脳性麻痺者の中には麻痺性構音障害を有するために, 他者への意思伝達に困難を生じる場合がある. このような場合には, コミュニケーションエイドを操作して人工的発話機能を用いたり, ワードプロセッサ等を用いて文書化することで意思伝達が可能となる. コミュニケーションエイドやワードプロセッサにはキーボードが装備されており, 実用手を用い「キーを押すこと (キーストローク操作)」により発話や文書作成を行う. 本研究では, ワードプロセッサを用いた文書作成時に要求されるキーストローク操作能力の評価法を作成し, 脳性麻痺者のキーボード操作特性について把握した. なお, この評価法は7つの評価項目で構成される. 被験者は, 脳性麻痺者17名である. その結果, 以下のことが把握できた. (1) 脳性麻痺者の被験者においては,「文字入力位置の変更のためのカーソル・キーの連続ストローク操作」が,「文字入力のための文字キーや記号キーのストローク操作」および「文書編集のための機能の選択・実行のためのキーストローク操作」に比べて低い機能評価指数を示した. さらに, 障害等級1級群の被験者は2級群よりも低い機能評価指数を示した. (2) 各評価項目における「平均移動距離と1動作セットあたりの作業時間値」との関係については, 平均移動距離が37.3cmから20.3cmの範囲では作業時間値も直線的に減少する傾向が見られた. しかし, 平均移動距離が4.6cmあるいは2.2cmに短縮した場合には単位移動距離に対する作業時間値が延長する傾向が見られた. 以上の結果より, 脳性麻痺者の場合にはキーボード操作において指の移動距離が短くなると, 単位距離あたりの作業時間値が延長する傾向があると推測される. よって, 脳性麻痺者の移動動作特性を考慮したキー配列の際には, 移動距離の短い隣接するキーのストローク操作は可能な限り避けるような考慮が必要であると考えられる.
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