人間工学
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33 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 加藤 麻樹, 武岡 元, 石田 敏郎
    1997 年 33 巻 6 号 p. 343-347
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    VDT作業で用いられるOAチェアの体圧分布の変動を面圧力測定シートにより計測する. この体圧分布を大腿部, 臀部, 背部に分割し, それぞれの圧力の時系列的変動をパワースペクトル化する. そしてパワースペクトルと周波数との間の回帰直線の傾きを, 快適性の一指標とされている1/fゆらぎ特性と比較することで, 評価尺度とする. 被験者は8名で, ワープロ入力作業を45分間行い, 作業終了後椅子の主観的評価を行った. 体圧分布のサンプリング間隔は1秒間であった. 結果は以下の通りである. 体圧分布は時系列的にランダムなパターンの変動を示しており, 静的な評価指標の信頼性を損なうことがわかった. 圧力変動のパワースペクトルはいずれの場合も周波数との間に回帰直線を得ることができ, 1/fゆらぎ特性と比較することが可能となった. 回帰直線の傾きと主観評価との間の相関係数は, 大腿部, 臀部については低かったが, 背部については極めて高い相関が得られた.
  • 鈴木 浩明
    1997 年 33 巻 6 号 p. 349-355
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    鉄道車両の乗り心地評価に有効な振動特性を特定するために, 実車を用いて乗り心地試験を実施した. 被験者は男性22名であった. 被験者に課せられた課題は試験区間の振動乗り心地を5秒ごとに4段階の尺度で評価することであった. 振動加速度および定常加速度が物理量として測定された. 試験の結果, これら物理量と被験者評定値との相関はいずれも0.75~0.80程度であった. これに対し, 人間の知覚判断は当該刺激の絶対値のみでは定まらず, ほかの刺激強度などの影響を受ける相対的な評価になりがちであるという知覚現象 (係留効果) を考慮して, 新しい評価指標を提案した. 時間的に1ブロック遡った区間の振動の影響を加味した新しい指標と被験者評定値との相関は0.90という高い値を示した. この指標はまた, 直線と曲線区間を結ぶ緩和曲線の乗り心地評価にも有効であることが確認された.
  • 趙 巖, 野呂 影勇, 岩崎 常人
    1997 年 33 巻 6 号 p. 357-362
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究は, 二眼式液晶シャッターを用いた時分割方式によって再生された二眼式立体 (3D) 映像を負荷した場合と, 平面 (2D) 映像を負荷した場合での, 負荷前後の瞳孔反応への影響を調べた. このとき, 鑑賞時に与えられた視距離 (2mと4m) と室内の照度の設定条件により, 縮瞳量に変化が認められるか否かを検討した. 瞳孔面積の変化は, 赤外線オプトメータに付帯したピューピロアナライザーで測定した. その結果, 以下の事実がわかり, それらの結果から二眼式3D映像鑑賞にあたり, より良い鑑賞の仕方 (距離や照明のあり方) を人間工学的に考察した.
    (1) 2D映像, 二眼式3D映像ともに負荷前より負荷後に縮瞳量が増した.
    (2) 2D映像, 二眼式3D映像のいずれの負荷においても, 縮瞳量の変化に対して, 室内照明の有・無による影響が認められた. 特に, 二眼式3D映像負荷時の照明の有無は, 瞳孔機能に大きな影響があることがわかった.
    (3) 二眼式3D映像を観察するにあたっては, 瞳孔機能の結果だけを考えた場合, 室内照明をつけたほうが良いと考えられた.
  • 澤田 東一, 小口 泰平
    1997 年 33 巻 6 号 p. 363-370
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究は, 先行車両との車間距離を一定に保つ運転者が車間距離の違いによってどのような制御動作を行うかを, ドライビングシミュレータを用いて実験的に検討したものである. その結果, 以下の事柄が明らかになった. 車間距離を制御する運転者の動作は, 車間距離の違いによって異なり, 車間距離が極めて短い10m程度の場合は緊張を強いられてアクセルペダルを頻繁に操作し, 20m付近では緊張の緩和が始まり, 30m以上ではアクセルペダルを緩慢に操作する動作となる. 運転者は, 車間距離が短いと微分動作が高まり, 車間距離が長いと比例動作が高まる. 相対速度の知覚のしやすさが車間距離の制御動作に関わりをもち, この実験の範囲において, 制御しやすい車間距離は20m付近に存在する.
  • 江川 義之
    1997 年 33 巻 6 号 p. 371-378
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本論文は, 聴覚特性が断続騒音の大きさの評価に与える影響を調べることを目的とした. 最初に前向性マスキングレベルの計測を行った. その結果, 高齢者は前向性マスキングレベルの高い傾向が認められた. 次に, 停止時間の異なる断続騒音を用いて前向性マスキングレベルが断続騒音の大きさに与える影響を調べた. その結果, 前向性マスキングレベルは断続騒音の大きさの評価に影響を与えていることがわかった. さらに, 持続時間の異なる断続騒音を用いて聴覚応答レベルが騒音の大きさに与える影響を調べた. その結果, 聴覚応答レベルが低い被験者は, 等価騒音レベルより断続騒音を低く評価していた. 最後は, 等しい等価騒音レベルの断続騒音を用いて実験を行った. 聴覚応答レベルと前向性マスキングレベルの高い被験者は等価騒音レベルより断続騒音を大きく評価していた.
  • 倉井 賢一, 飯田 健夫
    1997 年 33 巻 6 号 p. 379-384
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    物体を把持するとき, その物体の視覚的大きさや材質感から重さを推定し, それに適した力を手や指に伝える. しかし, 2つの物体の材質と重量が同じとき, 大きな体積の物体は小さな体積の物体より軽いと判断される錯覚現象 (Size-Weight Illusion) がある. 本研究では, 視覚情報を遮断し, 触覚情報のみによる仮想物体を用い, 上記の錯覚現象から, 把持条件と重さ判断の関係を明らかにした. 仮想物体をイメージさせる把持条件として, (1) 把持する2本の指の間隔, (2) 把持圧の2条件を設定した. その結果, 仮想物体の重さ感を常に等しくするためには, 把持する2本の指の間隔の2乗, あるいは把持圧に比例して加重する傾向のあること, すなわち, 同じ重さならば把持幅, 把持圧の増加とともに軽く感じられることが明らかとなった. 把持条件のみによって得られたこの特性は, 仮想空間における物体のハンドリングにおいて考慮すべき要因であることが言及された.
  • 武田 正治
    1997 年 33 巻 6 号 p. 385-392
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    CFF値の低下は, 疲労研究の分野においては肉体・精神疲労の発現や大脳中枢の覚醒レベルの低下と因果関係があるものとされてきた. しかし, 近年一部の研究者から再度, CFF値の低下は, 網膜や視神経のような視交叉前における部位の機能低下を多く反映するのではないかとの, 疑問が提示された. この点を再検討するために8名の被験者を用い, 一位加算 (クレペリン) 作業をCRT上, 紙面上, 音声の3負荷方法, 無作業を加え, 4条件で, それぞれ100分間, 10分ごとにCFF測定 (修正調整法) を行った. CFF値の低下率は, CRT上: -10.4%/10回目, 紙面上: -7.0%/9回目, 音声: -12.4%/10回目, 無作業-3.1%/11回目などの結果を得た. 音声によるクレペリン作業はCRT上や紙面上に比べて, 記憶中枢を使用した結果と考えられる. また, 無作業時の負荷とは拘束感と退屈感による大脳の覚醒レベルの低下と考えられる. これらの結果から, CFF値の低下は視覚の末梢性疲労のみでなく, 中枢性疲労の判定指標として, 測定の簡易性や判定性から有用と考えられる.
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