日本気管食道科学会会報
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66 巻, 3 号
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原著
  • 谷 亜希子, 田勢 長一郎, 多田 靖宏, 松塚 崇, 松井 隆道, 野本 幸男, 鈴木 政博, 横山 斉, 後藤 満一, 大須賀 文彦, ...
    2015 年 66 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/25
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    輪状甲状靭帯切開は緊急の気道確保や喀痰吸引目的に行われる。耳鼻咽喉科のほか,救急科や外科でも行われる手技である。今回,当院で8年間に施行された輪状甲状靭帯穿刺症例99例について調査を行った。担当診療科は救急科が最も多く37.4%,次いで心臓血管外科,消化管外科であり,耳鼻咽喉科は12.1%であった。喀痰吸引目的に施行された症例は87.9%と大半を占めた。1~5日の留置が45.5%であったのに対し,16日以上の留置は18.2%,41日以上の留置は2.0%であった。特に16日以上の症例は全例喀痰吸引目的であった。術中合併症は2.0%,術後合併症は3.0%に生じ,永続的に症状が残ったものは声帯麻痺の1例 (1.0%) であった。合併症を避けるためには正しい位置に挿入すること,長期留置を避けること,長期留置になった場合には喉頭の評価を行うこと,他の気道確保方法を検討することが必要と考える。
  • 本橋 玲, 塚原 清彰, 佐藤 宏樹, 遠藤 稔, 中村 一博
    2015 年 66 巻 3 号 p. 198-202
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/25
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭癌の治療方針決定において,リンパ節転移の有無は重要である。近年,FDG-PET/CTの有用性が報告されている。局所進行下咽頭癌症例のうち,術前cN0と診断した症例の術前FDG-PET/CT所見と術後病理検査によるリンパ節転移の有無をレトロスペクティブに比較,検討した。対象は東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて2009年から2011年の間に,初治療として咽頭喉頭頸部食道摘出術,両側頸部郭清術を施行し,FDG-PET/CTにてcN0M0と診断した14例である。男性12例,女性2例であった。年齢は62歳から84歳で平均72歳であった。術前病期分類は,stage IIが1例,stage IIIが7例,stage IVが6例であった。術後病理組織診断にて14例中6例,42.9%にリンパ節転移をみとめた。陰性的中率は14例中8例,57.1%であった。転移リンパ節は6例,14個であった。転移リンパ節の長径平均は9.1 mm,短径平均は6.2 mm,腫瘍占有率平均は59.8%であった。転移部位は14個中11個 (78.6%) が患側であった。治療前FDG-PET/CTにてcN0と診断された場合でも,約40%に潜在性リンパ節転移が存在することを認識する必要があると思われた。
  • 永井 世里, 濱島 有喜, 鈴木 元彦, 木村 利男
    2015 年 66 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/25
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    上気道型気道熱傷については,予防的挿管の診断基準を認めず,喉頭浮腫進行と上気道所見との関連についても報告が少ない。実際の臨床でも,担当医の経験により,予防的挿管をしているのが現状である。今回われわれは,上気道型気道熱傷において,1.煤の到達部位と喉頭浮腫発現の関連,2.喉頭浮腫出現を誘発する要因 (年齢,体表熱傷面積,burn index,prognostic burn index,顔面・頸部熱傷,COHb,血清総蛋白,アルブミン) について検討した。その結果,煤到達部位と喉頭浮腫進行には関連を認めず,burn indexと体表熱傷面積,血清総蛋白において,喉頭浮腫出現群で有意差を認めた。上気道型気道熱傷では,初診時に喉頭浮腫を認めなくても,重症熱傷や体表熱傷面積が大きな場合や,顔面頸部熱傷を伴い低蛋白血漿が予想される場合には,予防的挿管の適応となることが示唆された。
  • 平澤 一浩, 塚原 清彰, 本橋 玲, 遠藤 稔, 佐藤 宏樹, 上田 百合, 中村 一博
    2015 年 66 巻 3 号 p. 208-213
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/25
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    深頸部感染症は抗菌薬の普及に伴い減少しているが,依然として致死的となりうる重症感染症である。深頸部感染症では,膿瘍形成が明らかな場合,切開排膿を行う。一方で,初診時に明らかな膿瘍形成を認めず,初期治療として保存的抗菌薬投与を行った症例の中に経過観察中に膿瘍化し,切開排膿が必要となる症例が散在する。今回われわれは,初期治療として保存的加療を試みた深頸部感染症を,保存的加療で治癒した群と治癒しなかった群に分けて比較検討した。後期高齢者では重症化の可能性を念頭におき注意深い経過観察が必要であると考えられた。糖尿病合併症例では,インスリン等を用いて厳密な血糖管理を行うことが重症化予防に大切と考えられた。複数間隙に感染を認める症例では特に,膿瘍化の可能性を十分に考え,注意深い経過観察が必要であると考えられた。
症例
  • 寒川 泰, 後藤 理恵子, 米崎 雅史
    2015 年 66 巻 3 号 p. 214-219
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/25
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    甲状舌管嚢胞は前頸部正中で腫瘤性病変として認めることが多い。喉頭方向に進展するものは稀とされるが,気道閉塞の可能性もあり適切な対応が必要となる。今回われわれは,喉頭方向に進展する甲状舌管嚢胞症例を経験したので報告する。症例は70歳男性。貧血の精査のため上部消化管内視鏡を施行した際に,喉頭周囲の腫瘤性病変を指摘された。CTでも喉頭周囲に異常陰影がみられ当科に紹介となった。精査の結果,喉頭に進展する嚢胞性病変を認めた。横行結腸癌との診断で,全身麻酔下に結腸切除術の予定となり,同時に頸部嚢胞摘出術を施行した。術中所見より甲状舌管嚢胞と診断し,後の病理組織診断とも矛盾しなかった。咽喉頭粘膜を損傷することなく嚢胞を摘出でき,術後は問題なく抜管可能であった。術直後から内視鏡所見ではほぼ形態は正常化し,その後も問題なく経過した。
  • 乾 隆昭, 内田 真哉, 山道 怜, 椋代 茂之, 出島 健司
    2015 年 66 巻 3 号 p. 220-225
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/25
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    粘表皮癌は頭頸部領域では大小唾液腺に発生することはしばしばあるが,喉頭に発生することは非常にまれである。今回われわれは声門下に発生した喉頭粘表皮癌の1例を経験したので報告する。症例は56歳女性で嗄声を主訴に来院し,腫瘍性病変による顕著な声門下狭窄を認めた。生検した結果,粘表皮癌 (低悪性度) が疑われたため喉頭全摘術を施行した。術後病理検査の結果,粘表皮癌 (低悪性度) と確定診断され,切除断端は陰性であった。術後観察期間は短いが,現時点で再発・転移の所見を認めていない。
  • 大原 賢三, 原渕 保明
    2015 年 66 巻 3 号 p. 226-231
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/25
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    食道異物は近年の内視鏡器具の進歩により,内視鏡下に摘出可能な症例が増加している。渉猟し得た限りで内視鏡下の異物摘出後に遺残が判明し,外切開にて遺残異物を摘出した報告はない。今回われわれは内視鏡下に半分を摘出し得たものの,残存した食道腔外殻付きアマエビ異物に対して頸部外切開を必要とした症例を経験したので報告する。
用語解説
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