日本気管食道科学会会報
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55 巻, 1 号
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原著
  • 齋藤 康一郎, 塩谷 彰浩, 大久保 啓介, 茂呂 和久, 荒木 幸仁, 池田 麻子, 福田 宏之, 小川 郁
    2004 年 55 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
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    片側声帯麻痺は,我々耳鼻咽喉科医が日常頻繁に遭遇する疾患である。症状としては嗄声や誤嚥を生じ,経過中症状が変わらない症例もあれば,自然に麻痺の回復する症例や麻痺は回復せずとも症状の軽快する症例も数多く認められる。今回我々は1993年1月から2000年12月までの8年間に当科を受診した片側声帯麻痺症例について臨床的検討を行った。性別では男性,麻痺側は左に多く,原因は術後性の麻痺が,主訴は嗄声が最多であった。声帯運動回復症例の回復時期,あるいは声帯運動非回復でも症状が軽快した症例の軽快時期は,ほとんどが半年以内であり,片側声帯麻痺症例に対する手術的治療の検討を開始する時期として,麻痺発症後半年が妥当と考えられた。
  • 佐藤 公則
    2004 年 55 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    4チャンネル24時間pHモニタリングを咽喉頭逆流症疑いの患者10例に施行し,その有用性を検討した。1) 4チャンネル同時記録のため,胃の中,LESの数cm上,中部食道,UESの直上の各pH値を経時的に同時にモニタリングでき,胃食道の逆流と食道咽喉頭の逆流がよく分かった。2) pH変動グラフにより各部位における酸逆流の関連性がよく分かった。3) 咽喉頭逆流症の診断と病態解明において,4チャンネル24時間pHモニタリングによる機能検査はきわめて重要であるといえた。4) 4チャンネル24時間pHモニタリングは生理的環境下での咽喉頭内酸逆流を証明しうる点で最も優れた検査法であると考えられた。5) 咽喉頭逆流症に対する24時間pHモニタリングの問題点はその手技と診断基準が決まっていないことであった。
  • 古田 康, 目須田 康, 永橋 立望, 本間 明宏, 折舘 伸彦, 西澤 典子, 福田 諭
    2004 年 55 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
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    (目的)喉頭摘出後の音声再建法として長期留置型のGroningen voice prosthesis(以下グロニンゲン)挿入に伴う合併症について,その頻度,対処方法について検討した。(対象)挿入術後1年以上経過した22例を対象とした。挿入観察期間は7~37カ月(中央値24カ月),交換回数は0~10回(平均4回)であった。(結果)シャント部からの漏れ15例(1例で抜去閉鎖),感染・肉芽形成6例(4例は脱落時に合併,非使用の1例では抜去),グロニンゲン脱落5例(5例ともにシャフト長5 mm挿入例であり長いタイプに変更),気管孔狭窄4例(4例とも開大術を施行),食道空腸吻合部狭窄2例(ブジーを施行し改善),食道異物1例(全麻下摘出),多量の呑気による急性腹症1例(保存的治療),気管食道瘻1例(腫瘍再発のため)であった。(考察)漏れの増加,発声状態が変化した際は早急に受診してもらい,気管孔の状態を確認し,また食道側の弁の状態を観察すること,シャフトの短い5 mmタイプは挿入しない方が良いと考えられた。挿入後に起こりうる合併症について患者に予め説明し,もし発生した場合は早期に対処することが重要である。
症例報告
  • 工藤 香児, 藤吉 達也, 若杉 哲郎
    2004 年 55 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    紡錘細胞癌(いわゆる癌肉腫)は扁平上皮癌成分と肉腫様成分とが混在してみられる稀な疾患である。症例は82歳男性。嗄声および軽度の呼吸困難のため受診。喉頭には声門上部を占拠する球状の表面平滑な腫瘤が認められ,右声帯に基部があると思われた。呼吸困難を軽減させる目的で喉頭鉗子を用いて腫瘤の減量を図ったが,腫瘤の一部が声門に嵌頓したため,緊急挿管および気管切開術を行った。喉頭顕微鏡手術による可及的摘出と72Gyの放射線照射により腫瘍は消失した。14カ月を経過し,現在まで再発や転移の兆候は認められていない。本疾患は本邦報告例では大部分が手術および放射線照射により腫瘍が制御できており,扁平上皮癌に比べて悪性度が低いとされている。今後はこのような特異的な臨床病態や疾患概念を明確にしていく必要があると思われる。
  • 村川 哲也, 唐帆 健浩, 山内 宏一, 田村 悦代, 田部 哲也, 北原 哲
    2004 年 55 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    喉頭原発の軟骨肉腫は,非常に稀な軟骨腫瘍である。治療としては,腫瘍の大きさに応じて喉頭全摘術,喉頭截開術,内視鏡下摘出術が施行されてきた。
    今回,われわれは稀な輪状軟骨原発の軟骨肉腫症例を経験したので報告した。症例は55歳男性,主訴は嗄声である。初診時に喉頭内視鏡検査で粘膜下腫瘍を指摘された。CT検査では,輪状軟骨に高吸収域と低吸収域が混在する腫瘤影を認めた。
    当初,喉頭の良性腫瘍を疑い,喉頭顕微手術および前頸部からの外切開により輪状軟骨と第1~第5気管輪の生検術を施行したところ,病理組織の結果は軟骨腫を疑った。全身麻酔下に外切開にて腫瘍切除術および気管切開術を施行した。永久病理標本では軟骨肉腫と診断した。患者に喉頭全摘術を勧めたが,本人が根治手術を希望せず,追加治療を施行しなかった。術後1年半経過したが,再発していない。今後,厳重な経過観察が必要である。
  • 田中 寿明, 末吉 晋, 的野 吾, 白水 和雄, 藤田 博正
    2004 年 55 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    我々は,下咽頭・頸部食道癌に対する咽頭・喉頭・頸部食道切除術後の遊離空腸移植症例において吻合部に器質的な狭窄がないにもかかわらず高度な嚥下困難を訴える3症例を経験した。嚥下困難の原因として,1例では端側吻合が行われていた口側咽頭空腸吻合部と遊離空腸の屈曲角度が大きいためと考えられた。また他の2例では,端側吻合が行われていた肛門側の空腸食道吻合部の遊離空腸盲端が拡張し吻合部を圧迫することによる通過障害と考えられた。これらの症例に対し,経口的に自動縫合器(END GIAユニバーサル,エンドパス*エンドカッターETS-Flex)を挿入し,空腸屈曲部あるいは肛門側吻合部を切開・拡張し,通過障害を解除できたのでその手技を報告する。
短報
  • 村上 直子, 原 浩貴, 山下 裕司
    2004 年 55 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    喉頭肉芽腫は声帯突起部に好発する炎症性の腫瘤であるが,しばしば再発し治療に難渋することのある疾患である。今回我々は喉頭肉芽腫の9症例に対しレバミピドとセラペプターゼの2剤併用の内服加療をおこなった。その結果,9例中5例(56%)で肉芽腫が消失した。肉芽腫消失までの期間は最短で21日,最長で91日であった。5例中3例は術後再発の症例であった。また1例はPPIの無効例であった。また5例全例とも投与後に最短10日,最長28日で肉芽腫の縮小効果が確認された。消失した5例で,内服終了後に再発したものはなかった。
    今回の結果から,喉頭肉芽腫が消失した原因は主として血中レバミピドの炎症抑制作用が喉頭粘膜に影響を及ぼしたためではないかと推察した。また無効であった4例では,血中濃度が充分でなかった可能性と,レバミピドでは胃酸逆流の防止が困難なほど重度なGERDが潜んでいた可能性を推察した。
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