感染症学雑誌
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56 巻, 8 号
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  • 大橋 浩文
    1982 年 56 巻 8 号 p. 647-654
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    妊婦及び膣炎に罹患している婦人の腔内細菌叢を, 膣炎のない非妊婦のそれと比較検討し, 妊娠及び腔炎に伴う膣内細菌叢の変動について検討した.
    対象は昭和52年10月から昭和56年9月までの4年問に中央鉄道病院産婦人科外来を受診した20~60歳の腔炎のない非妊婦218名, 膣炎のない妊婦219名そして膣炎を有する婦人119名の計466名である.
    非妊婦に比し, 妊婦の膣内にはLactobacillusが有意に高く検出され (p<0.001), Candida albicans, Propionibacteriumの検出率も有意に高かった (p<0.005, P<0.01) がE.coli, Peptococcm, Bactmidesの検出率は有意に低かった (p<0.001, p<0.01, p<0.01).また, 膣炎を有する婦人は, 腔炎のない婦人に比し, Lactobacillmの検出率が有意に低く (p<0.001), Candida albicansの検出率が有意に高かった (p<0.001).妊婦の腔内細菌叢の妊娠期間による変動は認めなかった.
    膣炎のない非妊婦とカンジダ腔炎婦人との膣内細菌叢はその検出率に差を認めなかった.しかし, 膣炎のない非妊婦に比し, 非特異性腔炎婦人の細菌叢では, Lactobacillusの検出率が有意に低く (p<0.001), Peptococcus, Peptostreptococcm, Veillonella, Bacteroidesなどの嫌気性菌が高頻度に検出された (p<0.001, p<0.001, p<0.01p<0.05).
    以上, 膣内細菌叢は妊娠や膣炎, 特に非特異性膣炎により変動することを認めた.
  • 橘 宣祥, 楠根 英司, 横田 勉, 志々目 栄一, 津田 和矩, 押川 達己
    1982 年 56 巻 8 号 p. 655-663
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    宮崎地方では1979年から慈虫病が多発しはじめ, 1980年には41例に達した.これらの症例について免疫学的, 病原学的ならびに疫学的検索を行い以下の成績を得た.
    1) 発生時期は10月下旬から12月中旬であったが, 11月中旬から12月上旬に最も多発した.発生地は従来患者が認められなかった野尻町を中心とし, 周辺の広範な地域に及んだ.
    2) 患者血清抗体をGilliam, Karp, Kat・株のほか, 宮崎地方の代表株とされる入江株, 今回分離された平野株の抗原を用いて測定したところ, 28例は入江株に, 10例は平野株に最も高い値を示し, 本症の血清診断にさいしては抗原の検討が重要なことが示唆された.
    3) R. tsutsugamushiは19株分離されたが, いずれもマウスに弱病原性であった.免疫学的性状は11株について, 蛍光抗体法間接法による交叉試験で検討したが, 入江など6株はGilliam株に類似し, 平野など6株はKarp株に類似しており, 宮崎地方には両型のリケッチァが存在することが明らかにされた.
    4) マウス弱病原性R.tsussugamushiの蛍光抗体法の抗原材料として, 感染BSC-1細胞は極めて有用であった.
  • 橘 宣祥, 楠根 英司, 横田 勉, 志々目 栄一, 津田 和矩, 小林 譲
    1982 年 56 巻 8 号 p. 664-670
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    宮崎地方の患者から分離されるR.tsutsugamushiはマウスに弱病原性であるぽかりでなく, ふ化鶏卵卵黄嚢, 培養細胞での増殖度も極めて低く, 研究上大きな支障となっている.
    アフリカミドリザル腎細胞 (BSC-1) においてこれらの株は極めて良好な増殖を示すことを見出した.
    感染細胞はリケッチアが増殖し, 胞体内に充満すると変性, 脱落したが, 形態上には軽度の円形または紡錘形の変化を示すものが少数認められたにすぎなかった.
    細胞内のリケッチア増殖度は, 標準株に比べわずかに低く, CPE発現までに要する期間は15~30日 (平均20日前後) であった.
    入江株感染細胞の継代時のリケッチア量はBSC-1細胞によるTCID50は10-7.5, マウスでのMID50は10-7.2であった.つつが虫病患者血液から本細胞による直接培養では6例中3例で病原が分離された.
  • 神谷 和人, 杉原 久義, 田中 哲之助
    1982 年 56 巻 8 号 p. 671-678
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    S.enteritidis2548株のSPAを精製し, これを用いてマウスに対する感染防御実験を行った.精製SPA0.05μgを1回腹腔に接種し, 14日後に104LD50の菌量で攻撃すると, 80%のマウスは感染死を免れる (前報).
    精製SPA免疫マウス血清を正常マウスに受身移入し, 100LD50の菌量で攻撃すると90%は生存する.しかし正常血清移入の対照群はすべて死亡する.このようなマウスの血液, 臓器内菌数の変動を調べると, 対照群は3日後には血中では105/ml, 脾臓, 肝臓中は108/gに達し, すべて死亡したが, 免疫血清移入群ではこの閾値に達せず, 次第に減少し消失した.
    免疫血清の殺菌作用はほとんど認められなかったが, この免疫血清を正常マクロファージと混合し, さらに攻撃菌とincubationした後, 生菌数を調べると, 対照と比べ明らかに殺菌率の上昇が認められた.またカラゲナン処理マウスに免疫血清を受身移入し, 感染防御効果を調べたが, 感染死を防御することはできなかった.
    免疫血清中に含まれるこの抗体がいかなるクラスの免疫グロブリンであるかを調べたところ, 主としてIgMであることが判明した.
  • 猪狩 淳, 小酒井 望, 小栗 豊子
    1982 年 56 巻 8 号 p. 679-684
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    順天堂大学病院中検で血液からAeromonas属が検出された3症例につき臨床細菌学的検計を加えた.
    3例とも開復手術の既往があり, 2例は胃癌のため胃切除術を受け, 術後に近接臓器への浸潤, 癌性腹膜炎を併発した.このように全身状態が悪化している状態で, 本菌による菌血症が発症した.1例は総胆管のう腫のため, のう腫切除, 総胆管空腸吻合術を施行された.術後はしばしぼ胆道感染を併発し, PTCドレナージ, 抗菌薬投与をおこなった.このような状況のもとで血液から本菌が検出された.
    これら3例とも, 感染防御機構が障害されている状態下で菌血症の発症であり, nosocomial infection, opportunisticinfectionと考えられる.
  • 多施設同一プロトコールによる検討
    馬場 駿吉, 波多野 努, 村井 兼孝, 丸尾 猛, 杉山 和子, 岩沢 武彦, 河村 正三, 杉田 麟也, 栗山 一夫, 三辺 武右衛門, ...
    1982 年 56 巻 8 号 p. 685-704
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Clindamycin-2-phosphateは, グラム陽性球菌類, 嫌気性菌群に対し, 強い抗菌力をもつclindamycinの注射用製剤である.今回, われわれは耳鼻咽喉科領域各種感染症に対する本剤の臨床的検討を行った.
  • 藤田 信一, 松原 藤雄, 野田 八嗣
    1982 年 56 巻 8 号 p. 705-710
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    起炎菌としてはまれないわゆるnutritionally variant streptococcusによる感染性心内膜炎の1例を経験した.症例は45歳の男性で, 昭和55年11月l1日発熱を主訴として入院した.入院後に行った5回の血液培養からStreptococcusが分離された.本菌はTrypticase soy agarやHeart infusion agarを基礎とした血液寒天ではStaphylococcusやその他の菌の周囲にのみ発育した.また, 分離菌はpyridoxal HCIやL-cysteineを培地に添加することにより発育が促進された.血中分離菌に対するpenicillin G (PCG) の最小発育阻止濃度と最小殺菌濃度はそれぞれ0.025μg/ml, 6.25μg/mlであった.
    本症例の心内膜炎はPCG1日2,000万単位の持続点滴により治癒した.抗生剤投与中の血清殺菌能は32倍であった.入院後の心カテーテル検査により心室中隔欠損と大動脈弁閉鎖不全の存在が確認された.なお, 発病4ヵ月後に大動脈弁置換術が行われ, この時大動脈弁に4個のvegetationを認めたが細菌培養は陰性であった.
  • 明石 光伸, 荒谷 弘康, 浜本 昭裕, 石川 寿, 原 耕平
    1982 年 56 巻 8 号 p. 711-714
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    34歳の男性.フィリピンから帰国後1日に2~3回の泥状便が持続したが, その他の症状はなく, 軽症であるため放置していた.6ヵ月後, その長男が発熱や膿粘血便などの典型的な赤痢様の症状を呈し, 便よりガス産生Shigella boydii14型を分離した.さらにその1ヵ月後に父親が発熱, 腹痛および水様下痢便を呈するようになり, 便から同じくS.boydii 14型を分離した.
    本例はフィリピンからのガス産生S.boydii 14型による輸入感染赤痢と考えられた.
  • 青木 良雄, 田沢 節子, 中村 良子, 松本 博光, 太田 晃, 春見 健一
    1982 年 56 巻 8 号 p. 715-723
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    心臓弁膜症に合併した敗血症患者の有熱時の血液培養から連続5回にわたりグラム染色性不定の双球-菌を分離したこの菌はBTB培地には発育せず, トリプトソイ寒天には発育するが非常に微弱であった.血液寒天でも発育は遅く, 24時間では肉眼で辛うじて認めうる程度のコロニーであった.ウサギ血液寒天では菌の発育におくれて, 弱いβ溶血を示した.ウマ血液は分離当初は溶血しなかったが, 継代後は溶血するようになった.生化学性状ではカタラーゼ陰性, オキシダーゼ陰性, グルコース, フルクトース, マルトースおよびシュクロースを発酵的に分解し, 酸を産生するがガスは産生せず, VP陰性.硝酸塩の還元も陰性であった.これらの性状から分離菌 (SK) はGemella haemolysansと同定された.確認のため用いた参考株Gemella haemolysans ATCC10379は分離株より大型で発育も早く, 溶血性も強かったが, 生化学性状はVPが弱陽性であった以外は分離株の性状と一致した.
    回復期患者血清は分離菌に対し, 間接蛍光抗体法陽性で, 週を追って抗体価の上昇が認められた.
    SK株とATCC株でウサギを免疫して得た抗血清は両者に対して交差反応を示した.
    この菌は上気道の常在菌とされており, 病原性に関してはこれまでに殆ど記載がないようで, とくに心内膜炎 (敗血症) の起炎菌としては本例が最初と思われる.
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