人間工学
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39 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 鈴木 浩明, 白戸 宏明, 手塚 和彦
    2003 年 39 巻 6 号 p. 267-274
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    列車内における乗り物酔いの発生実態を明らかにし, 酔いに影響する振動特性を特定するために, 営業運転中の特急列車内で約4,000名の乗客を対象にアンケート調査を実施した. 様々な条件下でのデータを広く集めるために, 八つの線区, 14の車両形式を対象に, 計52本の列車で調査を実施し, あわせて当該車両の振動特性を計測した. うち, 8形式が振子式車両, 残り6形式が非振子車両であった. その結果,以下のことを明らかにした. 酔いを生じる乗客の割合は振子式車両の方が多い. 酔いの発現に最も影響するのは0.25~0.32Hzの低周波左右振動である. 列車振動に関して, 船酔いで問題とされる低周波上下振動の酔いへの影響は確認されない. 酔いの個人差は大きく, 女性や若年の乗客の方が酔いを生じやすい. 振動乗り心地を評価する従来の指標は, 酔いの評価に有効ではない. 以上の結果をふまえて, 列車酔いの評価を可能にする周波数補正曲線を提案した.
  • ファジィ推論モデルと重回帰モデルによる検討
    三家 礼子, 藤巻 吾朗, 田村 義保, 野呂 影勇
    2003 年 39 巻 6 号 p. 275-281
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    クッションの座り心地についての研究は, 人間工学の分野で多く行われている. そして, クッション材を選定する際の対象者の属性による違いを考慮することは重要であるとされる. そこで体型という属性に着目し, その属性により対象者の適合クッションを推定するモデルを提案する. すでに先行研究で体型と座り心地の関係が見出され, クッション材の総合評価と関係が深い評価項目は硬さに関する項目であるとされる. 従来, クッション特性を表す評価項目と座り心地を表す総合評価の関係を示すモデルには重回帰式が用いられてきた. 本研究では非線形性を考慮したファジィ推論を提案した. 検証実験を行い, その結果, 推測値と実測値に高い相関が見られ, システム自体の妥当性も得られた. さらに研究を進め, 従来主観的評価モデルに不適切とされる重回帰式に, ダミー変数を加味するとかなり優位性のあるモデルになりうることがわかり, 両モデルの比較・検討も行った.
  • 保坂 良資
    2003 年 39 巻 6 号 p. 282-291
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    パーソナルコンピュータは広く普及した. しかしインターネットなど家庭内での用途では, 通常のキーボードは必要性が小さい. 本研究では, 携帯電話式入力インターフェイスのパフォーマンスを求めた. 実験では, 10文字のテキストと100文字のテキストを, 携帯電話機とパーソナルコンピュータから入力させ, 入力時間長と誤入力文字の発生数を測定した. その結果, パーソナルコンピュータの操作経験に乏しい利用者では, 単位キーストロークあたりの入力時間長の観点から有効であることがわかった. いっぽう誤入力文字の発生率でも, 携帯電話機からの場合のそれは1.00%以下と小さい. 携帯電話式入力インターフェイスを新たなデバイスとして提供できれば, 前述の利用者でも簡便にパーソナルコンピュータを利用できよう.
  • 岩宮 眞一郎, 関 学, 吉川 景子, 高田 正幸
    2003 年 39 巻 6 号 p. 292-299
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    テレビ番組や映画などで, ある映像シーンから別の映像シーンへ場面を転換するとき, 様々な切り替えパターンが用いられる. 本研究では, 効果音が各種の切り替えパターンの印象に与える影響を, 印象評定実験によって明らかにした. 一般に,「明るい」印象の連続的なスケール状の効果音が, 各種の切り替えパターンと調和する. とりわけ, 上昇系列の音列と拡大系の切り替えパターン, 下降系列の音列と縮小系の切り替えパターンの調和度が高い. 本研究で認められた音と映像の調和感は, 音と映像の変化パターンの一致に基づく構造的調和によるものと考えられる. さらに, 音と映像の調和度が高い視聴覚刺激は映像作品としての評価も高い. これは, 音と映像が一体となって互いの効果を高め合う協合現象によるものと考えられる. 音と映像の構造的な変化パターンの一致が調和感をもたらし, 視聴覚情報が一体のものとして理解されることで, 評価が高まるのであろう.
  • 岩瀬 弘和, 北岡 正敏
    2003 年 39 巻 6 号 p. 300-307
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, タッチ画面におけるターゲットの形状や面積とその操作特性の関係について調べた. 実験要因としてターゲット形状 (正方形 (SQ), 縦長矩形 (VREC), 横長矩形 (HREC)) 及びターゲット面積 (114.3mm2, 203.2mm2, 317.6mm2) の2要因を取り上げた. 実験要因はいずれも被験者間要因とした. 被験者は全て右利きとし, 被験者には出来るだけ早く正確にターゲットを右手人差し指でポイントするように指示した. 実験では, 提示されたターゲットの形状と大きさ, 被験者のポイントした位置が記録された. 実験結果から, ポイント精度は正方形ターゲットの場合が最も高いことが示された. また, ターゲットの形状にかかわらず, ターゲット中のポイントされた位置の分布の90%はほぼ正方形内に納まり, ターゲット面積が大きくなっても約12×12mm2の正方形の範囲内に分布する様子が観測された.
  • 斎藤 綾乃, 鈴木 浩明
    2003 年 39 巻 6 号 p. 308-317
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    高齢者に配慮した通勤車両内における支持具の最適配置に資するため, 乗客の立ち位置, 利用する支持具とその理由, 身長との関係を把握する郵送アンケート調査を行った. 60歳以上998通, 59歳以下387通の回収を得て, 以下を明らかにした. (1) 高齢者は閑散時間帯の利用が多いにも関わらず, 41%が座れないことが多いと回答しており, 立っている高齢者に配慮した支持具配置が必要である, (2) 高齢者は着席への期待から座席前に立って吊り手を利用しているが, この位置に縦手すりがある場合にその利用率は若年群より高い, (3) 座席前以外では, 乗降しやすさや縦手すりがあることを理由にドア脇に立つことが多い, (4) 吊り手の高さに不満を感じる身長帯域はおおむね155cm未満である. この身長帯域では, 支持具数に対する満足度が比較的低く, 縦手すりの利用割合が高い, (5) 身長175cm以上の場合にも吊り手の高さに対する満足度が低下する傾向がある.
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