日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
38 巻, 4 号
第43回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の229件中101~150を表示しています
一般演題(ポスター)
  • 河邊 明男, 中野 和久, 山形 薫, 中山田 真吾, 田中 良哉
    2015 年 38 巻 4 号 p. 317a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景・目的】RAでは線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)が骨軟骨破壊の中心を担うが,RA由来FLS特有のDNAメチル化プロファイルは攻撃的表現型と関連する.今回,最近DNA脱メチル化酵素として同定されたTetファミリーの調節における炎症の関与を評価した.【方法】関節手術で得た患者由来滑膜とFLSを4~6継代で使用.Tet1-3発現をqPCR,WB,免疫染色で,5hmCの発現をDot blotで評価した.siRNAでTETノックダウン後にTNFで96時間刺激し,各種メディエーター分泌と表面抗原の発現,細胞移動度を評価した.【結果】RA滑膜組織ではOAとの比較で強いTet3発現を認めた.FLSにおいて,炎症性サイトカイン(TNF,IL-1L-6,IL-17等)はDNAメチル化酵素(DNMT)遺伝子発現を低下させた一方で,Tet3のmRNAおよび蛋白発現を増加し,5hmC発現を促進した.さらに,TET3 siRNAにより,TNF依存性のCCL2産生,ICAM-1発現,浸潤能等はほぼ完全に阻害された.【考察】炎症性サイトカインによる慢性刺激はDNMT発現低下による受動的脱メチル化だけでなく,Tet3の発現増加による能動的脱メチル化も促進することが明らかになり,滑膜炎症の持続はエピジェネティック異常を誘導し,FLSの攻撃的表現型を付与することで病態の悪化をもたらすことが示唆された.
  • 小竹 茂, 南家 由紀, 川本 学, 八子 徹, 小橋川 剛, 山中 寿
    2015 年 38 巻 4 号 p. 317b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】発症早期かつ未治療の関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)の患者の末梢血におけるヘルパーT細胞をTh17細胞分画およびこの分画細胞のサイトカインの発現を解析する.【対象と方法】当科受診の早期RA 5例(罹病期間6ヶ月以下),罹病期間24ヶ月の未治療RA 1例および変形性関節症(OA)8例の末梢血におけるヘルパーT細胞をMACS法によりCD4+CD45RO+に分離したのちフローサイトメトリー法によりCCR6, CXCR3, CD161, IL-17, IFNγの発現を解析した.Human Immunology Project(Maecker et al. Nat Rev Immunol. 2012)によりTh17は細胞表面マーカーにより同定した.さらにCD161はヒトTh17の新規マーカーと報告されており(Cosmi et al. JEM 2008),CD161の発現も検討した.【結果】1)CCR6およびCXCR3の発現で4分割した場合,CCR6+CXCR3-分画にIL-17産生細胞の約80%が認められた.この分画のIL-17産生細胞の約80%はCD161+細胞であった.2)IFNγ+Th17細胞のmemory Th細胞に対する比率はRAとOAの間に統計学的有意差は認められなかったがRAではOAよりも少ない傾向が認められた.3)RAのIFNγ+Th17細胞のmemory Th細胞に対する比率は血清抗CCP抗体値と負の相関を示した.【結論】早期RAにおいてはIFNγ産生Th17細胞比が抗CCP抗体値と関連している可能性が示唆された.
  • 藤田 昌昭, 旗智 さおり, 八木田 正人, 高田 義一
    2015 年 38 巻 4 号 p. 318a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      The recruitment of leukocytes from the circulation to inflammation sites is a critical event of the inflammatory response regulated by several processes: leukocyte capturing on endothelial cells, leukocyte adhesion and leukocyte transmigration through endothelial layer. Integrins are a family of cell adhesion receptors and activated integrins support both cell migration and adhesion. Integrins are activated by several factors such as extracellular matrix ligands, chemokines and growth factors. Recently, we discovered that fractalkine (FKN) and human secreted phospholipase A2 type IIA (sPLA2-IIA) activates integrins through the direct binding to integrins. Small peptides from integrin β3 and β1 specifically bound to FKN and sPLA2-IIA and suppressed FKN and sPLA2-IIA-induced integrin activation. These results define a novel mechanism of pro-inflammatory action of FKN and sPLA2-IIA through integrin activation. Integrin peptides may have potential as a therapeutic agent in inflammatory diseases.
  • 近藤 泰, 鈴木 勝也, 竹下 勝, 葛西 義明, 宮崎 宇広, 森田 林平, 二木 康夫, 井上 博, 金子 祐子, 安岡 秀剛, 山岡 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 318b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景・目的】疾患の病態解明,バイオマーカーを探索するためにプロテオミクス解析への関心が高まってきている.本研究の目的は,アプタマーを用いた新規プロテオミクス手法を用いて,関節リウマチ(RA)患者の滑液,血液の蛋白プロファイルの違いを明らかにすることである.【方法】10例の未治療RA,および変形性関節症(OA)の患者から滑液を採取し,血液は30例の未治療RA,および健常人から採取した.核酸アプタマー(SOMAscan Assay; Somalogic Inc. CO, USA)を用いて1128蛋白を定量的に測定した.Ingenuity Pathway Analysisデータベースを用いて,RA滑液,血液中に高,もしくは低発現している蛋白の解析結果を比較した.【結果】炎症関連の蛋白シグナルパスウェイはRA患者滑液,血液どちらとも関連性が見られたが,骨・軟骨代謝シグナルパスウェイとの関連はRA滑液蛋白でのみ認められた.骨・軟骨形成に関わるBMP6, 7(OP-1 family),オステオプロテジェリンはOAと比較してRA滑液中で減少しており,RA炎症関節中では骨軟骨形成の阻害,骨吸収の促進が同時に起こっていると推定された.一方,Wntシグナルを抑制的に制御するDkk1, 4もRA滑液中では減少していた.【結論】RA滑液の新規プロテオミクス解析により,炎症関節内における異常な骨代謝,軟骨形成に関わる蛋白群がハイライトされた.滑液検体を用いた蛋白解析は関節炎に特異的な病態,バイオマーカー探索に有用と考えられた.
  • 藤本 康介, 熊ノ郷 淳, 竹田 潔
    2015 年 38 巻 4 号 p. 319a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      炎症性腸疾患と総称されるクローン病や潰瘍性大腸炎は世界的に患者数が増加している難病である.遺伝的な背景に腸内細菌などの環境因子が加わることで腸管炎症が引き起こされると考えられているが,未だ病態の十分な解明には至っていない.近年ゲノムワイド関連解析(GWAS)が盛んに行われ,疾患感受性遺伝子が数多く同定されている.今回GWASに基づいた潰瘍性大腸炎に関連する疾患感受性遺伝子RING finger protein 186(RNF186)の解析を行った.RNF186は大腸上皮細胞に高発現し,ユビキチンリガーゼ(E3)として働く.Rnf186欠損マウスでは,腸管上皮の透過性が亢進するだけでなく,デキストラン硫酸ナトリウムを用いた薬剤誘導性腸炎(DSS腸炎)の感受性が亢進した.新たにoccludinやLRPPRCがRNF186の基質であることを同定し,Rnf186欠損マウスでは腸管上皮でのoccludinの発現パターンの変化やLRPPRCのタンパク量の増加を認めた.過去の潰瘍性大腸炎患者を対象としたGWASではコーディング領域内のSNPが報告されていたため,そのSNPを反映させた変異マウスを作製したところ,Rnf186欠損マウスと同様にDSS腸炎の増悪を認めた.RNF186は腸管上皮細胞のタンパク質の恒常性を制御することで腸管炎症の発症に関わることが明らかとなった.
  • 神崎 秀嗣
    2015 年 38 巻 4 号 p. 319b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      現在,染色体遺伝子検査専門家育成企画が,様々な学会や研究会でスタートしているが,教育への課題はまだ多い.学習指導要領では,ヒトの遺伝学教育について高校までは本格的に学ばない.メンデルの法則など基礎的な事を学ぶに留まっている.そのような学生が,医療専門職養成校に入学してくる.このような基礎知識を克服する事は至上命題であり,国家試験に合格すれば済む問題でもない.遺伝病が疑われる患者さんの検体検査を行うにあたって,ヒトの遺伝学の深い知識は必要とされ,医師に正確に検査結果を返さなければならない.染色体検査では,結果によって,検査結果を被験者に伝える場合(インフォーム・ドコンセント)等,遺伝リテラシーが豊富でない医師になると,正確に理解されにくく,患者に誤解され易い.被害が大きくなりやすくなるのではないだろうか.近年,浮き彫りになった問題は,市民,医師,臨床検査技師をはじめとする医療専門職の「遺伝リテラシー」の未熟さではないだろうか? 今回,医療専門職の「遺伝リテラシー」の成熟度を増す方法について議論したい.
      Kohzaki, H.* A proposal for clinical genetics (genetics in medicine) education for medical technologists and other health professionals in Japan. Frontiers in Public Health, section Public Health Education and Promotion, “Research Topic”, 2, Article 128, 1-5. 2014.
  • 神崎 秀嗣
    2015 年 38 巻 4 号 p. 320a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      近年,再生医療やヒトゲノムプロジェクトによってもたらされた技術によって,遺伝子検査を受けることによって将来発症する可能性のある病気のことや,家族関係,民族の特有性などを明らかにできるようになった.しかしこれは一方で,個人や家族のプライバシーの問題でもあり,情報をどう管理してどう活用するのかという倫理問題を提起している.情報を知る権利を持つ個人から,個人情報を管理する企業,医療に携わる医師や医療従事者まで巻き込んだ生命倫理について,正しい理解とコミュニケーションができるように,早期の生命倫理教育が必要であると考えている.今回,演者の試みと10年前より取り組まれている長野市の長野清泉女学院高校の取り組みを対比して,議論する.
      1. Kohzaki, H*. Problems and their solutions in genetic counseling education in Japan. Frontiers in Public Health, section Public Health Education and Promotion, “Research Topic”, 2, Article 100, 1-4, 2014.
      2.神崎秀嗣*: 『特集II』看護師への「ヒト遺伝学教育」の必要性,生物の科学 遺伝,69(3), 218-222, 2015.
      3. 松永充博*,神崎秀嗣*: 生命倫理教育のススメ-遺伝子検査の結果を正しく理解し活用するために-,生物の科学 遺伝,69(3), 230-237, 2015.
      (* corresponding author)
  • 粟屋 昭
    2015 年 38 巻 4 号 p. 320b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】神奈川県花粉飛散数とKD患者数の年次動態の交差相関解析,回帰分析によりKDは,遅延型過敏性の花粉惹起疾患(Pollen-Induced Diseases: PID)であり(Int J Environ Res Public Health. 2014, 他2報),花粉被曝→免疫→花粉再感作→遅延型過敏反応のゆっくりとした亢進→全身性血管炎の発症というプロセスが,インフルエンザflu流行期,介入を受けて発症が抑制される現象が着目された.また花粉飛散数増加に連動して患者数が増大するKDや手足口病や伝染性紅斑や無菌性髄膜炎について重複罹患の有無の検討が必要と考えた.【方法・結果・考察】花粉噴霧惹起血管炎やKD発症時BCG接種跡腫脹モデルでのflu感染やIFN-β投与実験の実現に向けて,flu流行時のKD発症干渉の数理解析を行った.KD患者数を1週ごとに区分し,年々のflu患者数ピーク週間のズレを調整して同期化して,fluピーク週前後での患者数の変動につき,一元配置分散分析と多重比較を行ったところ,flu発生peak前後2週間で,発症数の減少が,有意であることが実証された.この知見は,flu流行下KD予備群に生成されたIFN-β等が,花粉再感作により,血管炎発症直前まで進展していた過程に制動をかけKD発症が遅延させられたことを意味する.KD発症者の増加は止まらず,死亡例も増加に転じている現状の打開には,早期の診断とIVIG製剤治療抵抗性に至らないようにIFN-β併用等新たな対処法の治験を行い効果を見ることである.
  • 星 奈美子, 孝橋 道敬, 山入 春香, 具 潤亜, 安冨 栄一郎, 足立 聡一郎, 大塚 崇史, 渡邉 大輔, 大井 充, 吉田 優, 早 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 321a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      IgA欠損症はしばしば自己免疫疾患を合併する.我々はIgA単独欠損症に血小板減少性紫斑秒(ITP),自己免疫性溶血性貧血(AIHA),自己免疫性腸症(AIE)を合併した1症例を経験したので報告する.症例は16歳女性.X才時に下肢紫斑を認め,ITPおよびIgA欠損症と診断された.ステロイド投与にてITPの寛解を得たが,漸減・中止に伴い4年間で4回のITP再燃を繰り返し,経過中にAIHAや寒冷凝集素症も認められた.発症3年後のITP再燃時,ステロイド漸減中に水様性下痢を認め,高度の代謝性アシドーシスを伴う意識消失で当院小児科に緊急入院した.絶食,中心静脈栄養管理,整腸剤,止痢薬投与に反応せず,消化器内科で施行した上下部内視鏡検査では十二指腸球部から下行脚および終末回腸に著明な絨毛萎縮を,生検にて上皮アポトーシス,杯細胞減少等を認めた.血清中に正常腸管組織と反応する自己抗体を認めAIEと診断した.さらにWestern blotでIPEX症候群に特異的とされるAIE関連75kD抗原(AIE-75)に対する自己抗体が検出された.下痢はPSL 40 mg投与で速やかに改善した.IgA欠損症とAIE合併例の報告は検索範囲内で1例のみであり,標的抗原を明らかにしたのは本症例が初めてである.IgA単独欠損症がAIEおよび多彩な自己免疫疾患を呈するIPEX様症候群の基礎疾患となることが示唆された.
  • 秋山 光浩, 鈴木 勝也, 山岡 邦宏, 安岡 秀剛, 竹下 勝, 金子 祐子, 葛西 義明, 宮崎 宇広, 森田 林平, 吉村 昭彦, 竹 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 321b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】IgG4関連疾患(IgG4-RD)は血清IgG4高値と罹患臓器のIgG4陽性形質細胞浸潤が特徴であり,形質芽細胞増加が疾患活動性と相関する.形質芽細胞への分化誘導能を有するT濾胞ヘルパー細胞(Tfh)にサブセットが報告されており,IgG4-RD病態への関与解明を目的とした.【方法】未治療IgG4-RD15名,原発性シェーグレン症候群(pSS)24名,アレルギー性鼻炎(AR)12名,健常人(HC)23名の末梢血Tfh(CD3+CD4+CD45RA−CXCR5+)およびサブセット(Tfh1: CXCR3+CCR6−, Tfh2: CXCR3−CCR6−, Tfh17: CXCR3−CCR6+),形質芽細胞(CD19+CD20−CD27+CD38+cell)をflowcytometryにより同定,血清サイトカイン,Tfh活性化マーカーであるPD-1発現レベルと臨床パラメータとの相関解析を行った.【結果】IgG4-RDではTfh2細胞数がpSS,AR,HCに比較し有意に増加しており,IgG4,IL-4濃度と強い正の相関を示した.さらに,Tfh2細胞数と形質芽細胞数にも強い正の相関を認め,Tfh2のPD-1発現レベルが上昇していた.ステロイド治療により形質芽細胞数,IgG4,IL-4およびPD-1発現レベルは有意に改善したが,Tfh2細胞数に変化は見られなかった.【結論】IgG4-RDはTfh2増加と活性化が特徴的であり,IL-4を介したIgG4産生および形質芽細胞分化への寄与が示唆された.また,治療により形質芽細胞数,IgG4,IL-4値と活性化マーカーは改善するが,Tfh2細胞数は改善せず,本疾患の新たな治療標的となる可能性が示唆された.
  • 庄田 宏文, 藤尾 圭志, 住友 秀次, 岡村 僚久, 山本 一彦
    2015 年 38 巻 4 号 p. 322a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】関節リウマチ(RA)患者においては自己抗原BiP特異的エフェクターT細胞応答が亢進し自己免疫の誘導に関与するが,その誘因は不明であった.BiPはheat shock protein(HSP)70ファミリーに属し微生物HSP70との分子相同性がある.【方法】健常人,RA患者血清中の抗HSP抗体をELISAで測定した.健常人,RA末梢血PBMCとMycobacterium(Myc)HSP70由来ペプチドを共培養し増殖を3H-サイミジン取込法で測定した.MycHSP70をHLA-DR4トランスジェニックマウスに免疫し血清抗体価測定,CD4+T細胞増殖を測定した.コラーゲン誘導性関節炎(CIA)マウス発症直前にMycHSP70ペプチドを内服させ関節炎スコアを観察した.【結果】RA患者では抗MycHSP70抗体価が健常人より有意に高値であり,抗BiP抗体価と相関した.MycHSP70由来HLA-DR4エピトープとしてMycHSP70 287-306を同定した.MycHSP70 287-306はRA PBMC増殖を誘導し,またBiP 336-355エピトープによるPBMC増殖と強い相関を示した.この2つのエピトープは配列におけるP2, P4, P7を共有した.MycHSP70免疫によりBiP反応性T細胞,抗BiP抗体が誘導され,MycHSP70 287-306ペプチド投与によりCIAは改善した.【結論】環境中の抗酸菌曝露により,T細胞エピトープレベルでの分子相同性を介して自己免疫応答を誘導することが,RAの病因のひとつと考えられた.
  • 山崎 聡士, 吉田 雄介, 野島 崇樹, 杉山 英二
    2015 年 38 巻 4 号 p. 322b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の関節骨に対する作用として,破骨細胞活性化を介した骨破壊が知られている.FLSのDKK1を介した骨芽細胞活性への影響を検討する.【方法】RA滑膜におけるDKK1の発現は免疫組織染色で確認した.培養FLSにおけるDKK1 mRNA発現はRT-PCRで,培養FLSにからのDKK1分泌測定はELISAにて行った.Wntシグナルの下流因子TCFの転写活性評価はLuciferase reporter plasmidを用いて行った.Wnt3a刺激による間葉系幹細胞(mesenchymal stromal cell: MSC)における骨芽細胞マーカー発現はRT-PCRで行った.【成績】リウマチ滑膜にDKK1の発現を認め,培養FLSにおいてMSCと同程度のDKK1発現がmRNAおよび蛋白レベルで確認できた.リコンビナントWnt3aで誘導されるTCF転写活性は,FLS培養上清によって抑制された.この抑制効果は抗DKK1抗体,あるいはsiRNAによってDKK1発現を抑制したFLS培養上清により減弱した.Wnt3aで誘導されるMSCの内在性骨芽細胞マーカーの発現もFLS培養上清によって抑制された.【結論】FLSはDKK1を分泌し,骨芽細胞分化を抑制する可能性が示唆された.抗DKK1抗体などによって関節骨破壊の抑制あるいは関節再生を促す可能性が示唆される.
  • 長谷川 久紀, 川畑 仁人, 高木 春奈, 大津 真, 上阪 等
    2015 年 38 巻 4 号 p. 323
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      多発性筋炎(PM)のマウスモデルを用いて,我々は,筋損傷後に再生筋線維が炎症性サイトカインを産生して筋局所の自然免疫活性化を担い,自己骨格筋蛋白成分に反応したキラーT細胞と協調し,自己免疫性筋炎を発症させることを示した.一方,その病態に遺伝因子の関与が推定されるPM/皮膚筋炎(DM)の患者では,遺伝的に筋局所の自然免疫が健常人より活性化しやすい可能性がある.近年,筋原性転写因子MyoDを発現させたヒト人工多能性幹細胞(hiPS細胞)が,筋特異的分子を発現する紡錘状の筋細胞に分化すると報告され,hiPS細胞から分化する筋細胞が,筋局所の自然免疫活性化を担い,PM/DMの発症に寄与するか検証することも可能になると考えられた.そこで,まず,hiPS細胞から分化する筋細胞が,再生筋線維が産生するサイトカインを産生するかを検証した.MyoDを発現するMyoD-hiPS細胞は,MyoDを含むドキシサイクリン(Dox)誘導性ベクターを導入して樹立した.得られたMyoD-hiPS細胞2クローンは,Doxを含む分化培地で紡錘状の細胞へと変化した.これらの細胞の培養上清中のサイトカインをELISAで測定したところ,TNF-α,CCL2,CXCL1,CXCL8,TGFβ-1が産生されていた.MyoD-hiPS細胞2クローンの間には,形態学的変化やサイトカイン産生能に差はなかった.MyoD-hiPS細胞は,DoxによりMyoD発現が誘導されて筋分化が進み,再生筋線維と同様のサイトカイン産生能を獲得したと考えられた.
  • 梅田 直人, 松本 功, 井上 明日香, 田中 勇希, 倉島 悠子, 川口 星美, 江辺 広志, 近藤 裕也, 坪井 洋人, 住田 孝之
    2015 年 38 巻 4 号 p. 324a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】RA患者における血中PAD4濃度と抗PAD4抗体の病因的意義を明らかにする.【方法】1)RA 148例,SLE 36例,SS 37例,健常人(HC)40例の血清,血漿を用いてPAD4濃度をELISA法で測定した.2)1)の検体に関して抗PAD4抗体をELISA法で測定した.3)RA患者においてACPA(anti citrullinated peptide antibody)である抗CCG-2抗体,抗CCG-7抗体,抗CEP-1抗体,抗CCP抗体価をELISA法で測定し,血中PAD4濃度,抗PAD4抗体と比較した.【結果】1)平均PAD4濃度(U/ml)は,RA(84.8),SLE(30.4),SS(81.9),HC(46.6)で,RAおよびSSがSLE,HCに比べて有意に高値であった.2)抗PAD4抗体の陽性率は,RA(29.7%)においてSLE(0%),SS(0%),HC(0%)より有意に高値であった.抗PAD4抗体陽性RA群のPAD4濃度(20.7U/ml)は,陰性群(111.9U/ml)より有意に低値であった.3)PAD4濃度と各ACPAの抗体価には有意な相関はなかった.しかし,抗PAD4抗体陽性群では抗CCG-2,7,CEP-1,CCP抗体の抗体価が陰性群に比して有意に高値であった.【結論】RA患者では,血中PAD4濃度の上昇により蛋白のシトルリン化が亢進し,ACPAの産生要因になっていることが推察された.一方,抗PAD4抗体もACPAと同様にRAで特異的に検出された.RA患者における抗PAD4抗体の病因的意義は不明であるが,増加した血中PAD4より誘導され,PAD4をnegativeに制御している可能性が考えられた.
  • 門野 岳史, 冨田 学, 浅野 善英, 佐藤 伸一
    2015 年 38 巻 4 号 p. 324b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      全身性強皮症は血管障害と皮膚や内臓の線維化を特徴とする自己免疫疾患である.Fcγ受容体は様々な免疫反応を制御し,人ではFcγRI,FcγRIIA,FcγRIIB,FcγRIIIA,FcγRIIIBなど複数存在する.Fcγ受容体を介するシグナルは免疫を正に制御する場合と負に制御する場合とがあり,一般にFcγRIIBを介するシグナルは免疫反応を抑制し,その他の受容体を介するものは免疫反応を亢進させると考えられている.全身性強皮症では様々な自己抗体が出現するが,今回これらFcγ受容体に対する自己抗体抗体価をELISAにて測定し,臨床症状との相関について検討した.全身性強皮症患者において血清抗FcγRIIB抗体値は健常人や限局性強皮症患者より有意に高値を示した.また,限局皮膚硬化型とびまん皮膚硬化型との間に差はみられなかった.また,爪上皮出血点が見られる例では血清抗FcγRIIB抗体は高値を示し,逆にびまん性色素沈着や石灰化が見られる例では低値を示した.更に,血清抗FcγRI抗体値,血清抗FcγRIIA抗体値,血清抗FcγRIIIB抗体値について検討したところ,何れも全身性強皮症患者において健常人より有意に高値を示した.以上より,全身性強皮症においてはFcγ受容体に対する血清抗体値が全般に高く,これが全身性強皮症におけるimmune dysregulationに関与する可能性が考えられた.
  • 鏑木 誠, 福栄 亮介, 門田 寛子, 仁科 直, 白井 悠一郎, 岳野 光洋, 桑名 正隆
    2015 年 38 巻 4 号 p. 325a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      多発性筋炎(polymyositis; PM)および皮膚筋炎(dermatomyositis; DM)は特発性炎症性筋疾患とも呼ばれ,骨格筋の炎症とともに皮膚,肺,心臓,関節など種々の臓器病変を合併する原因不明の全身性炎症性疾患である.他の膠原病と同様に,自己抗体産生を特徴とし,PM/DM患者に特異的に検出される筋炎特異的自己抗体と筋炎重複症候群に見出される筋炎関連自己抗体に分類される.それぞれの抗体はPM/DMの病型,臓器病変,治療反応性,予後などとも密接に関連することが明らかにされている.これらの中でも抗アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl tRNA synthetase; ARS)抗体と抗MDA5(melanoma differentiation-associated gene 5)抗体は近年注目されている.抗ARS抗体陽性群と抗MDA5抗体陽性群を比較したものは報告されているが,抗ARS抗体/抗MDA5抗体陰性例とそれぞれの比較検討はまだされていない.そこで今回我々はPM・DM・Clinically Amyopathic DMにおいてRNA免疫沈降法を用いて,抗ARS抗体・抗MDA5抗体の陽性・陰性を測定し,それぞれにおける臨床症状や画像所見などを検討した.
  • 仲野 総一郎, 山中 健次郎, 鈴木 智, 髙崎 芳成
    2015 年 38 巻 4 号 p. 325b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】膠原病および自己免疫疾患の皮膚潰瘍・指尖潰瘍などの末梢循環障害を起因する病態において,血管内皮細胞に関わる分子の発現異常や,血管内皮前駆細胞数,抗内皮細胞抗体については過去に検証されている.しかし,自己免疫反応や血管内皮細胞に関わる分子と自己抗体との関係について未だ詳細な検証はされておらず,今回我々は検討を行った.【方法】レイノー現象を有する自己免疫疾患患者ならびに健常人の末梢血を用いて,血管内皮前駆細胞数をフローサイトメトリーで解析.また患者血清と,ヒト微小血管内皮ライセートを用い,血管内皮細胞に対する免疫反応を検証し,患者血清を用いて血管内皮細胞ならびに血管内皮前駆細胞に発現し血管病変に関わりのあるエンドセリンB受容体との免疫反応を検証.さらにレイノー現象を有する患者ならびに健常者の血漿中のエンドセリン(ET)-1を定量した.【結果】レイノー現象を有する自己免疫疾患患者の末梢血中血管内皮前駆細胞数が低下していた.患者血清が内皮細胞ライセートに反応し,免疫沈降-Western blottingで抗エンドセリンB受容体抗体に反応するバンドが検出された.血漿中のET-1濃度はレイノー症状を有する膠原病患者で有意に高値であった.【結語】レイノー現象を有する自己免疫疾患患者では抗内皮細胞抗体およびエンドセリンB受容体に対する自己抗体が存在する可能性が示唆された.
  • 日和 良介, 大村 浩一郎, 荒瀬 規子, 金 暉, 平安 恒幸, 香山 雅子, 末永 忠広, 齋藤 史路, 岩谷 博次, 渥美 達也, 寺 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 326a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】特定のHLA class IIアリルは顕微鏡的多発血管炎(MPA)などのANCA関連血管炎と関連する.近年,我々はミスフォールド蛋白とHLA class IIの複合体が,関節リウマチの自己抗体や抗リン脂質抗体の標的であることを発見した.今回は,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)が疾患感受性HLA-DR分子によって提示され,MPO-ANCAの標的となるかを検討した.【方法】MPOとHLA-DRのcDNAを含む発現プラスミドをHEK293T細胞に導入し,フローサイトメトリーや免疫沈降法を用いて解析した.またMPO蛋白を用いた競合阻害実験によってMPO-ANCAのエピトープを検討した.さらにヒト好中球におけるMPOとHLA-DRとの結合を免疫沈降法で解析した.【結果】HLA-DRを共に導入すると細胞表面のMPO発現が増加し,MPOはHLA-DRと共沈降した.種々のHLA-DRアリルのMPA感受性に対するオッズ比は,MPO/HLA-DR複合体に対する自己抗体の抗体価と相関した.競合阻害実験によって,HLA-DRと結合したMPOの自己抗体反応性エピトープはMPO単独とは異なることが示唆された.健常人およびMPA患者の好中球にMPO/HLA-DR複合体が検出された.【結論】MPOと特定のHLA class II分子の複合体がMPO-ANCAの標的であることが示唆された.特定のHLA-DRがMPAの疾患感受性と相関する理由を説明しうる結果と考えられる.
  • 渡邊 俊之, 奥 健志, アメングアル オルガ, 久田 諒, 大村 一将, 志田 玄貴, 清水 裕香, 加藤 将, 坊垣 暁之, 堀田 哲也 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 326b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】HLA-DRB1*07:01は抗リン脂質抗体症候群(APS)の疾患感受性遺伝子である.近年,我々はβ2-グリコプロテインI(β2GPI)/HLA class II複合体が抗β2GPI抗体の対応抗原であることを報告した.スタチン製剤はいくつかのAPSモデルで抗β2GPI抗体による向血栓細胞活性化を抑制し,血栓症抑制効果が期待されていたが,その機序は不明である.【目的】抗β2GPI抗体による血栓傾向に対するスタチン製剤の抑制的作用機序を解明する.【方法】不死化ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUEhT-1)とヒト単球系細胞(THP-1)にβ2GPIとHLA-DRA*01:01/DRB1*07:01(HLA-DR7)の遺伝子を導入した後,フルバスタチンを添加し,細胞表面のHLA-DRとβ2GPIの発現およびヒトモノクローナル抗β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(EY2C9)の結合能を解析した.APS自然発症ラットであるenv-pXラットにフルバスタチンを投与し,β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(aCL)を測定した.【結果】HUEhT-1とTHP-1の両細胞表面において,β2GPIの発現およびEY2C9の結合はHLA-DR7発現細胞で亢進していた.フルバスタチンの添加により,HLA-DRとβ2GPIの細胞表面への発現およびEY2C9の結合は抑制され,メバロン酸によりフルバスタチンの作用は拮抗された.またフルバスタチン投与によりenv-pXラットのaCLは有意に低下した.【結語】スタチン製剤はHLA class IIの発現低下を介した自己抗原提示の抑制効果を示すため,APSへの治療効果が予想される.
  • 濱野 芳匡, 木田 博, 井原 祥一, Tripthi Lokesh, 広瀬 雅樹, 西川 博嘉, 本多 修, 水口 賢司, 富山 憲幸, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 327a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      慢性特発性間質性肺炎(IIPs)は,ATS/ERS基準により特発性肺線維症(IPF)および非特異的間質性肺炎(INSIP)に分類されているが,近年,慢性IIPsが多彩な背景を持つヘテロな疾患集団であることが明らかにされてきた.我々はProtein array法による網羅的な自己抗体検索により,INSIP特異的自己抗体として,抗Myxovirus resistance protein 1(Mx1)抗体に着目した.Mx1はインフルエンザなどの幅広いウイルスに対して抗増殖活性をもつtype I IFN誘導タンパクである.Mx1は免疫染色において,正常肺組織でII型肺胞上皮,気道クララ細胞,及び肺胞マクロファージへの局在,間質性肺炎組織でII型肺胞上皮過形成や気腔内肺胞マクロファージの集簇部位での強発現が確認された.我々は,IgG, IgA, IgM型の抗Mx1抗体価を定量可能なELISAを開発し,当院通院中の臨床的慢性型IIPs 114例に対して抗Mx1抗体の測定を実施した.20例(17.5%)に抗体陽性を認めたが(cut-off: 健常人mean + 6SD),高力価例はnon-IPF群にのみ認められ,抗ARS抗体陽性IIPs,UCTD-IIPsとは独立したentityを形成した.抗体陽性例は女性に多く,特徴的な画像所見と負の相関を認めた.IIPsにおける新たな自己抗体として抗Mx1抗体の意義を検討する.
  • 前田 泰宏, 右田 清志, 樋 理, 中根 俊成, 松尾 秀徳
    2015 年 38 巻 4 号 p. 327b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】広汎な自律神経障害を呈する自己免疫性自律神経障害において,抗gAChR抗体は,病因の自己抗体と考えられている.また,各種の自己免疫疾患においても自律神経障害を呈する症例が存在することが知られている.【目的】本研究では,自己免疫性肝炎(AIH)における抗gAChR抗体の陽性率及びその抗体の有無とHLA allelesの関係に関して解明する.【方法】長崎医療センターにて集積されたAIH 260症例に関して,抗gAChR抗体測定及びHLA遺伝子型タイピングを行い,同抗体の有無とHLA allelesの関係について検討した.【結果】抗gAChR抗体の陽性率は11.5%であった.HLA-A, B, DQB1においては抗gAChR抗体有無との有意な関係性は認めなかったが,HLA-DRB1*0403においては有意な関係性(P = 0.005, odds ratio 11.031, 95% confidence interval 2.373-51.266)を認めた.【結論】AIH症例においても抗gAChR抗体が潜在することが示された.また,HLA class 2の分子がgAChRに対する自己抗体形成に影響している可能性が示唆された.
  • 神崎 秀嗣
    2015 年 38 巻 4 号 p. 328a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      筆者は整体師や医療従事者養成校,医療系大学で感染症,免疫学を講義している.高校までは免疫学を本格的には習わない(新学習指導要領参照).整体師や医療従事者養成校入学者は基礎科目,特に数学や化学が苦手な学生が多く,まずは生化学や生理学など医療従事者には必須な科目の理解が必要である.そのような中で免疫学を教えるのは至難の技である.また時間も限られた中で最低限の知識を身につける必要がある.今回筆者らは高校まで免疫学を学んでない学生でも,身につけるカリキュラムを開発した.整体師用のカリキュラムでは現場に出ても対応できる知識が身に付いていた.臨床検査技師用のカリキュラムを用いて3年間掛けて,国家試験に合格するように講義したところ,免疫学の正解率が,染色体遺伝子検査学よりも有意に好成績であった.国家試験正解率も日本臨床検査学教育協議会参加校に対してほぼ同じであった.しかし,国家試験合格率は全国平均よりも有意に高かった.以上のことから,今回のカリキュラムは基礎学力が無い学生にも,効果的に免疫学を身につけさせることが出来た.
  • 水品 研之介, 小倉 剛久, 亀田 秀人
    2015 年 38 巻 4 号 p. 328b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)の治療にメソトレキセート(MTX),生物学的製剤が導入されている中で生じるニューモシスチス肺炎(PCP)は,急激な経過をとり重症の呼吸不全を呈することが知られている.RAのような,非ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症例で生じるPCPでの肺障害は主に宿主の免疫応答によって生じることが知られている.サラゾスルファピリジン(SASP)はRAの治療に用いられる薬剤だが,非HIVモデルのマウスのPCPにおいて,SASPの投与が,肺における免疫応答を減弱させたり,マクロファージの貪食を促進させ,PCPの重症度を改善させた報告がある.しかし,実臨床の現場でSASPとPCPの発症について検討された報告は未だに無い.そこで,MTX内服中のRA患者がSASPを内服することにより,PCPの発症を抑制できるかどうかを検討した.【方法】対象は2005年1月から2013年10月までに当院にて加療されたRA患者とした.MTXを内服している対象患者合計210人が抽出され,SASP併用のない群と,SASP併用のある群に分け,両群間においてPCP発症率に差があるか統計学的に検討した.【結果】SASP(−)群では149例中10例にPCPの発症が認められたのに対し,SASP(+)群でのPCP発症はなく,両群間には有意な差が認められた(P = 0.0386).【結論】SASPの内服はRA患者においてPCP発症抑制効果があることが示唆された.今後,更なる大きなコホートやRCTによる検証が望まれる.
  • 細谷 明徳, 永石 宇司, 渡部 太郎, 鈴木 雅博, 鬼沢 道夫, Nisha Jose, 東海 有沙, 川井 里紗, 渡辺 守
    2015 年 38 巻 4 号 p. 329a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景と目的】長期に罹患した炎症性腸疾患(IBD)は大腸癌を合併し得る.我々は以前,炎症反応の遷延に伴い大腸上皮に発現する2型TNF受容体(TNFR2)が上昇することを報告した.ところがIBD合併大腸癌(colitis-associated cancer, CAC)の発生過程におけるその生物学的意義は明確でない.そこでマウス大腸上皮細胞株と実験CACモデルを用いて,大腸上皮細胞におけるTNFR2シグナルを解析した.【方法と結果】マウス大腸上皮由来細胞株MOC1をrIFN-γで刺激するとTNFR2発現が上昇し,さらにrTNF濃度依存的にNF-κB活性やミオシン軽鎖(MLC)のリン酸化酵素(MLCK)発現が上昇して,細胞間tight junction(TJ)の崩壊が誘導された.これらの現象はTNFR2に対する特異的siRNA,抗TNF抗体MP6-XT22あるいはMLCK阻害剤ML-7によって抑制された.C57BL/6マウスにazoxymethanとdextran sodium sulfateを投与してCACモデルを誘発すると,大腸上皮細胞のTNFR2発現が上昇し,それに相関しNF-κB活性やMLCK,リン酸化MLC発現の上昇,TJ崩壊が見られ,粘膜固有層におけるIL-1β,IL-6,MIP-2といった腫瘍指向性サイトカイン産生が上昇していた.これらのマウスにMP6-XT22やML-7を投与すると,TJ崩壊や腫瘍指向性サイトカイン産生,CACの発生が有意に抑制された.【結論】IBDにおける上皮細胞内のTNFR2発現上昇は,上皮の透過性と腫瘍指向性サイトカインの産生に関連し,CACの発生に深く関与すると推測される.
  • 川口 星美, 松本 功, 江辺 広志, 田中 勇希, 倉島 悠子, 井上 明日香, 梅田 直人, 住田 孝之
    2015 年 38 巻 4 号 p. 329b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】関節リウマチ(RA)において,シトルリン化タンパク質(Cit-P)や抗シトルリン化タンパク質抗体(ACPA)は疾患の発症や増悪に関与していると考えられるが,その産生機序や役割はいまだ明らかでない.【目的】ペプチドGPI誘導関節炎モデルマウス(pGIA)において,Cit-P発現とその自己抗体産生の関与について検討する.【方法】1)pGIAにおいて,血清中の抗pGPI抗体価,ACPAの測定を行った.2)pGIAにおいて,関節,皮膚の免疫組織化学染色,血清のWestern blotを行い,Cit-Pの検出を試みた.3)PAD inhibitorであるC1-amidineを免疫day0より腹腔内投与し,関節炎やCit-P,ACPA発現の変動について比較検討した.【結果】1)血清中の抗pGPI抗体価,ACPAはcontrol(CFA投与)群と比較すると有意に高値であった.2)pGIAの関節,皮膚,血清ではCit-Pの発現を認めたが,control群では認めなかった.3)C1-amidine投与により,関節炎のclinical scoreは有意に低下した.抗pGPI抗体価,ACPAはcontrol(PBS投与)群と比較して有意な差は認めなかった.関節,皮膚,血清のCit-P発現は減少傾向にあった.【結論】pGIAにおいてCit-P発現増加やACPAの産生亢進が認められた.さらに,PADを抑制することで関節炎の抑制,Cit-Pの発現抑制が認められた.以上の結果から,PADの活性化が関節炎の発症や維持に関与していることが示唆された.
  • 佐々木 直人, 山下 智也, 福永 淳, 山口 智之, 坂口 志文, 錦織 千佳子, 平田 健一
    2015 年 38 巻 4 号 p. 330a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      日本人の4人に1人は心臓病や脳血管疾患などの動脈硬化性疾患で死亡しており,その発症機序を解明し,有効な治療法や予防法を開発することが切に望まれている.動脈硬化性疾患は慢性炎症性疾患であると考えられているが,炎症を負に制御するような制御性T細胞(Treg)と炎症を引き起こすようなエフェクターT細胞のバランスを,薬剤投与によりTreg側に傾けることにより,マウスにおいて動脈硬化形成を抑制することが示されている.しかし,抗体薬などの生物学的製剤の全身投与は,安全性およびコストの問題により臨床応用は困難である.動脈硬化モデルであるアポリポ蛋白E遺伝子欠損マウスの皮膚に紫外線(UVB)照射を行うことにより,Foxp3陽性Tregの誘導,エフェクターT細胞の免疫応答の抑制とともに有意な動脈硬化形成の抑制を認めた.薬剤投与によりFoxp3陽性Tregを特異的に減少させることができる易動脈硬化マウスにおいて,UVB照射による動脈硬化抑制効果は消失した.さらに,ランゲルハンス細胞を特異的に除去した易動脈硬化マウスにおいて,UVB照射によるTregの増加および動脈硬化抑制効果は消失した.以上より,UVB照射はランゲルハンス細胞の何らかの機能修飾を介してTregを誘導し,抗動脈硬化的に作用することが示された.皮膚からの動脈硬化予防という新規の予防・治療法の可能性を示すことができ,臨床応用が期待される.
  • 細矢 匡, 川畑 仁人, 山西 綾香, 南 朋子, 山本 晃央, 上阪 等
    2015 年 38 巻 4 号 p. 330b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】CDK4/6阻害薬palbociclibはコラーゲン誘導関節炎(Collagen induced arthritis: CIA)に高い有効性を示したが高用量で血球減少を生じた.乳癌患者の臨床試験でも高度の血球減少が観察されたため,抗リウマチ薬への応用にはより副作用の少ない投与方法が求められる.本研究はpalbociclibの効果に細胞特異性があることを示し副作用を軽減しうる投与方法を見出すことを目的とする.【方法】Palbociclib暴露後の細胞のDNA合成能を定量し,細胞周期比率の変動をFACSで解析した.CDK4/6の標的蛋白であるRb蛋白のリン酸化を経時的にWestern blottingで追跡した.DBA1/Jマウスを用いてpalbociclibの連日投与と間欠投与の血球細胞への影響を末梢血球数で比較した.【結果】24時間のpalbociclibへの暴露後,DNA合成再開に要する時間はPBMCで1日,RASFsで7日と細胞種によって異なっていた.またPBMCでは4時間後にRb蛋白のリン酸化が回復したが,RASFsでは72時間を超えて抑制が持続していた.マウスへの100mg/kgの連日投与は赤血球,好中球の減少をもたらしたが,週4日の投与ではいずれも観察されなかった.【考察】Palbociclib暴露後に細胞周期再開遅延と,Rb蛋白のリン酸化抑制の持続が観察されたが,持続時間はPBMCよりRASFsで長時間であり,元来の増殖速度や薬剤のクリアランスに依存すると考えられた.間欠投与法はRASFsの増殖抑制作用を維持し,血球毒性を軽減する可能性があると期待される.
  • 春田 郁子, 樋口 智昭, 柳沢 直子, 清水 京子, 古川 徹, 八木 淳二
    2015 年 38 巻 4 号 p. 331a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】1型自己免疫性膵炎(AIP)はIgG4関連疾患の膵病変と考えられる.マウスにEscherichia coliを反復投与しAIP様の膵病変を生じるモデルを用い,AIPの特徴である膵線維化に関して検討した.【方法】C57BL/6マウス腹腔内にE. coliを8週投与し,投与終了後マウスをsacrificeし,膵組織と血清を検討した.コントロールはE. coli投与群と同様のスケジュールで腹腔内にPBSの投与を行い,両群間で比較した.【結果】E. coli群では投与終了後1週間から1-2ヶ月後で膵の線維化を伴う小葉の委縮と炎症細胞浸潤を認めた.投与終了後6ヶ月では炎症の消退と脂肪織置換を認め,10-12ヶ月では委縮腺房の腺管周囲の線維化の残存を認めた.PBS群では経時的な膵の細胞浸潤や線維化は生じなかった.また,E. coli投与群では高γグロブリン血症,抗lactoferrin抗体,抗carbonic anhydrase-II抗体の上昇を認めた.免疫染色では,委縮腺房細胞,間質の炎症性浸潤細胞の多くはTGFβ陽性で,線維化部位にはcollagen IV,fibronectinの染色性を認めた.更に炎症細胞浸潤部にはMMP2陽性細胞を認め,線維化を伴う細胞浸潤部でiNOS陽性細胞を認めた.膵実質の炎症の消退とともに,TGFβ陽性細胞の発現も著明に減少した.【考察】AIP様の膵病変を来すE. coli投与群では,TGFβのupregulationによるcollagen, fibronectin合成促進と,細胞浸潤部の酸化ストレスなどが線維化に関与している可能性が示唆された.
  • 竹内 恵美子, 竹内 康雄
    2015 年 38 巻 4 号 p. 331b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】慢性肉芽腫症(CGD)はNADPH oxydaseの異常による好中球機能不全のため易感染性を示す疾患でとして知られるが,活性酸素種(ROS)産生不全のために過剰炎症が持続することに注目が集まっている.我々はCGDのモデルであるgp91phox−/− mouseに腎毒性物質であるAristolochic acid(AA)を投与すると重度の急性尿細管壊死(ATN)が惹起されることを報告した.ROS産生とATNの発症がどのように関わっているかを明らかにするため,X-CGDと正常C57BL/6(B6)とのキメラを作製し,ATNを誘導した.【方法】X-CGDおよびB6をhostとし,9.5Gy全身放射線投与後B6又はX-CGDの骨髄を移植した.FACSにてCGD to B6, B6 to CGD骨髄完全キメラとなったことを確認後Aristolochic acid 5 mg/kg(BW)を隔日で15回腹腔内投与し,腎臓の病理組織学的評価を行った.【結果と考察】半定量scoringの結果,いずれのキメラマウスも同程度の尿細管壊死を呈したが,間質の細胞浸潤はCGD to B6キメラマウスの方がやや軽度であった.免疫染色の結果,浸潤細胞は主にマクロファージであったが,CD4 T cellの浸潤も有意に増加していた.gp91phox−/−RAG2−/− mouseにAAを投与すると,尿細管上皮の壊死による脱落は認められるが間質への細胞浸潤は見られなくなるため,gp91phox−/−マクロファージによる死細胞除去の遅れや活性化の持続のみならず,獲得免疫を動員することがATNおよび間質性腎炎の成立には重要であると考えられる.
  • 谷口 隆志, 浅野 善英, 赤股 要, 野田 真史, 高橋 岳浩, 市村 洋平, 遠山 哲夫, 三枝 良輔, 吉崎 歩, Trojanows ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 332a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      全身性強皮症(SSc)は血管障害と線維化を特徴とする原因不明の自己免疫疾患である.SScにおける血管障害には血管の恒常性の破綻が深く関与しており,血管内皮細胞の恒常的活性化による血管新生の異常活性化とともに,骨髄系細胞の異常による脈管形成の障害がみられることがその病態として知られている.SScでは病変部皮膚における様々な細胞において転写因子Fli1の発現が恒常的に低下しており,Fli1の恒常的発現低下は疾病素因として本症の病態に深く関与している.我々はこれまでに血管内皮細胞におけるFli1の恒常的発現低下が血管新生の異常活性化を引き起こし,SScにおける血管の恒常性の破綻や血管障害を再現することを明らかにしてきたが,骨髄系細胞におけるFli1の発現低下が血管の恒常性に及ぼす影響については未だ明らかではない.そこで今回我々は,骨髄系細胞におけるFli1の恒常的発現低下が血管の恒常性に及ぼす影響を明らかにするため,骨髄系細胞特異的Fli1欠失マウス(LysM-Cre+/−Fli1flox/flox)を作成しその表現型を検討した.その結果,骨髄系細胞におけるFli1の恒常的発現低下は脈管形成の異常や血管の恒常性の破綻をもたらし,増殖性血管障害・破壊性血管障害といったSScに類似した血管障害を引き起こすことが明らかになった.以上より,SScにおける血管の恒常性の破綻,血管障害の病態に骨髄系細胞におけるFli1の恒常的発現低下が関与している可能性が示唆された.
  • 神人 正寿, 王 中志, 後藤 瑞生, 江良 択実, 福島 聡, 尹 浩信
    2015 年 38 巻 4 号 p. 332b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      全身性強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化を特徴とする疾患である.皮膚線維化の原因として,皮膚線維芽細胞におけるTGF-βの活性化とコラーゲンの過剰産生が生じていると考えられているが,その分子機序はいまだ不明である.最近,我々は強皮症患者の皮膚組織より培養された線維芽細胞から,倫理委員会で承認を受けた文書による同意を得てiPS細胞を樹立することに成功した.TGF-βシグナル関連分子の発現をPCR arrayを用いて比較したところ,強皮症由来iPS細胞では正常iPS細胞に比べてS100A8,Smad6およびTGFB2の発現が減少していた.また,強皮症由来iPS細胞を線維芽細胞に再分化させたところ,コラーゲンの過剰産生が正常化された.いくつかのインテグリンの発現異常も正常化していた.強皮症病変部皮膚由来のiPS細胞を用いた研究の報告は現時点では未だ存在しない.我々は本研究により,TGF-βシグナル関連遺伝子のうち強皮症iPS細胞に特異的な遺伝子発現異常と,再分化によって正常化する遺伝子発現異常,さらには正常化しない遺伝子発現異常を同定した.再分化によって強皮症線維芽細胞におけるコラーゲンの過剰発現が正常化したことから,この異常が遺伝子レベルで制御されており,インテグリンなど特定の遺伝子のepigeneticsの変化によって引き起こされている可能性が示唆された.
  • 向井 知之, 植木 靖好, 守田 吉孝
    2015 年 38 巻 4 号 p. 333a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】アダプター蛋白SH3BP2は免疫・骨代謝に関与する.本研究では,SH3BP2欠損マウスを用い,ヒトTNFトランスジェニック(hTNFtg)マウスおよびコラーゲン誘導性関節炎(CIA)におけるSH3BP2の役割を解析した.【方法】最初に,SH3BP2欠損hTNFtgマウスを作出し,関節炎の重症度を関節腫脹の経時的観察にて,組織の炎症・骨破壊を組織学的およびマイクロCT解析により評価した.また,破骨細胞分化を骨髄由来マクロファージ培養にて評価した.次に,SH3BP2欠損マウスにCIAを誘導し,関節炎の発症率を評価した.血清中抗マウスII型コラーゲン(CII)抗体をELISA法で測定した.免疫後の鼠径リンパ節を摘出し,培養リンパ節細胞のCIIへの反応性を評価した.【結果】hTNFtgマウスの解析にて,SH3BP2欠損は関節腫脹の重症度には影響しなかったが,関節局所の骨破壊および全身炎症に伴う脛骨の骨量減少を軽減した.骨髄由来マクロファージ培養にて,SH3BP2欠損はRANKLおよびTNF誘導性の破骨細胞分化を抑制した.次に,CIAモデルの解析では,SH3BP2欠損は関節炎発症を著明に抑制した.CIIに対するリンパ節細胞の反応性には有意な変化は認めなかったが,血清抗CII抗体はSH3BP2欠損マウスで低下していた.【結語】SH3BP2欠損はhTNFtgマウスの骨破壊を軽減し,CIAモデルでは自己抗体産生抑制を伴い関節炎の発症を抑制した.SH3BP2は自己免疫性関節炎の新たな治療ターゲットになり得ると考える.
  • 駒井 俊彦, 井上 眞璃子, 岡村 僚久, 岩崎 由希子, 森田 薫, 照屋 周造, 山本 一彦, 藤尾 圭志
    2015 年 38 巻 4 号 p. 333b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景・目的】全身性エリテマトーデスは免疫寛容破綻と自己抗体産生を主病態とする全身性自己免疫疾患である.IL-10およびTGF-β3を高産生するCD4+CD25-LAG3+制御性T細胞はループス様モデルMRL/lprマウスの病態を改善するが,その詳細な機序は不明なままである.今回我々は,TGF-β3およびIL-10による液性免疫制御機構につき検討した.【方法】MACSで単離したB細胞をToll様受容体(TLR)刺激し,TGF-β,IL-10存在下のB細胞分化と抗体産生を評価した.また,plasmid vector pCAGGS-Tgfb1,-Tgfb3,-Il10をMRL/lprマウス,NP-KLH免疫C57BL/6(B6)マウスに導入し経時的に検討した.【結果】TLR刺激下のB細胞でTGF-βはIgG産生,B細胞分化の亢進を誘導したが,IL-10の同時添加によりTGF-βは抑制性に機能した.pCAGGS-Tgfb3ベクター導入MRL/lprマウスでは,脾腫,蛋白尿の改善,血清抗dsDNA抗体価の低下,糸球体腎炎の組織学的改善を認め,濾胞性ヘルパーT細胞およびB細胞分化が抑制された.NP-KLH免疫B6マウスではpCAGGS-Tgfb3による抗原特異的抗体産生抑制作用の誘導にはpCAGGS-Il10の共導入が必要であった.予測された如く,MRL/lprマウスの血清IL-10濃度はB6マウスに比して高値であった.【結論】我々はTGF-β3およびIL-10が協調的免疫抑制作用を介して液性免疫を制御することを初めて明らかにした.本知見は自己抗体を介する自己免疫疾患の新規治療法開発の可能性を内包している.
  • 前田 悠一, 熊ノ郷 淳, 竹田 潔
    2015 年 38 巻 4 号 p. 334a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      我々は,関節リウマチ発症の環境要因の一つとして,腸内細菌叢の変化に着目して研究をしている.これまで,マウスでは関節炎と腸内細菌との関連が示唆されているが,ヒトでは明らかではない.発症早期の関節リウマチ(RA)患者と健常者の腸内細菌叢を,16sRNAを標的とした解析法にて比較した.RA患者17名中6名にPrevotellaという細菌が増加していた.次に,この腸内細菌叢の違いが関節炎発症に関わるかどうかを調べるために,T細胞に異常のある関節炎モデルマウス(SKGマウス)にヒト糞便を移植する実験を行った.Prevotellaの多いRA患者の糞便と,健常者の糞便を,それぞれ無菌のSKGマウスに移植して定着させ,関節炎を誘導した所,RA患者糞便を定着したマウスにおいて重篤な関節炎が認められた.このRA患者の腸内細菌叢をもつマウスでは所属リンパ節のTh17細胞数の増加が認められた.RA患者糞便をもつSKGマウスは所属リンパ節において関節炎の抗原(RPL23A)との反応性が上昇しIL-17Aを産生した.
      これらの結果は,Prevotellaが優勢となったRA患者糞便は関節炎の発症及び病態の増悪に寄与すると考えられた.
  • 沖山 奈緒子, 長谷川 久紀, 種田 貴徳, 平田 真哉, 横関 博雄, 藤本 学, 上阪 等
    2015 年 38 巻 4 号 p. 334b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      多発性筋炎は,CD8 T細胞による自己免疫性炎症性筋疾患とされる.我々は,マウス骨格筋C蛋白をB6マウスへ免疫して誘導する自己免疫性筋炎マウスモデルC protein-induced myositisを開発した.そこで,予測プログラムを用い,C蛋白中でMHCクラスIに理論的に結合しやすいエピトープ候補を挙げた.RMA-S細胞アッセイでMHCクラスIに最も強く結合することが分かったHILIYSDVペプチドを,骨髄誘導性樹状細胞(BMDCs)に提示して,B6マウスへ移入したところ,筋線維傷害を伴う筋炎を発症した.この筋炎をC-protein peptide-induced myositis(CPIM)と名付けた.RMA-S細胞アッセイでHILIYSDVの次にMHCクラスIへの高結合性を示した3つのペプチドをBMDCsに提示してB6マウスへ移入したが筋炎は発症せず,さらに,この3つのペプチドはHILIYSDVに拮抗的に働いた.よって,HILIYSDVは特別に免疫原性が強いと考えられる.また,CPIMは,抗CD8除去抗体で完全に抑制される一方,抗CD4除去抗体には影響を受けない.つまり,CD4 T細胞非依存的にCD8 T細胞が筋障害を誘導しているCPIMは,多発性筋炎の病原性CD8 T細胞標的治療法開発に有用な新規モデルマウスであると考えられる.
  • 宇留島 隼人, 藤本 穣, 岩橋 千春, 大河原 知治, 本田 宏美, 世良田 聡, 仲 哲治
    2015 年 38 巻 4 号 p. 335a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】以前,我々は疾患活動期の関節リウマチ(RA)患者血清から,新たな急性期タンパクとしてleucine-rich α2-glycoprotein(LRG)を同定した.LRGは炎症部位である滑膜においても発現が認められるが,その役割は不明である.最近LRGがTGF-βシグナルを調節する事が報告された.TGF-βはTh17やTregの分化に必須であり,また,Th17やTregは破骨細胞分化制御などRAの病態に重要な役割を果たす事から,LRGはTリンパ球分化を介してRAの病態に関与する可能性がある.本研究ではLRGのTリンパ球分化における役割を解明し,関節炎病態におけるLRGの関与を検討することを目的とした.【方法】WTよりナイーブT細胞を分離し,LRGの有無によるTh17およびTreg分化への影響を調べた.雄C57/BL6マウス(WT)およびLRGノックアウトマウス(KO)にコラーゲン誘導関節炎(CIA)を惹起した.【結果】TGF-β単独存在下ではLRGの添加によってナイーブT細胞からTregの分化が促進されたが,TGF-βに加えIL6が存在するとLRGによってSTAT3のリン酸化が増強されTh17細胞への分化も促進された.CIA誘導時には,WTに比べLRG KOで,所属リンパ節におけるTh17数や血清IL17値が有意に低値を示した.【考察】TGF-bとIL6が共存する炎症状態において,LRGはナイーブT細胞のSmadおよびSTAT3のリン酸化を増強することによってTh17の分化を促進し,関節炎病態に関与している可能性が示唆された.
  • 下松 達哉, 金沢 伸雄, 中谷 友美, 稲葉 豊, 池田 高治, 古川 福実
    2015 年 38 巻 4 号 p. 335b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      抗マラリヤ薬であるヒドロキシクロロキン(HCQ)は,関節リウマチの関節症状や全身性エリテマトーデス(SLE)の関節症状,皮膚症状,皮膚エリテマトーデスに有効であり,世界中で標準的治療薬として使用されている.今回我々は,SLEのモデルマウスで,LE様皮疹を呈するMRL/lprマウスに,生後3カ月目から4ヶ月間HCQを投与し,その有効性と安全性を検討した.飲料水投与群(Control群)は13匹中6匹に,HCQ(4mg/kg/day)投与群では11匹中3匹に,(40mg/kg/day)投与群では10匹中1匹に皮疹を認め,HCQは臨床的かつ組織学的に皮疹を有意に抑制する傾向を認めた.真皮への浸潤肥満細胞数も,HCQ投与により,有意に減少を認めた.一方で組織切片での各種サイトカイン(IL-2, IL-10, IL-12, TNF-α, IFN-α)のmRNAの発現に関しては,いずれも有意差を認めなかったが,IL-2の発現量は,Control群と比してHCQ投与群の方が減少傾向にあった.抗核抗体,抗ds抗体の発現量,ループスバンドテスト,腎病変の有無,生存率,体重減少に関しては,有意差を認めなかった.HCQはマウスに対して,皮疹,肥満細胞の抑制効果を認め,また明らかな全身的副作用を認めず,ヒトへの有益性をサポートするエビデンスになると思われた.
  • 山田 久方, 岸 裕幸, 小澤 龍彦, 津田 玲奈, 村口 篤, 吉開 泰信
    2015 年 38 巻 4 号 p. 336a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】抗CCP抗体を含めた抗シトルリン化タンパク抗体は,関節リウマチ(RA)に最も疾患特異性が高い免疫異常であり,病因解明の鍵を握ると考えられる.抗CCP抗体の産生機序としてB細胞免疫寛容機構の破綻や,シトルリン化による新規エピトープの出現などが考えられるが,その詳細は不明である.また,これらが生体内で認識する抗原もよくわかっていない.我々はRA患者の抗CCP抗体遺伝子をクローニングし,その抗原特異性を報告しているが(Tsuda R et al., Arthritis Rheum, 2015),今回この抗体遺伝子を導入したマウスを作製することで,生体内でのCCP特異的B細胞の分化や機能を解析することとした.【方法】ヒト抗CCP抗体のH,L鎖の可変領域を,それぞれマウス定常領域を発現するベクター(慶應大学天谷雅行教授より供与)に組み込み,C57BL/6マウスに遺伝子導入した.【結果】遺伝子導入マウスでは,CCP特異的B細胞が骨髄,脾臓などで検出された.しかし,それらの細胞表面IgMの発現レベルは正常マウスのB細胞に比較してやや低下していた.血清からは抗CCP抗体が検出されたが,現在のところ関節炎等の症状は認めていない.【結論】CCP特異的B細胞はある程度の免疫寛容状態に陥っていることが示唆された.よってこれらのB細胞が生体内で認識する抗原は,正常個体にも発現していると推測される.
  • 横山 雄一, 岩崎 剛, 古川 哲也, 関口 昌弘, 東 直人, 北野 将康, 角田 慎一郎, 松井 聖, 佐野 統
    2015 年 38 巻 4 号 p. 336b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】制御性T細胞(Treg)には胸腺内において自己反応性T細胞と共に産生されるnTregと,末梢血中のナイーブT細胞から分化誘導されるiTregが存在する.iTregはT細胞受容体(TCR)の刺激が無くても,IL-2が存在すれば増殖可能である.IL-2-抗IL-2抗体免疫複合体(IL-2IC)はIL-2単独に比べ半減期が長く,生体内でCD25と特異的に結合するため,iTregを効率的に増殖させることが可能である.そこで今回,IL-2ICによりiTregを誘導し,自己免疫反応を制御して,関節リウマチ(RA)の発症を制御することを試みた.【方法】DBA/1マウスに2型コラーゲンを皮下注射し関節炎を誘導し,IL-2ICを作成し投与した.実験群は1)PBS投与群,2)IL-2IC投与群,3)CyA投与群に分け,IL-2ICおよびCyAの投与は一次免疫あるいは二次免疫から開始し,3日間連続腹腔内投与を行った.RAの治療効果は,関節腫脹スコア,病理組織学的解析で判定した.さらに,これらの動物モデルの治療後の末梢血Tregの増加をフローサイトメトリーにて解析した.【結果および考察】IL-2IC投与1週間後の末梢血中のTregは,コントロール群の約2倍に増加していた.また,一次免疫からIL-2ICを投与すると関節炎が抑制され,その抑制効果はCyAよりも優れていた.しかし,二次免疫からIL-2ICを投与すると,関節炎の発症が増強された.以上の実験結果より,IL-2IC投与によるRA治療は,発症初期から投与する必要があることが明らかになった.
  • 藤浪 紀洋, 吉川 聡明, 澤田 雄, 下村 真菜美, 植村 靖史, 中面 哲也
    2015 年 38 巻 4 号 p. 337a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景/目的】がんに対するペプチドワクチン単独での臨床効果は不十分と言わざるを得ない.松島らはマウスモデルを用いて,制御性T細胞を含むCD4+細胞を減少させることのできる抗CD4抗体の抗腫瘍効果を証明しており,ヒト型抗CD4抗体の進行固形がんを対象とした医師主導治験を計画している.今回我々は,マウスモデルを用いて抗CD4抗体併用によるペプチドワクチンの増強効果を検討した.【方法/結果】C57BL/6マウスにOVA257-264ペプチドワクチンを7日ごとに2回尾根部皮内投与し,様々なスケジュールで抗CD4抗体(GK1.5)を1回腹腔内投与して,ペプチド特異的CTLの増加・増強を,IFN-γ ELISPOT assay, CD107a assay, cytokine assayで評価した.OVAペプチドワクチン単独群に比べ,抗CD4抗体を併用した群で明らかにペプチド特異的CTLの数が増加し,機能も向上することが示された.さらに,肝転移モデルによりOVA発現マウス胸腺腫のEG7やマウスメラノーマのMO4を用いて抗CD4抗体とOVAペプチドワクチン併用による転移抑制効果の増強が示唆された.抗CD4抗体との併用によりペプチドワクチンの効果増強ができることがマウスモデルで明らかになった.
  • 宮下 梓, 福島 聡, 中原 智史, 徳澄 亜紀, 久保 洋介, 千住 覚, 西村 泰治, 神人 正寿, 尹 浩信
    2015 年 38 巻 4 号 p. 337b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      進行期メラノーマに対する免疫細胞療法としてAdoptive cell transferの効果が示されてきたが,患者毎のTumor infiltrating lymphocytesの準備は容易ではなく汎用化が困難である.そこで我々はiPS細胞をソースとした免疫細胞療法を提案する.iPS細胞を用いる事で治療に必要な十分数の細胞が準備でき遺伝子改変で細胞に機能を持たせる事ができる.遺伝子改変でI型IFN産生能を持たせたヒトiPS細胞由来マクロファージ(MP)様細胞を用い,メラノーマに対する有効性をヒトメラノーマxeno-graft modelで検討した.iPS細胞から分化誘導したミエロイド系細胞にC-MYCを導入し樹立したミエロイド系細胞ライン(iPS-ML)はM-CSF存在下に培養するとMP様細胞となる.iPS-MLにIFN-α,IFN-βを遺伝子導入した細胞(iPS-ML-IFN-α,iPS-ML-IFN-β)でメラノーマの治療実験を行った.Luciferase遺伝子を導入したヒトメラノーマ細胞株をSCIDマウスに腹膜播種させ,iPS-ML,iPS-ML-IFN-α,iPS-ML-IFN-βを其々腹腔内投与しin vivo imagingで治療効果を評価した.未治療群とiPS-ML投与群で腫瘍は拡大したが,iPS-ML-IFNs投与群では腫瘍増殖を抑制した.iPS-MLの腫瘍局所への浸潤を免疫染色にて確認し,iPS-ML-IFNsは細胞表面マーカーのCD169の発現が上昇し抗腫瘍的に働くM1MPのphenotypeとなっていた.iPS-MLは自己のサイトカイン環境でM1MPとなり,腫瘍局所でIFNの殺腫瘍効果も併せ抗腫瘍効果を発揮すると考える.
  • 藤田 知信, 野路 しのぶ, 南雲 春菜, 早川 妙香, 西尾 浩, 杉山 重里, 坪田 欣也, 中村 謙太, 岡本 正人, 桜井 敏晴, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 338a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      最近,がん免疫療法の治療効果が示されたが,効かない症例も多く,治療前や早期に治療効果を予測して,適切な患者選択など個別化治療を可能にするバイオマーカーの同定,それを制御する方法の開発が期待されている.本研究では,ビーズアレイ法を用いたがんワクチン投与前の血液サイトカインやケモカインを網羅的に測定し,腫瘍抗原特異的免疫誘導効果とがんワクチン後生存との相関を検討した.大腸癌の化学療法併用ペプチドワクチン臨床試験では,治療前のN/L比高値,CRP高値,血液IL6高値症例では遅延型生存延長効果が認められないことが示された.多変量解析ではIL6が独立因子であった.前立腺がんのペプチドワクチン臨床試験では,治療前血液IL6とIL8高値がワクチン後予後不良と相関し,ペプチド特異的なT細胞とIgG抗体の誘導は予後良好と相関した.多変量解析ではIL8と抗原特異的免疫誘導が独立因子であり,両者の併用で生存との相関が上がった.IL6/IL8と免疫誘導には相関が認められず,IL6/IL8は免疫誘導以降の抗腫瘍免疫応答に影響する可能性が示唆された.特定の薬剤の投与は,マウス腫瘍モデルでIL6やIL8を低下させて免疫状態を改善させる可能性が示され,今後,臨床試験での検証が期待された.本研究では血液IL6やIL8ががんワクチンのバイオマーカーになり得ること,その制御により治療効果を改善できる可能性が示された.
  • 谷口 智憲, 猪爪 隆史, 古田 潤平, 原田 和俊, 島田 眞路, 河上 裕
    2015 年 38 巻 4 号 p. 338b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      近年,抗PD-1抗体治療は,様々ながん種で劇的な臨床効果を示し,T細胞の共刺激分子を標的とした治療の有用性が示唆されている.TIGITは,腫瘍浸潤T細胞(TIL)を含む活性化T細胞に発現する免疫抑制的共刺激分子であるが,抗腫瘍免疫応答における役割は解明されていない.我々は,悪性黒色腫の抗腫瘍T細胞応答のエフェクターフェーズにおけるTIGITの役割を解明し,がん免疫療法におけるTIGITシグナル阻害の有用性を検証した.TIGITのリガンドであるCD155は多くのヒトがん細胞で発現しており,IFN-γで増強された.悪性黒色腫におけるCD155の強制発現やノックダウン実験,抗TIGIT抗体による阻害実験により,がんで発現するCD155は,腫瘍抗原特異的T細胞にTIGITを介して抑制的に働くことが分かった.また,抗体によるTIGITとPD-1シグナルの同時阻害は,相乗的にT細胞の機能を回復させた.さらに,ヒトがん組織より培養したTILでは,TIGIT陽性分画は陰性分画に比べ,腫瘍特異的T細胞を多く含み,その機能は抗TIGIT抗体でさらに増強された.以上より,悪性黒色腫で,腫瘍特異的T細胞はTIGITを発現しているため,腫瘍に発現するCD155により機能が抑制されている事,また,CD155/TIGITシグナルは治療標的として有望で,抗PD-1抗体との併用効果も期待できる事が示唆された.
  • 宮川 一平, 中山田 真吾, 中野 和久, 阪田 圭, 山岡 邦宏, 田中 良哉
    2015 年 38 巻 4 号 p. 339a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】ヒト間葉系幹細胞(hMSC)はIDOやTGFβを産生しTreg細胞を誘導するとされるが,その機序は不明な点が多い.近年,IGF等の増殖因子がT細胞分化を制御すると報告される.今回,hMSCが産生する増殖因子によるTreg細胞誘導機構を検討した.【方法】ヒトナイーブCD4+T細胞を抗CD3/28抗体刺激下でhMSC培養上清と2日間培養し,CD4+T細胞の増殖能,サイトカイン産生能,細胞表面分子を評価した.【結果】抗CD3/28抗体刺激によるCD4+T細胞の細胞増殖は,hMSC培養上清で抑制され,IL-4/10産生が亢進した.hMSCの培養上清は,CTLA-4,GITR,PD-1/L1,IGF1/2Rを発現し,CD4+T細胞の増殖抑制作用を持つCD4+FoxP3+Treg細胞を誘導した.hMSC培養上清中には,IGFの抑制因子であるIGFBP-4が大量に検出された.IGFは,IGF-Rを介してTreg細胞増殖を促すことからMSC培養上清中のIGFBP-4を中和したところ,Treg細胞が有意に増加した.またCD4+T細胞上のIGF-1Rを阻害することで抑制された.【結論】hMSCは可溶性因子を介して,IGFシグナルを受容するCD4+IGF1R+IGF2R+FoxP3+Treg細胞を誘導しT細胞の増殖を抑制した.一方,hMSCはIGFBP-4を産生することで,Treg細胞増殖を抑制する自動的な制御機構を有する可能性が示された.hMSCが産生するIGFBP-4の骨芽細胞分化阻害作用も報告されており,関節リウマチの新規治療ツールとして期待されるhMSC療法の効率化にIGFBP-4の阻害が有用である可能性が示唆された.
  • 雑賀 玲子, 佐久間 啓, 能登 大介, 佐賀 亮子, 山口 修平, 山村 隆, 三宅 幸子
    2015 年 38 巻 4 号 p. 339b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】ミクログリア(MG)は中枢神経系のマクロファージであり,中枢神経という環境下で特有の形態を獲得すると考えられる.我々は骨髄未分化細胞をアストロサイト上で培養すると,一部はCD11b,triggering receptor expressed on myeloid cells 2を発現するMG様細胞へ分化することを示した.MGの分化を促す因子の一つとして,中枢神経に豊富に存在するmicroRNA(miRNA)が関与する可能性があると考え,MG様細胞の分化に関わるmiRNAを検索した.【方法】混合グリア培養からMGを除去し,アストロサイト単独培養を作成した.その上に骨髄未分化細胞を播種し,miRNA,miRNA阻害剤を加えて7日間培養し解析した.【結果】約700種類のmiRNA阻害剤の作用を観察したところ,MG様細胞の分化を抑制する6種類のmiRNA阻害剤を同定した.それら6つに対応するmiRNAをそれぞれ加えて培養すると,miR-101aは阻害剤とは反対にMG様細胞の分化を促進した.in vivo,in vitroでMG,アストロサイトはmiR-101aを発現していた.miR-101aを加えた培養上清中のIL-6,IL-10はコントロールに比べて上昇していた.MAPK phosphatase-1(MKP-1)はmiR-101aの標的であるとの報告があり,miR-101a存在下で培養したMG細胞株MG6ではMKP-1の発現が低下していた.【結論】miR-101aはMKP-1を標的とし,骨髄未分化細胞のMG様細胞への分化と活性化を調節していると考えられた.
  • 細川 貴司, 熊ノ郷 淳
    2015 年 38 巻 4 号 p. 340a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      制御性T細胞(Treg)は,自己反応性ヘルパーT細胞を抑制するCD4+ T細胞のサブセットである.immunometabolismの領域において,Tregとレチノイン酸,folate receptror,mTORC1(mammalian target of rapamycin)などの関与が報告されている.Lamtor1はLamtor2, 3, 4, 5と共に複合体を形成,リソソームに局在し,mTORC1がリソソーム上で活性化するために必要なRagulatorの核となるタンパク質である.今回,我々はTregの抑制機能におけるLamtor1の重要性につき報告する.まず,Treg特異的Lamtor1ノックアウトマウス(Treg-cKO)を作製した所,Treg-cKOマウスは全身への炎症細胞浸潤により,生後3~4週で全て死亡し,Treg欠損マウスの表現形“scurfy”に類似していた.ただしTregの絶対数はTreg-cKOマウスにおいて増加しており,Lamtor1欠損Tregの機能低下が示唆された.次にT細胞特異的Lamtor1ノックアウトマウスから分離したnTreg(CD4+ CD25high spleoncytes)は,in vitroでsuppression能を欠き,CTLA4やICOSといった免疫抑制能に関わる分子の発現が低下していた.これらの知見より,代謝シグナルタンパク質Lamtor1がTregを介した免疫制御に関与していることが示唆された.
      謝辞 本研究にあたりLamtor1floxマウスを御供与頂きました,大阪大学微生物研究所発癌制御分野 岡田先生及び名田先生に深く感謝いたします.
  • 梅田 雅孝, 古賀 智裕, 一瀬 邦弘, 道辻 徹, 清水 俊匡, 福井 翔一, 西野 文子, 中島 好一, 平井 康子, 川尻 真也, 岩 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 340b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】CD4+CD52high T細胞から切断された可溶性CD52はCD4+CD52low細胞の活性化を抑制し,自己免疫性疾患などの病態に関与することが知られている.全身性エリテマトーデス(SLE)におけるCD4+CD52+T細胞の免疫調整に関する役割を検討した.【方法】SLE患者(N = 40),健常人(N = 22),非SLE患者(N = 14,混合性結合組織病:3,関節リウマチ:11)のヒト末梢血単核細胞を分離しフローサイトメーターにてCD4+CD52highとCD4+CD52low T細胞の発現を検討した.SLEDAI,抗ds-DNA抗体価,補体価などの臨床的パラメータとの相関を解析した.ELISA法により血清中可溶性CD52を測定,上記3群間で比較した.【結果】SLE患者は,健常人および非SLE患者と比較し,有意にCD4+CD52low T細胞の割合が高かった(対健常人:p = 0.003,対非SLE患者:p = 0.003).SLE患者のCD4+CD52low T細胞(%)はSLEDAI(p-value = 0.002,r = 0.481803),抗ds-DNA抗体価(p-value = 0.01,r = 0.420842),血清IgG値(p-value = 0.018,r = 0.392004)と正の相関を示した.SLE患者における血清中の可溶性CD52は他群と比較して低値を示した(対健常人:p = 0.001,対非SLE患者:p = 0.014).【考察】SLE患者では末梢血においてCD4+CD52low T細胞が高頻度に認められ,B細胞を介した抗体産生に関与している可能性が考えられた.【結論】SLEで相対的に増加しているCD4+CD52low T細胞は,新たな治療ターゲットとなる可能性がある.
  • 伊藤 大介, 野島 聡, 熊ノ郷 淳
    2015 年 38 巻 4 号 p. 341a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      Mammalian target of rapamycin(mTOR)はアミノ酸・増殖因子等により調節され,蛋白翻訳や遺伝子転写に関与している.最近では様々な免疫細胞の分化と活性化に重要な役割を果たしていることが明らかになっている.今回,4型のセマフォリンであるSEMA4AがmTOR complex 1(mTORC1)の活性化を通じてCD8+ T細胞の活性化と分化を制御していることが明らかになった.セマフォリンは神経ガイダンス因子の代表分子で,免疫系においても重要な機能を有している.今回着目したSEMA4Aは,樹状細胞ではT細胞のプライミングに関与し,CD4+ T細胞においてはTH1細胞の促進や制御性T細胞の安定性に関与している.しかし,SEMA4Aを含むセマフォリンファミリーのCD8+ T細胞における役割は明らかになっていない.そこでSEMA4A−/− CD8+ T細胞を解析したところcytokineの産生能とeffector分子の誘導能の低下を認めた.Listeria monocytogenes-OVAをSema4A−/−マウスに感染させると,抗原特異的CD8+ T細胞の割合が低下していた.さらに,SEMA4A−/− CD8+ T細胞では mTORC1の活性化が低下してmTORC2の活性化が上昇していたことから,SEMA4AがCD8+ T細胞においてmTORC1の活性化に必要であることが示された.また,Plexin B2がリガンドであるSEMA4Aの機能的受容体であることも分かった.以上のことから,CD8+ T細胞においてSEMA4AがmTORC1シグナルを介して活性化と分化に関与することが明らかになった.
  • 佐上 晋太郎, 上野 義隆, 田中 信治, 藤田 朗, 野村 元宣, 西山 宗希, 林 亮平, 岡 志郎, 兵庫 秀幸, 日山 亨, 伊藤 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 341b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】我々は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)が,クローン病(CD)患者の寛解と関連があることを報告している.近年,NAFLDはCDにも一般人口と同様に,増加してきており,臨床的に重要視されてきているが,NAFLDがCDに与える影響について報告はない.NAFLDにおいてinvariant Natural killer T(iNKT)細胞が炎症の増悪に,non-iNKT細胞が炎症抑制に関与することが知られているが,炎症性腸疾患に対する働きについては一定の見解が得られていない.【目的】脂肪肝がiNKT cellを介して腸炎に与える影響を検索するため,脂肪肝モデルマウスにおいてNKT細胞の変化に着目し,デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎への影響を検討する.【方法】1)9-11週齢C57BL6/Jマウス(B6)およびJα18−/−マウス(KO)に,脂肪肝モデルマウス(高脂肪食(HFD)48日間)を作成し,DSS2.5%自由飲水(7日間)による脂肪肝合併の急性大腸炎モデルを作成し,体重,便性状,血便,histological scoreを算定した.2)脂肪肝モデルマウスの大腸粘膜内,肝臓内の単核球を単離し,細胞表面マーカー(CD3, NK1.1)の発現をFACSにて解析した.【結果】1)B6ではHFD負荷にて腸炎が増悪したが,KOでは逆にHFD負荷にて腸炎が改善した.2)NK1.1+CD3+細胞の割合がHFDで増加した.【結語】マウスDSS急性腸炎 において,高脂肪食負荷によりnon-iNKT細胞の割合が変化することにより,炎症が制御される可能性が示唆された.
  • 品川 尚志, 岡崎 貴裕, 池田 真理, 遊道 和雄, 柳沢 正史, 木佐貫 泰, 山田 秀裕, 尾崎 承一
    2015 年 38 巻 4 号 p. 342a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】エンドセリン(ET)は血管内皮細胞由来の血管収縮因子と考えられている.しかし,我々は新たに活性化T細胞が血管内皮細胞非依存性ET産生を誘導することを見いだしたため,その誘導機序の解析をおこなった.【方法】健常者(20名)より採取した末梢血単核球(PBMC)を固層化抗CD3抗体で活性化させ,24時間後の培養上清のET濃度をELISAで測定した.また,磁気ビーズで分離したT細胞および単球分画をTranswell systemで隔てた状況下でT細胞を活性化させ,ET産生への影響を測定した.また,この系に幾つかの阻害抗体を使用し,ET産生に与える影響も検討した.【結果】PBMC中のT細胞を活性化させた時のみETの産生を認めた.Transwell systemにおいてT細胞を活性化させると,T細胞のみではET産生は見られず,活性化T細胞は単球分画からET産生を誘導させることが判明した.ET産生誘導は,抗IFN-γ抗体および抗TNF-α抗体により阻害された.【考察】ヒトPBMCをもちいたin vitro studyにおいて,T細胞の活性化を起点とする炎症下では血管内皮細胞非依存性のET産生が誘導されることが明らかとなった.そのメカニズムとして,活性化T細胞から産生されたIFN-γとTNF-αが単球分画に作用し,単球分画からのET産生を強く誘導する可能性が示唆された.
feedback
Top