日本気管食道科学会会報
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55 巻, 6 号
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原著
  • 田村 悦代, 福田 宏之, 多田隈 卓史, 田畑 泰彦
    2004 年 55 巻 6 号 p. 433-438
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
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    自家脂肪声帯内注入後におこる脂肪の減量を防止,あるいは脂肪再生の可能性について,注入脂肪を細胞増殖因子である塩基性線維芽細胞増殖因子とともに投与し,その効果を検討した。イヌの反回神経麻痺モデルを用いて,声帯内に自家脂肪を線維芽細胞増殖因子とともに注入した例では,注入した脂肪組織内に紡錘形の未熟脂肪細胞がみられた。しかし,自家脂肪のみを注入した例では,同様の所見はなかった。線維芽細胞増殖因子の作用により,注入した脂肪組織内で脂肪細胞の増殖がおこる可能性が推定された。
  • 兵頭 政光, 山形 和彦, 田口 亜紀, 河北 誠二
    2004 年 55 巻 6 号 p. 439-445
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭収縮筋の下部構造をなす輪状咽頭筋は,食道入口部括約筋として機能するとともに嚥下時にも重要な役割を担う。このような複雑な機能に加え,輪状咽頭筋は解剖学的にも特殊であることが報告されている。本研究では,輪状咽頭筋筋線維の微細構造を走査型電子顕微鏡により観察し,特異で緻密な筋機能との関連性について考察を加えた。筋線維走行では,筋線維が筋腹途中で分枝し,他の筋線維と接合する所見が認められた。これにより筋線維の複雑なネットワークを形成し,筋線維全体の活動を統合しているものと推測した。また,筋腹途中で筋腱接合部を呈して停止する筋線維がみられた。これらの所見は個々の筋線維長の不揃いを意味し,食道入口部の効率的な閉鎖に寄与していると考えられた。神経筋接合部の後シナプス構造である神経下装置の形態をみると,輪状咽頭筋では一般の骨格筋と異なって陥凹型の1次シナプスが多数を占め,機能や系統発生の特殊性との関連が示唆された。また,未熟な陥凹型の神経下装置を有する細径の筋線維が認められ,輪状咽頭筋では筋線維の再生が比較的高頻度におこっており,筋の機能維持に関与していると考えられた。
  • 井上 庸夫, 石崎 智子, 徳丸 晶子, 狩野 信和, 大出 茂典, 三須 俊宏, 三輪 正人, 渡邊 建介
    2004 年 55 巻 6 号 p. 446-453
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
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    当科における喉頭癌症例の臨床統計的検討を行った。
    1985年から1997年の間に,当科で治療し5年以上経過観察できた104名を対象とした。年齢は39~82歳(平均61.8歳),男女比は14:1(男性97名,女性7名)であった。原発部位別分類は声門上癌23名(22.1%),声門癌75名(72.1%),声門下癌6名(5.8%)で,病期別分類はI期が52名(50.0%),II期が27名(26.0%),III期が10名(9.6%),IV期が15名(14.4%)であった。
    5年生存率は全体が86.5%,原発部位別では声門上癌60.9%,声門癌94.7%,声門下癌83.3%で,病期別分類はI期が96.2%,II期が92.6%,III期が100%,IV期が33.3%であった。予後不良症例はI期・II期では声門上癌,N分類ではN2・N3症例の比率が高かった。I期・II期の声門上癌,N分類のN2・N3症例に対しては化学療法を積極的に取り入れることが必要であると思われた。
  • 石川 雅子, 小林 正佳, 荻原 仁美, 湯田 厚司, 竹内 万彦, 間島 雄一
    2004 年 55 巻 6 号 p. 454-460
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    1983年から2003年に当科で入院加療を施行した喉頭・気管・気管支異物症例44例について検討した。年齢的には2歳以下の例が57%を占めていた。性別は約2:1で男性例が多く認められた。診断までに要した時間は,39%の例が発症後24時間以内に診断されていたが,一方で最長2カ月半を要した症例も認められた。随伴した臨床症状は咳が最も高頻度で,次いで発熱,喘鳴の順に多く認められた。胸部の単純X線またはCT像上の異常所見は,肺気腫,異物そのもの,無気肺,縦隔偏位の順に多く認められた。異物の存在部位は,75%の例において主気管支であったが,左右どちらかの優位性は認められなかった。異物の種類と存在部位との間に関係は認められなかった。異物の摘出は,91%の例が全身麻酔下で施行されており,86%の例において硬性気管支鏡で摘出されていた。異物の種類を分類すると,ピーナッツが45%と最も多く,すべて5歳以下の症例であった。また,ピーナッツ異物例は5歳以下の全喉頭・気管・気管支異物症例のうち74%を占めていた。今後も乳幼児に対してピーナッツを与えないようにする育児教育の啓蒙が一層必要であると考えられた。
症例報告
  • 小泉 千秋, 伊藤 裕之, 冨田 昌夫, 前田 淳一
    2004 年 55 巻 6 号 p. 461-467
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は,聴神経腫術後に嚥下障害をきたし,嚥下障害に対する機能訓練を行ったが改善せず,当院に転院した20歳の女性である。右外転神経,舌咽神経,迷走神経麻痺を認めた。咽頭食道透視検査で誤嚥が確認された。経鼻的栄養管留置を自己挿入に変更した。頸部筋群は常に過緊張状態,坐位姿勢では,腹部前面筋群の筋緊張低下,背部筋群の過剰な筋緊張による伸展位の固定が認められた。頸部と体幹の筋緊張の改善を目的に,全身の間接的機能訓練を行い,頸部の過緊張は軽減し,姿勢が安定した。直接的機能訓練には,ゼリーを用い,頸部回旋嚥下法により,ゼリーの残留量が最も少なかった咀嚼回数5回で嚥下させた。1回ずつ確実に嚥下することを指導し,1回の嚥下ごとに下咽頭残留物を喀出させて,残留の有無を確認した。体幹や四肢の異常は,嚥下障害に大きな影響を与える。安定した姿勢を獲得するための間接的機能訓練が重要である。十分な間接的機能訓練行った後に,直接的機能訓練を行うべきである。直接的機能訓練の際には,食餌摂取時の姿勢や嚥下の仕方の変化に本人が気づき,変化を自己修正する指導も重要である。
短報
  • 平野 滋, 永原 國彦, 高北 晋一, 森谷 季吉, 北村 守正, 柴山 将之, 夜陣 真司, 藤原 和典
    2004 年 55 巻 6 号 p. 468-472
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
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    ラリンゴマイクロサージャリーは音声外科の発展に大きく寄与し,これまで多くのテクニックや器具が開発されてきたが,まず良好な術野を得ることが本手術の前提となる。これまで多くの種類の喉頭鏡が開発されてきているが,声門のうち最も視野を得にくい場所は前交連である。Zeitels型喉頭鏡は,この前方の視野を極力得やすくするために開発された。Zeitels型の最大の特徴は先端部が三角形をしていることで,声門の三角形に合致するため前交連もよく見えることになる。
    当科ではこれまで15例に対しZeitels型喉頭鏡を使用した。声門癌9例,声帯白斑症1例,ポリープ様声帯3例,声帯ポリープ1例,肉芽腫1例で,いずれにおいても良好な術野が得られ,特に前交連の描出は従来のStorz型よりも良好であった。歯牙損傷や味覚低下などの合併症は認められていない。
    一方,この喉頭鏡が仮声帯を外側に押し広げて声門の良好な視野を得るようにデザインされているので,喉頭の上部構造,すなわち喉頭室から仮声帯の操作には限界があった。したがって喉頭癌の手術に際しては,Storz型との併用が望ましいと考えられた。
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