本論文では, 重心動揺の基本的測定量以外に再構成状態空間へのアトラクタ, フラクタル次元, 及び第1リアプノフ指数により重心動揺におけるカオス的特徴について調べた. 実験要因として視覚情報の提示 (開眼, 閉眼) 及び測定姿勢の状態 (両足直立姿勢( SBF), 左足直立姿勢 (SLF), 右足直立姿勢 (SRF)) の2要因を取り上げた. 第1リアプノブ指数に関してはSBF状態よりもSRF, SLF状態の方が大きい傾向が認められた. すなわち, SLF状態, SRF状態における姿勢制御システムはよりカオス的であることが示された. また, SLF状態及びSRF状態に関しては, 第1リアプノフ指数は開眼状態よりも閉眼状態の方が小さくなる傾向が認められた. 閉眼状態のフラクタル次元は開眼状態よりも小さい傾向が認められた. 以上のことから, SBF状態よりもSLF状態, SRF状態の姿勢制御システムの方がよりカオス性が強くなり, 重心の不安定性に繋がることが示唆された. また, 視覚情報の有無は重心動揺におけるカオス性に対して影響を及ぼすことが明らかになった.
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