GUI仕様のPCが普及し,日常生活においてもマウスなどのポインティング・デバイスを用いてOSやアプリケーションを操作する機会が多くなっている.GUI仕様のOSでは,マウスの操作感度であるD/C(Display/Contorol)比を調整することでポインティング操作時間を最小化することが可能である.マウスを操作してモニタ上のポインタを目標のアイコン上に位置決めしてクリックする「ポインティング操作」は,移動操作相と位置決め操作相の2相に分離することが可能で,D/C比は移動操作時間と負の線形関係,位置決め操作時間と下に凸の2次曲線の関係にある.本研究では,ポインティング操作時間(MT)に対する位置決め操作時間(MTp)の比であるMTp/MT比を用いて,D/C比がMTに占めるMTpの割合にどのような影響を与えるか検討した.健常者8名ならびに脳性麻痺者5名を対象にポインティング操作課題を実施したところ,両実験参加者群ともに条件として与えられたD/C比の範囲の中でMTp/MT比の値が最小となるが,MTを最小とする最適D/C比におけるMTp/MT比の値はそれよりも高い値を示した.脳性麻痺者のポインティング操作の効率化については,従来の操作機器の形状の改良やモニタ上のアイコン・サイズの拡大などの方策以外にも,D/C比の調整によりポインティング操作効率を向上させることが可能であるとともに,バリアフリーの観点から有効性が確認された.
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