本研究は視覚と手の共応動作系に困難性を有する繰り返し作業の各種速度条件をPTS法に基づいて算定し, これら速度条件下の生体負担について生理的・心理的機能変動ならびに human performance の観点から比較検討した. 被験者は6名の成人男子で, 対象作業として配置・配色を考慮したビーズ埋め込み作業を課した. 作業条件はコンベヤーの基準速度をMTM法, WF法により算定し, それぞれ120分間の作業を課した. また, MTM速度に15%の余裕率を加えた速度で138分, WF速度で96分の作業を課した. さらに対照作業として作業者に自由な速度で作業を120分間遂行させた. その結果,
1) WF速度を用いての120分ならびに96分作業は, 他に比較して生理機能の低下の度合が大きく, かつ自覚症状の訴えも高率を示し作業成績は低かった.
2) 作業者に自由速度で120分間の作業を課した場合では, 生理機能の著明な低下は認められなかった. しかし, MTM速度を用いての120分作業に比べて自覚症状の訴え率, 副次行動の出現率は高く, かつ作業成績は低かった.
3) MTM速度を用いての120分負荷作業は, 自覚症状の訴え率, 副次行動, 不良の出現率が他のすべての条件に比較して最も低かった. さらに完成品量では, MTM×1.15倍速度下における138分負荷作業とともに最も多かった.
抄録全体を表示