日本気管食道科学会会報
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54 巻, 4 号
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総説
  • 櫻井 滋, 金澤 格, 細川 敬輔, 高橋 格, 木澤 哲也, 西島 嗣生, 高橋 進, 笠井 良彦
    2003 年54 巻4 号 p. 261-269
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
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    経鼻持続陽圧呼吸療法(nCPAP)は,睡眠時無呼吸症候群の第1選択治療となっている。岩手医大第3内科では,患者のnCPAP療法継続に関与する因子を検討するため,nCPAP導入済みの患者に質問紙法による調査を実施した。調査の結果,大多数の患者がその効果には満足しており,日常的な問題をいかに解決すべきかに悩むことが判明した。使用継続率は患者のアドヒーランスを反映し,個人ごとに使用のパターンは4型に分類され導入後ほとんど変化しないが,間欠的に使用している患者では指導により連続使用が可能になる場合が多いため,これらのパターンを認識するためには客観的データが得られるメモリー内蔵型のnCPAPが有用である。また,うつ的な気分を有することが多い患者の心理状態に配慮する必要がある。咽頭形成術を施行した後に無呼吸が残存し,しかも術後にnCPAPの使用が困難になる例が存在するため,nCPAP使用困難を理由に外科療法を選択する前には,療養指導が十分かどうかnCPAPの使用状態に関する客観的な評価が必要である。
原著
  • 片田 彰博, 野中 聡, 国部 勇, 安達 正明, 執行 寛, 今田 正信, 林 達哉, 原渕 保明
    2003 年54 巻4 号 p. 270-276
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,機能的電気刺激が反回神経麻痺による内喉頭筋萎縮を抑制することができるかどうか検討した。
    実験には18頭の成ラットを用いた。左の反回神経を切除した後に,麻痺している左甲状披裂筋に刺激電極を留置した。振幅2 mA,持続時間0.2 ms,頻度2 Hzの機能的電気刺激を1時間,1日おきに加えた。観察期間終了後,厚さ8 μmの喉頭前額断切片を作製した。機能的電気刺激の有無による脱神経後の筋断面積,筋線維断面積,および筋線維密度の違いについて解析した。
    機能的電気刺激を加えなかった動物群においては,脱神経後の萎縮性変化が観察され筋および筋線維断面積が減少し,筋線維密度が増加した。機能的電気刺激を加えた動物においても,切断後2週目までは同様の萎縮性変化が観察された。しかし,切断後6~8週目では筋および筋線維断面積,筋線維密度は健側と同様の状態に回復していた。
    本研究の結果から,機能的電気刺激は麻痺している内喉頭筋に生じる萎縮性変化を抑制することが明らかとなった。このことは,機能的電気刺激が反回神経麻痺により生じる喉頭機能の障害を軽減する可能性を示唆している。
  • 介護病棟,特別養護老人ホーム,一般高齢者での調査
    小松 正規, 平田 佳代子, 持松 いづみ, 松井 和夫, 廣瀬 肇, 佃 守
    2003 年54 巻4 号 p. 277-284
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    高齢者における嚥下障害の実態の把握を目的に,食物形態の調査と藤島の質問紙をもとにしたアンケート調査を行い,才藤の「摂食・嚥下障害の臨床的病態重症度」を用い評価,検討した。介護病棟入院の要介護高齢者46例,特別養護老人ホームの要介護高齢者64例,一般高齢者36例,一般青壮年者29例を対象に調査した。各群での摂食・嚥下障害の重症度の分布の違いを検定すると,青壮年者と比べて,高齢者3群で重症者が多いことが有意に認められた。また,介護病棟にて摂食・嚥下障害の重症度に関連する因子を分析した結果,「年齢」,「性別」,「痴呆の有無」,「失語症の有無」では重症度に差はみられなかったが,「脳血管障害の既往の有無」,「構音障害の有無」で有意差を認め,それぞれ「有」で重症度が高かった。また,嚥下簡易テストを介護病棟で施行した結果,摂食・嚥下障害の重症度との関連が認められ,これらの嚥下簡易テストも嚥下障害の診断に参考になると考えられた。
  • 岡田 了祐, 逢坂 由昭, 高木 融, 佐藤 滋, 青木 達哉
    2003 年54 巻4 号 p. 285-290
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
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    食道癌は頭頸部癌との重複が多いことが知られているが,その原因についてはいまだ十分に解明されていない。今回われわれは,喫煙量(Brinkman index: BI),飲酒量(sake index: SI),human papilloma virus (HPV),癌関連遺伝子(p53,pRb,p16),アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)が食道癌と頭頸部癌との重複癌の発生に関与しているかどうかを食道癌単独症例と比較検討した。その結果,BI,SI,食道内多発癌は重複癌症例で有意に多かった(p<0.01)。HPV陽性率,p53,pRbおよびp16の発現に有意差は認められなかった。 ALDH2遺伝子欠損は重複癌症例では26例(78.8%),食道癌単独症例では17例(53.1%)に認められ,重複癌症例が有意に高率であった(p<0.05)。以上より,喫煙,飲酒およびALDH2遺伝子欠損が食道頭頸部重複癌の発生に有意に関連していることが確認された。
  • 渡辺 由季, 内藤 理恵, 林田 哲郎, 菅澤 恵子, 内藤 玲, 渡辺 剛士
    2003 年54 巻4 号 p. 291-296
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
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    喉頭気管分離術・気管食道吻合術,および喉頭摘出術後の適切なカニューレの形状について検討した。
    1996年から2002年までに都立神経病院神経耳科にて喉頭気管分離術・気管食道吻合術を施行された33例,喉頭摘出術を施行された7例を対象とした。仰臥位で胸部CTを撮影し,気管の縦軸に合わせ,矢状断に再構成し直した画像より曲率(θ)を算出し,これを評価した。
    喉頭気管分離術・気管食道吻合術後の症例の気管の曲率平均はθ=47.4度,喉頭摘出術後の症例の気管の曲率平均はθ=34.7度であった。一般に気管切開用カニューレは曲率が90度や60度のものが頻用されている。カニューレの不適合によって気管内に生じた肉芽から,感染,気管壊死による気管腕頭動脈瘻を起こした場合,致命的である。これを防止するためには従来のカニューレより,曲率は小さく,ゆるやかなカーブのカニューレを使用することが望ましいと考えられた。
病例報告
  • 藤村 和伸, 藤吉 達也, 坂部 亜希子, 後藤 享也, 寳地 信介
    2003 年54 巻4 号 p. 297-301
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    気管内挿管後に生じる声門下狭窄症の治療は必ずしも容易ではない。われわれは,18年間の長期間にわたり声門下狭窄症が放置された症例を経験した。症例は18歳女性,生後4カ月時に腸重積症より呼吸停止状態となり気管内挿管,さらに気管切開が施行された。その後,声門下狭窄症のため気管カニューレ抜去困難となったが,その治療は一度もなされないまま家庭にて気管カニューレの管理が行われていた。声帯に異常はなく,声門下15 mmのレベルは膜性瘢痕によって直径1.5 mmに狭窄していた。接触型YAGレーザーを用いて中心部の薄い瘢痕組織のみを切除し,内腔を直径9 mmとした。ステントを使用することなく9カ月間良好だったため気管孔を閉鎖した。良好な結果が得られた主な理由として,18年間という間に局所組織の炎症性反応が十分に沈静化していたことが考えられる。家族は発症当時に本疾患が極めて難治であると説明を受けたことによって治療を諦めていた。インフォームド・コンセントのあり方について考えさせられた症例である。
  • 河北 誠二, 兵頭 政光, 渡辺 太志, 上甲 英生, 湯本 英二
    2003 年54 巻4 号 p. 302-306
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    中咽頭から頸部食道にまで達する血管腫を有した16歳男子の症例を報告した。患者は2カ月来の咽頭部の嚥下時痛とその後に続く口腔内出血を訴えた。内視鏡とMRI検査にて中咽頭,下咽頭,頸部食道にまで及ぶ巨大な血管腫が明らかになった。腫瘍の存在部位と広がりからポリドカノールによる硬化療法を行った。硬化療法をその後追加することで,血管腫は十分に縮小した。治療経過中には重篤な副反応は生じなかった。硬化療法は適応を限れば血管腫に対して価値ある有望な治療であり,比較的簡便に行え,有効な方法である。
  • 渡辺 尚彦, 渡瀬 文貴, 徳丸 岳志, 奥野 敬一郎, 調所 廣之
    2003 年54 巻4 号 p. 307-312
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは頸部外傷後の嚥下障害に,輪状咽頭筋切断術が非常に有効であった1症例を経験したので報告した。症例は65歳男性,主訴は,頸部痛と嚥下障害。バイク運転中自動車と接触,左側頭部および左頸部を打撲した。事故後1年,頸部痛,嚥下障害が持続するため,整形外科受診,頸椎CTおよびミエロCTにてC4のすべり症とC4/5とC6/7において脊椎管の狭窄と診断された。頸の動作による痛みと固形物に対する嚥下障害の訴えが強く,2001年6月当科受診となった。間接喉頭鏡では,下咽頭レベルで咽頭腔の前後径の短縮が認められた。喉頭斜位を認めるも,声帯に器質的疾患はなく反回神経麻痺も認めなかった。頸部CTにて頸椎の軸の不整と喉頭斜位を認めた。食道透視で咽頭期でのバリウムの停滞と食道入口部の筋の弛緩が不良であった。頸の動作による痛みも両側の上喉頭神経部に一致することから,外傷による咽頭神経叢の障害が迷走神経の機能異常を引き起こしている病態を考え,2002年5月13日両側上喉頭神経内枝切断術と輪状咽頭筋切断術を施行した。術後第1病日より,頸部痛は消失した。嚥下も徐々に改善した。術後2週間での食道透視では食道入口部の十分な筋弛緩が得られている。術後1カ月で患者は固形物が嚥下できるようになった。術中術後に合併症を認めなかった。咽頭期の嚥下に関する中枢は延髄であり,求心路は第7,9,10脳神経であり,遠心路は第9,10,12脳神経とされる。輪状咽頭筋の収縮・弛緩では頸部の交感神経の関与する説と,迷走神経が主体とする説がある。今回の症例では頸部外傷で咽頭神経叢が障害され迷走神経の症状が出現したのと,頸椎の脱臼による咽頭腔の構造の変化が嚥下障害の原因と考えられた。
  • 奥野 敬一郎, 渡瀬 文貴, 徳丸 岳志, 渡辺 尚彦, 調所 廣之, 杉内 智子
    2003 年54 巻4 号 p. 313-317
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    Forestier病は,主として頸椎前方の骨性増殖が顕著となり,隣接椎体間の癒合に至る疾患で,下咽頭から食道入口部までの後壁粘膜の物理的狭窄によって症状が発現する。基本的に,本疾患では嚥下障害に関しては機能的異常は考えられず,食餌内容や方法を吟味すれば,すべてが手術適応とはならない。症例1では固形物の嚥下困難が強いこと,年齢が若く手術のリスクに耐えうること,この先の罹病期間が長期になることから手術適応を考えた。症例2および3は高齢者であり,頸椎の手術のリスクと照らし合わせ手術適応を検討し,経過観察とした。
  • 石田 良治, 山田 弘之, 西井 真一郎
    2003 年54 巻4 号 p. 318-321
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    頭頸部癌に対して放射線治療を含む集学的治療を行った後,長期経過後に鎖骨壊死を生じた症例を2例経験した。いずれの症例でも腫瘍の再発,転移はなく,放射線骨壊死と診断した。2症例とも照射量は60 Gy以下であり,過剰線量照射例ではなかったものの,長期経過後に放射線骨壊死を発症しており,放射線照射症例に対しては長期の経過観察が必要と考えた。1例は鎖骨壊死より生じた膿瘍の波及により鎖骨下動脈破裂を生じ死亡したが,1例は鎖骨周囲の病巣郭清および大胸筋弁,DP皮弁を用いた一期的再建術を行い良好な結果を得た。放射線骨壊死症例に対しては,早期に広範な腐骨除去を中心とした手術が必要と考えた。
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