長期療養する生徒や不登校生徒の就学支援策のひとつとして,タブレット端末を用いたテレプレゼンスロボットが注目されている.本研究では,中高生を対象に実際の学校教育場面でテレプレゼンスロボットを用いて授業参加した際の頭部・頸部角度および視線情報(視線角度・注視割合・視距離)を教育区分別に収集した.健常中学生5名およびAYA世代がんで入院中の高校生1名の計6名に,座学授業,休憩等,演習系授業にテレプレゼンスロボットを使って参加してもらい,その際の頭部・頸部角度および視線情報を収集した.演習系授業(-4.7°)および休憩等(-12.3°)に比べ,座学系授業時(-20.4°)は頭部屈曲角度は有意に深くなった(p<0.01,p=0.06).座学系講義の画面注視割合は56%であったのに対し,演習系講義では89%,休憩等では88%と有意に高かった(p=0.01,p=0.02).それらテレプレゼンスロボット利用時の特徴を基に,学校教育場面において今後検討すべき人間工学事項について,主に動作・姿勢・視線の観点から課題を整理した.
視覚障害者の鉄道利用者は単独で移動する際に様々な困難や危険に遭遇する.本研究では,重大な危険性がある駅ホームへの転落を軽減するためのシステムについて述べる.本方式では,通常の白杖の先端にRFIDリーダを装着し,RFIDリーダとスマートフォンのアラーム音を連動させ,白杖先端部がRFIDタグの取り付けてあるホーム端に近づくとRFIDデバイスが作動するシステムを提案する.本システムを試行した結果,RFIDタグから横方向に150 mmの距離,RFIDタグから100 mmの高さ,駅ホームに対する白杖先端部の振り速度が1.5 m/sまでであれば,いずれの使用状況においても白杖先端部に取り付けられたRFIDリーダの動作が確認された.しかし,環境音がない場合,検出率は低下した.アンケートでは,91.7%の人がスマート白杖の重量が増加したことを指摘し,72.8%の人が本システム搭載のスマート白杖の購入を希望していた.この結果から,本システムが視覚障害者の駅ホーム転落防止システムとして社会実装の可能性があることを示した.