日本気管食道科学会会報
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65 巻, 4 号
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原著
  • 馬場 大輔, 松本 伸晴, 富永 健裕, 佐々木 俊一
    2014 年 65 巻 4 号 p. 297-304
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
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    喉頭蓋膿瘍は急性喉頭蓋炎が重篤化した病態と報告されており,気道確保と膿瘍のドレナージの必要性について検討しなければならない。今回われわれは,喉頭蓋膿瘍の8例についてドレナージの必要性と,同時期に入院加療を行った急性喉頭蓋炎19例と比較して,診断と気管切開の検討を行った。喉頭ファイバーで喉頭蓋の左右非対称,黄色調変化,緊満感に加えて表面の不整形を認める場合は,喉頭蓋膿瘍を疑い頸部造影CTを追加して診断する必要がある。気管切開を行う指標としては,呼吸困難感やStridorなど呼吸症状を認める,喉頭蓋腫脹が高度で披裂部腫脹がある,症状出現から24時間以内に呼吸困難が生じている,喉頭蓋膿瘍で特にKatori分類でB群を伴っているものがあげられる。また,喉頭蓋膿瘍で気管切開術を行う症例では重症化予防・入院日数軽減のため,ドレナージの追加を検討する必要がある。
  • 小川 真, 細川 清人, 山本 佳史, 猪原 秀典
    2014 年 65 巻 4 号 p. 305-313
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル 認証あり
    気管挿管・気管切開の後に発症した成人喉頭気管狭窄症例7例の臨床経過の検討を行った。全7例が緊急の気管挿管を,6例が気管切開術を,1例が気管形成術を受けていた。初診時の主訴は4例で呼吸困難感,他の2例で他の咽喉頭症状であり,初診後に呼吸困難感が出現した。狭窄の位置は,4例で輪状軟骨レベル,3例で第1~3気管輪,他の1例ずつで第3~5気管輪,あるいはより下方の頸部気管であった。5例において両側声帯正中位固定,うち2例において声門上部固定が認められたが,すべて自然軽快した。7例全例にanterior cricoid splitおよびtrough形成術が行われ,ステントとして4例でTチューブ,3例でカフなしカニューレが使用された。気管孔閉鎖には,2例で耳介複合皮弁,3例でhinge flapが用いられ,他の2例では単純縫合であり,頸部気管下方の狭窄の1例のみ再狭窄を生じた。総じて,輪状軟骨およびその直下の気管の狭窄にはanterior cricoid splitおよびtrough形成術は有効であったが,狭窄が輪状軟骨およびその直下の気管に限局する場合は,Tチューブは必ずしも必要でないことが示唆された。
  • 川田 研郎, 河野 辰幸, 中島 康晃, 松井 俊大, 奥田 将史, 小郷 泰一, 藤原 尚志, 齋藤 賢将, 藤原 直人, 了徳寺 大郎, ...
    2014 年 65 巻 4 号 p. 314-321
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
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    【目的】食道早期癌に対するアルゴンプラズマ焼灼-上皮下焼灼法 (APC-SEA) の治療成績を検討した。【方法】2001年10月より2010年4月まで食道早期癌でAPC-SEA治療を行った70例87病変 (男性63,女性7,平均年齢71歳,観察期間中央値102カ月) を対象とした。【結果】264回中165回 (62.5%) は外来治療で行った。穿孔,出血はなく,周在性の広い病変でEMRと併用した12例に狭窄を認めた。Overallの5年生存率は81.6%で,原病死はなく,他癌死12例,他病死8例であった。また後発の異時性食道表在癌の内視鏡切除を14例に行った。最終的に,7例に局所制御不良または転移再発が生じ,3例に根治手術,3例にCRT,1例にリンパ節切除+陽子線治療を行ったが,1例がCRT中に肝不全となった以外,救済しえた。APC治療で制御しえる条件は大きさ2 cm以下,深達度がT1a-EP/LPMの病変であった。【結語】食道早期癌へのAPC-SEA治療は簡便かつ安全に施行でき,長期予後も良好であった。内視鏡切除が簡単に選択できない,ハイリスク症例への治療選択肢として有用である。
症例
  • 赤澤 仁司, 小川 真, 曺 弘規, 細川 清人, 中原 晋, 堀井 新, 猪原 秀典
    2014 年 65 巻 4 号 p. 322-329
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル 認証あり
    混合性喉頭麻痺とは,声帯麻痺に他の脳神経麻痺を合併したものであり,多彩な臨床症状を呈する。今回われわれは,頭部外傷の後,高度嚥下障害を発症した両側の混合性喉頭麻痺症例に対して手術的加療を行い,良好な結果を得たので報告する。症例は78歳男性。木から転落して頭部を打撲し,救急救命専門施設に搬送された。頭部CT検査において,くも膜下出血および右側頸静脈孔・舌下神経管周囲に骨折が認められた。全身状態および意識レベルの改善の後,失声・嚥下障害が判明した。嚥下障害の治療のため当科に紹介受診された。内視鏡検査下に,右声帯は傍正中位に,左声帯は中間位に完全固定していた。嚥下造影検査において,バリウム嚥下を試みるも嚥下反射は全く生じなかった。嚥下改善目的に両側輪状咽頭筋切断術・喉頭挙上術・気管喉頭分離術・喉頭閉鎖術を施行した。術後,肉の塊を除く多様な形態の食物が摂食可能となった。また後日プロテーゼを挿入して言語コミュニケーションが可能となった。以上より,複数の脳神経損傷に起因する咽喉頭の機能障害であっても,種々の機能外科的手術を適切に組み合わせることにより生活の質の改善が期待できると考えられた。
  • 石永 一, 中村 哲, 北野 雅子, 坂井田 寛, 大津 和弥, 竹内 万彦
    2014 年 65 巻 4 号 p. 330-333
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル 認証あり
    6例の重症心身障害児に対する誤嚥防止手術を行った結果を報告する。喉頭全摘は2例に施行され,喉頭気管分離術,声門閉鎖術も2例施行された。1例も術後瘻孔形成は認めなかった。誤嚥性肺炎は全例で制御できた。技術的には喉頭全摘よりも喉頭気管分離術や声門閉鎖術の方が総合的には容易であった。6例中2例が死亡され,うち1例は術後4年経過して成人呼吸窮迫症候群で亡くなっており,もう1例は突然死であった。重症心身障害児のようなハイリスク患者においては最小限の手術侵襲と高い成功率の手術が求められる。そのため,今回の検討から,われわれはこのような症例に対しては喉頭気管分離術か声門閉鎖術を勧める。
  • 伊藤 恵子, 湯本 英二, 鮫島 靖浩
    2014 年 65 巻 4 号 p. 334-340
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル 認証あり
    急性期病院にて気管切開を施行され,リハビリ目的で当院へ転院後カニューレ交換が困難となった3症例について報告する。症例1 : 50歳代男性,外傷性くも膜下出血を発症し経皮的気管切開を施行され,当院へ転院した後カニューレ抜去困難となった。内視鏡では気管壁より生じた肉芽がカニューレの側孔からカニューレ内腔に突出していた。局所麻酔下に肉芽を可及的に切除した。症例2 : 20歳代男性,外傷性脳挫傷を発症し気管切開術を施行され,当院に転院した後カニューレ抜去困難となった。局所麻酔下に肉芽を可及的に切除し,同時に気管孔を閉鎖した。症例3 : 80歳代女性,肺炎を発症し気管切開術を施行され,当院へ転院した後カニューレ挿入困難となった。全身麻酔下に気管孔全周を皮膚と縫合した。肉芽発生予防のためには,気管開窓術の施行,カニューレ挿入期間の短縮が必要であると考えられた。またカニューレ交換の際には,気管孔周辺をよく観察することが重要であった。3症例とも矢状断CTにて気管孔直上の気管前壁が肥厚している所見を認めた。CTは気管孔周辺の状態,ならびにカニューレの挿入状態を評価するのに有用であった。
  • 湯田 孝之, 多田 靖宏, 谷 亜希子, 鈴木 政博, 松塚 崇, 大森 孝一
    2014 年 65 巻 4 号 p. 341-349
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル 認証あり
    気道管理に難渋し,長期間の入院管理を要した症例を経験したため報告する。症例は63歳男性。当院消化管外科にて胸部上部食道癌T3N1M0および下咽頭癌輪状後部型T1N0M0の診断で,右開胸開腹食道全摘術,咽頭喉頭摘出術,胃管再建術を施行された。術後に気管内腔の色調不良,痂皮の付着が生じ当科へ紹介となった。永久気管孔より全周性に気管壊死・狭窄を認め,保存的加療の方針で気道管理目的に当科へ転科した。既存のカニューレでは病変をカバーすることが難しく,特注品を用いるなど試行錯誤した。最終的にGBアジャストフィット®で気道確保されたが,喀痰による内腔閉塞のため1日2回の抜去洗浄が必須であった。気管内腔の上皮化を認めた後も狭窄傾向は改善せず,術後9カ月時に当院呼吸器内科と合同で気管内にデューモンチューブ®留置を施行した。ステント留置後は,1日1回の処置で内腔保持が可能となり,術後316日目に自宅退院し,外来通院中である。
  • 小野 麻友, 糟谷 憲邦, 加藤 智久, 清水 猛史
    2014 年 65 巻 4 号 p. 350-355
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは術前診断で側頸嚢胞を疑ったが,手術所見や病理組織検査の結果,異所性胸腺組織を合併した第4咽頭嚢由来の副甲状腺嚢胞例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
用語解説
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