併するADAMTS13インヒビター陰性TMAに対してPE+PSL+MMFによる加療は有効であり,全例でPE離脱,TMA改善を認めた.
  • 本田 大介, 大澤 勲, 佐藤 信之, 清水 友希, 毎熊 政行, 日高 輝夫, 鈴木 仁, 井尾 浩章, 堀越 哲, 富野 康日己
    2015 年 38 巻 4 号 p. 369b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      症例は,42歳男性.19歳時より原因不明の顔面浮腫の出現と軽快を繰り返していた.39歳時に他院で遺伝性血管性浮腫(HAE)の診断となり,42歳時に当院のHAE専門外来への通院を開始し,顔面浮腫などの急性発作時にはC1インアクチベーター製剤(C1-INH)を投与されていた.平成XX年10月末日に出張先の建設現場で,鉄パイプで下顎を強打したあとから著明な顔面浮腫が認められたため,近医の中核病院を受診するもC1-INHは常備されていなかった.しかし,喉頭浮腫による窒息が懸念され,C1-INH投与の必要性が考えられたため,C1-INHを確保できる当院にドクターヘリにて救急搬送された.しかし,ヘリポート到着時に急激な呼吸状態の悪化を認め,心肺停止に至り,直ちに心肺蘇生術が開始された.喉頭浮腫により口腔からの気道展開が困難だったため,緊急気管切開術を施行し人工呼吸器管理を開始するとともに,C1-INHを投与した.一連の心肺蘇生術の施行により心拍は再開し,脳保護のため低体温療法を開始した.連日,C1-INHを投与しながら全身状態を集中管理したところ,経過は良好で蘇生後脳症などの後遺症なく退院となった.今回,外傷を契機として致死的急性発作が出現したHAEの一例を経験したことにより,急性発作時の唯一の治療薬であるC1-INHを常備する施設を各地域の中核病院にも確保する必要性があると思われた.
  • 坪内 康則, 磯田 有
    2015 年 38 巻 4 号 p. 370a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例1】73歳男性.胸部X線で肺炎と診断され当院紹介入院.胸部CTで両肺にスリガラス影を認め異型肺炎が疑われた.抗生剤投与にても改善乏しく,βDグルカン169.7pg/mlと高値よりニューモシスチス肺炎と考えST合剤内服を開始.HIV-1WB法陽性,RNA定量71000copy/ml,リンパ球数400/μl,陽性Tリンパ球数50/μlから後天性免疫不全症候群と診断.皮疹のためペンタミジン点滴に変更.改善後に抗HIV治療目的で他院転院.【症例2】54歳男性.胸部X線で肺炎と診断され抗生剤治療を受けるも改善せず当院紹介入院.胸部CTで両肺にスリガラス影を認め,酸素化不良のため人工呼吸管理となりステロイドパルス療法を施行.βDグルカン322.1pg/mlと高値より判明しニューモシスチス肺炎と考えST合剤経管投与を開始.HIV-1WB法陽性,RNA定量230000copy/ml,リンパ球数160/μl,CD4陽性Tリンパ球数20/μlから後天性免疫不全症候群と診断.皮疹のためペンタミジン点滴に変更.改善後に抗HIV治療目的で他院転院.【臨床的意義】自己申告であるがともに感染経路は不明である.患者の免疫機構とHIVが拮抗した状態は平均10年と言われている.生来健康で病院を受診していなかったため無症候期のリンパ球減少が発見できなかったと推察される.健常者に発症したと考えられる肺炎でも異型肺炎の場合,後天性免疫不全症候群の可能性を考える必要がある.
  • 江頭 柊平, 庄田 宏文, 白井 晴己, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2015 年 38 巻 4 号 p. 370b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【Back ground】炎症性筋疾患群はOlsenとWartmannによる分類が広く受け入れられており,また特異的自己抗体による分類も試みられている.一方で既存の分類では分類困難な非典型例も経験する.【Case】36歳女性,受診4カ月前より関節痛が出現.受診1カ月前より筋力低下が進行し,発熱もみられたため当科初診.CPK 2293,ferrtin 2340.皮疹・間質性肺炎は認めず.SS-A抗体陽性,他の自己抗体陰性.筋電図では筋炎パターン,筋MRIでは筋膜に炎症を認めた.筋生検では筋線維膜上にHLA class I,Class IIの強発現を認め炎症性筋疾患と診断した.ステロイドでの加療を開始したところ,筋力改善,CPK低下を認めたが,高フェリチン血症と微熱は持続し,シクロスポリンを併用して改善した.筋病理を追加染色したところCD68陽性マクロファージの筋膜への浸潤を認めたため,Inflammatory Myopathy with Abundant Macrophages(IMAM)を疑った.【Discussion】IMAMはBassez Gらにより報告された筋・筋膜へのマクロファージの著明な浸潤を認める炎症性筋疾患である.一方で報告されている病像は共通点もあるものの,病理像や重症度には差異があるため,独立した疾患概念であるのか,多発性筋炎/皮膚筋炎のvariantであるのかについては意見が分かれている.治療についても確立されていないが,今回我々はネオーラルの有効性を確認しており今回報告した.
  • 白柏 魅怜, 湯川 尚一郎, 山川 範之, 村上 孝作, 笹井 蘭, 橋本 求, 井村 嘉孝, 吉藤 元, 大村 浩一郎, 藤井 隆夫, 三 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 371a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】Rosai-Dorfman disease(RDD)はリンパ節腫脹を呈する非腫瘍性組織球増殖性疾患であり,骨,皮膚,中枢神経などの臓器病変を認めるとされるが,画像上大動脈病変の報告はごく稀にあるものの,病理組織学的に証明された報告はない.【症例】58歳男性.2008年胸部X線で右胸壁腫瘤を指摘,CTガイド下肺生検では診断がつかず,その後腫瘤は増大し発熱,炎症反応も認めたため胸腔鏡下肺部分切除施行され,組織球浸潤を伴う器質化肺炎とされた.同時に胸部大動脈瘤を指摘され,FDG-PETで集積を認めたため高安動脈炎を疑われ当科紹介された.MRIでは上行~腹部大動脈の壁肥厚および造影効果を認め,虹彩炎,関節炎も伴っていた.前医胸壁病理標本を再検討した結果,S100(+)CD68(+)CD1a(−)組織球の著明な浸潤を認め,emperipolesisが存在したことからRDDと診断した.ステロイド大量投与は効果不十分で,シクロフォスファミド間歇静注療法も無効であり,2年後トシリズマブを開始した.発熱,虹彩炎,関節炎に対しては著効し,大動脈瘤の増大も抑制したが,脳内病変が発症した.クラドリビンと放射線治療の併用により縮小がみられたが,最終的に多発脳梗塞のため死亡した.剖検の結果,硬膜,骨,心外膜などに加え,大動脈へのRDDの浸潤が確認された.【結論】本例が最初の大動脈病変の浸潤を剖検で証明された貴重な症例と考え報告した.
  • 高嶋 渉, 知野 剛直, 徳力 篤, 尾山 徳孝, 長谷川 稔
    2015 年 38 巻 4 号 p. 371b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      79歳女性.初診の1ヶ月前より口腔内潰瘍が出現.その後,体幹・四肢に浮腫性紅斑と小型の水疱が出現し,当科を受診.自己免疫性水疱症を疑ったが,血清中の天疱瘡および類天疱瘡抗体(抗Dsg1,抗Dsg3,抗BP180,抗BP230抗体)は全て陰性.抗核抗体は320倍で,疾患標識抗体としては抗SS-A抗体のみが陽性.紅斑部の皮膚病理所見では,基底膜部の液状変性と真皮の血管や付属器周囲にリンパ球や好中球の浸潤が認められた.蛍光抗体直接法では,紅斑部にIgGとC3,前腕の無疹部にはIgG,IgM,C3が基底膜に沿って帯状に沈着し,紅斑部と無疹部の真皮血管壁にIgGとC3の沈着がみられた.蛍光抗体間接法で同定した基底膜のIgG沈着は,1M食塩水剥離ヒト皮膚を用いた間接法では真皮側の基底膜に一致していた.
      発熱や関節痛などの全身症状はなかったが,免疫組織学的所見より水疱性ループスエリテマトーデスと考えてプレドニゾロン30mg/日の内服を開始した.口腔内潰瘍が難治で,顔面や耳介,手掌,足底に紅斑,体幹・四肢に多発する環状紅斑が出現し,エリテマトーデスの全身症状の出現も危惧された.ステロイドパルス療法を施行したところ,皮膚や粘膜の症状は劇的に改善した.初診から10ヶ月後の現在,プレドニゾロンを6 mg/日まで減量しているが,再燃を認めない.その後の検討で,血清中にVII型コラーゲンに対するIgG抗体を同定した.本症の特異な臨床経過ならびに免疫学的所見について考察する.
  • 福井 翔一, 梅田 雅孝, 西野 文子, 中島 好一, 古賀 智裕, 川尻 真也, 岩本 直樹, 一瀬 邦弘, 平井 康子, 玉井 慎美, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 372a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】70歳男性【主訴】睾丸痛【現病歴】30年の糖尿病歴あり,2年前から糖尿病性腎症のため血液透析中だった.X年8月中旬に睾丸痛を自覚し,発熱も伴っていたことから透析中の病院に入院し,精巣炎・精巣上体炎の診断で抗生剤加療を行われるも改善しなかった.8月下旬より両下肢の筋力低下のため,歩行が徐々に困難となった.9月下旬より発熱が持続し,睾丸痛も悪化し,当院泌尿器科に緊急搬送され,精巣上体炎の診断で緊急手術が行われた.手術後から末梢血の好酸球増多がみられ,病理では精索間質の増生と好酸球浸潤とフィブリノイド壊死を伴う径0.5mmまでの小血管炎を認めたため,膠原病科に転科した.【入院後経過】抗好中球細胞質抗体(ANCA)は陰性で,各種寄生虫抗体は陰性だった.両下肢の筋力低下がみられ,両側Babinski反射が陽性であり,MRIではC1とTh4-6にT2強調画像で高信号域を灰白質主体に認めた.3椎体にまたがる長大な病変だったが,視神経炎はみられず,抗アクアポリン4抗体ならびに抗Myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体は陰性だった.髄液中の好酸球も陰性だった.病理所見から好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と診断し,ステロイドパルスの後,プレドニン50mgによる後療法により好酸球は消失し筋力も回復した.1カ月後のMRIでは脊髄病変は著明に縮小していた.
  • 沼田 茂樹, 岩田 洋平, 有馬 豪, 矢上 晶子, 牛窓 かおり, 松永 佳世子
    2015 年 38 巻 4 号 p. 372b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      42歳女性.乳癌の肺転移に対する化学療法中に顔面・躯幹・四肢に紅斑が生じていた.初診の2週間前から皮疹が急速に拡大したため,薬疹と考えられ薬剤を変更されたが,皮疹が改善しなかったため当科に紹介された.皮膚所見ではヘリオトロープ疹,Gottron徴候,scratch dermatitis等があり,近位筋の筋力低下と血清CPK,アルドラーゼの上昇を認めたことから皮膚筋炎と診断した.主科では薬疹を否定できず化学療法の中止を考慮されていたが,乳癌の進行により顕在化した皮膚筋炎と判明したため,ステロイド投与に加えて化学療法による抗癌治療を強化することとなった.化学療法に加えてプレドニゾロン20mg/日で治療開始したところ,速やかに皮疹および筋症状は改善し退院することが可能となった.化学療法も奏功し肺の転移巣の増大もなく15ヵ月後まで皮疹も筋炎も再燃せず,小康状態を維持することが可能であった.その後,肺転移巣が再増大を示し化学療法が無効となったため,緩和医療へと移行し間もなく呼吸不全にて永眠した.
      自験例は皮膚所見から皮膚筋炎と診断できたことで,ステロイド治療に加えて抗癌治療の強化を提案し,1年以上にわたり患者のQOLを保つことが可能であった.自験例のように抗癌療法中に顕在化した皮膚筋炎は薬疹との鑑別が大切であり,膠原病に精通した皮膚科医の役割は非常に大きいと考え報告した.
  • 平松 澄恵, 大村 浩一郎, 辻 英輝, 村上 孝作, 井村 嘉孝, 湯川 尚一郎, 吉藤 元, 三森 経世
    2015 年 38 巻 4 号 p. 373a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      TAFRO症候群は,血小板減少,胸腹水,発熱,骨髄線維化,肝脾腫を特徴とした症候群で,Castleman病(CD)の多中心性非IPL(idiopathic plasmacytic lymphadenopathy)型の一亜系と考えられており,急速な進行をきたす予後不良の病態である.日本からの報告がほとんどで,非常に希少な疾患である.我々は,TAFROの5徴に加えて心筋障害を併発した1例を経験した.症例は48歳男性.発熱,呼吸苦,胸腹水,全身浮腫,低アルブミン血症,重度血小板減少,貧血,腎不全,蛋白尿を認め,入院した.培養検査を繰り返すも陰性で,CT検査で全身に多発性リンパ節腫脹を認め,鼠径リンパ節生検でCDの形質細胞型に合致する所見を呈し,TAFRO症候群と診断した.第10病日には心筋障害による心不全をきたし,無尿となった.ステロイドパルス療法,トシリズマブ,免疫グロブリン大量療法,血漿交換などを施行するも改善はみられず,輸血と透析を繰り返しつつ病態は悪化した.そこで,第34病日よりリツキシマブ(600mg × 4回)を投与したところ急速に病状が改善し その1か月後には透析から離脱し,血小板数と心機能も正常化した.心筋障害を伴うTAFRO症候群の報告は初であり,リツキシマブの有効性を証明した貴重な症例と考えられる.
  • 植木 将弘, 戸澤 雄介, 竹崎 俊一郎, 小西 祥平, 山田 雅文, 小林 一郎, 有賀 正
    2015 年 38 巻 4 号 p. 373b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      血管炎はSLEやSSの病態の一つとして知られている.全身浮腫で発症しSLE・SSと診断した症例を報告する.【症例】15歳女児 14歳6ヶ月時に感冒に罹患し,半月後に発熱と倦怠感が出現した.血小板減少とFDP上昇,肝逸脱酵素上昇と血沈・CRP亢進があり,CT上肺炎と腹水を認めた.感染症に伴うDICの診断で治療されたが改善なく,呼吸苦と全身浮腫が出現した.CT上胸水出現と腹水増加があり,精査加療目的に当院へ転院した.転院時に頬部紅斑,肝脾腫,リンパ球減少を認め,抗核抗体・抗SS-A抗体が陽性であった.皮膚生検でperivascular dermatitisを認め,以上よりSLEと診断した.蛋白尿は軽度で,便中α1アンチトリプシンクリアランスは正常であった.MRシアログラフィーで耳下腺のT2高信号域の増加を認め,口唇生検はGreenspan分類grade 2でありSSと診断した.PSLとアルブミン・利尿剤で状態の改善を図り,mPSLパルス療法3クールと低用量シクロフォスファミド(IVCY 500 mg/dose,隔週投与)療法6クールを施行した.その後PSL・アザチオプリン内服で病勢は安定している.発症前は体重60kg,入院時65kg,最高79kgまで増加し治療とともに58.5kgとなった.mPSLパルス2クール後の腎生検で管内増殖性糸球体腎炎の所見を認めた.半月体形成・硬化病変や免疫複合体の沈着はなかった.SLE・SSを背景として,炎症によるアルブミン産生低下と血管炎による透過性亢進で全身浮腫をきたしたと考えられた.
  • 河本 敏雄, 仲野 総一郎, 鈴木 智, 松平 蘭, 金井 美紀, 高崎 芳成, 山中 健次郎
    2015 年 38 巻 4 号 p. 374a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【現病歴】2006年他院でリウマチ性多発筋痛症(PMR)と診断された.2012年7月に当科受診となり,多関節炎を認めseronegative RAと診断し,プレドニゾロン(PSL)4 mgとアザルフィジン投与開始で改善を認め,投与中止していた.2014年5月に全身の筋肉痛と多関節痛,眼痛を伴う頭痛症状の併発を認め,陰性化していたCRPの再上昇を認め,外来でPSL 30mgまで増量するも症状が改善せず,精査加療目的で入院となった.【入院後経過】眼痛を伴う頭痛症状が改善せず,頭痛の精査として,頭頸部MRIやPET-CTを施行するも,原因が判明しなかった.造影頭部3DCT施行したところ,右側頭動脈炎の途絶所見が認められた.側頭動脈炎と診断し,ステロイドセミパルス療法を施行し,後療法としてPSL 50mg投与開始した.頭痛,眼痛症状は軽快を認め,follow upの造影頭部3DCTでは右側頭動脈の途絶所見が改善を認めた.その後,PSLを30mgまで漸減したが,CRPの上昇傾向を認めたため,タクロリムスを併用し軽快傾向を認め,退院となった.【考察】本症例では,PET-CTやMRIでは指摘されなかった側頭動脈の狭窄病変が頭部造影3DCTで指摘された.その後に経験した二症例に関しても,同様に頭部造影3DCTが診断に有用であった.PMRに併発する側頭動脈炎の診断法に関して,文献的考察を含めて報告する.
  • 祖父江 秀晃, 妹尾 高宏, 木田 節, 井上 拓也, 藤岡 数記, 藤井 渉, 村上 憲, 山本 相浩, 河野 正孝, 川人 豊
    2015 年 38 巻 4 号 p. 374b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】48歳女性【主訴】月経過多,紫斑【既往歴】21歳 アレルギー性紫斑病【現病歴】30歳時に出産を契機に抗核抗体高値,補体低下,蛋白尿,白血球・血小板減少があり全身性エリテマトーデスと診断.プレドニゾロン(PSL)10mg/日およびシクロスポリン(CyA)100mg/日で血小板が2~3万/μLで推移していた.2011年7月血小板が減少しPSL 20mg/日に増量しロミプロスチムを開始.CyAの副作用で12月からPSL 30mg/日に増量のうえタクロリムス(TAC)に変更.ロミプロスチムは5 ug/kgよりは増量できず血小板2万/μL前後であった.2014年5月に鼠径部リンパ節腫脹を契機に肛門管癌と診断されTACを中止.ロミプロスチムの投与間隔を短縮して血小板5万/μLまで回復したため8月中旬に化学療法,9月初旬に放射線療法をおこなったが著明な骨髄抑制で頻回の輸血を要した.ロミプロスチムをエルトロンボパグに変更しTAC再開したところ血小板が1万/μLぐらいで推移.12月にγグロブリン大量療法で一時的に血小板を確保したうえで脾摘術を施行したところ2015年1月に入り回復し輸血なしでも血小板4~10万/μLを保つようになった.肛門管癌もPETで同定できないほど縮小し経過観察の方針となっている.【結語】免疫抑制やトロンボポエチン受容体作動薬にも抵抗する血小板減少にもγグロブリン大量療法と組み合わせた脾摘は期待できる治療である.
  • 池田 高治, 安田 葉月, 古川 福実
    2015 年 38 巻 4 号 p. 375a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】67歳女性【主訴】手指・肘部紅斑【現病歴】平成27年1月5日,両手指・肘部に疼痛・鱗屑を伴う紅斑が出現し,のちに口内炎・微熱も出現して持続した.他院で抗生剤を投与されるも改善しなかった.1月26日,当科を受診し膠原病を疑われ入院した.【入院後経過】全身性エリテマトーデスが疑われ入院したが,特徴的な性質・分布を示す皮膚症状と間質性肺炎を伴い,尿中ミオグロビン・血中アルドラーゼの上昇を認めるものの筋症状のないclinically amyopathic dermatomyositisと診断した.合併しうる悪性腫瘍の全身検索を早急に行い,認めなかった2月3日よりステロイドパルス療法,シクロフォスファミドパルス療法,シクロスポリン内服投与,エンドトキシン吸着療法を施行した.画像上diffuse alveolar damage patternを示した間質性肺炎は急速に進行し,2月10日広範な皮下・縦隔気腫を生じ,2月12日死亡した.【考察】皮膚筋炎に伴う間質性肺炎と血中IL-6,IL-10,TNFα値などは相関するとされており,エンドトキシン吸着療法は敗血症性ショックでこれらの値を減少させると報告されている.間質背肺炎を伴うamyopathic dermatomyositisへのエンドトキシン吸着療法の有効性を示す報告があり,本症例にも適用したが,救命できなかった.しかし1回目のエンドトキシン吸着療法前後で血中IL-6値は減少していた.本症例での血中IL-6値などの変動を示し,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 豊永 貴彦, 小林 拓, 斉藤 詠子, 中野 雅, 梅田 智子, 日比 紀文
    2015 年 38 巻 4 号 p. 375b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】Microscopic colitisは病理組織学的にlymphocytic colitis(LC)とcollagenous colitis(CC)に大別され,本邦では多くの症例がプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの薬剤関連と考えられているが,その詳細な原因は未だ不明である.【症例】60歳代の男性.元来下痢傾向にあったが,2010年胃癌に対する幽門側胃切除を契機として,両側足背の浮腫性関節痛を伴い下痢が増悪した.上下部消化管内視鏡にて肉眼的に異常所見なく,慢性下痢精査目的に2014年11月当院を紹介となった.IgG 1735 mg/dl,抗核抗体640倍以外に特記すべき検査値異常なし.下部消化管内視鏡再検にて組織検査の結果よりLCと診断され,PPIを中止したが下痢の改善は得られなかった.2015年4月の下部消化管内視鏡再検では上皮直下のcollagenous bandが検出され,CCの診断となった.下痢の増悪に伴い,腸液の喪失から低カリウム血症(2.8mEq/L),重度のアシドーシス(pH 7.058)を呈したため,5月よりプレドニゾロン60mg/日の経静脈投与を行い,関節炎症状,下痢ともに改善した.【考察】関節炎症状を伴うmicroscopic colitisの重症例を経験した.関節炎症状,腸炎症状のいずれもがステロイドに良好な反応を呈し,病態の背景として自己免疫性機序の存在が強く推察された.
  • 中坊 周一郎, 合地 史明, 大村 浩一郎, 三森 経世
    2015 年 38 巻 4 号 p. 376a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】66歳女性:関節リウマチ(RA)Stage IV Class 2抗CCP抗体(+)リウマトイド因子(+)【経過】45歳時RA発症.メトトレキサート(MTX)中心に治療されるも活動性残存.61歳時に肺癌(Stage IIIA,adenocarcinoma)発症.手術および術後補助化学療法施行.化学療法施行中はRAの活動性は抑えられていたが,終了後再燃.手術前から中止していたMTXを再開し,次第に増量していたが,活動性を抑えきれない状態で63歳時に肺癌再発し再びMTX中止.その後肺癌に対してALK阻害薬のクリゾチニブ(CRZ)を導入したところ,まもなくRAの疾患活動性は低下し,他覚的所見は消失.その後CRZ中止するとRAの病勢が再燃するもCRZ再開と共に再び安定.CRZがRAに奏功していると考えられた.66歳時に肺癌悪化,同じALK阻害薬のアレクチニブ(ALC)に変更したところ,肺癌は改善するもRAの病勢は再燃.現在もDMARDs増量して対応中.【考察】CRZ,ALCは共にALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に用いられる経口ALK阻害薬である.ALCがほぼALK選択的であるのに対し,CRZはc-METも共に阻害する.本例の経過からはRAにはCRZのc-MET阻害作用が有効であったと推測される.c-METは肝細胞増殖因子(HGF)の受容体であり,HGF/c-METとRAの関係についてはいくつかの文献的報告がある.本例はc-METがRAの新規治療標的になる可能性を示唆する興味深い一例である.
  • 荻田 千愛, 東 幸太, 壼井 和幸, 安部 武生, 横山 雄一, 古川 哲也, 田村 誠朗, 斉藤 篤史, 西岡 亜紀, 関口 昌弘, 東 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 376b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】家族性地中海熱(FMF)とは持続時間が数日と,比較的短い周期性発熱と無菌性の漿膜炎を主徴とする遺伝性の自己炎症性疾患である.地中海沿岸地域で最も有病率が高いのだが,本邦でも症例報告がある.【症例】25歳女性.高校生の時,扁桃腺炎による発熱を認めていた.21歳頃に扁桃腺摘出し,その後1年間は発熱を認めなかったが,23歳頃から39℃以上の発熱が1ヶ月に1度の頻度で起こり,同時期にリンパ節腫脹も認めた.周期的に症状が出現する為,抗生剤,NSAIDs処方による対処療法を行っていた.H25年10月25日より腹痛が出現するも,下部内視鏡検査では炎症性腸疾患,腫瘍性病変は否定的であった.以降も周期的な発熱やリンパ節腫脹の出現が続き,精査より感染症,膠原病も否定的である事から,自己炎症症候群疑いでH26年3月19日に当科紹介受診となった.MEFV遺伝子解析結果が出るまで,通院にて治療並びにコルヒチンの効果判定目的で1 mg/日で投与を開始するも,その間も周期熱,腹痛は認めていた.解析よりMEFV遺伝子exon10(M694I)の変異を認めた事からFMFと診断,コルヒチン3 mg/日に増量とした.以降発熱,腹痛は軽減している.【考察】MEFV遺伝子異常を検出し,コルヒチンにて寛解を得たFMFの1例を経験した.本邦は地中海沿岸に比べ極めて発症例が少ないが,原因不明の発熱と腹痛を繰り返す患者において,FMFは感染症,自己免疫疾患と鑑別すべき重要な疾患の1つであると考えられる.
  • 佐藤 洋志, 増岡 正太郎, 山田 壮一, 進藤 恵実子, 川添 麻衣, 鹿野 孝太郎, 藤尾 夏樹, 鏑木 誠, 村岡 成, 金子 開知, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 377a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【はじめに】脳静脈洞血栓症(CVT)は先天的凝固蛋白欠乏,悪性腫瘍,抗リン脂質抗体症候群(APS)などを危険因子として発症する疾患である.稀ではあるが全身性エリテマトーデス(SLE)との合併例も報告されている.【症例1】42歳女性.SLE,APSに対してプレドニゾロン(PSL)3 mg,タクロリムス(TAC)1.5mg,ダビガトラン150mgにて加療されていた.受診1ヶ月前から頭痛,めまい,左下肢しびれが出現し,頭部MRIにてCVTと診断された.ヘパリンとワーファリンによる抗凝固療法を行い症状の改善を認めた.【症例2】27歳女性.20歳時にSLEを発症,PSL 5 mg,TAC 1.5mgにて加療継続していた.受診1ヶ月前より頭痛,全身性浮腫が出現し精査目的に入院.高疾患活動性のSLEと診断しステロイドパルス療法を開始したが,その後に急激に意識障害が出現.左側頭後頭部に広範な脳出血を認め,頭部造影CTにてCVTと診断した.緊急開頭減圧術を施行するも出血病変は拡大し死亡した.【考察】SLE患者にCVTを認める頻度は1%未満と考えられているが,高疾患活動性期に発症する傾向がある.今回の2症例はともに高疾患活動性であり,さらにAPSの合併,低蛋白血症,凝固蛋白欠乏などの危険因子も併存し発症の原因となったと推察される.CVTは死亡例も見られ,SLEにおける中枢病変の一つとして早期診断が重要である.
  • 籏智 さおり, 辻本 考平, 田淵 裕也, 新川 雄高, 谷口 雅司, 白杉 郁, 藤田 昌昭, 八木田 正人
    2015 年 38 巻 4 号 p. 377b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      症例は39歳女性.2013年8月発症の全身性エリテマトーデス(SLE)に対して,プレドニゾロン8 mg/日とタクロリムス3 mg/日で加療中であった.2014年8月12日定期受診時,担当医に妊娠報告あり.体調や検査データには著変を認めず.帰宅後より下痢・腹痛・倦怠感,23日より頭痛が出現.27日当院産科外来受診した際,上記症状は消失していたが,血小板数4万/μLまで低下しており当科緊急入院となった.溶血性貧血,血小板減少があり,補体価や抗dsDNA抗体価等変動なく,C7HRP陰性,フェリチンやLDH,中性脂肪,AST/ALTといった血球貪食を疑うデータ異常もないことから,妊娠契機とした血栓性微小血管障害症(TMA)を第一に考えた.Day1より連日の新鮮凍結血漿輸血,Day3より計4回の血漿交換療法を施行したが,血小板数含め病状の改善を認めなかった.妊娠が原因・増悪因子である可能性が除外できない点,また現治療を継続していく上で,妊娠の維持自体が困難と言わざるを得ないことから可及的すみやかに人工妊娠中絶が望ましいと考え,Day8に血漿交換施行後,緊急子宮内容除去術を施行した.以後病勢は速やかに鎮静化し,Day11,8回目の血漿交換を最後に病状は安定した.SLE患者の妊娠期間中に生じた血小板減少の原因の鑑別は多岐にわたる.TMA自体も自己免疫学的機序の他,タクロリムス等の薬剤性,ウイルス性など様々な原因が考えられ,治療とともに原因の検索が重要である.
  • 田村 誠朗, 東 幸太, 壷井 和幸, 安部 武生, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 吉川 卓宏, 斎藤 篤史, 西岡 亜紀, 関 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 378a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】65歳女性.1998年多発性筋炎と診断されPSL加療開始.治療経過中の2007年に関節リウマチを発症.2013年,多発性筋炎治療のためTacを開始.2015年2月上旬特に誘因なく全身倦怠感,食思不振が出現,さらに高血圧,腎機能低下,血小板減少,溶血性貧血を認めたことから,TMAが疑われ入院となった.同薬中止,血漿交換療法により血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検したところ病理組織からはTMA,強皮症腎,CNI腎症が疑われた.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比し著明に低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非典型的であった.Ca拮抗薬,ACE阻害薬,ARBによる降圧加療をおこなったが血圧コントロールは困難であり,そこで強皮症腎に対して近年臨床効果が報告されているエンドセリン受容体拮抗薬を開始したところ徐々に血圧は低下し,良好な血圧コントロールを得た.本症例は軽度強指症症状やレイノー症状があり,また後に抗PL-7抗体陽性であることが分かったが,同抗体陽性例では強皮症を合併した報告もある.皮膚筋炎,多発性筋炎の加療に使用されるTacの投与については,TMAを誘発するとの報告もあり,また強皮症患者での投与では強皮症腎を発症した報告もある.同抗体陽性の患者にTac投与する際は強皮症腎やTMAの発症に十分留意する必要がある.若干の考察を加え報告する.
  • 田所 麗, 安部 武生, 斉藤 篤史, 東 幸太, 壺井 和幸, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 田村 誠朗, 吉川 卓宏, 西岡 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 378b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      症例は57歳女性.主訴は意識障害・発熱・腹痛・下痢.H21年に成人発症スチル病(adult-onset Still's disease;AOSD)と診断されPSL 30mg・CyA 100mgにて加療されていたが,H27/5/10下痢・嘔吐にて入院となった.入院時血液検査は,肝機能異常なし,BUN 35mg/dl, Cre 2.87mg/dl, WBC 8160/μl, CRP 33.2mg/dl, IgG 568mg/dl, IL-6 9800pg/ml, IL-18 16500pg/ml, IL-2R 2198U/ml,フェリチン82.8ng/ml, PCT 299.2ng/ml,プレセプシン175pg/ml.腹部CTでは腸管浮腫を認めた.感染性腸炎として抗生剤投与した所,第7病日には消化器症状・血液検査は改善.しかし第11病日に頚部・体幹部の紅斑・意識レベル低下・弛張熱を認めた.この際の血液検査はAST 332U/l, ALT 319U/l, LD 987U/l, BUN 31mg/dl, Cre 1.54mg/dl, WBC 9570/μl, CRP 10.5mg/dl, Hb 8.4g/dl, PLT 15.3万/μl, TG 309mg/dl, D-Di 52.84 μg/ml, IL-6 140pg/ml, IL-18 25000pg/ml, IL-2R 12688U/ml, フェリチン 2410ng/ml, PCT 15.64ng/ml,プレセプシン 12300pg/ml.敗血症性ショック,もしくはAOSDの悪化に伴うMASが考えられた為,抗生剤継続しつつMASの治療としてmPSLパルス(500mg/日)を3日間,急性腎障害とVCMの血中濃度上昇に対して血液透析(HD)を行った.しかし第14病日HD終了後に突然の呼吸困難とSpO2低下を認め,心肺停止に至った.AOSDに伴うMASは敗血症と臨床的に類似する点が多く,本症例でも鑑別に苦慮した.文献的な考察を加えて報告する.
  • 石澤 彩子, 室崎 貴勝, 釜田 康行, 岩本 雅弘, 簑田 清次
    2015 年 38 巻 4 号 p. 379a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      62歳男性.1型糖尿病(合併症なし)で近医通院中であったが,当科入院約4か月前より両下肢の疼痛が出現し,歩行困難となったため近医に入院した.高熱も認め感染症として抗菌薬にて加療され,当初は改善認めなかったが徐々に解熱,炎症反応低下,下肢痛も改善を認め退院した.退院直後より下腿浮腫・紫斑が新たに出現し食思不振となり,1週間前に脱水,腎機能低下,炎症反応高値のため近医に再入院した.紫斑と腎機能悪化よりIgA血管炎が疑われたため当科転院となり,紫斑の生検で白血球破砕性血管炎とIgA沈着,上下部消化管内視鏡では十二指腸潰瘍と回盲部末端にびらんを認めた.尿蛋白 5 g/日,尿潜血,異常円柱も認め腎生検を予定していたが,腎機能悪化,乏尿を認めたため入院7日目にステロイドパルス,その後シクロホスファミドパルスを施行した.しかし入院13日目になり左足趾の色調が不良となり,PGE1製剤を開始したが左足の壊死が進行した.右総腸骨動脈・左外腸骨動脈の高度狭窄と左膝窩動脈の閉塞を認め,血管炎による下肢虚血と考えシクロホスファミドパルスを追加したが改善なく,入院33日目に壊死部の感染から敗血症をきたしたため緊急で左下肢切断術を施行した.大血管病変は糖尿病の影響も検討が必要だが,IgA血管炎に下肢虚血を合併した例は稀であるため報告する.
  • 花井 俊一朗, 永谷 勝也, 秋山 陽一郎, 石澤 彩子, 長嶋 孝夫, 佐藤 健夫, 岩本 雅弘, 簑田 清次
    2015 年 38 巻 4 号 p. 379b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】27歳の女性【主訴】嗄声と咽頭痛【現病歴】約1年前から嗄声と咽頭痛とを自覚していた.耳鼻咽喉科を受診し,喉頭ファイバースコピーで竹節状声帯を指摘された.血液検査で抗核抗体が陽性であったため基礎疾患として膠原病が疑われ,プレドニゾロン30 mgを開始されたが改善を認めず,当科を紹介受診し,精査のため入院した.【入院後経過】入院時の検査で抗核抗体1280倍,リウマトイド因子,抗SS-A抗体および抗SS-B抗体が陽性であり,Sjogren症候群が疑われた.ガムテストおよびシルマーテストは陰性,口唇腺生検では軽度のリンパ球浸潤を認め,診断基準は満たさなかったが,プレドニゾロン投与により唾液腺炎が改善した可能性を考え,臨床的にSjogren症候群を疑った.【考察】竹節状声帯は1993年に本邦から寶迫らが全身性エリテマトーデス(SLE)患者に認められた特異な喉頭所見として初めて報告した.SLEなどの自己免疫性疾患に合併する病変として複数の報告があるが,病態は不明で確立された治療法はない.自己免疫性疾患に伴う特徴的な声帯病変である竹節状声帯では,嗄声が唯一の初発症状のこともあり,原因として自己免疫性疾患の存在を念頭に置くことが重要であると考える.【結語】Sjogren症候群が疑われた竹節状声帯の一例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.
  • 東 幸太, 安部 武生, 横山 雄一, 荻田 千愛, 古川 哲也, 田村 誠朗, 斎藤 篤史, 西岡 亜紀, 壺井 和幸, 吉川 卓宏, 関 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 380a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】48歳,女性,主訴は発熱,全身倦怠感.2013年12月から38℃の発熱が出現し近医受診.間質性肺炎を指摘されるも経過観察となっていた.2014年1月に手指の皮疹,末梢血流障害が出現.成人Still病疑いと診断され,ベタメタゾン0.5mg+シクロスポリン75mgでコントロールされていた.2014年11月に発熱,頭痛などの症状出現.頭部MRIで下垂体腫大認め,抗下垂体抗体陽性も認めた為自己免疫性下垂体炎と診断.当院での治療を希望されたため2015年5月当院内分泌科入院となったが,活動性は乏しく無治療経過観察となった.間質性肺炎(IP)・レイノー症状などの症状あることから膠原病疑われ,精査加療目的に当科転科となった.成人Still病は診断基準を満たすものではなく,現在の病態を正確に把握するため,ベタメタゾン,シクロスポリンは中止とした.血液検査は抗ARS抗体陽性,筋原酵素上昇を認めた.IPを伴う抗ARS症候群と診断し,mPSL 500mg × 3日間投与し,後療法はPSL 35mg/dayで開始とした.その後症状は治まっていたが,3日後に再度熱発・筋痛が出現し汎血球減少も伴った.骨髄穿刺で貪食像を認めたため,HPSと考え再度mPSL 500mg × 3日間投与.またシクロスポリン中止が症状増悪に起因すると考え125mgで再開.その後は熱発・筋痛は消失し再燃を認めていない.抗ARS症候群のHPS合併例は11例しか報告がなく,文献的考察も交えて報告する.
  • 大島 正嗣, 西脇 農真, 長澤 洋介, 杉山 海太, 井汲 菜摘, 野崎 高正, 白岩 秀隆, 唐澤 博美, 岩田 光浩, 原岡 ひとみ, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 380b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      症例は82歳男性.平成26年11月より全身倦怠感と労作時呼吸困難を認め,12月に他院受診.血液検査でWBC 12600/μl,CRP 11.74 mg/dlと炎症反応高値を認めた.抗生剤加療を行うも症状,炎症反応は改善を認めなかったため当院呼吸器内科に紹介受診.受診時の胸部CT検査にて両側肺底部に網状影,浸潤影を認め,精査加療目的で同科に入院.入院後の血液検査でMPO-ANCA 34.7 U/mlと高値を認め,顕微鏡的多発血管炎(MPA)による間質性肺炎が疑われ,当科転科となる.入院第4病日に頭頸部CT検査を施行し,左中鼻道内に腫瘤性病変を認め生検を施行したところ,小型~細動脈周囲に炎症細胞浸潤を認め,フィブリノイド壊死は顕著ではなかったものの,時間の経過した結節性多発動脈炎やMPAなどが考えられた.以上より鼻腔内腫瘤はMPAによる血管炎によるものと判断し,プレドニゾロン(PSL)60 mg/日を開始した.PSL開始後鼻腔内腫瘤の縮小を認め,炎症反応やMPO-ANCAの低下を認めため,PSL 30 mg/日で退院となった.MPAに鼻腔内腫瘤を合併した例は稀であり,文献的考察を加え,報告する.
  • 國下 洋輔, 長田 侑, 井畑 淳, 長岡 章平
    2015 年 38 巻 4 号 p. 381a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】43歳,女性【主訴】多関節痛,労作時の息切れ【病歴】小児期よりアトピー性皮膚炎で外用剤を使用していた.X-5年秋より乾性咳嗽が出現し,X-3年5月にCTで間質影を認め,抗ARS抗体陽性を指摘.X-2年1月に胸腔鏡下肺生検でfibrotic NSIPと診断された.X年1月より,労作時の息切れが出現し,手指の乾燥・あかぎれが増悪し,3月上旬より,朝のこわばりと手関節痛が出現.抗CCP抗体陽性を指摘され,当科へ紹介された.【経過】抗ARS高値陽性,抗CCP抗体陽性,抗SS-A抗体陽性で,活動性の間質性肺炎に加え,関節エコーで滑膜炎があり,小唾液腺生検で導管周囲のリンパ球浸潤も認め,関節リウマチとシェーグレン症候群の分類基準を満たした.アトピー性皮膚炎の既往があり,肉眼的な診断に苦慮したが,皮膚生検の病理所見でmechanic's handに矛盾しない所見もあり,抗ARS抗体症候群としても矛盾しないと考えられた.【考察】近年,本邦で抗ARS抗体測定が保険適応となり,従来の多発性筋炎や皮膚筋炎といった分類とは異なる概念として,抗ARS抗体症候群という疾患群が提唱され,抗ARS抗体,抗CCP抗体がともに陽性で関節炎を伴った症例が報告されている.抗ARS抗体のプロファイルにより,症状や予後が異なる可能性があり,今後,解析が必要ではあるが,現時点における抗ARS抗体と抗CCP抗体・関節炎や皮膚所見について文献的検索をふまえ,考察する.
  • 壷井 和幸, 吉川 卓宏, 東 幸太, 安部 武生, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 丸岡 桃, 田村 誠朗, 齋藤 篤史, 西岡 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 381b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【症例】52歳男性【主訴】下肢筋力低下,上肢・頭部・体幹部の振るえ【現病歴】2014.2月より両手の発赤腫脹出現し4月に近医受診し,CK 600IU/L台の筋原酵素の上昇,2-3年前より階段昇降の困難感および増悪傾向,ANA陰性,抗Jo-1抗体陰性より,5月に精査目的で当科紹介受診となった.上記所見に加え,上肢・頭部の振るえがあり,入院精査の予定としたが,本人の仕事の都合でキャンセルとなり,その後近医クリニックを受診されていた.近医クリニックで皮膚筋炎の診断で,プレドニゾロン(PSL)30mg/dayより治療開始となり,シクロスポリン(CyA)追加となったが,症状改善は乏しく,体幹部の振るえも増悪認めたため,2014.12月に当科受診し,2015.1月に精査目的で入院となった.入院時,上肢・体幹部・頭部の安静時振戦,女性化乳房,筋原酵素の上昇があり,変性疾患も疑い,当院神経内科評価の下,SBMAが疑われた.家族歴からは,母方のおじにSBMAの既往があり,AR遺伝子CAG反復配列解析では,リピート数49回(正常11-36回)を認め,SBMAと診断した.PSL・CyAについては,入院中に漸減・中止の方針とした.【考察】特発性炎症性筋炎の診断については,当科で経験した本症例のような変性疾患も臨床所見としては類似することがあるため,より慎重に鑑別し臨床に臨む必要がある.
  • 藤田 計行, 澁藤 宣行, 松浦 郁子, 山村 裕理子, 野村 祥久, 西村 晋輔, 桃木 律也, 上野 明子, 丸山 啓輔, 遠部 恒人, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 382
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】TAFRO症候群(T:血小板減少症,A:全身性浮腫,F:発熱,R:骨髄線維症/腎機能障害,O:肝脾腫)はキャッスルマン病(CD)亜型とされる多クローン性リンパ増殖性疾患で,SLE類似の臨床症状・所見を呈する.当院で経験した3症例を報告する.【症例】症例1 65歳女性.主訴:発熱,浮腫,紫斑,蛋白尿,心嚢液貯留,血小板減少,リンパ節腫大.CRP高値,Alb低下,ANA/RF/SS-A抗体/LAC陽性.腎:メサンギウム増殖性腎炎.リンパ節:限局型CD.ステロイド/CyAに反応良好.症例2 49歳女性.主訴:発熱,高血圧,浮腫,貧血,血小板減少,腎機能低下,リンパ節腫大.CRP高値,Alb低下.自己抗体陰性.CT:リンパ節腫脹/胸腹水.リンパ節:リンパ球増殖.骨髄:ドライタップ.ステロイド/CyAに反応.症例3 56歳女性.発熱,全身倦怠感,浮腫,汎血球減少.CRP高値,Alb低下,ANA/RF/LAC陽性.CT:肝脾腫/リンパ節腫大/全身浮腫.リンパ節:限局型CD.骨髄:ドライタップ.ステロイド/トシリズマブに反応せず,突然の心肺停止,出血/多臓器不全で死亡.【考察】欧米CDに多いHIV/HHV-8は検出されず,血清IL-6/VEGFの異常高値を認めた.自己抗体産生を伴うSLE様症状にはIL-6/VEGF系の持続的活性化の関与が示唆された.
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