本研究では,作業手順の学習を対象ケースとして,マニュアルのメディア形態がその内容の学習に及ぼす影響について,実験を通して検討した.媒体の違いとして紙と電子端末に,また,コンテンツの違いとして静止画と動画に焦点を当て,これらのメディア形態の違いが,作業手順の学習に及ぼす影響を,認知・心理・生理の各観点から考察した.第一に,コンテンツを同一とし,媒体が紙と電子端末とで異なるとき,マニュアル学習直後の作業パフォーマンスには著しい影響を生じないものの,一定期間をおいた後の作業パフォーマンスは,紙を用いたときの方が高くなることが実験結果から示唆された.この要因として,ページ遷移に伴う操作の簡便さの違いと視覚的,触覚的刺激の程度の違いを挙げ,その機序を実験結果に基づいて構造的に示した.第二に,媒体を同一(電子端末)とし,コンテンツが静止画と動画とで異なるとき,直後の作業パフォーマンスに変化が生じることが分かった.特に,動画が用いられたとき,参照時及びその直後の作業時に前頭葉の広い範囲で賦活が見られ,主観評価からもより高い集中の自覚が認められた.このことから,動画のコンテンツには短時間での学習効果が期待できることを示唆した.最後に,以上の考察に基づく応用的提案として,各メディア形態の特性を活かした現場マニュアルへの適用に関する見解を示した.
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