感染症学雑誌
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78 巻, 1 号
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  • 堀口 祐司, 橋北 義一, 岡 陽子, 高橋 俊, 山崎 勉, 前崎 繁文, 石井 良和
    2004 年 78 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1997年から2002年までの6年間に臨床材料から, 薬剤感受性試験によってampicillin, piperacillin, cefazolinおよびcefoperazoneに対して耐性と判定されたProfeus mirabilisが56株 (総分離株465株) 埼玉医科大学附属病院において分離された.分離数の推移を見てみると, 1997年に2株分離されたにすぎなかったampicillin, piperacillin, cefazolin, cefoperazoneに耐性を示すP. mirabilisが, 2002年には13株に増加していた.これら4剤に耐性を示すP. mirabilisのうち, 保存されていた12株を被検菌株として, 薬剤感受性試験, ESBL確認試験, PCR法によるESBL遺伝子検出を実施した.12株全株がpiperacillin (MIC;64μg/ml以上), cefotaxime (128μg/ml以上), cefpodoxime (64μg/ml以上), ceftriaxone (64μg/ml以上), cefepime (32μg/ml以上) に対して耐性を示したが, ceftazidimeに対しては全株感受性 (0.5以下~2μg/ml) であった.また, 12株中1株のP.mirabilisはcephamycin系抗菌薬であるcefoxitin, cefmetazole, cefotetanに耐性を示した.ESBL確認試験によってESBLの産生が確認された12菌株に対して, それらが属するグループを特定する目的でPCRを実施した. その結果, 8株からCTXM-10の属するグループの遺伝子が, 2株からToho-1の属するグループの遺伝子が検出された.なお, 残りの2株についてはその遺伝子型を特定することが出来なかった. 12株のESBL産出P.mirabilisが分離された症例のうちP.mirabilisが起炎菌と考えられる感染症を発症したのは4例で, 尿路感染症2例, 肺炎1例, 敗血症1例だった.感染症発症症例は, ceftazidimeが単独投与された症例も含めて治療に難渋した症例を認めず, 全例感染症の治癒および菌の消失が確認された. 本検討により当院において検出されたβ-lactam薬耐性のP.mirabilisの中に, CTX-M-型ESBLを産生する菌株の存在が明らかとなった.
  • 奥野 ルミ, 遠藤 美代子, 下島 優香子, 柳川 義勢, 諸角 聖, 五十嵐 英夫, 大江 健二
    2004 年 78 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    劇症型レンサ球菌感染症は, 重症かつ致死率の高い感染症である.本報告では, 1992年から2001年の10年間に劇症型レンサ球菌感染症または本症疑い250症例の患者情報について調査を行い, 患者から分離されたStreptococcus pyogenes 234株については, T型別および発熱性毒素の検査を実施し, 疫学的検討を行った
    症例について調査した結果, 患者数は, 性別では男性が女性に比べ約14%多く, 年齢別では60代が23.8%と最も多くみられた. また, 致死率は全体で43.2%であったが, 性別では女性 (52.3%) の方が男性 (36.9%) より高かった.
    T抗原型別の結果, T1型が最も多く, 次いでT3型であり, この2種の型で全体の54.3%を占めた. T1型は, spe (streptococcal pyrogenic exotoxin) A遺伝子保有が98.8%であったが, その内発熱性毒素A非産生株が53.9%であった. 一方, T3型は82.9%がspe A遺伝子保有し, そのすべてが発熱性毒素Aを産生していた.
    今後は, T型別と発熱性毒素産生性の関連性と同時に菌側と宿主側の因子の関係についても併せて検討していく必要があると考える.
  • 成相 昭吉, 横田 俊平
    2004 年 78 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    3歳以下健常乳幼児23名 (平均1.9歳) に, 経鼻腔上咽頭培養と肺炎球菌尿中抗原迅速検出キットBinax NOW Streptococccus pneumoniae (以下NOW, Binax Inc., アスカ純薬取扱い) を用いた肺炎球菌尿中抗原の検出を行い, 乳幼児におけるNOWの有用性について検討した. 18名 (78.3%) の上咽頭からS. pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalisいずれかが分離され, S.pneumoniaeは12名 (52.2%) で陽性, うち7名でNOWは陽性であった.また, 分離陰性11名のうち3名もNOWは陽性で, いずれも2週間以内に急性肺炎の既往があり, 2名では診断時, 上咽頭からS.pneumoniaeが分離されていた.NOWは, S.pneumoniaeによる肺炎治癒後も陽性が持続し既往を示唆する場合があり, また上咽頭にS.pneumoniaeが定着した状態だけでも陽性になる場合があると考えられた.上咽頭に高率にS.pneumoniaeが定着している乳幼児では, NOWを起炎菌想定と抗菌薬選択に利用する際, その評価は既往を確認した上で臨床症状や他の検査所見と併せて行う必要があると考えられた.
  • セラミック触媒の殺菌作用に関する評価
    笹原 武志, 菊野 理津子, 曽我 英久, 関口 朋子, 佐藤 義則, 高山 陽子, 高橋 晃, 青木 正人, 北里 英郎, 井上 松久
    2004 年 78 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    水系汚染Legionella属菌に対するセラミック触媒の殺菌効果を各種温度 (25℃および42℃) 条件下にて検討した. PBSに浸漬したセラミック触媒はいずれの条件下においてもL. pneumophila ATCC標準株 (血清型IおよびII型) に対して顕著な殺菌効果を示し, その菌数を4時間処理で1.33 log10, 6時間処理で2.13 log10そして12時間処理で>5log10にまで減少させた. また, 温泉水から分離したL. pneumophila (血清型I~VI型), L. micdadeiおよびL. dumoffiiの6菌株に対しても同様の殺菌効果が認められた. セラミック触媒を浸漬させたPBSの上清にも殺菌効果が認められ, その成分として8種類 (Mg, Al, Ca, Mn, Zn, Sr, Ag, Ba) の各元素イオンが最大2.5mg/l検出された.検出された元素イオン濃度と同じに成るように様々な組み合わせでそれぞれの元素をPBSに添加した場合, Ag単独群或いは8種類全ての元素を組み合わせた群においてのみ有意な殺菌効果が認められ, その殺菌効果はAg単独群より8種類の元素を組み合わせた群においてより顕著であり, その菌数の減少は3.28log10に達した.以上の成績から, セラミック触媒はLegionella属菌に対して優れた殺菌効果を発揮し, その殺菌効果が少なくともAgイオンを含む8種類の元素イオンによる相乗的作用によってもたらされることが示唆された.さらに, そのセラミック触媒による殺菌効果はPBS以外の冷却塔水や温泉水においても同様に最長5週間にわたって確認され, このセラミック触媒が人工的環境水を汚染するLegionella属菌に対する極めて有効な感染防止対策法の一つになり得ることが明らかにされた.
  • 深尾 敏夫, 佐藤 恵, 田中 保知, 門間 千枝, 加藤 直樹
    2004 年 78 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    平成13年8月, 岐阜市内の特別養護老人ホーム入居者1名が下痢症により近医へ受診したのを発端とし, 同ホームで同様の症状を示す入所者が6名あるとの通報が岐阜市保健所にあった. これらの患者7名の糞便検体を検査したところ, Clostridium perfringensが高菌数分離された.分離株は, PCRによりエンテロトキシン遺伝子が検出されたことから, 腸管毒素産生C.perfringensであることが判明した. また, 一部の検体において糞便中のC.perfringensエンテロトキシンの検出を逆受け身ラテックス凝集反応で調べたところ, 強陽性を示した.当初は食中毒を疑い, 食中毒菌を対象に同ホームの1週間分の保存食と厨房の拭き取り検体を培養したが, 全て菌陰性であったため, 施設内の居住環境の拭き取り検査を追加して実施した. その結果, 複数の検体から腸管毒素産生C.perfringensが分離された.患者および環境由来株の血清型は全てTW47であり, 3薬剤に対する薬剤感受性がほぼ均一で, ゲノムDNAのSmaI切断後のパルスフィールドゲル電気泳動におけるバンドパターンが同一であったことから, 単一クローンのC.perfringensが居住環境に広がり, 一部の入居者に感染したことが強く示唆された. なお, 下痢症患者の発生は3週間にわたり14名にみられ, うち11名で下痢の再発が認められたが, 施設の居住環境の清拭を実施したところ, 下痢患者の発生は速やかに終息した.
  • 坂田 宏
    2004 年 78 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2001年4月から2003年3月までに生後4カ月から5歳までの細菌性髄膜炎の小児から分離されたStreptococcus pneumoniae 7株とHaemophilus influenzae 8株について最小発育阻止濃度 (MIC) と最小殺菌濃度 (MBC) を測定した. 検討した薬剤はS.pneumoniaeではampicillin (ABPC), cefotaxime (CTX), panipenem (PAPM), vancomycin (VCM), H.influenzaeではABPC, CTX, ceftriaxone (CTRX), meropenem (MEPM) である.S.pneumoniaeにおけるMICの範囲はPAPM≦0.06μg/ml, CTX≦0.06~0.5μg/ml, VCM0.25~0.5μg/ml, ABPC≦0.06~2μg/mlであった.H.influenzaeではCTRX≦0.06~0.12μg/ml, MEPM≦0.06~0.25μg/ml, CTX≦0.06~0.5μg/ml, ABPC0. 12~64μg/mlであった. MICとMBCの乖離がABPCでは15株中5株で認められ, 4株はpenicillin-binding proteinに変異が認められる菌株であった.
  • 中村 竜也, 高橋 伯夫
    2004 年 78 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1992年から2001年の10年間に血液培養から分離されたcoagulase-negative Staphylococcus spp (CNS) の薬剤感受性とteicoplanin (TEIC) 耐性について調査し, その臨床背景について解析を行った. CNSに対する各薬剤の耐性率はvancomycin (VCM), arbekacin (ABK), linezolid (LZD) では耐性株が存在しなかったが, TEICでは最小発育阻止濃度 (MIC) が16μg/ml以上を示す株が10.3%存在した. その内訳はS.epidermidis 56株, S.capitis 1株, S.haemolyticus 4株であった. その他の薬剤ではminocycline (MINO) が6.1%と比較的低値であった.methicillin-resistant CNS (MRCNS) は67.1%であった. 年度別では1995年から1997年にかけて耐性率が高値を示す薬剤が多かった. 抗ブドウ球菌薬と考えられる4薬剤のMIC50/90はそれぞれVCM: 1/2μg/ml, TEIC: 1/16μg/ml, ABK: ≦0.25/1μg/ml, LZD: 1/2μg/mlでABKがMIC50/90ともに最も低値を示した. TEICとの交差耐性率は耐性群 (MIC: 16μg/ml以上) ではMINOを除き各薬剤ともに交差耐性を示した. 特にTEIC耐性群ではMRCNSが90.2%と高率であった. 診療科別では小児科病棟でTEIC耐性株が30.8%と最も高率に検出された. TEIC耐性群と感受性群 (≦0.25μg/ml) の臨床背景の比較では年齢やIVHの使用, 予後などでは有意差は認められなかったが, 使用薬剤では第4世代セファロスポリン系薬およびカルバペネム系薬の使用でTEIC耐性株の検出に有意差 (p:<0.01) が認められた. 今回の調査でCNSに対するTEIC耐性株の存在が明らかとなった. 今後も調査を継続して耐性化を監視するとともに, 院内感染症への関与や治療経過についても検討していく必要があると思われる.
  • 田口 晴彦, 金子 孝昌, 小野崎 正修, 久保 亮一, 神谷 茂
    2004 年 78 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 57菌株, メチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) 43菌株の合計100菌株を用いて, 3種類のMRSA分離培地 (MRSAスクリーン寒天培地, Oxacillin Resistance Screening Agar, およびCHROMagar MRSA) のMRSAに対する感度・特異性について比較検討を行った. その結果, CHROMagar MRSAは, MRSAに対する感度, および, その特異性も100%であった. 一方, MRSAスクリーン寒天培地とOxacillin Resistance Screening Agarの場合, 両培地ともMRSAをMSSAと判定される菌が4菌株存在したことから, MRSAに対する感度, および, その特異性は, それぞれ100%と91.5%であった. MRSAでありながらMSSAと判定された4菌株は, mecAを保有しながらoxacillinに対するMICが2μg/ml以下の菌であった. これらの結果より, CHROMagar MRSAがMRSA分離培地として有用であることが示唆された.
  • 高木 理博, 天野 秀明, 麻生 憲史, 鵜飼 桃代, 森本 浩之輔, 大石 和徳, 永武 毅
    2004 年 78 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Kaposi's varicelliform eruption is a common disease for dermatologists. In general, it is caused by Herpes simplex virus-1 (HSV-1) infection to skin which is affected by atopic dermatitis. There are some case reports which document a relationship between rhabdomyolysis and virus infection, in those cases, the major pathogenic virus of rhabdomyolysis is a influenza virus. It is exceedingly rare that rhabdomyolysis is caused by Herpes simplex virus. We introduce a case of rhabdomyolysis associated with Kaposi's varicelliform eruption induced by HSV-1. It was localized in the iliopsoas muscles. Since severe rhabdomyolysis may induce fatal acute renal failure, it is important to recognize that rhabdomyolysis can complicate Herpes simplex virus infection.
  • 薬師神 芳洋, 源 陽子, 高田 清式, 大塚 正樹, 安川 正貴, 藤田 繁
    2004 年 78 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
  • 齋藤 淑子, 内藤 俊夫, 久木野 純子, 奥村 徹, 関谷 栄, 礒沼 弘, 渡邉 一功, 檀原 高, 林田 康男
    2004 年 78 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    We report a 32-year-old female with eating disorder whose body weight was only 20kg. She was admitted to the hospital with severe low nutrition, low proteinemia, liver dysfunction, hypokalemia and hypoglycemia. On the third hospital day, she had a high fever and Campylobacter fetus subsp. fetus (C. fetus) was isolated from the blood. After treatment with meropenem (1g/day) intravenous drip injection, her condition improved.
    C. fetus sepsis is not common disease in Japan. A review of 37 cases of this disease in Japan revealed that the age range of adult patients was 20 to 60 years old. The male-to-female ratio was 4.6 to 1.0. Seventy-eight percent of the patients had underlying diseases which were composed of 11 patients with liver disease, 6 patients with blood dyscrasia and some with diabetes mellitus, heart disease, other malignant tumor and collagen disease. There was no case with eating disorder. All apparent sources of infection in Japan originate from eating raw food. Gastrointestinal symptoms were observed in only 16% of the patients. Recent recommendations for the treatment of C. fetus sepsis are to use gentamicin, imipenem and meropenem. Some strains of C. fetus have resistance to erythromycin, ciprofloxacin. The mortality of this infection is 14% in Japan.
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