日本では高齢化が進み,それに伴って高齢者の転倒が増加している.住宅内においては床材が大きな転倒要因のひとつであると考えられるため,本研究では日本の住宅で多く用いられている床材(フローリング,カーペット,畳)を対象とし,床材の違いが高齢者の歩行動作に与える影響について検討した.被験者は自立歩行可能な高齢者男性18名(66~78歳)とし,各床材条件における裸足での自由速度歩行について三次元動作解析システムを用いて測定した.ストライドは畳がフローリングより有意に大きく,フットクリアランスはカーペットおよび畳がフローリングより有意に大きかった.また初期接地股関節角度・足底角度は畳がフローリングおよびカーペットより有意に大きく,股関節・膝関節・足底角度変化量はカーペットおよび畳がフローリングより有意に大きかった.ストライドおよびフットクリアランスの増加および下肢関節の運動範囲の拡大から畳ではフローリングおよびカーペットと比較して,高齢者の特徴であるすり足・小股歩行の傾向が弱まっていると考えられる.
筆者らは,限られた学習時間で脆弱な口腔内のブラッシング介助技術の習得を可能にする新たな教育機材が必要であると考え,脆弱な口腔環境を再現しつつコンパクトで自習が可能な歯磨き練習モジュール(tooth brushing practice(TBP) module:以下TBP)を開発した.12名の看護学生を被験者として,TBPと,歯科衛生士養成教育機関等で用いられている既存の高性能実習用模型の比較実験を行い有用性を検証した.実験では磨き残し(PCRスコア),ブラッシング所要時間およびブラッシング圧の適正値超過頻度を観察した.TBPの使用感についてはVAS(Visual Analogue Scale)で評価した.その結果,PCRスコアとブラッシング圧の適正値超過頻度は,TBPの方が有意に低かった.使用感については,TBPが自習しやすさの項目で評価が有意に高かった.以上から,新たに開発したTBPは既存の高性能実習用模型と同程度の性能を有し,自己学習の教育機材としての有用性も示唆されたものと考える.
This study aimed to identify the motion sequences and time-flow of roll-overs during sleep in women to develop a self-helped roll-over maneuver for elderly patients. Shifts from deeper sleep stages to lighter stages leading to arousal occur at roll-over-onset. Quick re-falling-asleep after completion may aid peaceful sleep continuation. Motion sequences of six women aged 43-65 years were examined at a sleep laboratory using polysomnography and infrared video. Relationships among phase I (before roll-over onset), II (roll-over movements), and III (roll-over end to re-falling-asleep onset) were determined. Mean total sleep time was 6.72±0.77 h, with over 80% sleep efficiency. Among 12 patterns examined, only supine-to-left and supine-to-right lateral roll-overs were classified: type A, sliding waist with pause (n=11, sleep); B, sliding waist without pause (n=56, sleep and arousal); and C, without sliding waist or pause (n=1, arousal). Time spent in phase I and III in type A were correlated (r=0.78, p=0.005), and were the shortest among the types. Discriminant analysis for type A (n=11) and B (n=20, sleep) showed 80.6% correct classification. In conclusion, type A roll-overs, involving efficient motion with quick re-falling-asleep, may be a useful foundation to develop self-helped roll-over maneuvers.
本研究の目的は,ウェットティッシュの取り出しやすさが,当該製品の印象や製品選択に及ぼす影響を検証することであった.実験参加者は,ウェットティッシュの取り出し性の高い製品および低い製品による清掃課題を行った.清掃の後,各製品の取り出しやすさ,拭き取りやすさ,使用の楽しさ等について評価した.また,もし再度同一の清掃課題をするならば,どちらの製品を使用したいと思うかに関しても回答した.実験の結果,取り出し性の低い製品に比べ,高い製品の方が,取り出し性が高く評価されるだけではなく,使用の楽しさも高く評価されることが示された.さらに,大半の参加者は,再度同一の清掃課題を実施する状況において,取り出し性の高い製品を使用することを選んだ.なお,両製品間の取り出し性の差を強く認識した参加者ほど,取り出し性の低い製品に比べて,取り出し性の高い製品の拭き取り性を高く評価した.これらの結果は,ウェットティッシュの取り出し性の上昇という触運動的な知覚的流暢性の高まりを,製品評価に帰属させたことに由来すると考えられる.