人間工学
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44 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 板垣 真悟, 鴻巣 努
    2008 年 44 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ソフトウェア開発プロジェクトにおいて, 人間的要因に起因する問題は数多く存在する. しかし, プロジェクト進捗管理手法として現在広く用いられているEVMでは, コストとスケジュールの観点でしかプロジェクト評価を行えず, 人間的側面が反映されていない. そこで本研究では, EVMへ人的資源の能力を金銭的価値に変換した指標であるHV (Human Value) とHEV (Human Earned Value) を導入したH-EVM (Human resource based Eamed Value Management) を提案した. HVとHEVの測定には, 総合的なITスキルディクショナリを定義しているITスキル標準と, ソフトウェアメトリクスを適用した. H-EVMをプロジェクトに導入することにより, 人間的側面からもプロジェクトの進捗や進捗に関わるリスクを把握し, 的確な監視コントロールを行うことが可能となる. ソフトウェア開発プロジェクトに本手法を適用した結果, コスト超過や納期遅延等のリスクが顕在化する前に予見することができたため, 有効な管理手法となることが示された.
  • 加藤 和夫, 志子田 有光, 望月 菜穂子, 石川 敦雄, 小林 宏一郎, 小林 哲生
    2008 年 44 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, 視覚情報の差異に着目し, これらが心的な活動にどのような影響を与え, さらに大脳神経活動にどのような変化として発現するのかを調べることを目的に検討を行った. 実験では, 取り扱いが容易であり, 単純で基本的な対象と考えられることからロウソクの火 (炎) に注目し, その視覚的な情報の特徴である炎の動きと色の有無, および実物と画像の差異について大脳神経活動との関連を調べるため, 12名の被験者を対象に自発脳波律動の測定を行った. また, SD法に基づく主観評価も実施した. その結果, 実物と画像間にはα波,β波の減衰, また色の有無についてはθ波の有意な減衰が観測され, これらが視覚刺激間の差異に固有の心的活動を反映すると推察された. さらに, 本研究で用いた自発脳波の周波数帯域のパワー差に基づいた解析が, 情動など主観的な側面の大きな大脳神経活動を解明して行くうえで有効であることが示唆された.
  • 仰臥位から端座位への起き上がり動作
    栗原 陽介, 小山 兼司, 渡辺 嘉二郎, 田中 博
    2008 年 44 巻 2 号 p. 76-81
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    140万人の脳血管疾患による麻痺を持つ患者が日本にいる. 麻痺を持つ患者が寝たきりを防ぐためには, 自立した生活を送る必要がある. そのためには, 立位平衡や歩行能力の獲得が重要であると言われ, 多くの研究がなされている. しかし, ベッドからの起き上がり動作に注目した研究はなされていない. この動作は, 麻痺患者が立ち上がるために必ず必要な動作である. 本論文では, 患者の起き上がり動作に着目し, ジャイロセンサを用い在宅で容易にFIM値推定を行う.
  • 池田 知純, 清水 豊, 坂本 和義, 塩田 泰仁
    2008 年 44 巻 2 号 p. 82-91
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ダイナミックタッチによって得られる知覚情報は, 物体の慣性モーメントと関係がある. 本論文の目的は, 見かけの慣性モーメントを変化させることができるジャイロスコープを用いた力覚生成装置の知覚特性を評価することである. 力覚生成装置によって創出される仮想感を, 心理物理学的手法を用いて主観的に評価し, さらに筋運動学的手法を用いて定量的に評価する. また, 現実の棒における振り具合知覚特性について同様な手法を用いて評価を行ない, 力覚生成装置と現実の棒の知覚特性の相違を比較することで, 力覚生成装置の人間特性を客観的に評価する. 知覚実験より, ジャイロスコープによって生成される掌背屈方向の外力が力覚生成装置の知覚特性に影響を及ぼすことを示す.
  • ページ構成要素の機能と位置に着目した検討
    羽渕 由子, 竹内 晴彦, 北島 宗雄
    2008 年 44 巻 2 号 p. 92-99
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, ウェブページ評価時の利用者の視行動を, ウェブページスキーマの観点から明らかにすることを目的として実施された. ウェブページスキーマとは, あるコンテクストにおいて“どの情報を利用すると有益か”というウェブページ上での“情報の特徴に関する知識 (機能スキーマ)”と“有益と思われる情報はここにあるはずだ”というウェブページ上の“情報の位置に関する知識 (位置スキーマ)”であり, 従来の研究では考慮されてこなかった. 高頻度利用者8名, 低頻度利用者8名が, 3サイト (ニュース, ポータル, 企業), 各6ページ (コンテンツ, ナビゲーション, 広告の各機能を左, 中央, 右の各位置に配置) の利用性評価を行い, その間の視行動を記録した. 総注視点数を領域 (機能, 位置) で比較した結果, 利用経験にかかわらず, 利用目的やコンテクストが明確なサイトでは機能に基づいて, そうでないサイトでは位置に基づいてページを評価していることが示された.
  • 大倉 典子, 張替 俊明, 土屋 文人
    2008 年 44 巻 2 号 p. 100-108
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    最近, 医療事故やその予備軍 (もう少しで医療事故になりそうだったヒヤリハット事例) が世界中で数多く報告されている. その多数が医薬品に関する事例であることから,「医薬品の使用の安全」が注目されるようになってきた. 複室バッグ輸液製剤に対しても, 隔壁の開通忘れに起因する死亡事故が起きており, これを防止する目的で, 隔壁を開通しないと点滴されない構造の新製品が開発されることになった. そこで我々は, この新製品について, 隔壁の開通法とその使用法を表示するための分かりやすい表示デザインについてユーザビリティ検討実験を行った. まず隔壁を開通するための加圧方法についての実験では, 従来行われてきた平押し加圧よりも, 絞り加圧の方が, 場所を選ばず, 女性にも力がかけやすい方法であることを確認した. さらに, 絞り加圧に導く, 排出口の隔壁の存在に気づかせる, という二つの目的で, 医療従事者を対象とする実験を実施し, バッグの表示デザインを決定した.
  • 姿勢に影響を及ぼす要因
    窪田 聡, 山本 澄子
    2008 年 44 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    介護用ベッドは背部の床板 (以下ボトムとする) に傾斜をつけ, 臥位から座位の状態にする機能がある. しかしこの機能を用いると身体がずり落ちた状態での座位姿勢となってしまい, 腰部腹部を圧迫させることがある. 本研究では背上げ姿勢に着目し, 身体負担の少ない背上げ条件を明らかにすることを目的とした. 計測には三次元動作分析装置を使用し, 運動学的な姿勢データを膝上げの有無やベッドに対する身体位置, マットレスの硬さ, ベッドの種類それぞれについて比較した. その結果いくつかの必要条件が示された. すなわち, ベッドの背部ボトムは背部全体を支持する必要がある, 座面部は体幹を支えるために坐骨結節部を支持する必要がある, 身体位置はヘッドボードに近い状態から背上げされることが望ましい, などである. また膝上げを行うと骨盤が後傾し, 腰腹部は圧迫されることが示された.
  • キーストローク操作に要する移動動作からの検討
    西口 宏美
    2008 年 44 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    脳性麻痺者の中には麻痺性構音障害を有するために, 他者への意思伝達に困難を生じる場合がある. このような場合には, コミュニケーションエイドを操作して人工的発話機能を用いたり, ワードプロセッサ等を用いて文書化することで意思伝達が可能となる. コミュニケーションエイドやワードプロセッサにはキーボードが装備されており, 実用手を用い「キーを押すこと (キーストローク操作)」により発話や文書作成を行う. 本研究では, ワードプロセッサを用いた文書作成時に要求されるキーストローク操作能力の評価法を作成し, 脳性麻痺者のキーボード操作特性について把握した. なお, この評価法は7つの評価項目で構成される. 被験者は, 脳性麻痺者17名である. その結果, 以下のことが把握できた. (1) 脳性麻痺者の被験者においては,「文字入力位置の変更のためのカーソル・キーの連続ストローク操作」が,「文字入力のための文字キーや記号キーのストローク操作」および「文書編集のための機能の選択・実行のためのキーストローク操作」に比べて低い機能評価指数を示した. さらに, 障害等級1級群の被験者は2級群よりも低い機能評価指数を示した. (2) 各評価項目における「平均移動距離と1動作セットあたりの作業時間値」との関係については, 平均移動距離が37.3cmから20.3cmの範囲では作業時間値も直線的に減少する傾向が見られた. しかし, 平均移動距離が4.6cmあるいは2.2cmに短縮した場合には単位移動距離に対する作業時間値が延長する傾向が見られた. 以上の結果より, 脳性麻痺者の場合にはキーボード操作において指の移動距離が短くなると, 単位距離あたりの作業時間値が延長する傾向があると推測される. よって, 脳性麻痺者の移動動作特性を考慮したキー配列の際には, 移動距離の短い隣接するキーのストローク操作は可能な限り避けるような考慮が必要であると考えられる.
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