日本気管食道科学会会報
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74 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 宮本 真, 齋藤 康一郎, 奥羽 譲, 中川 秀樹
    2023 年 74 巻 6 号 p. 377-383
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル 認証あり

    小児喉頭の特徴として,喉頭が成人より高い位置にあり,気道としては小さく狭い以外に,喉頭蓋がΩ型で披裂喉頭蓋ヒダが短いといった特徴がある。今回,小児喉頭の形態学的特徴のうち,喉頭蓋の形態と披裂喉頭蓋ヒダの長さについて喉頭内視鏡動画を後方視的に検討した。対象は2017年5月から2022年4月までの5年間に当科専門外来を受診し,動画があり,かつ一般的に小児として扱う15歳未満とした。喉頭蓋の形態について,Ω型は282例中105例(37.2%)であり,新生児,乳児,幼児においては1/3から1/2であった。成人と同じ扁平型は学童の多数に認めたが,新生児や乳児でも認めた。喉頭蓋の形態は性別の影響を受けていなかったが,年齢や基礎疾患の有無は影響していた。披裂喉頭蓋ヒダの長さについて,短いと評価した例でも声帯長の観察は可能であり,披裂部の余剰粘膜が声門を覆っている4例のみ声帯全長の観察が不可能であった。喉頭蓋のΩ型は間接喉頭鏡を用いた観察でのものであり,喉頭内視鏡ではイメージしにくい。Ω型とともにcurled epiglottisと併記することでΩ型が理解しやすいと考える。

症例
  • 門園 修, 三枝 英人, 前田 恭世, 伊藤 裕之, 山本 昌彦
    2023 年 74 巻 6 号 p. 384-392
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル 認証あり

    迷走神経刺激療法(VNS)は難治性てんかんに対して行われる緩和的外科治療である。左側頸部迷走神経本幹に留置された電極を介して電気刺激が上行性に大脳皮質へと伝達され,抑制機構の作用が強化されることでてんかん発作の頻度や程度が減少すると考えられている。しかし,目的とする上行性伝達以外の神経線維が刺激されたと考えられる副作用の報告もある。嗄声や咽喉頭異常感,呼吸困難,嚥下困難などが多いが,ほとんどはVNSの刺激電流の調節と時間経過で改善するとされている。今回私達は,難治性てんかんに対してのVNS手術後に刺激を開始すると声門が狭窄し,吸気性喘鳴と窒息を伴う重度の呼吸困難が出現,VNS治療が開始できなかった症例を経験した。本症例の喉頭所見と経過の詳細につき,文献的考察を含めて報告する。

  • 山本 浩之, 中村 一博, 黄田 忠義, 三浦 怜央, 原 將太, 見澤 大輔, 馬場 剛士, 安田 大成, 西山 秀徳, 大島 猛史
    2023 年 74 巻 6 号 p. 393-402
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は2010年~2021年に当院と関連病院でTP2の再手術を施行した際にチタンブリッジ(titanium bridge:以下TBと記す)の破断が判明した3例である。症例1と症例2ではTP2再手術術中所見で頭側TBの羽部の内側孔が破断していた。両症例ともにTB中心部の構造に問題なく,開大幅は維持されており,破断による音声の悪化はなかった。症例3では再手術の際に初回手術のTBを取り外そうと力をかけたところ,羽部の内側孔で破断した。症例1と症例2と同様に破断直後に音声の悪化はなかった。症例2と症例3は破断の原因追跡のため金属解析した。破断の原因は曲げ戻しによる金属疲労が電子顕微鏡分析で示された。TB挿入時には曲げ戻しは破断の原因となるため厳禁である。TB破断後も正中構造が維持されれば音声の悪化はない。破断による影響については,術後症例の今後の経過観察によってエビデンスを確立する必要がある。そのためにはTP2術後には何らかの定期的な画像診断がもとめられると考える。

  • ─ 一過性伝導障害に関する考察
    岩下 栞菜, 福田 裕次郎, 田所 宏章, 原 浩貴
    2023 年 74 巻 6 号 p. 403-408
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル 認証あり

    一側反回神経麻痺の原因として術後性,特発性,腫瘍疾患の3つが多いとされている。腫瘍による反回神経への浸潤が認められる場合,神経麻痺が改善する確率は低い。今回食道癌に対する化学療法によって反回神経麻痺が改善した症例を経験した。症例は65歳男性で,進行食道癌cT4bN2M1,cStageIVbに対して当院の臨床腫瘍科にてCDDP+5-FUを施行されていた。治療開始時より認めていた嗄声が増悪したため,精査目的に当科紹介となった。喉頭内視鏡検査で弧状変化を伴う左声帯麻痺を認め,CT検査で胸部上部食道に原発巣と多発リンパ節転移,肺転移を認めた。その後病態が増悪したためNivolumabにレジメン変更となった。治療開始から205日目に施行した喉頭内視鏡検査にて左声帯麻痺の改善がみられた。一般に悪性腫瘍の場合は,腫瘍による神経への直接浸潤や手術時の合併切除により,神経温存そのものが困難となり,反回神経麻痺の改善は期待できない。しかしながら末梢神経障害のうち,Neurapraxia(一過性伝導障害)の場合,神経障害は完全回復するとされている。本症例では病変による神経圧迫によりNeurapraxiaを生じ,化学療法により病変が縮小したことによって,反回神経麻痺が改善したと考えた。

  • 紫野 正人, 川﨑 裕正, 峯村 康平, 萩原 弘幸, 二宮 洋, 近松 一朗
    2023 年 74 巻 6 号 p. 409-415
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル 認証あり

    内視鏡下輪状咽頭筋切断術(ECPM:Endoscopic cricopharyngeal myotomy)は経口的に輪状咽頭筋を切除する嚥下改善手術であり,従来の外切開による術式と比較して,低侵襲で治療効果も同等と報告されている。今回,喉頭全摘後に嚥下障害をきたした症例に対し,ECPMを施行して良好な結果を得たので報告する。症例は70歳代後半の男性。喉頭癌(T3N0M0)に対して喉頭全摘術を行った。術後に咽頭縫合不全を生じたが,局所処置で改善し経口摂取可能となって退院した。しかし退院後約2週間で経口摂取不十分となり入院した。嚥下造影やCT所見では咽頭後壁の張り出しが強くみられ,原因として喉頭全摘術時に残した輪状咽頭筋に対する迷走神経咽頭枝からの入力が筋萎縮を妨げたことによる通過障害と診断した。嚥下改善手術としてECPMを施行して輪状咽頭筋を部分的に切除したところ嚥下障害は改善し経口摂取可能となった。また縦隔炎などの周術期合併症も生じなかった。一般的にECPMは脳幹梗塞に伴う嚥下障害に対する手術方法だが,喉頭全摘術後の咽頭狭窄による嚥下障害に対しても有用であった。

  • 渡邉 昭仁
    2023 年 74 巻 6 号 p. 416-421
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル 認証あり

    内視鏡下咽喉頭手術(Endoscopic laryngo-pharyngeal surgery:ELPS)は,本邦で開発された咽頭・喉頭の表在性癌に対する術式である。この方法には,可撓性のある電気焼灼器や彎曲鉗子などの特殊な器具が必要である。この術式では電気メスで止血することが多いが,太い血管では電気焼灼だけでは不十分なことがある。このような場合の止血にはクリッピングによる止血が有効だが,既存のクリップ鉗子は直線的な形状のものが多く,彎曲喉頭鏡で展開した術野に届かない等の問題があった。したがって,ELPS用の止血用彎曲クリップ鉗子のプロトタイプを開発した。鉗子は彎曲しており,先端を回転させることができる。これらを使用することで,彎曲喉頭鏡で展開したほぼすべての術野で対応できるようになった。止血用彎曲クリップ鉗子を使用することで,より安全な経口手術が可能になると期待される。

用語解説
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