日本気管食道科学会会報
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73 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 鈴政 俊, 犬塚 義亮, 冨藤 雅之, 荒木 幸仁, 瀬越 健太, 犬塚 絵理, 瀧端 早紀, 宇野 光祐, 水足 邦雄, 塩谷 彰浩
    2022 年 73 巻 6 号 p. 349-355
    発行日: 2022/12/10
    公開日: 2022/12/25
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    喉頭麻痺に他の脳神経障害を合併した病態は混合性喉頭麻痺と呼ばれ,中でもウイルス感染を契機に発症したものは,発症初期での診断に苦慮することが多い。今回われわれは2013年11月から2019年10月の6年間に水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)もしくは単純ヘルペスウイルス(HSV)の再活性化によると考えられた混合性喉頭麻痺6症例の検討を行った。臨床症状は嚥下障害を全例に認め,顔面神経麻痺は5例,カーテン徴候は3例,難聴等の内耳症状は4例に認めた。1例は臨床的にHunt症候群と,4例がVZVの再活性化によるウイルス性,1例は特発性,もしくはHSVの再活性化によるウイルス性と診断された。治療はステロイドと抗ウイルス薬により行われた。喉頭麻痺は6例中5例で改善を認め,1例で不変であった。嚥下障害,顔面神経麻痺と難聴は全例で改善を認めた。Hunt症候群に特徴的な皮疹,顔面神経麻痺,内耳神経麻痺の3徴のいずれかを欠いたウイルス性混合性喉頭麻痺は早期確定診断が困難である一方,喉頭麻痺は他の脳神経麻痺と比較して改善率が低い。VZVもしくはHSVの再活性化によると考えられる混合性喉頭麻痺に対しては早期治療介入を追求し,喉頭麻痺の改善率向上を目指すことが望まれる。

  • 宮本 真, 齋藤 康一郎, 中川 秀樹
    2022 年 73 巻 6 号 p. 356-362
    発行日: 2022/12/10
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル 認証あり

    目的:ヒト喉頭の大きさは,喉頭形成術や喉頭外傷の手術を行うのに有用である。今回,喉頭軟骨の解剖学的な大きさを計測し,その測定値を男女間で比較を行った。方法:19歳以上の成人40人を超高精細CTにて撮影した。画像から3次元再構築を行い,喉頭軟骨部分の大きさを計測した。評価項目は,甲状軟骨の高さ(正中における甲状軟骨隆起から甲状軟骨下縁)と甲状軟骨板の幅(声帯レベルで甲状軟骨板の前縁から後縁),声帯レベルにおける甲状軟骨板のなす角度,輪状軟骨における弓部および後壁の高さ,内側の前後左右の長さ,および上縁と下縁のなす角度である。結果:今回計測した喉頭軟骨は女性よりも男性の方が大きく,声帯レベルでの甲状軟骨板のなす角度は男性の方が小さかった。輪状軟骨内側での前後は左右よりも有意に大きく,形状は楕円形であった。考察:性別は喉頭の大きさを規定する重要な要因である。男性喉頭は女性喉頭よりも鋭角であるが,どちらも以前より鋭角となり,さらに甲状軟骨板の平均角度は約17度と性別において大きな差を認めた。喉頭手術前には,個々に画像による評価を行う必要があると考える。

  • 山元 智子, 篠原 尚吾, 上田 啓史, 安本 眞美, 濱本 文美, 戸部 陽太, 池永 直, 道田 哲彦, 山崎 博司, 浜口 清海, 藤 ...
    2022 年 73 巻 6 号 p. 363-368
    発行日: 2022/12/10
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル 認証あり

    神戸市立医療センター中央市民病院で気管切開を行ったCOVID-19症例,41例を対象に,第4波以前・第4波,外科的気管切開・経皮的気管切開の4つに分類し患者背景・挿管から気管切開までの日数・死亡退院率・死亡例での気管切開から死亡日までの日数について検討した。第4波では以前と比較してBMIが有意に高値であり肥満が重症化リスクの一つと考えた。第4波では手術の早期化が進んだが,ST症例・PDT症例ともに死亡率が増悪した。COVID-19症例の早期外科的気管切開は,救命率の上昇や生存日数の延長等には寄与しなかったものの,重症病床の確保,ひいてはCOVID-19以外の通常診療を進めるために必要であると考えた。

症例
  • 坂田 健太郎, 妻鳥 敬一郎, 三橋 泰仁, 坂田 俊文
    2022 年 73 巻 6 号 p. 369-374
    発行日: 2022/12/10
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル 認証あり

    症例は81歳,男性。嚥下痛を主訴に近医耳鼻科を受診し,喉頭内視鏡検査で喉頭蓋喉頭面の不整粘膜病変を指摘された。初診時,悪性腫瘍を疑い外来で喉頭生検を実施したが,壊死を伴うびらんと慢性炎症所見のみであった。胸部単純X線で左上肺野にすりガラス陰影を認め,結核疾患を疑いインターフェロン(IFN)γ遊離試験T-SPOTを実施したが判定保留であった。全身麻酔下で再度喉頭生検を実施したが,抗酸菌塗抹検査陰性,Ziehl-Neelsen染色陰性,結核polymerase chain reaction(PCR)は検体量不足のため実施できず,確定診断には至らなかった。しかし,退院後の外来経過観察期間中の培養検査3週目に結核菌陽性を認め,約2カ月の期間を経て喉頭結核と確定診断した。結核の診断には種々の検査を組み合わせる必要があり,診断に時間を要することは周囲へ二次感染する危険性が高くなる。検出率に優れたIFN-γ遊離試験も高齢者の免疫低下の影響を受け,感度が低下することが知られている。結核が疑わしい症例に対しては各種検査を一期的・網羅的に実施することが肝要である。

  • 安田 大成, 中村 一博, 長谷川 央, 三浦 怜央, 山田 裕太郎, 吉田 まりん, 池田 篤生, 大島 猛史
    2022 年 73 巻 6 号 p. 375-382
    発行日: 2022/12/10
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル 認証あり

    甲状軟骨形成術2型(TP2)は,内転型痙攣性発声障害(AdSD)に対する手術である。手術の効果は開大幅と開大幅の維持に懸かっている。今回われわれは1回目の手術で気息性嗄声となり,再手術を施行し開大幅を調整したことで改善した症例を経験した。症例は41歳女性。201X-15年に前医で痙攣性発声障害の診断となった。以降,音声治療を継続するも改善を認めず201X年に当院を紹介され受診した。同年にTP2を施行するも,術後気息性嗄声が出現した。初回手術の1カ月後に症状改善目的に再手術を行った。開大幅3.0 mmのチタンブリッジ(TB)を上下2個取り外し,尾側のみに開大幅2.0 mmのTBを1個再挿入した。この時点で試験的に頭側を2.0 mm開大すると気息性嗄声が強くなったため,尾側1個のみの2.0 mm開大とした。TP2において甲状軟骨開大幅の調節は重要である。狭いと声のつまりが残り,広すぎると気息性嗄声がみられる。本症例では1回目の手術後に気息性嗄声になったが,再手術により嗄声が改善され良好な音声を得た。TP2がリバーシブルな手術であることを再確認し,再手術へ至った原因や予防策について考察する。

  • 天津 久郎, 若見 暁樹, 亀井 優嘉里, 大野 峻
    2022 年 73 巻 6 号 p. 383-390
    発行日: 2022/12/10
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル 認証あり

    喉頭全摘出後の代用音声の一つ,ボイスプロステーシスを用いた気管食道シャント発声症例で,シャントが徐々に開大して,ボイスプロステーシスと周囲組織の間から恒常的に誤嚥が生じて難渋することがある。中には,シャント閉鎖を余儀なくされ,シャント発声を喪失し,QOLが低下する症例もある。シャント開大によるリークに対して,シャントを閉鎖することなく外科的治療によりリークを消失させることができた2症例について報告する。特に1例は形成外科医の協力を得,自家組織を用いてシャント周囲の組織充填を行い,良好な結果を得た。本邦でもボイスプロステーシスの普及に伴い,シャント開大による誤嚥によってQOL低下をきたす症例も増加すると予想される。多施設からのさまざまな治療方法の報告と,効果の高い治療方法の確立が望まれる。

  • 小島 史也, 海藤 章郎, 谷岡 利朗, 冨井 知春, 齋藤 稔史, 本多 正樹, 滝口 典聡, 伊東 浩次
    2022 年 73 巻 6 号 p. 391-398
    発行日: 2022/12/10
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル 認証あり

    胃癌術後の予後が改善され,異時性重複癌としての胃癌術後食道癌に関する報告も散見される。胃癌術後食道癌では,胃切除時のリンパ節郭清の影響で腹部リンパ節転移様式が変化していると考えられるが,胃全摘術後の食道癌における報告は少なくその腹部リンパ節転移頻度や様式は明らかでない。今回われわれは胃癌に対して胃全摘術を施行後4年で胸部食道癌の診断となった症例を経験した。術前化学療法後に胸腔鏡下食道亜全摘,3領域リンパ節郭清,胸壁前回結腸再建術を施行したが,腹部操作の際,挙上空腸間膜に転移を疑う腫大リンパ節を認めたため近傍の空腸とともに合併切除し後に扁平上皮癌の転移の診断となった。胃全摘術後胸部食道癌の挙上空腸間膜リンパ節転移の報告は多くなく,その経路として,吻合部に新たに形成されたリンパ流を通して転移した可能性が示唆される。挙上空腸間膜リンパ節転移を所属リンパ節転移とみなすか遠隔転移と扱うかは症例を重ねて検討する必要があると考えられる。また胃全摘後の食道癌症例では挙上空腸間膜リンパ節転移を考慮して術前から注意深く画像検索をしたり,術中に当該リンパ節をサンプリングしたりすることも検討される。

用語解説
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