日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
38 巻, 4 号
第43回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の229件中151~200を表示しています
一般演題(ポスター)
  • 高田 英俊, 崔 麗莉, 瀧本 智仁, 石村 匡崇, 藤吉 順子, 原 寿郎
    2015 年 38 巻 4 号 p. 342b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      我々は,ヒト臍帯血由来の有核赤血球が自然免疫を制御している事を明らかにした.有核赤血球はLPS刺激による単球からの炎症性サイトカイン産生を抑制した.この抑制作用は,有核赤血球と単球との細胞間接触がない状況でも認められた.他方,有核赤血球の存在によって,LPS刺激後の単球からのIL-10産生が亢進した.抗IL-10レセプター抗体によって,有核赤血球の単球からの炎症性サイトカイン産生抑制作用は消失した.マイクロアレイ解析の結果,有核赤血球の存在によって単球のIL-10スーパーファミリー遺伝子の発現が亢進していることが明らかになった.IL-10スーパーファミリーであるIL-19は,単球からのIL-10産生を亢進させた.有核赤血球から産生される未知の分子によって,単球の機能の変化が生じ,IL-10やIL-10スーパーファミリーの産生を亢進させ,単球のLPSに対する応答性が変化することが明らかになった.胎児や新生児では,経胎盤的に胎児に移行するあるいは新生児環境に由来する物質に対する過剰な自然免疫応答が生体に不利である可能性があり,有核赤血球が自然免疫応答を制御している可能性が考えられた.
  • 高田 和秀, 廣畑 直子, Trinh Quang, 相澤 志保子, 早川 智
    2015 年 38 巻 4 号 p. 343a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】表皮における創傷治癒は女性の方が男性よりも早いとされるが,機序は不明な点が多い.【目的】表皮細胞における遊走及びEpithelial-Mesenchymal Transition(EMT)に対する性ホルモン及びToll-like receptor(TLR)各種リガンドの影響を検討する.【方法】不死化表皮細胞であるHaCaT細胞を通常培養しスクラッチテストを行い,testosterone,estradiol,poly I:C,LPSをそれぞれ添加し,細胞遊走能を検証した.次にEMTを観察するため懸垂培養によるspheroidを作成し,poly I:C,LPSをそれぞれ添加し,光学顕微鏡および電子顕微鏡で形態観察した.【結果】スクラッチテストでは,スクラッチ後96時間において10−7 Mのestradiol存在下で遊走能は有意に向上した.一方10−7 Mのtestosterone存在下では遊走能は有意に抑制された.poly I:CとLPS存在下では遊走能は有意に向上し,特に前者では顕著であった.懸垂培養では刺激18時間でLPSと,特にpoly I:C投与群でspheroid周囲の形態変化が認められた.LPS投与群ではtoluidine blue染色と電子顕微鏡においても,TLR刺激により細胞間隙の広がりが観察された.【考察】estradiolは表皮細胞遊走能を向上させることで,男性よりも創傷治癒が早いことが示唆された.また創部の細菌やウイルス感染もTLR刺激を介して創傷治癒速度に影響を与える可能性が示唆された.
  • 東 直人, 片田 圭宣, 北野 幸恵, 西岡 亜紀, 関口 昌弘, 北野 将康, 橋本 尚明, 松井 聖, 岩崎 剛, 佐野 統
    2015 年 38 巻 4 号 p. 343b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景と目的】シェーグレン症候群(SS)患者では口腔乾燥症状に加え難治性口内炎などを生じ口腔内の疼痛や不快感によりQOLが低下する.唾液には種々の生理作用がありその障害が病態形成に関連すると考え,唾液中epidermal growth factor(EGF)に注目し,SSの口腔内病変との関連性を検討し,治療介入の可能性を追求した.【方法】(1)対象は口腔内病変,唾液やEGFの分泌,口腔内QOLに影響し得る要因を有する者を除いたSS患者40人と非SS 23人.ガム試験で得た唾液の質量,EGF濃度(ELISA法),Oral Health Impact Profile簡易版(OHIP-14)問診法による口腔内QOLスコアの関連性を検討した.(2)継続診療できたSS 23人,非SS 14人で3年間の変化を評価した.【結果】(1)SS群は非SS群に比べ唾液中EGF量が有意に少なく(9238 vs 13297pg/10分,p = 0.033),罹病期間が長い者,口腔内QOLが悪い者程顕著であった.唾液中EGF量は唾液量と正の相関(rs = 0.824,p = 0.0005),罹病期間,OHIP-14スコアの間に負の相関を認めた(rs = −0484,p = 0.008; rs = −0.721,p = 0.012).(2)SS群では3年間で唾液量に変化はなかったが,口腔内QOLは有意に増悪,唾液中EGF量が有意に低下した(10158 vs 8353pg/10分,p = 0.032).これは非SS群では認めなかった.【結論】SSでは進行に伴い唾液量に加え唾液中EGF量も低下する.この「唾液の質」の低下が口腔内病変の形成に関与することが示唆され,口腔内へのEGF補充が新規治療介入ポイントになり得ると考えられた.
  • 福島 聡, 梶原 一亨, 宮下 梓, 神人 正寿, 尹 浩信
    2015 年 38 巻 4 号 p. 344a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      cobblestone appearance(CSA)は,線維化過程における真皮でのリンパ管閉塞により起こるとされており,全身性強皮症(SSc)の皮膚症状として1975年にすでに記載されている.しかし,その頻度や臨床的意義については不明であった.我々はSSc185例を対象に,CSAの有無と他の臨床症状および検査所見との相関を検討した.
      CSAを有するものは3例で,すべて男性のdiffuse cutaneous SSc(dcSSc)症例であった.modified Rodnan's total skin score(m-TSS)に関して検討したところ,dcSSc42例において,CSAを有する症例のTSSの平均値は29.7(SD = 10.0),CSAを有さない症例は16.1(SD = 8.6)であり,CSAの存在とTSS高値は有意に相関した(P < 0.007).中等量副腎皮質ステロイド(PSL)投与を受けた20例(女性11例,男性9例)中,治療抵抗性を示した症例は4例で,うち3例がCSAを呈していた.すなわちCSAを有する症例では有意にPSLに対する治療抵抗性を示した(P < 0.0002).
      以上より,CSAの存在は,1.男性例に有意に高率にみられること,2.m-TSS高値と相関すること,3.PSL投与に対する抵抗性と相関することが示唆された.
  • 芳賀 慶一, 千葉 麻子, 澁谷 智義, 長田 太郎, 石川 大, 小谷 知弘, 渡辺 純夫, 三宅 幸子
    2015 年 38 巻 4 号 p. 344b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】MAIT細胞は腸管に多く存在する自然リンパ球で,腸管免疫応答に重要な役割を有している.潰瘍性大腸炎(UC)におけるMAIT細胞の役割については不明な点が多い.本研究は,UC患者におけるMAIT細胞の頻度や活性化,機能について臨床像との関連性を調べることによりUCの病態におけるMAIT細胞の関与を明らかにすることを目的とした.【方法】UC患者及び健常者の末梢血中のMAIT細胞の頻度や活性化マーカーの発現,サイトカイン産生能をFlowcytometryを用いて解析し,両群間で比較した.また,Mayo score及びUCEISとの関連性についても検討した.また,UC患者の大腸生検組織を用いてMAIT細胞の免疫染色を行い,その頻度を寛解症例及び非寛解症例の患者で比較検討した.【成績】末梢血中のMAIT細胞の頻度は健常者と比較しUC患者で有意に低下を認め,細胞刺激後のMAIT細胞からのサイトカイン産生はUC患者で有意に亢進していた.UC患者のMAIT細胞では活性化マーカーの発現亢進を認め,Mayo score及びUCEISとの相関を認めた.また,大腸粘膜のT細胞におけるMAIT細胞の比率は寛解症例と比較し,非寛解症例において有意に増加していた.【結論】UC患者ではMAIT細胞の活性化状態と疾患活動性に相関を認め,炎症局所に集積していることから病態に関与している可能性が示唆された.また,末梢血MAIT細胞に発現する活性化マーカーがUC疾患活動性の新たなバイオマーカーとなり得ることが示唆された.
  • 貴田(更級) 葉菜, 姜 秀辰, 木田 博, 須田 亙, 服部 正平, 熊ノ郷 淳, 根岸 英雄, 谷口 維紹
    2015 年 38 巻 4 号 p. 345a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      サーファクタントプロテインD(SP-D)は肺コレクチンの一種であり,肺において病原性微生物に対する感染防御に重要な役割を果たすことが分かっているが,肺以外での機能や常在菌に対する影響はよく分かっていない.本研究では肺以外でのSP-Dの新しい役割を明らかにすることを目的として解析を行った.
      まず,各臓器においてSP-D mRNAの発現を解析したところ,胆嚢において著明に高く発現していることが明らかとなった.さらに,ELISAにより胆汁中にSP-Dが多量に分泌されていることも判明した.そのため,消化管内のSP-D産生を解析したところ,小腸や大腸ではSP-D mRNAの発現がほとんど認められないにも関わらず,大腸内容物からSP-Dが検出された.これらの知見からSP-Dが胆嚢で産生され,消化管内で機能する可能性が示唆された.そこで,SP-Dが微生物に結合して増殖を制御する機能が知られていることから,野生型マウスとSP-D KOマウスの腸内細菌叢を比較解析したところ,大腸炎に関わる細菌群に有意な差が認められた.この結果と一致して,SP-D KOマウスはDSS誘導性の大腸炎に著明な感受性を示した.以上の解析より,腸内細菌叢の制御というSP-Dの腸内での新しい機能が明らかになった.本演題では上記の知見にさらに最新の解析結果も加えて発表する.
  • 田中 克典, 池田 高治, 丸山 希実子, 古川 福実
    2015 年 38 巻 4 号 p. 345b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      当科では治療抵抗性の皮膚エリテマトーデス(CLE)や全身性エリテマトーデス(SLE)の皮膚病変に対してヒドロキシクロロキン(HCQ)使用のpilot studyを施行し,有効性を示してきた.本邦ではHCQの治験が終了し,2015年6月現在薬剤の上市を待っている状況である.そこで,薬剤の上市に先立ち,当科でHCQを投与された症例ならびに服薬を中断した症例の長期経過を報告する.これは2014年の第42回日本臨床免疫学会総会にて報告された『一年以上のヒドロキシクロロキン使用患者の調査報告』の続報となる.
  • 宮崎 雄生, 新野 正明, 深澤 俊行, 高橋 恵理, 網野 格, 越智 龍太郎, 南 尚哉, 藤木 直人, 土井 静樹, 菊地 誠志
    2015 年 38 巻 4 号 p. 346a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】Interferon (IFN)βの多発性硬化症(MS)への作用機序の一つに免疫担当細胞のサイトカイン産生調節が挙げられる.本研究ではIFNβによるヒト単球のサイトカイン調節における蛋白翻訳後修飾の役割を検討した.【対象,方法】健常者9名,無治療MS患者8名,IFNβ治療MS患者(IFN-MS)10名を対象とし,末梢血単核細胞から単球を精製,lipopolysaccharide(LPS)に対するtumor necrosis factor(TNF)α,interleukin(IL)-10産生を測定した.さらに,これらサイトカイン産生に対するIFNβ,およびヒストンアセチル基転移酵素阻害剤C646,蛋白メチル化阻害剤methylthioadenosine(MTA)の作用を検討した.【結果】単球からのTNFα産生はIFN-MSで無治療MSより高値であり,IL-10産生はIFN-MSで無治療MSに比べ低値であった.In vitroでもIFNβは単球からのTNFα産生を増強し,IL-10産生を抑制した.C646はIFNβによるTNFα産生増強をさらに促進させ,IL-10産生をさらに低下させた.MTAはIFNβによるTNFα産生増強を抑制し,IL-10には影響を及ぼさなかった.【結論】IFNβによるヒト単球のサイトカイン制御には蛋白アセチル化,メチル化が関与している.
  • 横山 宏司
    2015 年 38 巻 4 号 p. 346b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      辺縁系脳炎は辺縁系を亜急性におかす疾患で,記憶障害(海馬)・情動異常(扁桃体)・行動異常等を来す疾患である.一部の症例は自己免疫学的な機序で生じる.視神経炎の一部は抗MOG(myelin-oligodendrocyte glycoprotein)抗体陽性を呈する.本抗体はoligodendrocyteが標的となり,視神経,視交叉から視索を障害し,視機能低下を呈する.今回,辺縁系脳炎罹患後,視神経炎を認め,時系列をおって自己抗体を解析した症例を経験した.
      症例は9歳女児.発熱,傾眠傾向,片麻痺,発語消失,記憶障害を主訴に来院.髄液・血清で抗NMDA抗体が陽性であり,辺縁系脳炎と診断.γグロブリン大量療法(IVIG)とメチルプレドニゾロンパルス療法(IVMP)で加療し,5か月間かけてプレドニンを漸減,中止.中止後2週間で右目の痛み,見えにくさを訴え来院.視神経乳頭浮腫,視力低下(手動弁),視神経乳頭の造影効果を認め右側視神経炎と診断.SPECT検査,脳波検査,抗NMDA抗体も陰性,抗アクアポリン-4抗体は陰性,抗MOG抗体は血清で強陽性,髄液で陽性であり,視神経炎と診断した.IVIG+IVMPにて加療,視機能は改善した.抗MOG抗体について,時系列をおって解析すると,辺縁系脳炎発症時から陽性であった.
      本症例の経過は自己免疫反応の腑活による抗体産生が刺激を受け,抗NMDA抗体,抗MOG抗体をはじめとした様々な自己抗体が産生され,異なる表現型を来している可能性を示唆している.
  • 木村 公俊, 中村 雅一, 佐藤 和貴郎, 岡本 智子, 荒木 学, 林 幼偉, 村田 美穂, 高橋 良輔, 山村 隆
    2015 年 38 巻 4 号 p. 347a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】ナタリズマブは,T細胞表面のα4インテグリン(CD49d)の発現を低下させることにより,炎症性T細胞の中枢神経内への浸潤を阻害する.しかし,CD49dは制御性T細胞にも発現している.本研究では,中枢神経への浸潤能を保持するCD49d陽性群に着目し,炎症性・制御性T細胞の動態ならびにナタリズマブ投与との関連を明らかにする.【方法】ナタリズマブ投与中の多発性硬化症(MS)7例(以下MS(n)群),同薬投与歴のないMS 29例(以下MS群)を対象とし,Th1細胞,Th17細胞,Treg細胞におけるCD49d陽性率を解析した(以下,CD49d+Th1,CD49d+Th17,CD49d+Treg).さらに,CD49d陽性メモリーCD4 T細胞における各種mRNA発現を解析した.【結果】MS(n)群ではMS群と比較して,全てのT細胞サブセットでCD49d陽性率の低下を認めたが,CD49d+Th1/CD49d+Treg,CD49d+Th17/CD49d+Tregのいずれも高値を示した(p < 0.05).ナタリズマブ投与後に悪化を認めた症例では,これらの値が高値を示した.また,MS(n)群ではMS群と比較して,CD49d陽性メモリーCD4 T細胞中の炎症関連遺伝子の発現が高く,制御関連遺伝子の発現が低かった(p < 0.05).【結論】ナタリズマブ投与によって,CD49d陽性率は制御性T細胞においてより大きく低下した.中枢神経浸潤能を保持するCD49d陽性T細胞集団においては,炎症・制御バランスの悪化が示唆された.ナタリズマブ不応性の一因になっている可能性があると考えた.
  • 門脇 淳, 佐賀 亮子, 佐藤 和貴郎, 林 幼偉, 三宅 幸子, 山村 隆
    2015 年 38 巻 4 号 p. 347b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      中枢神経ミエリンを障害する自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の罹患者は近年日本で急激に増加しており,我々は食習慣の欧米化による腸内細菌の変化が重要な環境要因と考え研究を行っている.近年,腸内細菌によって誘導される腸管特異的T細胞が腸管外自己免疫疾患を調節しているとの知見が集積してきている.私達はMSのモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を自然発症するMOG(35-55)反応性T細胞受容体トランスジェニックマウスの腸を研究し,MOG(35-55)誘導性EAEに移入すると中枢神経炎症に遊走し,LAG3を高発現して炎症を抑制するCD4陽性‘regulatory IEL’を見出した.さらに我々はヒト末梢血における腸管特異的CD4+T細胞の性質を検討するため,腸管ホーミングレセプターであるCCR9に着目した.健常人,MS/視神経脊髄炎(NMO)患者の末梢血・髄液をフローサイトメーターを用いて解析したところ,CCR9+細胞はメモリーCD4+T細胞の約5%を構成し,中枢神経炎症遊走性のCCR6を高発現していた.さらに,NMO患者において,CCR9-T細胞はLAG3の発現をほとんど認めなかったのに対し,CCR9+T細胞は髄液中でLAG3を高発現することがわかった.以上より腸管免疫系は,腸管特異的CD4+T細胞におけるLAG3の発現を介して中枢神経炎症性疾患を制御している可能性が示唆された.
  • 久保 智史, 中山田 真吾, 中野 和久, 澤向 範文, 平田 信太郎, 宮川 一平, 齋藤 和義, 田中 良哉
    2015 年 38 巻 4 号 p. 348a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】ABTとTCZは代表的なnon TNF阻害薬であるが,これら2つの臨床効果の直接比較は行われていない.日常診療における関節リウマチに対する臨床的効果を比較した.【方法】ABTを投与した194例およびTCZを投与した273例を対象とした.治療選択バイアスを避けるため,propensity score matchingを用いて統計学的に患者を抽出した.【結果】ABT群およびTCZ群の平均年齢60.7歳,59.2歳で,罹病期間は8.7年/9.5年,ベースラインでの疾患活動性はSDAI 28.7/27.7と高い疾患可動性を認めた.52週時点のABTおよびTCZの継続率はABT群71.6%,TCZ群68.6%で差は認めず疾患活動性は,ABT群で18%,TCZ群で20%が寛解に到達し両群に有意差を認めなかった.HAQに関しても,ABT群は36%が,TCZ群では28%が機能的寛解に到達し差は認めなかった.52週のSDAIに寄与する予測因子を検討したところ,ABT群では治療開始前のSDAIが低く,リウマトイド因子が高い例ほど,TCZ群では治療開始前のHAQが低く,bio naiveほど52週におけるSDAIが低値であった.一方HAQについては,いずれの群においても罹病期間が短く,治療開始前のHAQが低い症例ほど52週でのHAQ-DIが低くなることが示唆された.【結語】ABTおよびTCZは日常診療において,同等の臨床効果を持つことが示された.ABTではリウマトイド因子高値例において効果が高く,TCZでは機能障害が出現する前に使用することでより良いアウトカムが得られる可能性がある.
  • 一瀬 邦弘, 牛草 健, 佐藤 俊太朗, 中嶋 秀樹, 本村 政勝, 川上 純
    2015 年 38 巻 4 号 p. 348b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】Klothoはカルシウムホメオスタシスを制御し,中枢神経系の老化抑制に重要な役割を果たしていることが報告されている.これまで中枢神経ループス(NPSLE)における髄液中α-Klotho(髄液Klotho)の意義については明らかにされていない.今回,我々は髄液KlothoがNPSLEとSLEの判別マーカーとなりうるかについて検討した.【方法】NPSLE群(N = 34),SLE群(N = 17),ウイルス性髄膜炎(VM)群(N = 19),多発性硬化症(MS)群(N = 15)および視神経脊髄炎(NMO)群(N = 16)における髄液および血清Klotho濃度をELISA法により測定した.NPSLE群およびSLE群における髄液・血清Klotho濃度,年齢,性別,罹病期間,SLEDAI,抗ds-DNA抗体,抗Sm抗体,C3,C4,抗リン脂質抗体症候群合併の有無,髄液中IL-6濃度との関連を統計学的に解析した.【結果】髄液Klotho濃度(中央値)はNPSLE群,SLE群,VM群,MS群およびNMO群においてそれぞれ136.7 pg/mL,380.2 pg/mL,302.1 pg/mL,186.4 pg/mLおよび203.1 pg/mLであり,NPSLE群では他の4群と比較しそれぞれ有意に低下していた.多変量解析では髄液Klotho濃度低値,抗Sm抗体低値,C3高値がNPSLEのリスク因子であることが示された.【結論】髄液Klotho濃度はNPSLEで有意に低値であり,SLEとの判別マーカーとなり得ることが示唆された.
  • 小橋川 剛, 南家 由紀, 八子 徹, 山中 寿, 小竹 茂
    2015 年 38 巻 4 号 p. 349a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】BD患者の病勢と血中脂肪酸との関連を検討した.【方法】当院に通院したBD患者で診療録から脂肪酸分画を測定していた24例について脂肪酸とBDとの関連を解析した.病勢は疾患活動性全般評価(PtGA)を用い,『BDにおいてEPA/AA比は正常範囲より低い』と仮定した.【結果】全24例(その内訳は,口24例,皮膚23,陰部19,眼9,関節炎19,腸管11,神経3,血管5)において,検討した2年間で延べ75件の検査を施行.平均EPA/AA比0.41(SD:0.30)で平均CRP0.42 mg/dL (1.04),平均赤沈1時間値19.9mm(17.2),平均PtGA38.7(23.2).EPA/AA比の基準値より大,以内(0.11-0.5),より小,の3群で検討,各々19件(平均EPA/AA比0.84:SD0.29),54件(0.28:0.097),2件(0.077:0.0011).単変量解析でEPA/AA比が高いと皮膚,神経病変,免疫抑制薬の使用を減少させ,低いと陰部,腸管,血管病変を減少させた.仮設は否定された.但し,血管型5例は,EPA/AA比とPtGAとに関連は認めないものの,EPA/AA比低下例は同5例で全て活動期の腸管型で,in-take不足のため低値となった可能性がある.【結論】BD患者において,EPA/AA比が血管型とは相関しない傾向を示した.
  • 吉崎 和幸, 宇野 賀津子, 岩橋 充啓, 八木 克巳
    2015 年 38 巻 4 号 p. 349b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      炎症病態にサイトカインの関与はよく知られている.主にin vitroの系によって見出されているが,臨床における関与は不明で推測の域を出ないものも多い.我々はin vitroで得られた作用が,確かにin vivoでも同様の作用を示すかどうかを検討してきた.関節リウマチのIL-6阻害治療の有効性は示されているが,IL-6の臨床における作用は十分に解析されていない.我々はヒト型化抗IL-6レセプター抗体(トシリズマブ)治療におけるIL-6シグナル関与分子を検討した.In vitro研究で可溶性IL-6レセプター(sIL-6R)はIL-6の作用を増強し,一方sgp130は抑制した.トシリズマブ治療前にバイオマーカー量と,治療後16週の効果反応(DAS28)および寛解との関連性を検討した.その結果,特にsgp130を含む数種の因子がトシリズマブ治療反応(DAS28)と強い相関(R2 = 0.64)を示した.また,寛解有無においてもAUC = 0.83,P = 0.002を示した.更に,血中sgp130が多いほど有効であることが示された.このことから,sgp130は生体内自然阻害分子であることが示唆され,in vitroで得られた結果と一致した.臨床的には個々の患者に我々が特定した治療前のマーカー量を用いてDAS28を予測し,治療前に治療結果が予測できることが示された.
  • 川尻 真也, 西野 文子, 道辻 徹, 清水 俊匡, 梅田 雅孝, 福井 翔一, 中島 好一, 古賀 智裕, 岩本 直樹, 一瀬 邦弘, 玉 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 350a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】RA患者におけるICG増強蛍光光学画像(FOI)検査の有用性を超音波との比較およびバイオマーカーとの関連により検討した.【方法】活動性RA患者25例を対象に両手のFOIおよび超音波を行った.手関節,第2-5指PIP・MCP関節において,FOIにおけるPhase 1-3(P1-3)およびcomposite image(CI)と超音波におけるGSおよびPDを半定量法(grade 0-3)で評価した.半定量スコアの合計を総スコアとした.マルチサスペンションアレイにより45種類のサイトカイン・ケモカインや増殖因子を測定した.【結果】PDUSでは147関節,FOIではP1;122関節,P2;206関節,P3;140関節,CI;139関節に陽性所見を認めた.PDUS ≥ grade 1を基準とした場合,FOIの感度(%)・特異度(%)はP1;67.6・92.7,P2;92.6・77.2,P3;71.6・88.7,CI;71.6・89.1であった.FOIのCI総スコアは超音波GS総スコア(rs = 0.86)およびPD総スコア(rs = 0.82)と強い相関を認めた.また,IL-6およびVEGFと有意な正の相関を認めた.【考察】FOIは関節炎を超音波と同等以上の感度で検出することができる.バイオマーカーとの関連から考察を加えて報告する.
  • 津田 耕作, 明石 健吾, 西村 啓佑, 千藤 荘, 三枝 淳, 森信 暁雄
    2015 年 38 巻 4 号 p. 350b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】シェーグレン症候群(SS)は主に外分泌腺を障害するが,基本的には全身性の自己免疫疾患であり,腺外症状として各種臓器障害を呈する.その中でSSの患者では疲労感の訴えはよく経験され,睡眠障害がその一因と考えられている.しかしSSの睡眠障害に関する報告は限定的である.そこで当科外来通院中の原発性SS患者における主観的睡眠観の評価およびそれに影響する因子の検討を行った.【方法】当科に通院中のpSS患者でステロイド内服しているものを除いた37人(全例女性)を対象とした.それぞれにピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)および,シェーグレンの自覚症状質問票(ESPRI),うつ症状の質問票(PHQ-9),睡眠時無呼吸症のスクリーニング質問票(ESS)を実施し検討を行った.【結果】一般人口に比べて明らかに高い睡眠障害の有病率70%を有していた.また睡眠障害の程度は統計学的に有意にうつ症状の程度とBMIに関連を認め,特にうつの程度が最も影響を与えていた.【結論】pSSの患者では睡眠障害に注意し,うつ病等の精神疾患を含めたマネージメントを考えることで,QOLの改善につながるかもしれない.
  • 江川 真希子, 今井 耕輔, 満生 紀子, 森尾 友宏, 宮坂 尚幸
    2015 年 38 巻 4 号 p. 351a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】分類不能型免疫不全症(CVID)は成人例も多いが,妊娠・出産に関する報告は少ない.しかし今後,γグロブリン補充療法(IVIG)によって生命予後が改善されたことや診断技術の向上に伴って,妊娠・出産例は増加すると思われ,どのような周産期管理が望ましいか検討した.【方法】2007年から当院で経験したCVIDの妊娠・出産3名,計7妊娠について,IVIGの方法,IgG値の推移,産科的合併症,周産期予後について診療録から後方視的に検討した.【結果】全例に妊娠期間を通してIVIGが行われ,投与量の中央値は190.5mg/kg(76-546)であった.IgGトラフ値の中央値は627mg/dl(233-1232mg/dl)と妊婦によって様々で,妊娠前からの投与量・投与間隔とも変更しなかった症例ではIgG値は妊娠後期にかけて低下し,増量しても投与間隔を短縮しなかった症例ではIgG値は増加しなかった.増量し,かつ投与間隔を短縮した症例のみ妊娠後期にIgG値の増加を認めた.上気道感染・副鼻腔炎を全例で認めたが,重篤な感染症はなかった.産科的合併症として1例の死産,3例の妊娠後期での羊水過少を認めた.出生児は生後1ヶ月の時点での順調な発育を確認した.【考察】定期的なIVIGによって,重篤な感染症は認めなかったが,妊婦によってIgGのトラフ値はさまざまであった.妊娠後期には母体の体重増加や胎児への移行を考えて投与法を検討する必要がある.また羊水過少にも十分な注意が必要である.
  • 齋藤 俊太郎, 鈴木 勝也, 山岡 邦宏, 竹内 勤
    2015 年 38 巻 4 号 p. 351b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】Tocilizumab(TCZ)投与中の関節リウマチ(RA)患者におけるIL-6/STAT3シグナル阻害強度の評価.【方法】当施設においてTCZを3週(n = 10),4週(n = 10),5週(n = 10)で投与しているRA患者(TCZ群)と,メトトレキサート(MTX)を投与しているRA患者(MTX群,n = 10)より末梢血全血を採取し,in vitroでIL-6刺激(0, 0.1, 1, 10, 100 ng/ml)後のCD4+T細胞中のリン酸化STAT3(pSTAT3)陽性細胞率をフローサイトメトリーにて測定した.【結果】全群ともpSTAT3陽性細胞率はIL-6刺激濃度に比例して増加した.TCZ投与群ではMTX投与群よりも有意に(p < 0.001)pSTAT3陽性細胞率が低下していた.さらにTCZ群ではその投与間隔が短いほどpSTAT3陽性細胞率が低く,より強くIL-6シグナルが阻害されていることが示唆された(3群間の分散分析p < 0.001).【結論】TCZ投与下でのIL-6/pSTAT3シグナル阻害強度の検出系を確立し,TCZ投与間隔によって同シグナルの抑制の程度が有意に異なることを示した.本検出系は,TCZ投与患者においてより適切な投与間隔の設定に役立つ可能性がある.
  • 久保 智史, 中山田 真吾, 中野 和久, 平田 信太郎, 宮崎 祐介, 好川 真以子, 齋藤 和義, 田中 良哉
    2015 年 38 巻 4 号 p. 352a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】IgG4関連疾患(IgG4-RD)では,リンパ球の活性化による過剰なIgG4産生を伴う多臓器障害が生ずるが,特定のリンパ球サブセットへの分化偏向が病態形成に関連するのか不詳である.【方法】健常人,IgG4-RD,Sjogren症候群(SjS)より末梢血を採取し,8カラーFACS解析を実施し,ケモカイン受容体によるリンパ球フェノタイプと涙腺・唾液腺以外の臓器障害の有無,血清IgG,IgG4,CRPなどの臨床的パラメータとの関連性を検討した.【結果】IgG4-RD(16例)の患者背景は,年齢60歳,罹病期間19ヶ月,血清IgG 2735 mg/dl,CRP 0.7 mg/dlで,腺症状のみが7例,涙腺・唾液腺以外の臓器障害を9例で認めた.健常人,IgG4-RD,SjS患者末梢血での古典的ヘルパーT細胞(Th1, Th2, Th17)のサブセット割合は差を認めなかった.一方IgG4-RD患者末梢血では,エフェクターT細胞,Tfh細胞,およびplasmablastの割合が有意に高く,さらにTfhはplasmablastの割合と相関していた.臨床所見に関してはIgGの上昇がエフェクターB細胞やplasmablastと相関した.さらに,涙腺・唾液腺以外に病変を有する重症度の高い群では,plasmablastとTfhの上昇が顕著であった.【結論】IgG4-RD末梢血ではエフェクターT細胞が特徴的に増加しており,B細胞の分化に関わるTfhと抗体産生性plasmablastが相関し,いずれも増加していた.さらにTfhとplasmablastが疾患の臓器障害進展にも関わる可能性が示唆された.
  • 久田 諒, 加藤 将, 中川 育磨, 坊垣 暁之, 奥 健志, 堀田 哲也, 保田 晋助, 渥美 達也
    2015 年 38 巻 4 号 p. 352b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】抗リン脂質抗体(aPL)陽性血小板減少症と血栓症発症リスクとの関係を検討する.【方法】2004年1月~2006年12月に北海道大学病院膠原病外来を受診し,aPL(ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン抗体,抗β2グリコプロテインI抗体,ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体)を測定した連続670例のうち,全身性エリテマトーデスおよびフォローアップ1年以内の患者を除く337例を抽出した.aPLのプロファイル,血小板減少症(10万/μl以下)の合併,血栓症の有無を後ろ向きに解析した.【結果】aPL陽性群と陰性群では血小板減少症の頻度に有意差は見られなかった(16/138例(12%)vs 19/199例(10%),p = 0.58).aPL陽性者において,血小板減少群は非血小板減少群に比べて血栓症の発症が高率に見られ(11/16例(58%)vs 23/122例(19%),p < 0.001),特に動脈血栓症の発症が多かった(10/16例(63%)vs 18/122例(15%),p < 0.001).動脈血栓症の内訳は,血小板減少群では10例全例が脳梗塞であったのに対し,非血小板減少群では脳梗塞15例(83%),網膜動脈閉塞症2例(11%),心筋梗塞1例(6%)であった.また両群間のaPLプロファイルに有意差を認めなかった.一方aPL陰性者においては,血小板減少群と非血小板減少群で血栓症の発症率に有意差は見られなかった(4/20例(20%)vs 24/179例(13%),p = 0.49).【結論】aPL陽性血小板減少症は血栓症,特に動脈血栓症発症のリスクである.
  • 千藤 荘, 津田 耕作, 明石 健吾, 西村 啓佑, 三枝 淳, 森信 暁雄
    2015 年 38 巻 4 号 p. 353a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】当科で経験した脊椎関節炎の臨床的特徴について検討する.【方法】2013年4月から2014年11月の間に当科に通院歴のある脊椎関節炎(SpA)患者57例を後ろ向きに検討した.【結果】57例の内訳としては,強直性脊椎炎(AS)10例,乾癬性関節炎(PsA)26例,掌蹠膿疱症性骨関節円(PAO)9例,炎症性腸疾関連脊椎関節炎(IBD-SpA)3例,反応性関節炎(ReA)2例,分類不能型脊椎関節炎(uSpA)8例であった.ASAS分類基準は42/57例(73%)で満たしており,残りは臨床症状や画像所見から脊椎関節炎と分類された.患者背景は,性別:男性28例,女性29例(AS:男3女7,PsA:男15女11,PAO:男4女5,IBD-SpA:男2女1,ReA:男2女0,uSpA:男2女6),平均年齢:52.4±13.3歳(23~79歳)であった.HLAは,17例で測定されておりその内6例(35%)でHLA-B27が陽性であった.発症から診断までの期間は中央値でAS:17年,PsA:2.5年,PAO:2年,IBD-SpA:0.9年,ReA:1.1年,uSpA:1.5年であった.治療は,ステロイド:28例(49%),DMARDs:38例(67%),NSAIDs:40例(70%),TNFα阻害剤:18/例(32%)であった.【結論】ASで発症から診断までに長期間要していた.全体としてはHLA-A2陽性の割合が多く,ぶどう膜炎合併の4例はすべてHLA-B27が陽性であった.その他,当科のSpA患者の臨床的特徴を文献的な考察を加えながら検討する.
  • 井上 なつみ, 清水 正樹, 谷内江 昭宏, 川野 充弘, 角田 慎一郎, 佐野 統, 松村 正巳
    2015 年 38 巻 4 号 p. 353b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】成人発症スティル病(AOSD)と全身型若年性特発性関節炎(s-JIA)は同一スペクトラムの疾患と考えられている一方で相違点も存在する.今回我々はサイトカインプロファイルの観点から両疾患を比較し,その異同について検討した.【対象と方法】AOSD27例,s-JIA76例について,血清サイトカイン濃度(IL-18, IL-6, neopterin, sTNFR-I, sTNFR-II)をELISA法で測定し,そのプロファイルと臨床像を比較検討した.【結果】両疾患はともに急性期の血清IL-18濃度が著明に高値であり,寛解期にも高値が持続する点が特徴的であった.また,AOSDではs-JIAよりも有意に血清IL-18とneopterin濃度が高値であった.AOSDにおいてIL-6優位群(IL-18/-6比 < 5000)とIL-18優位群(> 5000)で臨床像を比較すると,前者で有意に関節炎が多かった.AOSDのMAS発症例は6例中5例が後者に分類された.【考察】AOSDにおいてもs-JIAと同様IL-18の過剰産生を背景とする自己炎症病態が深く関与していることが推測された.IL-18やneopterin値の差は,臨床像の違いと関連する可能性が示唆された.また,AOSDにおいてもIL-6優位群,IL-18優位群の2つの亜群が存在し,この鑑別により臨床経過,予後を予測できる可能性がある.
  • 小倉 剛久, 平田 絢子, 林 則秀, 武中 さや佳, 伊東 秀樹, 水品 研之介, 藤澤 有希, 山下 奈多子, 亀田 秀人
    2015 年 38 巻 4 号 p. 354a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】SLEとRAはともに関節の変形を生じうるが,骨破壊の有無などの相違も知られている.【目的】SLEおよびRA患者の関節炎を超音波検査で詳細に検討し,両疾患における滑膜・腱病変の異動を明らかにする.【方法】関節症状を認めたSLE患者13例と,RA患者39例のいずれも新規発症の未治療症例を対象とし,両側手関節,手指関節(MCP,PIP,IP)と伸筋腱,屈筋腱について超音波検査を行った.Gray Scale(GS)とPower Doppler(PD)による関節滑膜および腱・腱鞘滑膜をグレード0~3の半定量法で分類しGS ≥ 2もしくはPD ≥ 1を認めた症例を関節滑膜炎および腱・腱鞘滑膜炎ありと判断した.さらに,関節毎のGS/PDのスコアを計算し病変の特徴を検討した.【結果】SLEでは11例(85%)に関節滑膜炎,12例(92%)に腱・腱鞘滑膜炎を認めた.RAでは37例(95%)に関節滑膜炎,25例(64%)に腱・腱鞘滑膜炎を認めた.関節毎のSLEおよびRAの関節滑膜炎GS+PDスコアはそれぞれ2.2 vs 2.8(p = 0.019)とRAで有意に高かったが,腱・腱鞘滑膜炎GS+PDスコアはそれぞれ1.3 vs 1.0(p = 0.446)とSLEで高いものの有意差はなかった.【結論】SLEとRAにおける関節病変の違いが示唆された.
  • 西村 啓佑, 津田 耕作, 明石 健吾, 千藤 荘, 三枝 淳, 森信 暁雄
    2015 年 38 巻 4 号 p. 354b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】当院通院歴のあるベーチェット病患者を解析し,臨床的特徴や治療実態を把握する.【方法】2008年4月から2014年12月にかけて当科外来通院歴のあるベーチェット病患者を後向きに抽出した.性別,発症年齢,分類,症状,合併症,検査値(HLA),治療薬などを調査した.【結果】ベーチェット病患者は151例で男女比は1:1.1,平均発症年齢は37.0歳であった.分類としては,完全型9.3%,不全型53.6%,特殊型37.1%で腸管型が最も多く,腸管型は血管病変の合併が有意に多かった(P = 0.008).臨床症状は口腔内潰瘍96.7%,皮膚病変91.4%で,皮膚病変では結節性紅斑様皮疹が47.0%で最多であった.眼症状は52.3%,外陰部潰瘍は55.0%にみられた.腸管病変は回盲部潰瘍が63%と最も多く,血管病変は深部静脈血栓症が60%で最多であった.HLAは71例に検査を行い,HLA-B51, A26陽性はそれぞれ33%,21%であった.薬剤はコルヒチン投与が53.0%と最多で,ステロイド,インフリキシマブ,アダリムマブの投与はそれぞれ29.8%,24.5%,4.0%であった.原疾患による死因は消化管出血,肺胞出血であった.【結論】ベーチェット病に男女差はなく,若年発症が多く過去の報告と同様であった.分類では腸管型と血管型の合併例が多くみられ特徴的であった.
  • 関口 昌弘, 藤井 隆夫, 北野 将康, 松井 聖, 三木 健司, 橋本 英雄, 横田 章, 山本 相浩, 藤本 隆, 日高 利彦, 新名 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 355a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】1st-bioとしてのアバタセプト(ABT)治療における48週臨床的寛解(Clinical Remission; CR)達成に影響するbaselineの予測因子をMTXの有無別に検討する.【方法】ABROAD試験に登録,ABT投与後48週が経過した277例を対象とした.MTX併用群(n = 191)と非併用群(n = 86)の2群に分類し,ABT治療の有効性を平均DAS28-CRP値,CR達成率(DAS28-CRP < 2.3)で比較検討した.また各群で48週CRに至るbaselineの予測因子を多変量ロジスティック解析にて検討した.【結果】DAS28-CRP値の推移は治療前,治療48週でそれぞれMTX併用群4.52±1.18→2.74±1.30,非併用群4.70±1.03→2.90±1.20であった(P = 0.987, repeated measures ANOVA).48週CR達成率はMTX併用群42.9%,非併用群32.9%であった(P = 0.113, Fisher's exact test).MTX併用,非併用各群におけるbaselineのCR達成予測因子は併用群では“SDAI ≤ 26”,“HAQ-DI ≤ 1.0”が,非併用群では“投与時年齢70歳以上”,“CRP ≤ 2.0mg/dlが抽出された.“SDAI ≤ 26”,“HAQ-DI ≤ 1.0”を満たす症例のCR達成率はMTX併用群64.6%,非併用群44.4%(P = 0.074),“投与時年齢70歳以上”,“CRP ≤ 2.0mg/dl”を満たす症例のCR達成率はMTX併用群32.5%,非併用群56.0%(P = 0.075)であった.【結論】MTXの有無でABT治療によるCR達成に影響するbaselineの因子は異なっていた.MTX非併用例では年齢が高いほどCRを達成しやすい傾向が示された.
  • 喜多村 一孝, 佐藤 加代子, He Yun-Chi, 萩原 誠久
    2015 年 38 巻 4 号 p. 355b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【Introduction】Adhesion of circulating leukocytes to the endothelial cells and subsequent trans-endothelial migration are important steps in the development of atherosclerosis. This process is predominantly mediated by adhesion molecules, which are expressed on endothelial cells and leukocytes.【Aim】We examined whether adhesion molecules on CD4+ T cells contribute to plaque instability and atherosclerotic development. 【Methods】We examined 36 acute coronary syndromes (ACS) underwent the thrombus-aspiration therapy and 24 controls (Cont).【Results】CD4+ T cells in peripheral blood from ACS strongly expressed PSGL-1 and integrin β2 compared to Cont. Furthermore, the culprit coronary artery contained abundant PSGL-1+CD4+ T cells, but not integrin β2+CD4+ T cells. In addition, immunohistochemistry revealed that many PSGL-1+CD4+ T cells were in the culprit plaques and thrombus. These PSGL-1+CD4+ T cells strongly bound to both P-selectin and E-selectin, and induced endothelial cell apoptosis through active caspase-3.【Conclusion】We concluded that cytotoxic PSGL-1 expressing CD4+ T cells participate directly in the development of atherosclerosis and plaque instability in ACS.
  • 岳野 光洋, 出口 治子, 須田 昭子, 大野 滋, 上田 敦久, 石ヶ坪 良明
    2015 年 38 巻 4 号 p. 356a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】ベーチェット病は経過を通じた症状の組み合わせにより診断されるため,しばしば適応基準による診断の不一致が生じる.本研究では厚労省診断基準で診断した症例のISG国際診断基準,IRT-ICBD国際(診断・分類)基準の充足率を検討した.【方法】1991年から2007年に横浜市立大学附属二病院で診療を受け,厚生労働省べーチェット病診断基準を満たす412例(男184例,女228例,36.9±11.9才,日本人409例)を対象にISG基準(1990年,再発性口腔内アフタを必須とし,皮膚症状,陰部潰瘍,眼病変,針反応のうち2つ以上),IRT-ICBD基準(2014年,眼病変,陰部潰瘍,口腔内アフタ各2点,皮膚病変,神経症状,血管症状,針反応各1点,総計4点以上)の充足率を検討した.【結果】全症例のISG基準充足率90%に対し,IRT-ICBD基準は99%であった.ISG基準非充足例は特殊病型(27/111例 = 24%,重複例12例含む),腸管型(13/43例 = 30%),血管型(7/26例 = 27%),神経型(12/54例 = 20%)で,特殊型以外(15/301例 = 5%)より有意に多かった.IRT-ICBD基準非充足の6例はすべて神経型・血管型重複のない腸管型症例であった.【考察・結論】厚労省基準の腸管型は他の病型に比べ,二つの国際基準の非充足例が多い.腸管病変の頻度が高いことは日本患者の人種的な特徴とされるが,他病型との遺伝学的差異も指摘されている.今後,この診断・分類基準不一致例の扱いについて検討する必要がある.
  • 日高 利彦, 橋場 弥生, 西 英子, 甲斐 泰文, 黒田 宏
    2015 年 38 巻 4 号 p. 356b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】アダリムマブ(ADA)治療を当院で開始した関節リウマチ(RA)患者の寛解休薬維持に及ぼす背景因子について調べた.【対象及び方法】当院にてADA治療を行ったRA患者55例(平均年齢59歳,男性10例,女性45例)を対象とした.ADA治療を最低1年は行い,6ヶ月間以上寛解が維持できた症例で,患者さんが希望すれば休薬可とした.寛解休薬維持群(A群)ADAと治療継続群(B群)例に分けて患者背景およびADA投与期間中の臨床反応について比較した.【結果】A群は12症例,B群43例であった.患者背景ではA群はB群に比べ女性の割合が有意に低く,罹病期間が有意に短かった(ROC解析,cut off値9ヵ月).A群でRAの初期治療によりRFが有意に低下していた(それぞれ,初診時→ADA導入時,A群:150→50.5,B群:197.2→186,(P < 0.05)).MTX,PSLの併用に関しては両群で差が認められなかった.投与開始時の疾患活動性,ADA治療期間中の臨床反応に差はなかった.MMP-3は両群で低下したがA群でより低下した.【結語】罹病期間が短く,RA初期治療でRFが低下し,治療期間中MMP-3値の低下が得られれば休薬後も寛解を維持できる可能性が大きい.
  • 北野 将康, 北野 幸恵, 東 幸太, 壺井 和幸, 安部 武生, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 吉川 卓宏, 田村 誠朗, 斎 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 357a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】関節リウマチ(RA)での,トシリズマブ(TCZ),アバタセプト(ABT)による早期の骨代謝是正機序を明らかにする.【方法】症例背景を一致させた女性RA患者44名(ABT,TCZ各22名)のうち12週後のEULAR反応性でのレスポンダー症例36名(ABT:17名,TCZ:19名)を対象とし,治療前と12週後の血清中のNTx,osteocalcin(OC),sRANKL,OPG,DKK-1,TRACP-5bと血漿中のosteopontin(OPN)を測定し比較検討した.【成績】TCZ群:12週後NTxは有意に低下,OCは有意に上昇,sRANKL,sRANKL/OPG,OPN,DKK-1は有意に低下した.ABT群:12週後にNTxは低下傾向,OCは上昇傾向であったが有意差は認めず.またsRANKLとOPGに有意な変化はなかった.一方OPNは有意に低下した.TCZ,ABT両群において12週後のNTxの変化率は治療前のTRACP-5bと負の相関を認めた.薬剤間での各パラメータの変化率の比較では,DKK-1低下がTCZ群で有意であった.【結論】TCZはRANKL,OPN,DKK-1の制御から骨吸収優位のRAの骨代謝を改善していると考えられる.ABTの骨吸収抑制機序としてはOPNの制御のほかに,RANKLを介さないTRACP-5b制御の存在が示唆された.
  • 齋藤 和義, 中野 和久, 中山田 真吾, 久保 智史, 澤向 範文, 平田 信太郎, 宮川 一平, 岩田 慈, 花見 健太郎, 田中 良哉
    2015 年 38 巻 4 号 p. 357b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)治療においてメトトレキサート(MTX)はRAと診断されたらまず開始すべきアンカードラッグである.一方,リンパ球の過剰活性化が病態の根底にあるRAでは,悪性リンパ腫(ML)の発症頻度はRA疾患活動性に応じて健常人と比較し4-25倍と高く,しばしばMTX投与中にML発症が認められるが詳細は解明されていない.今回当科および関連医療機関で診療する概数6000名のRAでMTX投与中に発症したML46名に関して検討を行った.平均66.9±11.0歳,男/女 9/37例,発症時RA罹病期間は151.6±115ヶ月,MTXの投与量は8.2±3.3mg/週,投与期間は84.3±109ヶ月,ステロイドの併用量は,1.0±2.3.ML発症時は,DAS28ESR 4.24±1.5,CRP 4.4±5.3と中等度以上のRA疾患活動性を認め,治験薬を含む延べ生物学的製剤併用数は27例で(TNF阻害剤25例,その他2例),LDH 342±238,リンパ球数1484±1105,可溶性IL-2R 2013±2383,病理組織ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が約2/3を占めた.投与前の発症予知は困難で,LDH,IL-2Rなどの臨床検査値も診断における有用性は限定的と考えられた.既存の報告にも示されるように,MTX投与中のRAに発症したMLでは,RAの疾患活動性の高い状況で発症することが多く,MTX中止により改善した9例を除けば,医原性と断定できるものでは無いと考えられた.
  • 辻村 静代, 齋藤 和義, 田中 良哉
    2015 年 38 巻 4 号 p. 358a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】 SLEのCD4+cellで細胞外薬物排泄により治療抵抗性を齎すP糖蛋白質(P-gp)とT細胞活性化指標であるCD69が高発現することを報告した.今回,これらの分子とSLEの組織障害との関連を検討した.【方法】CD4+cell上標的分子をフローサイトメーターと免疫組織染色で評価した.【結果】S LE(n = 116)ではP-gpはCD69+CD4+cellに高発現し,P-gp+CD69+CD4+cell比率はSLEDAIと正相関した.P-gp+CD69+CD4+cell比率は増殖性腎炎(pLN)合併群で高く,漿膜炎,NPSLEの有無で差は無かった.同細胞比率は,ステロイド(CS)不応性LNの中でもpLNは非pLNに比して高く,pLNかつNPSLE合併例で上昇していた.難治性pLN(n = 12)では末梢血ではP-gp+CD69+CD4+cellが増加し,病理組織では,腎間質リンパ球浸潤,P-gp+CD4+cell集簇を認めた.強化免疫抑制療法反応例(n = 5)ではP-gp+CD69+CD4+cell比率は低下し,不応例(n = 7)では上昇した.【結論】P-gp+CD69+CD4+cellは腎に浸潤して難治性活動性病変を形成することが示唆され,その制御が治療抵抗性克服に重要であり,末梢血P-gp+CD69+CD4+cellはその指標となると考えられた.
  • 古川 哲也, 荻田 千愛, 安部 武生, 横山 雄一, 田村 誠朗, 吉川 卓宏, 斎藤 篤史, 西岡 亜紀, 関口 昌弘, 東 直人, 北 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 358b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】SScは皮膚および諸臓器の線維化を起こす難治性の結合組織疾患であり,間質性肺炎(IP)や肺高血圧症(PH)を合併することで生命予後に影響を与える.キチナーゼ様蛋白であるYKL-40は炎症と組織リモデリングに関与することが知られ,関節リウマチや炎症性腸疾患,乾癬,喘息,動脈硬化などで上昇するが,SScとYKL-40の関係について本邦では報告が少なく,今回,SScのIPやPH等の合併症やnailfold capillaryとの関係について検討を行った.【対象】当院外来で治療を行ったSSc患者53人(IP(−)PH(−)‐SSc患者36人,IP(+)PH(−)‐SSc患者9人,IP(−)PH(+)‐SSc患者2人,IP(+)PH(+)‐SSc患者6人),健常人8人.【方法】SSc患者血清中のYKL-40濃度をELISA法(Quantikine ELISA(R & D Systems)®)で測定した.【結果】健常人では21.1±2.1ng/ml(N = 8)であった.IP(−)PH(−)‐SSc患者において51.5.±10.3ng/ml(N = 36),IP(+)PH(−)‐SSc患者で62.7±24.6ng/ml(N = 9),IP(−)PH(+)‐SSc患者で61.4±1.3ng/ml(N = 2),IP(+)PH(+)‐SSc患者で126.1±48.3ng/ml(N = 6)であった.【考察】健常人と比較し,SSc合併により有意に上昇を認め,IPやPHの合併でさらに上昇していることが明らかになった.YKL-40がSScの病態や臓器合併の進行の相関を示すマーカーとして示唆された.
  • 西岡 亜紀, 東 幸太, 壺井 和幸, 安部 武生, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 田村 誠朗, 吉川 卓宏, 齋藤 篤史, 関 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 359a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】当院で診断治療された抗ARS抗体陽性患者の臨床的特徴について検討する【方法】2003年~2015年に当院に通院加療された抗ARS抗体陽性患者33例を対象として臨床症状や治療経過について後ろ向きに解析した.抗ARS抗体測定はELISA法及び各抗体については保存血清を用いたHeLa細胞を抗原とするRNA免疫沈降法及び蛋白免疫沈降法により抗体を検出した.【結果】平均年齢は55.3±13.6歳(平均±標準偏差),男性7例,女性26例,多発性筋炎(PM)15例,皮膚筋炎(DM)18例であった.抗ARS抗体の内訳は抗Jo-1抗体18例(54%),抗EJ抗体7例(21%),抗PL-7抗体6例(18%),抗PL-12抗体1例(3%),抗OJ抗体1例(3%)であった.間質性肺疾患(ILD)の合併は27例(82%),関節炎症状は18例(55%)に認めた.またRaynaud症状は15例(45%)に見られた.他の膠原病との合併は10例に見られた(強皮症5例,RA4例,シェーグレン症候群4例,重複含む).4例は無治療,ステロイド内服加療は9例,ステロイド内服+パルス療法は4例,ステロイド内服+免疫抑制剤療法は6例,ステロイド内服+パルス+免疫抑制剤加療は9例で施行された.【結論】抗ARS抗体がより簡便に測定できるようになり筋炎治療における症状,治療,予後などの予測が可能となってきている.しかしまだ個々の抗ARS抗体については一部施設でのみ測定可能である事や,陽性例の中でも症状や重症度に大きな差が見られており,更なる臨床的知見の蓄積が必要であると思われる.
  • 安部 武生, 東 直人, 西岡 亜紀, 東 幸太, 壺井 和幸, 荻田 千愛, 横山 雄一, 丸岡 桃, 古川 哲也, 田村 誠朗, 吉川 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 359b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】抗MDA-5抗体陽性の無筋症候性皮膚筋炎(CADM)は,急速進行性間質性肺炎を合併することがある.しかし,早期には肺野陰影が軽度の症例もあり,積極的な治療が遅れることがある.【目的】抗MDA-5抗体陽性のCADMで特徴的で,特に早期に出現する画像所見を検討する.【対象および方法】対象は当科で診療したCADM 17例.抗MDA-5抗体陽性9例と陰性8例の2群に分類した.初診時(または入院時),肺炎増悪時,治療後の胸部CT画像から肺野病変を継時的に評価した.主要な肺野陰影をCT所見として,更にその所見と病変分布によりHRCTパターンに分類し,抗MDA-5抗体陽性群と陰性群で比較した.経過中に一度でも出現したCT所見とHRCTパターンは全経過画像所見として集計した.【結果】入院時のCT所見は,両群間で違いは認めなかったが,全経過では抗MDA-5抗体陽性群でスリガラス影(GGO)と縦隔気腫が多く見られた.HRCTパターンは,入院時および全経過で共に抗MDA-5抗体陽性群でrandom GGOパターンが多く見られた.また,random GGOパターンを認めた症例で,入院時に肺野陰影が乏しくても経過中に出現する症例も存在した.【結論】今回の検討ではrandom GGOパターンが抗MDA-5抗体陽性CADMの特徴的な胸部CT画像所見のひとつであると考えられ,早期治療介入の判断に有用と考えられる.
  • 佐久間 裕子, 松枝 佑, 星山 隆行, 永井 立夫, 廣畑 俊成
    2015 年 38 巻 4 号 p. 360a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】血液脳関門(BBB)の破綻による全身循環から中枢神経系への自己抗体の流入は全身性エリテマトーデス(SLE)の精神症状の出現と関連している.補体成分C5aはBBBに障害をきたす原因のひとつであることが報告されている.今回NPSLEにおけるC5aについて検討した.【方法】対象はSLE 64人(Diffuse NPSLE33人,Focal NPSLE17人,NPSLEでないSLE[Non-NPSLE]14人).ELISAで血清C5a,髄液C5aを測定した.BBBの機能の指標としてQalbumin,中枢神経内でのC5a産生の指標としてC5aindexを算出した.【結果】血清C5a値はDiffuse NPSLEではFocal NPSLEおよびNon-NPSLEと比較し有意に高値だった.髄液C5aはDiffuse NPSLEではNon-NPSLEと比較し有意に高値であり,Focal NPSLEより高い傾向だったが有意差はなかった.QalbuminはDiffuse NPSLEでFocal NPSLEに比べ有意に上昇していた.C5aindexはDiffuse NPSLEとFocal NPSLEで有意差はなかった.Qalbuminは髄液C5aと有意な相関を認めたが,血清C5a,C5aindexとの相関は認めなかった.【結論】以上の結果より,Diffuse NPSLEでは血清C5a,髄液C5aの有意な上昇を認めた.この髄液C5aの上昇は中枢神経内での産生ではなくBBBの破綻による全身循環からの流入に起因する部分が多いと考えられた.しかし,血清C5aとQalbuminには有意な相関が認められなかったことから,BBBの障害には他の因子が関与していることが示唆された.これについては今後の検討課題である.
  • 星山 隆行, 松枝 佑, 永井 立夫, 廣畑 俊成
    2015 年 38 巻 4 号 p. 360b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】セルトリズマブペゴル(CZP)はヒト化抗TNF-αモノクローナル抗体のFab'断片をポリエチレングリコール(PEG)で修飾した製剤で,Fc領域を有さない.今回,我々はCZPのヒト単球に対する直接作用について検討した.【方法】健常人ボランティアより末梢血を採取し,比重遠心法にて末梢血単核球を分離した.その後,磁気ビーズ法により単球を単離し,治療域濃度に調節したCZP,インフリキシマブ(IFX),もしくは対照としてのIgG,PEGと共に24穴の平底プレート上で培養した.24時間後にTNF阻害薬および対照IgG,PEGを含まない培養液に交換し,LPSを添加して,さらに24時間培養した後の上清を回収した.回収した上清のTNF-αおよびIL-6濃度をELISA法で測定した.また,リコンビナントTNF-αにCZP,IFXを加えて2時間静置後のTNF-α濃度を測定した.【結果】CZPと共に培養した単球をLPSで刺激した上清中のTNF-αおよびIL-6濃度は,PEGに比して低下しており,IFXと同等であった.CZPによる可溶性TNF-αに対する中和作用は,同じ濃度のIFXより強力であった.【結論】CZPの可溶性TNF-αに対する中和作用は強力だが,膜結合型のTNF-αのみが存在する培養系において,CZPがIFXと同等に単球のサイトカインの産生を抑制することが示された.従って,CZPがFc受容体を介さない何らかの単球への直接作用を有していると示唆される.
  • 橋本 哲平, 吉田 幸佑, 橋本 尚憲, 金城 健太, 中井 綾子, 鈴木 行人, 松浦 香里, 川崎 善子, 柴沼 均, 立石 博臣, 柱 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 361a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】DNAは細胞傷害やアポトーシスにより末梢血中に放出される.近年,末梢血の遊離DNAがさまざまな疾患のバイオマーカーとして認識されてきているが,関節リウマチ(RA)患者においては,その意義は不明である.今回,RA患者に関して血清遊離DNAと疾患活動性の関連について調べたので報告する.【方法】当院で生物学的製剤を開始したRA患者21例について,投与前から24週まで4週おきに血液検査を行い,リアルタイムPCRを用いて血清遊離DNAを測定し,疾患活動性も同時に評価した.比較対象として,健常人10例でも血清遊離DNAを測定した.加えて,RA患者5例の膝関節液を採取し遊離DNAを測定した.【結果】生物学的製剤投与前のRA患者と健常人で,血清遊離DNAに差はなかった.継時的にみると,投与開始後12週までに遊離DNAが上昇する群(n = 10)と変化しない群(n = 11)に分かれた.2群を比較すると,遊離DNA上昇群では罹病期間が短く(P = 0.012),治療前疾患活動性(SDAI)が高かった(P = 0.041).またΔSDAI(P = 0.021),ΔCDAI(P = 0.027)も高く,疾患活動性が有意に改善していた.DNAは白血球にも含まれるが,この変化に差はなかった.関節液遊離DNAは著増していた.【結論】遊離DNAが血球系とは相関せず,関節液中で著増していたことを考慮すると,血清遊離DNAが滑膜細胞由来であることが示唆される.高疾患活動性のRA患者で遊離DNAが生物学的製剤の治療反応性を予測するマーカーとなるかもしれない.
  • 馬場 識至, 角田 慎一郎, 谷内江 昭宏, 東 幸太, 田村 誠朗, 松井 聖, 佐野 統
    2015 年 38 巻 4 号 p. 361b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      IgG4関連疾患は血清IgG4高値のみならず,組織へのIgG4陽性形質細胞の浸潤像を認めて初めて確定診断となる.IgG4が高値であったが,多彩な自己抗体を認め,皮膚,口唇唾液腺組織では確定診断できず,末梢血中のCD8+TCRVβの著しい偏り(25.5%)よりIgG4関連疾患を強く疑い腎生検組織にて確定診断のついた症例を報告する.症例:68歳,女性.主訴:発熱.現病歴:半年前より微熱を認め,3ヶ月前より38度以上の弛張熱,全身倦怠感,関節痛を認め近医よりANA高値,低補体血症を認め紹介入院.体幹部に丘疹が散在.両鼠径部にリンパ節触知.血液検査:RF107.7,ANA640倍(Ho, Ce),抗dsDNA抗体17,抗DNA抗体 < 2,抗SS-A抗体12.3,抗SS-B抗体10.3,抗セントロメア抗体111,抗Jo-1抗体40.0,抗ARS抗体8.0,IgG2 437,IgG4 471,C3 33,C4 < 1,C1q 20.6,好酸球数778,IgE1 650,sIL-2R 2820,尿検査:蛋白(−),潜血(−),尿中NAG 10.4,尿中β2MG 7444.CT,超音波画像所見は,胆のう壁の肥厚,肝外胆管の軽度拡張,肝門部のリンパ節の軽度腫脹のみ.Gaシンチでは異常集積なし.入院後,加療前に解熱したが,低補体血症は進行し,確定診断後にステロイドパルス療法(500mg×3日間)とPSL20mgより内服治療を開始し経過は順調である.我々はCD8+TCRVβの著しい偏りがオリゴクローナルに増加したeffector memory T細胞を反映しIgG4関連疾患に特異的な現象であると報告しており,本症例でも診断の補助となった.
  • 箕輪 健太郎, 天野 浩文, 安藤 誠一郎, 渡邉 崇, 小笠原 倫大, 森本 真司, 戸叶 嘉明, 山路 健, 田村 直人, 髙崎 芳成
    2015 年 38 巻 4 号 p. 362a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】全身性エリテマトーデス(SLE)患者の再燃寄与因子および臨床的特徴を明らかにし,SLE診療の今後の課題について検討した.【方法】SLEの診断で当院通院歴がある患者をJUDE(Juntendo University Database of Erythematosus)に登録している.そのうち2002年~2012年まで継続して経過を追えた423例を対象とし,再燃率,再燃に寄与する因子,患者背景,病型について後ろ向きに調査した.再燃は,SELENA-SLEDAIの「重度の再燃」を定義に用いた.【成績】平均観察期間は25.9年,平均発症年齢は29.3歳,男女比は7.3:92.3,観察期間内の平均再燃回数は0.51回で,1回以上再燃を経験した割合は10年で29.4%,35年で40.7%だった.10年以内で2回以上再燃した患者の発症年齢は,10-19歳群が最も多かった.再発時の病型移行については,初発時に腎症を持つ患者は再燃時も76.3%が腎症で再燃したが,腎症で再燃した患者のうち,52.5%は新規に腎症を発症していた.また,初発時に中枢神経病変を持つ患者が再燃した際,66.7%は中枢神経病変で再燃したが,中枢神経症状を呈して再燃した患者のうち,90.9%は新規に中枢神経症状を発症していた.再燃に寄与した初発症状をロジスティック回帰分析した結果,血小板減少が最も再燃に寄与した.【結論】初発時の血小板減少は,再燃のリスク因子であった.発症時に血小板減少症を呈するSLE患者については,再燃のリスクを考え慎重に対応すべきと考える.
  • 平田 信太郎, 花見 健太郎, 山形 薫, 宮川 一平, 久保 智史, 岩田 慈, 澤向 範文, 中野 和久, 中山田 真吾, 齋藤 和義, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 362b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】14-3-3ηは200以上の細胞内タンパクに関係する細胞内シャペロンである,関節リウマチ(RA)では関節液および血清中にも出現する.そこで14-3-3ηに注目し,RA治療開始後の臨床的アウトカムとの関係を検討した.【成績】当科で治療導入したRA患者99(adalimumab; ADA 49,tocilizumab; TCZ 50)例で,Baseline(BL)と1年後の血清14-3-3ηをELISA法で測定し,BLと1年後の種々の臨床的指標との関係を検討した.【結果】背景中央値は年齢63歳,罹病期間76ヶ月,DAS28ESR 5.3,RF陽性82%,ACPA陽性90%で,ADA群とTCZ群で罹病期間,MTX併用率,Sharp-vdH score(SHS)で差があった.BLにおける14-3-3η濃度は,BLの疾患活動性(DAS28, CDAI, SDAI),急性炎症反応(CRP, ESR),関節破壊(SHS),血清反応(RF濃度,ACPA濃度)のいずれとも有意に相関した.また治療によりBL 0.70 ng/mlから1年後0.37 ng/mlにに低下した(p < 0.0001).1年後のDAS28-ESR寛解(η 2.6)に対するBL 14-3-3ηカットオフ値(0.32 ng/ml)をROC解析により設定し層別化すると,1年後の寛解達成率はADAではBL 14-3-3η低値群40%(8/12),高値群59%(12/29)であった(p = 0.20)が,TCZでは低値群77%(10/13),高値群37%(10/27)とBL14-3-3η低値群で有意(p = 0.0007)に高かった.【結論】BL 14-3-3η低値の場合,tocilizumabによる1年後の臨床的寛解を達成しやすいこと示された.
  • 石岡 江梨子, 杉浦 弘明, 鈴木 雄介
    2015 年 38 巻 4 号 p. 363a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景・目的】原発性シェーグレン症候群(pSS)患者では,間質性肺炎(IP),気道病変などの肺病変を9"90%で合併し,生命予後を規定する重要因子と考える.しかし,本邦の肺病変合併pSSの特徴や予後は不明である.今回,pSSに合併する肺病変の特徴を明らかにすることを目的として,当院における症例を検討した.【方法】2012年1月から2014年9月の期間に当科受診歴のあるpSS患者300例を対象とした.患者背景,胸部画像検査,呼吸機能検査,疾患活動性についてカルテ情報を収集し,後ろ向きに統計学的解析を行った.【結果】胸部画像検査を施行されたpSS患者239例(平均63.6歳)のうち,75例(31.4%)に肺野異常所見が認められた.所見を認めた群は,認めなかった群と比較して,年齢,喫煙,ESSDAIが高かった.肺病変の内訳をみるとIPが23例(31.0%)と最多で,IPの画像パターンはNSIPが最も多かった(65.4%).IP進行例は非進行例と比較して,蜂窩肺所見,UIPが多く,血清IgGが高値であった.さらに,IP進行例では,UIP例における血清IgG値はNSIP例と比較して有意に高値であった.(p = 0.027)【結論】pSSに合併するIPの進行例は,蜂窩肺,高IgG血症を呈する特徴があり,該当例では,定期的な胸部画像検査や呼吸機能検査により肺病変の進行を注意深く評価していく必要がある.
  • 北村 登, 白岩 秀隆, 野崎 高正, 井汲 菜摘, 松川 吉博, 武井 正美
    2015 年 38 巻 4 号 p. 363b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】ステロイド性骨粗鬆症の治療は現在ではビスホスホネートが第一選択薬として推奨されているが,治療効果不十分の例も認められている.【目的】ビスホスホネートで治療不十分なステロイド性骨粗鬆症患者にデノスマブを使用し臨床効果を検討した.【方法】ビスホスホネートで治療を行っているステロイド性骨粗鬆症患者で骨密度のYAM値が低い,あるいは骨吸収マーカーの上昇している患者にデノスマブを投与し24週後の骨密度,TRACP-5bおよびBAPの推移を検討した.【成績007492】対象症例は16名で全例女性,平均年齢は72.1歳,基礎疾患は関節リウマチ(RA)8例,皮膚筋炎(DM)2例,全身性エリテマトーデス(SLE)2例,血管炎2例,混合性結合組織病(MCTD)1例,強皮症1例,前治療薬はリセドロネート9例,ミノドロネート5例,アレンドロネート1例,エチロドネート1例だった.DEXA法での骨密度でL2~L4の平均の腰椎正面,腰椎側面,左右の大腿骨頸部でデノスマブ変更前と24週後比較し,腰椎正面で改善の傾向を認めたが有意差は無く,他の部位も有意差は無かった.TRACP-5bは投与24週後で有意に低下したが,BAPでは差が無かった.【結論】ビスホスホネート製剤で治療不十分なステロイド性骨粗鬆症患者にデノスマブは有用な治療法の一つである事が示唆された.
  • 吉川 卓宏, 東 幸太, 壷井 和幸, 安部 武生, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 丸岡 桃, 田村 誠朗, 齋藤 篤史, 西岡 ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 364a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】RDWはESRやCRPといった炎症マーカーと相関することが報告されている.皮膚筋炎におけるRDWの役割はよくわかってはいない.そこで,我々はRDWと皮膚筋炎の抗体陽性度(抗ARS抗体,抗MDA5抗体)との関係について検討した.【方法】当院でRDW(RDW-CV)が測定可能となった2011年1月以降で当科で皮膚筋炎と診断し,抗ARS抗体・抗MDA5抗体を測定した皮膚筋炎30例について,RDW-CVを含めた血算・炎症マーカー・各種生化学検査を,抗ARS抗体陰性・抗MDA5抗体陽性群(MDA5+),抗MDA5抗体陰性・抗ARS抗体陰性群(ARS−),抗ARS抗体陽性群(ARS+)に分けて比較検討した.【結果】RDW-CV(%)は,MDA5+群でARS−群・ARS+群と比較して有意に高かった(MDA5+ : 15.36±1.979, ARS− : 13.41±0.494, ARS+ : 13.73±0.808 P = 0.0133).RDW-CVのカットオフを14.6%と設定した場合,抗ARS抗体陰性であった皮膚筋炎症例に対して,抗MDA5抗体が陽性である感度は75%,特異度は90%,陽性尤度比は7.500,陰性尤度比0.278,オッズ比は22.94(P = 0.0361)であった.【結論】本研究では,RDW-CVは,抗MDA5抗体陽性群で有意に高かった.抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎では,炎症性サイトカインの上昇が指摘されており,そのことがRDW-CWの上昇と関連しているのではないかと考えられた.RDW-CVが,皮膚筋炎症例において,抗MDA5抗体陽性を予測するマーカーの可能性が示唆された.
  • 山本 元久, 矢島 秀教, 清水 悠以, 鈴木 知佐子, 苗代 康可, 高橋 裕樹
    2015 年 38 巻 4 号 p. 364b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】近年,IgG4関連疾患では病変組織にToll-like受容体(TLR)-7の高発現が報告されている.まだそのリガンドが何かは不明であるが,その候補の一つにマイクロRNAがある.そこで私たちは,IgG4関連涙腺・唾液腺炎(IgG4-RDS)患者血清を使用し,マイクロRNAを網羅的に解析し,疾患特異性や治療に関連するマイクロRNAの探索を実施した.【方法】対象はIgG4-RDS 9例,シェーグレン症候群(SS)3例,健常人3例の保存血清である.東レ社製高感度DNAチップ3D-Geneを使用し,IgG4-RDSに特異的なマイクロRNAを抽出した.またIgG4-RDS 3例の治療前後の血清を用い,病態に相関するマイクロRNAを抽出した.【結果】健常人と比較して,IgG4-RDSにおいて17個のマイクロRNAの発現が有意に亢進していた.これらはSS症例と重複していなかった.この中で治療前後において有意な変化を示したマイクロRNAはmiR-320c,miR-6501-3p,miR-6750-5pであった.【結論】IgG4-RDSではmiR-320c,miR-6501-3pおよびmiR-6750-5pが疾患特異性,疾患活動性を反映するバイオマーカーとして抽出された.
  • 塚本 昌子, 鈴木 勝也, 瀬田 範行, 吉本 桂子, 山岡 邦弘, 竹内 勤
    2015 年 38 巻 4 号 p. 365a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景】単球はCD14/CD16発現により3つのサブセットに分類され,関節リウマチ(RA)ではCD14++CD16+単球が増加しているが病態への関与は不明であり,治療による変化を明らかにすることを目的とした.【方法】メトトレキサート(MTX)治療前のRA患者24例で治療前・12週・24週間後及び健常人14例の単球サブセットをフローサイトメトリーにてCD14/CD16発現により分画し,臨床情報との関連を検討した.【結果】MTX治療12週後,12例でアダリムマブ(ADA)を併用し,12例でMTX単独で加療された.RA患者のCD14++CD16+単球は健常人と比較して有意に増加,疾患活動性と正の相関を示した.ADA併用群ではMTX単独12週でCD14++CD16+単球の有意な低下を認めなかったが,ADA併用後の12週で有意な低下を認めた.MTX単独群では治療12週でCD14++CD16+単球と疾患活動性の有意な低下を認めた.【結論】CD14++CD16+単球は疾患活動性と正の相関を示し,MTX,生物学的製剤の治療効果に伴い低下した.CD14++CD16+単球はRAの病態に伴い,増加する可能性が考えられた.
  • 岩田 洋平, 宮川 紅, 小寺 雅也, 沼田 茂樹, 矢上 晶子, 松永 佳世子
    2015 年 38 巻 4 号 p. 365b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【背景および目的】FMS-related tyrosine kinase 3 ligand(Flt3L)は樹状細胞の分化と生存に重要であることが知られている.さらに,樹状細胞とregulatory T細胞の間のhomeostatic feedback loopにも深く関与することが明らかとなり,自己免疫疾患において病態に関与する可能性が示唆されている.関節リウマチでは,血清および関節液中のFlt3L値が上昇していることが報告されており,病態との関連が推測されている.また,シェーグレン症候群においても活動性の唾液腺炎を有する患者血清中のFlt3Lの上昇が報告されている.しかしながら,全身性強皮症(SSc)における血清Flt3L値と,その臨床相関についてはこれまで不明であったため,今回検討を行った.【方法】SSc患者78名(dSSc 26名,lSSc 52名)において血清Flt3L値をELISA法で測定し健常人と比較した.また,SSc患者において血清Flt3L値と臨床症状や検査値との相関を検討した.【結果】血清Flt3L値は,SSc患者で健常人と比較して有意に上昇していた.病型では,lSScの方がdSScよりも高値であり,血清Flt3L値はmTSS,IgG,GFR値と負の相関を示した.【結論】SScにおいて,Flt3L値は軽症例で上昇しており,病態形成に何らかの関与をしている可能性があると考えられた.
  • 古賀 智裕, 右田 清志, 佐藤 俊太郎, 清水 俊匡, 梅田 雅孝, 福井 翔一, 西野 文子, 中島 好一, 川尻 真也, 岩本 直樹, ...
    2015 年 38 巻 4 号 p. 366a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】家族性地中海熱(FMF)の発作期におけるサイトカインのプロファイルを血清サイトカインアレイにより網羅的に解析を行い,FMFに特徴的なサイトカインネットワークを明らかにする.【方法】長崎大学病院とその関連施設でFMF(確実例)と診断され,研究に同意が得られた患者49名と,健常人33名の血清を用い,サイトカインアレイにより45項目のサイトカインを測定した.【結果】最終的に29項目のサイトカインが解析可能であったが,8項目がFMF発作期において健常人と比較し有意に上昇しており,11項目が非発作期と比較して発作期では有意に上昇していた.【結論】FMFに特異的な血清サイトカインネットワークが同定された.FMFの発作期におけるサイトカインの測定は実臨床において有用であり,サイトカインの組み合わせにより高い正診度で発作の診断が可能となる.
  • 前田 伸治, 前田 智代, 難波 大夫, 新実 彰男
    2015 年 38 巻 4 号 p. 366b
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】関節リウマチにおいて,Abatacept(ABT)治療はリウマチ病態を改善する.ABTは病的なエフェクターT細胞を抑制する一方で,制御性T細胞(Treg)にも変化を及ぼし,Tregの割合・活性化を減少させる.これらTregの変化を個別に予測することは,自己免疫寛容によるDrug freeを目指す観点から重要である.今回我々は,細胞周期関連核タンパク質で細胞増殖マーカーであるKi67の末梢血Tregでの発現と,Abatacept治療前後におけるTregの変化との関連を検討した.【方法】Abatacept治療を受ける関節リウマチ患者(n = 42)のABT投与前,投与後4週間の末梢血におけるTregの変化(CD4+Tcell中の割合,CD25発現量)とKi67の発現(Treg中のKi67+の割合,発現量)を,フローサイトメトリーを用いて調べ,相関の有無を解析した.【結果】ABT治療前後(0, 4wks)において,Tregの割合(4.7%,3.2%,P = 0.003),Treg中のCD25発現(MFI P = 0.003),Ki67+の割合(MFI P = 1.04e-07)は有意に減少したが,Ki67+TregにおけるKi67発現量(MFI)の変化は見られなかった.治療前のKi67+Treg中のKi67発現量(0wks)が増加するほど,ABT前後でTregが有意に減少した(P = 0.049).また同Ki67発現量(0wks) はABT治療後のTregの活性化の指標となるCD25発現量(4wks)と有意に正の相関を示した(P = 0.004).【結論】Tregの増殖マーカーを測定することでABT治療後のTregの状態を予測できる可能性が示された.
  • 玉井 慎美, 中島 好一, 上谷 雅孝, 川上 純
    2015 年 38 巻 4 号 p. 367a
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
      【目的】早期関節リウマチ(RA)を対象に,MRIスコア(RAMRIS)とX線スコアの関連性を部位毎,所見毎に検討する.【方法】早期RAを対象に,手指関節MRIは初診時から1年間,手X線は2年間,共に6ヶ月毎に撮像した.MRIは1.5テスラでガドリニウム造影剤を用いて両側手指を撮像した.MRIスコアはRAMRISを用い,PIP,MCP,手関節における滑膜炎,骨髄浮腫,骨びらんを評価した.両手X線はGenant-modified Sharp score(GSS)を用いて骨びらん14部位(両手28部位,最大スコア98)と関節裂隙狭小化13部位(両手26部位,最大スコア104)を評価した.RAMRIS所見とGSS所見の関連性を検討した.なお,自己抗体はIgM-RF,抗CCP抗体(第二世代)を測定し,疾患活動性指標はDAS28-CRPを用いた.また炎症所見としてCRP,赤沈,MMP-3を測定した.【結果】初診時GSSが0の症例では,RAMRIS滑膜炎スコアが高い部位において関節裂隙狭小化が先に出現していた.また,MRI骨髄浮腫はRAMRIS滑膜炎スコアが高い部位で出現し,X線骨びらんに至るまでに6ヶ月以上を要していた.RAMRISとX線の評価部位,特に手関節部が完全には一致していないため,比較は容易ではなかった.
feedback
Top