製紙産業界では, 生産性向上のため, 抄き幅の大きい高速抄紙機が導入され, それに伴う周辺技術も飛躍的に進歩してきている。高速抄紙機では, 多種類の内部添加剤や, 外部添加剤が最終紙製品の品質や機能を向上させる目的で使用されている。
紙パルプ産業界では, 省資源対策として故紙の混入比率を高め, 省エネルギー対策としてクローズドシステムを導入してきている。この様な背景から, 抄紙工程で発生するスライム, パルプ内部・外部添加剤の微生物劣化, ピッチ等の粘着性物質, 填料・バンドに起因するスケール等が複雑に絡み合ったデポジットが発生してきた。抄紙工程で発生するこの様に多様化したデポジットは, 生産性・品質の低下として損失がすぐに計上されるので, その処理対策は非常に重要である。
近年になり高性能の分析機器が開発され, 精度の高い分析が出来る様になり, デポジットの原因が解明されてきた。この結果に基づいてデポジット処理剤が開発され, デポジット処理剤の適用技術が確立されてきている。
第1報 (紙パ技協誌50 (7) 992-1005, 1996) では, デポジット問題の基礎的な事項と, 抄紙工程のスライム処理対策について解説した。第2報には, パルプスラリー・澱粉・歩留り向上剤・染料・硫酸バンド・塗工液の微生物劣化と変質の問題と処理対策, ピッチ・スケールの汚れの問題と処理対策, 抄紙工程の汚れの洗浄方法, 抄紙工程の泡対策と消泡剤適用方法を解説した。この第1報・第2報で抄紙工程の主要なデポジットの全てを取り上げており, 現在生じているデポジット問題の解決の一助になれば幸いである。
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