理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
30 巻, 3 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
原 著
  • ─無作為化対照研究─
    生田 太, 出口 広紀, 岡本 貢一, 名古屋 幸司, 佐藤 史也, 水沼 由貴, 金子 礁, 新井 恵実, 蒲田 和芳
    2015 年 30 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)を有する高齢者の膝内転モーメントや活動性に対するRRR(膝回旋エクササイズ)プログラムの効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕膝OAを有する女性高齢者を無作為に割り付け,被検者数は慣習エクササイズ群12名,RRRプログラム群9名であった.〔方法〕介入前後で歩行時の膝内転モーメントとKOOS,SF-36の計測を実施した.〔結果〕SF-36はRRRプログラム群の方が有意に向上した.KOOSと膝内転モーメントに群間差は認められなかったが,膝内転モーメントはRRR群にて減少傾向であった.〔結語〕RRRプログラムは膝OA患者の生活向上に効果的であることが示された.
  • 大河原 七生, 臼田 滋
    2015 年 30 巻 3 号 p. 345-352
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中片麻痺患者における感覚情報の違いに対する適応と機能障害との関連性を検討することとした.〔対象〕脳卒中片麻痺患者25名とした.〔方法〕閉眼やフォームラバーを使用した軟らかい支持面上での立位保持と,麻痺側あるいは非麻痺側の一側のみをフォームラバーとした全8条件での立位保持の可否と,その際の圧中心軌跡を計測した.また,視覚や支持面への依存率と機能障害との関連性を検討した.〔結果〕視覚情報や両側の支持面が変化した際に支持面への依存率が大きくなった.また,視覚および支持面への依存率と機能障害との関連性はほとんど認められなかった.〔結語〕脳卒中片麻痺患者は,非麻痺側支持面情報への適応性が低下している可能性がある.
  • ─変形性膝関節症患者と健常高齢者の比較─
    谷本 研二, 阿南 雅也, 脇本 祥夫, 服部 宏香, 徳田 一貫, 高橋 真, 新小田 幸一
    2015 年 30 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症患者の降段時の外部膝関節内転モーメント(以下,KAM)の特徴を明らかにすることであった.〔対象〕内側型変形性膝関節症と診断された女性10人(膝OA群)と健常高齢女性15人(対照群)とした.〔方法〕三次元動作解析システムを用いて,階段降段と平地歩行時の立脚期のKAM最大値,積分値,平均値を算出した.〔結果〕両動作において,KAM最大値は群間での有意差を認めず,膝OA群のKAM積分値は対照群と比較して有意に高い値を示した.降段動作において,膝OA群のKAM平均値は対照群と比較し有意に高い値を示した.降段立脚期の中では単脚支持期でのみ有意差を認めた.〔結語〕変形性膝関節症患者では,KAMの変化は歩行よりも降段において生じやすく,特に降段の単脚支持期において著明となる.
  • 木村 和樹, 久保 晃, 石坂 正大
    2015 年 30 巻 3 号 p. 359-362
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕歩行時間の左右差を検証した.〔対象〕健常成人36名(72肢)男性18名,女性18名.すべて右脚がボールを蹴る脚であった.〔方法〕圧力センサを踵と母趾球と母趾に貼付し,歩行時間を計測した.1歩行時間(踵接地から同側の次の踵接地),全立脚期(一側の踵接地からその同側の母趾離地),立脚Ⅰ相(踵接地から母趾球接地),立脚Ⅱ相(母趾球接地から踵離地),立脚Ⅲ相(踵離地から母趾離地)を算出した.〔結果〕時間因子からと1歩行時間の割合ともに立脚Ⅱ相とⅢ相において有意な左右差が認められた.〔結語〕異なる足の働きによって,歩行時間に左右差が生じる.
  • 大矢 聡, 山田 和政
    2015 年 30 巻 3 号 p. 363-367
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕在宅生活における身体活動量およびADLと気温変化との関連性を調査した.〔対象〕在宅生活を送る脳血管障害のある要支援者6名(要支援群)と要介護者8名(要介護群)とした.〔方法〕1年間の気温をデータ収集し,17°C未満の月を寒冷期,17°C以上の月を温暖期とした.1年間の身体活動量を歩数にて,ADL状況をFIMにて評価した.〔結果〕要支援群では寒冷期に歩数の低下傾向がみられ,翌年の温暖期になっても歩数は戻らなかった.要介護群では1年間を通して歩数に変化はなかった.両群とも1年間を通してFIM得点に変化はなかった.〔結語〕身体活動量は寒冷期に低下する可能性があり,今後,それに伴ってADLの低下を招く危険性のあることが予測された.
  • 平野 恵健, 新田 收, 林 健, 西尾 大祐, 皆川 智也, 高橋 秀寿, 木川 浩志
    2015 年 30 巻 3 号 p. 369-374
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中重度片麻痺患者の入院時の患者属性,身体機能,運動機能から退院時の6分間歩行距離が予測できるか否か検討した.〔対象〕当院回復期リハビリテーション病棟入院時に脳卒中重度片麻痺を有した患者48名とした.〔方法〕患者属性,入院時の認知機能,神経症候,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力,歩行能力,日常生活活動を評価し,退院時6分間歩行距離との関連性を検討した.さらに,退院時の6分間歩行距離を従属変数,その他の評価項目を独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った.〔結果〕退院時6分間歩行距離に有意に関連した評価項目は,年齢,発症から転院までの日数(転院日数),歩行能力であった.〔結語〕脳卒中重度片麻痺患者における退院時の6分間歩行距離は,入院時の歩行能力,年齢,転院日数から推測できることが示唆された.
  • ─踵部と前足部の垂直分力に着目して─
    岩井 信彦, 出口 綾香, 樽井 帆乃佳
    2015 年 30 巻 3 号 p. 375-378
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は階段昇降,坂道歩行時の踵部および前足部の荷重動態を明らかにすることである.〔対象と方法〕整形外科疾患の既往がない健常女性15名に対し,靴式足圧計測装置を履き平地歩行,昇段,降段,昇坂,降坂を行わせた.それぞれの条件下で踵部と前足部の荷重値と踵接地時からの時間を調べた.〔結果〕昇段,降段の垂直分力荷重曲線では前足部の荷重応答期に平地歩行では見られなかった極大が観察された.昇坂,降坂では平地歩行と類似した曲線であった.〔結語〕昇段,降段の荷重応答期に前足部は踵部より早く荷重ピークを迎え,身体の持ち上げや下降に際し,体重心の上下動を滑らかに,また最小限にするよう働いていると思われた.
  • 松山 太士, 山田 和政
    2015 年 30 巻 3 号 p. 379-383
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕大腿骨近位部骨折者のADL評価と再転倒リスク評価としてのtimed up and go(TUG)テストの有用性を検証した.〔対象〕当院回復期リハビリテーション病棟から自宅退院する大腿骨近位部骨折者40名とした.〔方法〕退院前に TUGテストとfunctional independence measure(FIM)を行い,両者の関連性を分析するとともに退院後3ヵ月間の再転倒の有無を調査した.〔結果〕TUG遂行時間とFIM得点に有意な相関が認められた.再転倒者は7名で,その中にはFIM高得点者も存在したが,TUG遂行時間20秒以下の条件を加えると再転倒者は0名であった.〔結論〕大腿骨近位部骨折者の退院時のADLおよび再転倒リスクを評価する上で,TUGテストは有用といえる.
  • 杉本 孝宗, 横川 正美, 三秋 泰一, 中川 敬夫
    2015 年 30 巻 3 号 p. 385-388
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕背臥位,座位,立位の姿勢別に,腹部引き込み運動(ADIM)および呼気筋運動(EMT)時の側腹筋群の筋厚を検討した.〔対象〕健常男性18名とした.〔方法〕各姿勢において安静条件で測定した後,ADIM条件およびEMT条件で対象者ごとにランダムな順序で行った.EMTではThresholdTMPEPを使用し,最大呼気圧の15%値を負荷圧とした.腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の筋厚測定には超音波画像診断装置を使用した.〔結果〕背臥位と立位ではADIMおよびEMTともに安静条件と比較して腹横筋筋厚の有意な増大を認めたが,座位では有意差を認めなかった.〔結語〕背臥位と立位におけるEMTは,ADIMと同等に腹横筋の筋活動を促すことが示唆された.
  • 木下 和昭, 橋本 雅至, 中 雄太, 北西 秀行, 大八木 博貴
    2015 年 30 巻 3 号 p. 389-394
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕人工膝関節全置換術の術前後の体幹機能と術後の身体機能の関連性を検討した.〔対象〕TKAを施行された患者30例とした.〔方法〕術前後のTrunk Righting Test(TRT)と術後の膝関節伸展筋力,片脚立位時間,台ステップテスト(ST),Timed up and go test(TUG),5回椅子立ち上がりテスト(SS-5),30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)との相関を検討した.〔結果〕術前の術側のTRTは術後のTUGと有意な相関が認められた.術後の術側のTRTは術後のTUG,SS-5,CS-30,術側のSTと有意な相関が認められた.〔結語〕術前後の術側の体幹の支持機能が術前のTUGと関係し,術後はさらにTUG,SS-5,CS-30,術側のSTと関係していることが示唆された.
  • 山下 弘二, 盛田 寛明, 石岡 新治
    2015 年 30 巻 3 号 p. 395-398
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中患者の低栄養が随意的咳嗽力に及ぼす影響について検討した.〔対象と方法〕本研究では入院リハビリ中の脳卒中患者69名(平均年齢68.2歳)を対象に,血清アルブミン値(Alb),脳卒中機能障害評価(SIAS),機能的自立度(FIM),随意的咳嗽力(PCF)と呼吸筋力(MIP,MEP)を測定した.Alb 3.5 g/dl以下を低栄養とした. 〔結果〕FIM, PCF,呼吸筋力では低栄養群の方が非低栄養群より有意な低値を示した.PCFを目的変数に重回帰分析を行った結果,修正決定係数0.513,有意な変数(標準偏回帰係数)は影響度の強さ順にMIP,Alb,SIASの体幹機能であった.〔結語〕本研究では,脳卒中患者の随意的咳嗽力低下に低栄養が影響していることが示唆された.
  • ─体重心と圧中心の関係─
    川上 真吾, 鈴木 博人, 菊地 明宏, 田中 直樹, 樋口 朝美, 西山 徹, 藤澤 宏幸
    2015 年 30 巻 3 号 p. 399-403
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕片脚膝立ち位保持における姿勢調整戦略を明らかにすることである.〔対象〕健常成人28名とした.〔方法〕全対象者における圧中心の平均パワー周波数を算出した.次に片脚膝立ち位保持が30秒可能群(以下,可能群),30秒未満群(以下,不可群)に割り付け,体重心および圧中心の平均パワー周波数を算出し,比較した.〔結果〕圧中心の平均パワー周波数2.1 Hzであった.体重心の平均パワー周波数において,可能群で高い傾向が認められた.30秒保持可能な対象者と明らかに保持困難である対象者では各指標の平均パワー周波数で明らかな差が観察された.〔結語〕圧中心の制御に着目することが重要であると示唆された.
  • 東藤 真理奈, 文野 住文, 米田 浩久, 鈴木 俊明
    2015 年 30 巻 3 号 p. 405-407
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕運動イメージの具体的方法の違いが神経機能に与える影響を検討する前段階として,運動イメージの具体的方法を被験者のインタビューによって検討した.〔対象〕平均年齢23.3歳の健常者85名とした.〔方法〕最大収縮の50%の力で母指対立運動を練習した後に,練習課題を自由にイメージさせ,イメージ内容を被験者の言葉で答えてもらった〔結果〕ピンチ力値をイメージする方法(数字イメージ),筋収縮をイメージする方法(筋収縮イメージ)の組合せが19名と最も多かった.〔結語〕運動イメージを取り入れる際には,単独の課題によるイメージよりも,数字イメージを絡めた課題をイメージさせた方が運動イメージしやすいことがわかった.
  • 佐藤 勇太, 小野 武也, 石倉 英樹, 相原 一貴, 松本 智博, 田坂 厚志, 沖 貞明, 梅井 凡子, 積山 和加子
    2015 年 30 巻 3 号 p. 409-412
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕関節固定により発生する関節拘縮に下肢への非荷重がおよぼす影響を検討した.〔対象〕Wistar系ラットとした.〔方法〕関節固定と後肢懸垂の実施の有無により,対象の後肢を,無処置の対照群,関節固定のみ行う固定群,後肢懸垂のみ行う懸垂群,両方行う固定懸垂群に分けた.実験開始前と1週間後において,足関節背屈角度を測定した.〔結果〕1週間後において,足関節背屈角度の減少は,固定群と固定懸垂群に生じており,固定懸垂群の方が,固定群と比較して著明であった.〔結語〕下肢への非荷重は,関節固定により発生する関節拘縮の進行を著明にさせる.
  • 後藤 美和, 竹谷 英之, 新田 收, 川間 健之介
    2015 年 30 巻 3 号 p. 413-419
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕血友病患者の関節機能とADL,健康関連QOL(HRQOL)の関連性を明らかにする.〔対象〕先天性血友病患者31名.〔方法〕膝関節屈曲・伸展筋力,握力,肘・膝・足関節可動域,関節症重症度,ADL,HRQOLを評価した.〔結果〕27名が重症で29名には複数の関節症罹患が認められ,対象関節の60.2%が末期関節症であった.年齢と関節機能,ADL,HRQOLが逆相関しており,関節機能とADL,HRQOLが正相関していた.各対象関節の関節症罹患は,当該関節の深屈曲と荷重を伴う動作の困難度に影響しており,足関節症罹患は立位での足関節制御を伴う動作の困難度にも影響していた.膝や足関節症罹患状況はHRQOLに関連していた.〔結語〕関節症と関節機能の改善はADLとHRQOL改善に寄与する可能性がある.
  • ─終末期の一例─
    宮﨑 至恵
    2015 年 30 巻 3 号 p. 421-427
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ある終末期がん患者(Aとする)のリハビリテーションを担当した理学療法士(Sとする)が経験した葛藤を質的研究によって構造化し,その本質を明らかにすることとする.〔対象〕3年目の理学療法士1名である.〔方法〕半構造化したインタビューを行い,語られた内容を質的データ分析にて解釈し,概念モデルを生成した.〔結果〕Sが経験したAの治療過程において,最終的に命を救えない苦しみ,治療介入に対する満足と後悔,医療チーム内で意識が統一されていないことによるジレンマという3つの葛藤が生じていた.〔結語〕がんのリハビリテーションに従事する理学療法士が対面する葛藤を明らかにした.
  • 藤森 美菜子, 夏迫 歩美, 鶴崎 俊哉
    2015 年 30 巻 3 号 p. 429-432
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕日常的に割り座姿勢をとることが,定型発達児の立位姿勢に対してどのような影響を与えるのかを検討した.〔対象〕市内の保育園に通う3歳から6歳までの園児39名とした.〔方法〕ビデオカメラにより収集されたデータを用いて,骨盤傾斜角度(上前腸骨棘と上後腸骨棘の2点を結んだ線と水平線がなす角)および,股関節回旋(姿勢分析により分類された5つの群)の間の関係の有無を分析した.〔結果〕割り座経験があることと股関節内旋および骨盤前傾の程度との間,股関節内旋の程度と骨盤前傾の程度との間には正の関連性が認められた.〔結語〕日常的に割り座をとることは,定型発達児が股関節内旋,骨盤前傾位の立位姿勢をとりやすくなり,その成長過程において整形外科的疾患の発症リスクを高める可能性がある.
  • ─骨盤肢位の違いと徒手固定の有無が測定値に及ぼす影響─
    世古 俊明, 隈元 庸夫, 三浦 紗世, 高橋 由依, 金子 諒介, 田中 昌史, 信太 雅洋, 伊藤 俊一
    2015 年 30 巻 3 号 p. 433-437
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕徒手筋力計を用いた座位での股伸展筋力測定(座位法)において,骨盤肢位と徒手固定の有無の違いが測定値に及ぼす影響を検討することとした.〔対象〕健常男性10名とした.〔方法〕課題を座位と腹臥位での等尺性股伸展運動とした.座位を骨盤前,中,後傾位の3条件,骨盤固定をあり(固定),なしの2条件とした.徒手筋力計にて股伸展筋力値を,表面筋電計にて股伸展筋と体幹筋の筋活動量を計測した.各測定条件における筋力値の再現性と妥当性,測定条件間での筋力値と筋活動量の差を検討した.〔結果〕筋力値の再現性と妥当性は固定・後傾位で高かった.筋力値と大殿筋活動量は固定・後傾位で他の測定条件と比べ有意に高かった.〔結語〕固定・後傾位での座位法は再現性と妥当性の高い測定法となる.
  • 藤田 和樹, 堀 秀昭, 小林 康孝
    2015 年 30 巻 3 号 p. 439-443
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中患者の下肢痙縮に対するBoNT-A投与が立位および歩行パラメータに及ぼす影響を検討した.〔対象〕脳卒中発症後6ヵ月以上が経過している24例とした.〔方法〕BoNT-Aは足部の状態に合わせ,総投与量300単位になるよう腓腹筋,ヒラメ筋,後脛骨筋,長趾屈筋,長母趾屈筋に投与した.投与前,投与4週後に足底圧分布計を用いて立位および歩行パラメータを測定した.〔結果〕静的立位における麻痺側足底接地面積の増大,足底圧中心位置の正中化が認められた.歩行時に重複歩距離増大による歩行速度増加が認められた.〔結語〕下肢痙縮に対するBoNT-A投与は,立位バランス・歩行能力の改善に有効である可能性が示唆された.
  • 糸谷 圭介, 永井 厚志, 糸谷 素子, 今堀 勇三, 藤本 計之, 田中 守, 加藤 順一
    2015 年 30 巻 3 号 p. 445-448
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,アラーム付靴型荷重測定装置(ステップエイド®)を用いて聴覚フィードバックが部分荷重(Partial weight bearing: PWB)歩行に及ぼす効果を検証する. 〔対象〕健常者11名(平均年齢28±7歳)を対象とした.〔方法〕1)ステップエイド®を用いた聴覚フィードバック課題,2)体重計を用いたフィードバック課題(従来法),3)フィードバックを行わない課題の3種類のPWB歩行課題を実施した.その際のPWBは体重の1/3とし,PWB側は軸足とした.測定項目は歩行中の軸足への実際の荷重量および10 m歩行時間とした.〔結果〕ステップエイド®を用いた聴覚フィードバック課題によるPWB歩行は体重計を用いた従来法と比べて,有意に適切な荷重を保持できていた(p<0.01).〔結語〕ステップエイド®による聴覚フィードバックを利用したPWB歩行は,容易で適切なPWBを保持できることから効果的なリハビリテーションの実施が期待できる.
  • 海野 光信, 村上 忠洋, 畑迫 茂樹, 佐々木 友也, 千邑 彰人
    2015 年 30 巻 3 号 p. 449-452
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中片麻痺患者における体幹側屈筋力の左右差に股関節周囲筋の麻痺が影響するか否かを明らかにする.〔対象と方法〕初発脳卒中片麻痺患者9名を対象に,端座位で麻痺側と非麻痺側方向への等尺性体幹側屈筋力を「骨盤固定なし」と「骨盤固定あり」で測定し,麻痺側と非麻痺側で比較した.〔結果〕「骨盤固定なし」では麻痺側筋力が非麻痺側筋力に比べ有意に低下し,股関節周囲筋の麻痺が重度な者ほどその傾向が強かった.「骨盤固定あり」では左右差はみられなかった.〔結語〕脳卒中片麻痺患者における体幹筋力の左右差は骨盤の固定に働く股関節周囲筋の麻痺の影響により出現し,骨盤を他動的に固定しこの影響を小さくすることで左右差がなくなると考える.
  • 田中 直樹, 西山 徹, 鈴木 博人, 川上 真吾, 藤澤 宏幸
    2015 年 30 巻 3 号 p. 453-457
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肩関節肢位の違いによる肩甲帯屈曲筋力および肩甲骨周囲筋の筋活動を明らかにすること.〔対象〕肩関節疾患の既往がない若年健常成人男性30名.〔方法〕肩甲帯屈曲筋力測定台を作製し,肩関節下垂位と肩関節90°屈曲位における最大肩甲帯屈曲筋力を測定した.測定直前に肩甲棘上縁角度を測定し,筋力測定時に肩甲骨周囲筋の筋活動を測定した.〔結果〕最大筋力は下垂位に比べ屈曲位で有意に高値を示し,筋活動は下垂位に比べ前鋸筋下部繊維のみ屈曲位で高値を示した.〔結語〕前鋸筋の形態や肩甲骨の角度を踏まえ,肩関節肢位を変えて筋力測定や筋力強化を行う必要性が示唆された.
  • ─多様性の視点から─
    寺尾 瞳, 近藤 景子, 園田 楽人, 鶴崎 俊哉
    2015 年 30 巻 3 号 p. 459-464
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕乳幼児のハイハイ動作をレパートリー数の変化に着目し日齢やハイハイ実施期間(ハイハイ歴)との関係を検証した.〔対象〕子育て支援センターを利用する神経学的・整形外科学的問題のない乳幼児8名(月齢:5~18ヵ月).〔方法〕複数の床条件でのハイハイ動作をビデオ録画し,頭部と体幹,四肢の状態,重心の移動,推進力の点から研究者3名が動作分析を行い,合議により判定しカウントされるレパートリー数の変化を横断的に分析した.〔結果〕ハイハイ歴に伴いレパートリー数は一端増加しその後減少した.〔結語〕乳幼児のハイハイにおける運動学習は,無作為的な運動から合理的な運動へと進行しその過程を繰り返しながら発達していくことが示唆される.
  • 藤田 大輔, 西田 裕介
    2015 年 30 巻 3 号 p. 465-468
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高強度の前運動を挿入した際のτVO2とτDeoxyHb,VO2peak,ATの関係を明らかにすることを目的とした.〔対象〕健常成人男性9名とした.〔方法〕第1日目に最大下運動負荷試験を行い,VO2peakとATを測定した.第2-5日目に高強度の前運動を挿入した6分間の中等度一定負荷運動を行い,τVO2とτDeoxyHbを測定した.〔結果〕τVO2はτDeoxyHbと相関関係が認められたが,VO2peakとATとは相関が認められなかった.〔結語〕 本研究の結果より,τVO2は,VO2peakとATに関連していないことが明らかになった.また,高強度の前運動を挿入した際のτVO2は酸素利用能力を示すτDeoxyHbと関連していた.これらの結果より,高強度の前運動を挿入したτVO2は酸素供給能力から独立して酸素利用能力を示す指標となる可能性が示唆された.
  • 岩田 昌, 浦辺 幸夫, 前田 慶明, 笹代 純平, 藤井 絵里, 森山 信彰, 山本 圭彦, 河原 大陸
    2015 年 30 巻 3 号 p. 469-473
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕予測可能性の有無による90° SSC中の膝関節運動の違いを明らかにすることとした.〔対象〕6名の健常な女子大学バスケットボール選手とした.〔方法〕予測条件,非予測条件での90° SSCを左右方向に実施し,5台のハイスピードカメラを用いて撮影した. 得られた動画からSSCの遂行時間と膝関節角度を求めた.〔結果〕予測条件に比べて非予測条件でSSCの遂行時間の延長,接地時の膝関節屈曲角度の増加,最大膝関節外反角度の増加がみられた.〔結語〕スポーツ動作に近い条件を組み合わせることにより,SSCの遂行時間の延長と膝関節外反角度が増加するため,膝前十字靭帯損傷のリスクとなる.
  • ─学年間の比較─
    菅沼 一男, 平林 茂, 金子 千香, 大日向 浩, 芹田 透, 豊田 輝
    2015 年 30 巻 3 号 p. 475-478
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕四年制大学の理学療法学科学生の大学生活における不安感を学年間で比較することを目的とした.〔対象〕1-3年生の全223名(男性121名,女性102名)とした.〔方法〕新学期開始後,5月下旬に大学生活不安尺度(以下,CLAS)を調査した.〔結果〕CLASの下位尺度の比較において,各学年ともに男女間に差はなかった.学年間の比較では,「大学不適応」において,男性では1年生と2年生間,および1年生と3年生間で不安の程度に有意差が認められ,学部への不適応感がその主たる要因であった.〔結語〕男性では,2年生以降,理学療法に対して自らの適性について不安を感じる学生が多いため,1年生のうちから学生への細かな生活指導を行う必要がある.
症例研究
  • ─悪性リンパ腫1症例の理学療法経験を通して─
    黒田 未貴, 池田 耕二, 中田 加奈子, 井谷 由香理, 中川 真優, 朴 聖章
    2015 年 30 巻 3 号 p. 479-482
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕回復期リハビリテーション病棟における終末期がん患者の在宅復帰を円滑にするための条件を明らかにすること.〔対象〕 悪性リンパ腫患者(女性,59歳)とした.〔方法〕事例研究法を用い,入院時から在宅復帰までの理学療法やその経過を集約し,条件を構造化した.〔結果〕在宅復帰後のカンファレンスにより 1)患者,家族の在宅復帰への意志が明確であったこと,2)関わるスタッフが終末期という視点に転換できたこと,3)関わるスタッフが情報を共有できたこと,4)かかりつけ医との相性の良さや急変時の受け入れ体制が明確であったこと,の4つの条件が構造化された.〔結語〕これら4つの条件を満たすことにより,終末期がん患者の在宅復帰は円滑になることが示唆された.
紹 介
feedback
Top