人間工学
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37 巻, 5 号
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  • 牧下 寛, 松永 勝也
    2001 年37 巻5 号 p. 219-227
    発行日: 2001/10/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    緊急時の制動動作と制動距離が運転者によってどのように異なるかを把握するため, 20歳~70歳までの一般運転者と, 制動の研修を受けている研修生を対象に制動実験を行った. 緊急時を想定した制動動作を行った際の制動距離とともに制動時の加速度, ブレーキ液圧の変化を計測し, 個々人の制動距離と制動の仕方を比較した. 制動距離は制動開始速度や路面条件によって異なるため, 各運転者の制動距離は, 実験場所において理想的な制動を行った場合の制動距離およびその路面条件での理論値と比較して評価した. 一般運転者の制動距離は, おおむね理論値を下限にして理論値の約2倍の範囲に分布しており, 理論値より10m以上長い場合もあった. 研修生の制動距離は一般運転者の値に比べて短いことが示されたが, 年齢による制動距離に差は認められなかった. 制動距離の長短は最大踏力の違いによるものであり, 制動時のブレーキ液圧や加速度の時間推移に定性的な差は認められなかった. また, 衝撃を避けるような微妙なコントロールの急制動をすることは困難であり, 緊急時にはできるだけ強い制動をすべきであることが確認できた.
  • 土肥 麻佐子, 持丸 正明, 河内 まき子
    2001 年37 巻5 号 p. 228-237
    発行日: 2001/10/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    高齢者への靴の適合性の向上には, 高齢者独自の足部形態特性を把握することが重要と考え, 形態特性と靴の履き心地との関連を検討した. 高齢者女子50名 (60~81歳) を対象にアンケート調査を実施し, 靴に対する意識および靴の不適合部位を調べた. 次に, 高齢者90名 (60~81歳) と若年者148名 (18~27歳) の足長・足囲分布の世代差を検討した. さらに, 高齢者50名 (60~81歳) と若年者166名 (18~27歳) の足長サイズ別形態特性の世代差について, 寸法・角度等20項目の計測値と2示数および3次元形態特徴の推定得点より検討した. この結果, 高齢者の足は同一足長の若年者より足囲が大きく (JIS足囲サイズのEEEを中心に分布), つま先形状が第1指がまっすぐ伸び第5指が内反した先広の傾向である. 足部前方は分厚く, 足首より後方が長いことがわかった. これらは, 第1指や外果下方に不適合が多いことと関連があり, 履き心地の不満を裏付けるものである. 靴設計に高齢者の形態特性を反映することで適合性の向上が期待できる.
  • 坂田 匡通, 梶川 伸哉, 猪岡 光
    2001 年37 巻5 号 p. 238-245
    発行日: 2001/10/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    介護現場などにおいて相手の動作やしぐさから感情を読み取ることができれば効果的なサポートが行なえる. また, 支援者が対象者の感情をどのように認識しているかを知ることで, ロボットは効果的な支援作業を協力して行なうことが可能になる. そこで, 本論文では日常的動作から感情を読み取る人間の能力を模擬する方法について検討する. まず, 幾つかの感情を込めた手招き動作に対して主観評価を行ない, 人間の感情読み取り能力の特性について考察を行う. 次に, 手招き動作の手先波形から動作特徴を示す特徴パラメータを抽出し, 主観評価から得られた各感情の大きさとの対応関係を調べる. この特徴パラメータを入力, 主観評価から得られた感情分布を教師データとするニューラルネットワークを用いて人間の感情読み取り能力を模擬した感情認識システムを構築する. 最後に本システムによる感情要素識別実験を行ない, 並行して行なった主観評価結果との比較からシステムの特性について解析する.
  • 絵画評価における直観像素質の有無による影響
    嶌田 久美, 増山 英太郎
    2001 年37 巻5 号 p. 246-251
    発行日: 2001/10/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究は, 直観像素質者の持つ心的イメージ特性が, デザイン活動にどのような影響を及ぼすかについての基礎的研究として, 絵画鑑賞およびその評価を取り上げ, 直観像素質の有無による相違について検討した. 4名の直観像素質者および5名の非直観像素質者を含む, 工業デザイン専攻の学生81名を対象に6つの絵画刺激を鑑賞してもらい, SD法を用いた5段階評定による評価を求めた. 分析の結果, 絵画の評価側面は全部で3つあり, それぞれ「親近感」「躍動感」「価値性」と命名した. 次に, 直観像素質の有無による評価の相違について検討したところ, 直観像素質者は非素質者に比べ全体的にポジティブな評価用語に対し, より当てはまるとする傾向があった. また, 統計的検討の結果, 今回行われた絵画鑑賞・評価においては, 直観像素質者の方が, 絵画刺激に対して, より親近感, 躍動感を伴って絵画を捉える傾向があることが明らかになった.
  • 河北 洋平, 池浦 良淳, 水谷 一樹
    2001 年37 巻5 号 p. 252-262
    発行日: 2001/10/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    今後, 福祉・医療の分野における, 介護者不足の問題を解決するために, 人間共存型ロボットの開発が求められている. ロボットと人間の共存社会が始まれば, ロボットの運動が心理的な脅威となりうる. 本報告では, 人間に密接した環境で運動するロボットアームに着目し, 人間に心理的脅威を与えないロボットアーム運動の予告を考える. そして, この動作予告をLEDの点灯により行い, その有効性を脅威に関する感情語である「恐い」「びっくり」「不快」の3つを用いた, 評定尺度法による心理評価方法をもとに検討した. はじめに, 動作予告を提示するタイミングを調べた結果, 運動直前に予告をすると「恐い」「びっくり」の感情を感じ, 予告後2.5(s)以上経過して, ロボットが運動を開始すると,「不快」の感情を感じることが分かった. したがって,「恐い」と「びっくり」と「不快」の感情を同時に抑えるには, ロボット運動前1~2(s)に, 動作予告を提示するのが最適であることが分かった. 次にロボットアーム先端速度の予告を, LEDの点灯数により与えることの有効性を調べた結果,「恐い」と「びっくり」の感情については, ロボットアームの先端速度が速くなるにつれ, また,「不快」については, 速度が遅いときに予告の効果が現れることが分かった. 最後に, ロボットアーム先端移動方向の予告を, LEDの点灯する色により与えることの有効性を調べた結果, ロボットアームが被験者に近づく運動に対しては, この情報を与えることが有効であることが分かった.
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