日本臨床外科学会雑誌
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86 巻, 2 号
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特別寄稿《第86回学術集会 学会特別企画 総括》
特別寄稿《第86回学術集会 外保連共催企画 総括》
特別寄稿《第86回学術集会 学術集会特別企画2 総括》
症例
  • 吉本 皓一, 大石 一行, 澁谷 祐一
    2025 年86 巻2 号 p. 227-233
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は84歳,女性.倦怠感を自覚し,前医で高Ca血症,intact-PTH高値を指摘され,精査加療目的に当院に紹介となった.頸部超音波エコーで甲状腺右葉下極背側に1.4×1.4×1.9cm大で形状不整,境界明瞭,内部エコーは低~等で不均質な腫瘤を認め,D/W比が1.03であり,右下副甲状腺癌の可能性を考えた.術中所見で,腫瘤が硬く甲状腺との境界が不明瞭で剥離に難渋したため副甲状腺癌を強く疑い,甲状腺右葉部分切除を伴う右下副甲状腺切除術,II・右IIIリンパ節郭清を施行した.最終病理組織診断では副甲状腺癌(pT1N0M0)と診断された.現在術後4カ月であるが,再発は認めていない.副甲状腺癌は原発性副甲状腺機能亢進症のうち5%以下とされており,比較的稀な疾患である.稀少さゆえに,病期分類について国際的に標準化が進められている段階である.今回,術前および術中に副甲状腺癌を疑って治療を行い,最終的に副甲状腺癌と診断された症例を経験したので報告する.

  • 坂口 真理子, 古妻 康之, 山内 周, 富永 修盛
    2025 年86 巻2 号 p. 234-239
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    メトトレキサート(methotrexate:MTX)は関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者に対する治療薬であるが,稀にリンパ増殖性疾患を合併することがあり「関節リウマチ治療中に発生するリンパ増殖性疾患/リンパ腫(RA-lymphoproliferative disorder:RA-LPD)」と呼ばれている.今回われわれは,乳癌患者のセンチネルリンパ節(SN)にRA-LPDを偶発的に認めた症例を経験した.症例は79歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に当科を紹介受診した.RAに対して近医よりMTXを投与されていた.精査で左乳癌T2N0M0 cStage IIAの診断となり,左乳房部分切除術とSN生検を施行した.SNに乳癌の転移は見られなかったが,1つのSNに濾胞様の増殖が見られ,濾胞性リンパ腫と診断された.RA患者のMTX治療中に発生したリンパ腫であることから,RA-LPDの可能性があると診断された.MTX内服を中止し現在近医で経過観察中であり,MTX-LPDの増悪は認めていない.RA加療中の乳癌患者において,乳癌病期を適切に判断するためにはRA-LPDを念頭に置く必要がある.

  • 渕上 ひろみ, 竹田 奈保子, 山本 龍一, 佐藤 一彦
    2025 年86 巻2 号 p. 240-245
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は81歳,女性.主訴は嘔吐.右乳癌で67歳時に右胸筋温存乳房切除とセンチネルリンパ節生検を施行された.術後エキセメスタンを5年間内服した.80歳時に人間ドックにて施行された超音波検査にて右腋窩リンパ節腫脹を指摘された.細胞診はclass IVであった.乳癌の再発が疑われ,PET/CTを施行した.乳癌の多発リンパ節および多発骨転移の診断となった.レトロゾールとパルボシクリブによる治療を開始したが,約7カ月後に嘔吐で救急外来を受診した.後腹膜転移による十二指腸狭窄と診断された.絶食・胃管を挿入の後,十二指腸ステントを留置され,経口摂取可能な状態で退院となった.ステント留置から約2週間後に再閉塞による嘔吐で再入院となった.Covered stent追加留置により狭窄部位は解除された.十二指腸閉塞の治療法としては胃空腸バイパス術とステント(covered typeとuncovered typeがある)留置があるが,十二指腸閉塞はpreterminalな状態でもあり,治療法を選択する際には十分な検討が必要である.

  • 竹原 洋士, 山本 陽子, 池田 直樹
    2025 年86 巻2 号 p. 246-250
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    肺動脈の分岐や走行は破格が多いことが知られているが,右中下葉にわたって分岐するものは比較的稀である.今回われわれは,右主肺動脈の第1分枝が中下葉に流入する,いわゆる縦隔型中下葉枝といわれる肺動脈分岐異常を伴う右下葉肺癌症例にロボット支援下手術を施行したので報告する.症例は78歳,女性.肺腺癌に対してロボット支援下右下葉切除術,リンパ節郭清ND2a1を施行した.術前評価として施行した3次元CT(three-dimensional computed tomography,3D-CT)では,右主肺動脈中枢から尾側へ分岐する径0.8cmの縦隔型中下葉枝(A5b+7b+8b+10c)が,中間気管支幹と上下肺静脈の間を走行して中下葉へ分布していた.このような比較的稀な破格を伴う症例であったが,3D-CTでの肺動脈分岐の術前検討と慎重な術中検索により,右下葉切除を安全に施行しえた.

  • 澤邊 敦哉, 日景 允, 小坂 航, 小坂 淳生, 山田 誠人, 郷右近 祐司
    2025 年86 巻2 号 p. 251-256
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性.Siewert type 3の食道胃接合部癌cStage IIIに対し,開腹胃全摘・経裂孔下部食道切除・結腸前Roux-en-Y再建を施行した.術後に腸管麻痺による誤嚥から重症肺炎をきたし,呼吸循環不全に至ったため第2病日より人工呼吸器管理を開始したが,循環呼吸が安定せず炎症反応が遷延し栄養管理にも難渋した.第15病日のCT,第21病日の内視鏡で食道空腸吻合部の縫合不全が明らかとなった.保存治療継続の方針とし,第23病日に治療促進のためW-EDチューブ(double elementary diet tube)を留置し,消化管減圧に加えて経腸栄養を開始した.その後,炎症反応は急速に改善し,第28病日に人工呼吸器を離脱,第50病日に内視鏡にて縫合不全部の治癒が確認され,第88病日に自宅退院した.食道胃接合部癌は胃癌と比較し,手術後の食道空腸吻合の縫合不全発生リスクが高く,重篤化の危険もある.消化管外の膿瘍腔のドレナージが可能な状況では,消化管減圧と経腸栄養の管理を1つのデバイスで同時施行可能なW-EDチューブによる管理は,有用な治療法である.

  • 森岡 弘光, 石嶺 伝羽, 阿嘉 裕之, 比嘉 宇郎, 花城 直次, 宮平 工
    2025 年86 巻2 号 p. 257-263
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    64歳,女性.健康診断を契機に発見された胃submucosal tumor(以下,SMT)に対して,定期フォローされていた.壁外発育型を呈し,大きさは18×12×12mmで,2年間の経過観察中にその変化は見られなかった.腹痛を主訴に救急外来を受診し,精査で胃SMTに起因した腹腔内出血の診断となった.緊急手術を行ったところ,胃SMTが捻転・壊死しており,胃部分切除術が行われた.術後経過は良好で,術後7日目に退院となった.病理検査にて,ヘマトキシリンエオジン染色(以下,H.E.染色)では紡錘形細胞の増生がみられた.KIT・CD34陽性であり,gastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)の診断となった.小型の胃GISTで壁外発育型を呈している症例では,茎捻転の可能性を考慮して手術療法も検討するべきである.

  • 稲葉 由樹, 渡辺 俊之, 岡田 真誠, 森園 剛樹, 日吉 雅也, 飯原 久仁子, 坂本 穆彦, 橋口 陽二郎
    2025 年86 巻2 号 p. 264-270
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は37歳,男性.腹痛・腹部膨満・嘔吐を主訴に近医を受診し,腸閉塞の疑いで紹介受診となった.腹部CTで広範な小腸の拡張と骨盤腔正中にwhirl signを認め,骨盤底には腹水との鑑別が困難なwater densityを呈する囊胞性腫瘤の存在が疑われた.小腸軸捻による絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.開腹時所見では,回腸末端より90cm口側の回腸に壁外性に隆起した12cm大の黄色囊胞性腫瘤を認め,近接する腸間膜にも5cm大の同様の腫瘤を認めた.この部位を中心として小腸は反時計方向に540°捻転していた.腸管の虚血性変化はなく,捻転を解除して腫瘤を含めた小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査では,小腸および小腸腸間膜のリンパ管奇形と診断された.リンパ管奇形に伴う小腸軸捻は,本邦では自験例を含めて23例の報告があるが,主病変が腸間膜ではなく腸管壁の囊胞性腫瘤であった症例は自験例のみであった.

  • 本間 崇志, 原 義明, 網木 学, 成田 和広, 日月 裕司
    2025 年86 巻2 号 p. 271-275
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は56歳,女性.1年前に子宮体癌に対して準広汎子宮全摘術が施行されていた.今回,腹痛・嘔吐・右大腿部痛を主訴に当院に救急搬送された.腹部造影CTを施行し,右外腸骨動静脈背側に小腸が嵌頓し生じた静脈内血栓を伴う絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.術中所見では,終末回腸が嵌頓/壊死をきたしており,右外腸骨静脈は圧排され狭窄していた.絞扼を解除し,壊死した空腸から終末回腸の約80cmを含む回盲部切除術を施行した.術中エコーで右外腸骨静脈内に血栓を認めたため,切開し血栓を摘出した.術後10病日目には右外腸骨静脈内に再び血栓を認めたが,ヘパリン・エドキサバンの投与により症状は軽快し,術後25日目に退院した.骨盤内リンパ節郭清を伴う手術既往のある腸閉塞では,外腸骨動静脈が原因の絞扼性腸閉塞も念頭に置く必要があり,血栓症を伴う可能性があることにも注意が必要である.

  • 野本 崚二朗, 渡邉 卓哉, 浅田 崇洋, 奥村 徳夫, 猪川 祥邦, 梶川 真樹
    2025 年86 巻2 号 p. 276-281
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は47歳,女性.残尿感,軽度月経困難を主訴に前医を受診し,MRIで子宮筋腫再発と虫垂粘液腫を疑う囊胞病変を認めたため,手術加療目的に当院に紹介となった.画像検査・内視鏡検査で虫垂粘液腫と診断し,子宮筋腫と同時に虫垂粘液腫に対して開腹手術を施行した.盲腸部分切除を施行し,術中迅速病理診断で悪性腫瘍が否定されたため,追加切除は行わなかった.免疫組織学的検査ではエストロゲンレセプター,CD10陽性で,虫垂子宮内膜症による粘液貯留と診断された.虫垂子宮内膜症は腸管子宮内膜症のうち約3%程度と言われており,頻度は少ない.また,虫垂粘液腫を呈するのはさらに稀で,鑑別疾患に挙がりづらい.今回われわれは,盲腸部分切除を施行した虫垂粘液腫の所見を呈した虫垂子宮内膜症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 鈴木 大翔, 石川 健, 馬場 卓也, 友田 佳介, 吉本 信保, 高山 悟
    2025 年86 巻2 号 p. 282-288
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,男性.下腹部痛と血便を主訴に受診した.CTでS状結腸の直腸への重積と,腸管壁に多発する囊状気腫を認めた.下部内視鏡で同部位に,多発する隆起性病変を先進部とする重積像を認めた.隆起性病変はCT・内視鏡所見から,腸管囊胞性気腫症(pneumatosis cystoides intestinal:以下,PCI)が疑われた.重積箇所の腸管壁がうっ血しており,穿孔のリスクを懸念し腹腔鏡手術での整復を試みた.術中下部内視鏡を併用し,腹腔鏡下での腸管牽引に加え,内視鏡での送気と圧迫で腸管内からも整復を試みた.整復は成功し,虚血や穿孔を認めなかったため,腸管切除せず終了した.本症例は糖尿病治療薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)を内服しており,薬剤性PCIを疑った.術後よりα-GIを休薬し,1カ月後に下部内視鏡検査を施行したところ,PCIは消失していた.PCIによる腸重積は稀な疾患である.治療は,腸管切除を選択されることが多いが,腹腔鏡,術中下部内視鏡の併用で腸管切除を回避した症例のため,報告する.

  • 加納 拓, 林 洋毅, 髙舘 達之, 手島 伸, 島村 弘宗, 岡 直美
    2025 年86 巻2 号 p. 289-295
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は47歳,女性.突然の右側胸部痛で救急外来を受診し,肝右葉の巨大囊胞性病変の破裂の疑いで緊急入院となった.精査の結果,巨大肝囊胞性病変の他にS状結腸癌を認めた.肝の囊胞性病変は大腸癌肝転移としては非典型的で,肝囊胞腺癌や卵巣癌肝転移などを鑑別に挙げた.腹腔鏡下S状結腸切除を行ったのちに肝切除を行う方針とした.

    S状結腸切除後に肝囊胞性病変は増大傾向を示し,腫瘍が肝S4や尾状葉に進展していたため,肝S4を一部切除するように肝右葉尾状葉切除を行い,術後経過は良好であった.病理組織検査で大腸癌肝転移と診断した.腫瘍が急速に増大したため腫瘍内部の血流障害が起き,腫瘍の壊死によって液体が貯留し,囊胞性の画像所見を呈したと考えられた.

    囊胞性の大腸癌肝転移は非常に稀である.術前診断が困難であった囊胞性の大腸癌肝転移の1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.

  • 木須 絵理, 田中 智和, 伊藤 孝太朗, 井手 貴雄, 能城 浩和
    2025 年86 巻2 号 p. 296-302
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    76歳,男性.2型糖尿病で近医通院中に軽度の肝機能異常と腹部超音波検査で肝腫瘍を指摘され,当院に紹介となった.CTで肝S8に9.6×8.2cm,S1に2.5×2.2cmの腫瘤性病変を認め,EOB-MRIでは肝細胞相でEOBの取り込みを認めたことから,β-catenin変異型肝細胞癌が疑われた.手術を検討,提案したが,承諾が得られずレンバチニブ(LEN)(12mg/日)を導入した.内服開始わずか4日で嘔吐,全身倦怠感によるふらつき等の副作用のため緊急入院となったが,CTでS8腫瘤は明らかに早期濃染範囲が縮小,S1腫瘤は早期濃染領域が消失しており,劇的な治療効果を認めた.この時点で根治的手術を施行,R0切除となった.術後10カ月で肝内再発を認めたが,LENを8mg/日に減量してLEN-TACE sequential治療を実施,その後はLEN内服を継続し無増悪生存中である.極めて短期間にLENによる劇的な治療効果を認めた肝細胞癌の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 飯島 賢, 清水 潤三, 松下 克則, 池永 雅一, 今村 博司
    2025 年86 巻2 号 p. 303-309
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,女性.血液検査で肝機能障害を認め,画像精査で肝左葉に腫瘤を認めた.同部で胆管途絶および拡張を認め,右肝動脈への浸潤が疑われたことから,切除不能な進行肝内胆管癌(cT3N0M0 cStage III)と診断した.全身化学療法としてgemcitabine and cisplatin+durvalumab併用療法(GCD療法)を施行し,効果判定はPR(ycT2N0M0 ycStage II)であった.CTで腫瘍の縮小を認め,右肝動脈の温存可能と考え,conversion手術の方針とした.肝左葉尾状葉切除術,肝外胆管切除術,胆管空腸吻合術を施行した.病理組織学検査では左肝管に腫瘍組織が僅かに残存しているのみであり(CT-Grade3),最終診断は肝内胆管癌ypT2a(SS),ypN0,ypM0 ypStage IIAであった.術後経過は良好で,術後23日目に合併症なく退院となった.近年,切除不能な胆道癌に対してconversion手術が可能となる症例が見受けられるが,本邦においてGCD療法後のconversion手術における報告はない.今回われわれは切除不能な進行肝内胆管癌に対して,GCD療法を施行し根治切除を施行しえた1例を経験したので報告する.

  • 古家 俊作, 久保 憲生, 八木 直樹, 鈴木 茂正, 藍原 龍介
    2025 年86 巻2 号 p. 310-314
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は73歳の男性.心窩部痛を主訴に近医を受診した.狭心症の診断で治療したが,造影CTにて偶発的に胆囊壁の肥厚とリンパ節腫大を認めた.当院を紹介受診し,右側肝円索を伴う胆囊癌と診断し,手術を施行した.術中所見では明らかな遠隔転移を認めず,十二指腸浸潤を疑ったため,拡大胆囊摘出+亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.胆囊の位置が通常と異なり,肝十二指腸間膜の腹側に位置するため,手術操作に難渋した.癒着した肝円索から胆囊底部を剥離し,先に胆囊板まで肝切除を施行することで肝十二指腸間膜前面の視野の確保が可能であった.右側肝円索には脈管の分岐異常を伴うことが多く,術前により詳細な画像確認と術中の慎重な手術操作が重要である.

  • 高田 由佳理, 大田 洋平, 前田 直紀, 北本 真悠, 矢毛石 眞由美, 野尻 和典
    2025 年86 巻2 号 p. 315-321
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は61歳の男性で,食思不振と体重減少を認め,CTで最大径12cmの多発脾腫瘤を指摘された.血液疾患を疑ったが,画像診断および骨髄生検で確定診断に至らず,組織診断および治療目的に開腹脾臓摘出術を施行した.各腫瘍径は7.5×5.5cm,4.0×4.0cm,3.5×4.0cm,3.0×10.0cmであった.免疫染色でcord capillary・sinusoid・small veinsの3種の血管成分の混在所見を認め,病理組織学的にsclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)と診断した.SANTは2004年に初めて報告された脾臓に発生する稀な良性病変であり,多くは単発かつ無症状で偶発的に発見される.本邦では多発かつ10cmを超えた報告例はない.今回われわれは,食思不振を契機に発見された多発性SANTの1切除例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 鳥居 剛, 水谷 文俊, 加藤 祐一郎, 山口 直哉, 寺境 宏介, 河野 弘
    2025 年86 巻2 号 p. 322-327
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は41歳の男性で,2年前に他院で脳出血による水頭症に対して腰椎-腹腔シャント(lumbo-peritoneal shunt:以下,LPSと略記)挿入術を施行された.右側腹部痛で当院を受診し,腹部単純CTにて,LPSチューブが腹壁直下の回腸末端に迷入していたことが判明した.また,皮下のチューブ周囲で脂肪織濃度の上昇を認めたことから,腹腔側のLPSチューブから逆行性に皮下の瘻孔感染をきたしていると診断され,治療目的に当科に紹介となった.脳神経外科にて腰椎のLPSチューブを抜去し,当科にて感染した皮下瘻孔ごと腸管迷入部まで剥離し,腸管迷入部に切開を加えてLPSチューブを抜去,縫合閉鎖した.術後髄液漏を認めたため,術後26日目に脳神経外科にて再手術となったが,術後54日目に施設退院となった.LPSチューブが腸管に迷入する稀な1例を経験したので報告する.

  • 黒岩 雄大, 北川 敬之, 秋田 眞吾, 飯沼 伸佳, 三輪 史郎
    2025 年86 巻2 号 p. 328-332
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は85歳,女性.右大腿部痛を主訴に救急搬送となった.右閉鎖孔ヘルニア嵌頓に伴う腸閉塞と診断し,エコーガイド下整復を試みたが還納できず,緊急手術の方針とした.腹腔鏡下に観察すると右閉鎖孔ヘルニア嵌頓に加え,左閉鎖孔ヘルニア・両側大腿ヘルニアの併存を認めた.嵌頓は解除可能であり腸管の壊死も認めなかったが,直近に肺炎を罹患し,糖尿病コントロールが不良であったため,ヘルニア修復は全身状態改善後に二期的に施行する方針とした.12日後に両側ヘルニアに対して前方アプローチでのクーゲルパッチを用いた修復術を施行し,術後経過は良好であった.閉鎖孔ヘルニアには併存ヘルニアが多く,高齢で合併症を有している症例も多い.手術負担の軽減や,安全に手術を行うために,腹腔鏡での嵌頓解除と併存ヘルニアの観察後に二期的手術を行う方針は,閉鎖孔ヘルニア嵌頓症例に対する有効な選択肢になると考えられた.

国内外科研修報告
編集後記
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