理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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21 巻, 4 号
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研究論文
  • 赤羽 勝司, 木村 貞治, 藤原 孝之, 山本 巖, 八森 章
    2006 年 21 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    スピードスケート選手を対象に,スケート動作を模倣した不安定環境下での片脚立位保持能力と競技成績の関連性について解析することによって,陸上トレーニングの方法について検討した。対象は,スピードスケート選手群31名と対照群10名とし,スピードスケート動作に近い不安定な環境下での姿勢制御能力の測定とトレーニングを目的として開発した模擬スケート靴を履いたときの片脚立位保持能力と競技成績との関連性について解析した。結果,片脚立位保持時間は,強化選手群が非強化選手群および対照群よりも有意に長かった。模擬スケート靴を用いた不安定環境下でのスケート動作の模倣トレーニングは,氷上トレーニングを行いにくい夏季の陸上トレーニングとして有用であることが示唆された。
  • 大槻 桂右, 渡辺 進
    2006 年 21 巻 4 号 p. 331-334
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 上肢エルゴメーターによる酸素摂取効率勾配(Oxygen Uptake Efficiency Slope: OUES)の有用性を検討することである。健常成人男性10名を対象に, 上肢エルゴメーターと下肢エルゴメーターによるOUESを測定した。その結果, 上肢エルゴメーターでのOUESは下肢エルゴメーターのOUESの84%であり, 有意に小さかった(p<0.05)。また最高酸素摂取量(peak VO2)との関係は, 上肢エルゴメーターが相関係数r= 0.90, 下肢エルゴメーターが相関係数r= 0.92であり有意な相関を認めた(p<0.05)。OUESとpeak VO2との相関係数は無酸素性作業閾値とpeak VO2との相関係数よりも大きかったことから, OUESを用いた上肢エルゴメーターによる運動耐容能評価の有用性が示唆された。
  • 中村 一平, 奥田 昌之, 鹿毛 治子, 國次 一郎, 杉山 真一, 芳原 達也, 浅海 岩生
    2006 年 21 巻 4 号 p. 335-339
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    動的バランス指標として利用されているFRTについて,身体特性・運動機能や他のバランス指標との関係を調べるため,高齢女性30名と学生33名を対象にバランス機能,運動機能を測定分析した。FRTは高齢女性で年齢,身長と有意な相関があったが,TUGT,片足立ち,10 m歩行速度とは相関がなかった。動的バランス指標のTUGT,静的バランス指標の片足立ち,姿勢制御・下肢筋力との関連が高い10 m歩行速度は互いに有意な相関があった。学生ではFRTは身長,体重,握力と有意な相関があったが,片足立ちや重心動揺総軌跡長との相関は認められなかった。FRTは柔軟性など他の身体機能や他のバランス指標とは異なった要素と考えられ,独立した指標であることが示唆された。
  • ―閉眼での静的,動的立位姿勢制御の筋活動と重心総軌跡長比較―
    崎田 正博, 熊谷 秋三, 河野 一郎, 高杉 紳一郎
    2006 年 21 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,足底感覚と下腿筋固有受容覚のどちらが立位姿勢制御に寄与するかを検討した。対象は,健常成人男性12名。足底と下腿を個別冷却した。閉眼での静止立位および足部不安定立位の2条件で,体幹・下肢筋群の筋活動量と重心総軌跡長を冷却前(コントロール),冷却後(冷却後3分以内と冷却後皮膚温20°Cより高い状態)で比較検討した。筋活動量の変化率は,足底冷却後が下腿冷却後よりも下肢近位筋と体幹筋が有意にコントロールに対して増加し,重心総軌跡長は,足底冷却後が下腿冷却後よりも有意にコントロールに対して延長した。これらの結果から,足底感覚入力低下が下腿筋筋紡錘感覚入力の低下よりも足関節ストラテジーから股関節ストラテジーへと移行させ,重心総軌跡長の延長を招き,立位姿勢制御能を低下させると考えられた。
  • 山下 弘二, 盛田 寛明, 李 相潤, 佐藤 秀一, 佐藤 秀紀
    2006 年 21 巻 4 号 p. 349-355
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究は高脂血症者に対する非監視型運動実施指導がライフスタイルとQOL,身体特性および身体活動量に及ぼす効果について検討した。対象は地域の高脂血症要指導者を無作為に選び,最終的に介入群15名と対照群10名となった。介入群に対して栄養および運動指導は1ヶ月に1回,5ヶ月間継続した。介入群では「散歩・体操の習慣」と「ライフスタイルの総合点」について有意に増加し,健康関連QOLの「身体機能」と「身体の痛み」については有意な改善があった。介入群は対照群より体重,体脂肪率,内臓脂肪レベルについて顕著な減量ができた。介入群の身体活動量は,指導前と3ヶ月目とに有意な増加が認められた。ウォーキングと体操を主体とした非監視型実施指導は,全身持久力の増加が認められなかったが,運動の継続性,身体的健康度,減量および歩数増加に有効であった。
  • 奥田 裕, 荻野 禎子, 小澤 佑介, 原田 慎一, 江連 亜弥, 内山 靖
    2006 年 21 巻 4 号 p. 357-362
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    臨床的体幹機能検査(FACT: Functional Assessment for Control of Trunk)を開発し,信頼性を明らかにすることを目的とした。FACTは体幹にかかわるパフォーマンスの可否を判定するもので,10項目20点満点で構成されている。脳卒中者23例を対象として,理学療法士5名でペアを作り,別々にFACTを実施した。検者間信頼性について,合計点では級内相関係数(2,1),項目毎の合致率は%と κ係数を用いて検討した。内的整合性はクロンバックの α係数を用いた。合計点は検者間で高い信頼性を認めた(ICC(2,1)=0.96)。項目毎では87~100%の一致率が示され, κ係数は0.62~1で臨床導入が可能な信頼性を有することが示された。また,クロンバックの αは0.81であった。FACTは体幹機能をパフォーマンスによる得点尺度で捉えることができ,治療指向的な検査法の一つとして臨床,研究両分野での適用が期待される。
  • 村田 伸, 甲斐 義浩, 田中 真一, 山崎 先也
    2006 年 21 巻 4 号 p. 363-367
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,筆者らが開発した足把持力測定器とその測定器から得られる計測データについて紹介した。本測定器は,ひずみゲージを用いることによって,最小0.1 kgからの足把持力と足把持力の最大値到達時間が計測できる。計測データの紹介は,健常成人男性16名(平均年齢22.3±5.5歳)の左右32肢を対象に行った。対象者の足把持力は平均17.4±4.5 kgであり,最大値到達時間は0.66±0.26秒であった。また,測定値の再現性は,足把持力がICC = 0.953,最大値到達時間がICC = 0.723であり,臨床場面での使用に十分に耐え得る再現性を有することが示唆された。
  • 武井 圭一, 杉本 諭, 桑原 慶太, 板子 伸子, 潮見 泰藏
    2006 年 21 巻 4 号 p. 369-374
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,脳卒中患者に対する移乗動作能力の予測因子として,機能障害および移乗動作を構成する各要素的動作に着目し,これらの因子がどのように影響を及ぼしているかについて分析した。脳卒中患者58名を移乗動作遂行能力により自立群,介助群の2群に分類し,機能障害要因および構成要素動作要因別に移乗動作能力の予測に関する判別分析を行った。ステップワイズ法による判別分析の結果,機能障害要因では「腹筋力」,構成要素動作要因では「立ち上がり」,「立位方向転換」,「起き上がり」が最終選択された。このことから,脳卒中片麻痺患者の移乗動作能力の予測には,下肢運動麻痺や認知機能障害よりも,体幹機能を指標とした評価が有用であると考えられた。また,姿勢保持能力よりも,立ち上がりや立位方向転換のような一連の動作を構成する動作能力が移乗動作能力の予測には重要であると考えられた。
  • 丸岡 弘, 小牧 宏一, 井上 和久
    2006 年 21 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    異なる筋収縮様式(等張性負荷と等尺性負荷)による筋力負荷が酸化ストレス度に及ぼす影響について,健康成人31例(平均22.9±3.4歳)で検討した。酸化ストレス度は活性酸素・フリーラジカル分析装置を使用し,安静時と負荷終了直後の計2回指尖より採血し,hydroperoxide濃度を光学計測法により計測した。筋力負荷はJAMARハンドダイナモメータを用いて,右手に対して等張性負荷と等尺性負荷によるハンドグリップ運動を実施した。その結果,酸化ストレス度は,等尺性と等張性負荷共に安静時と負荷後を比較すると有意差を認めなかった。一方,血圧や心拍数は,等尺性と等張性負荷共に負荷中では,安静時と比較すると有意な増加を認めた(いずれもp<.001)。このことから,等尺性と等張性負荷共に血圧や心拍数の増加があっても,酸化ストレス度は変化のないことが示された。
  • 森沢 知之, 金子 純一朗, 鈴木 あかね, 村山 史雄, 樋渡 正夫, 丸山 仁司
    2006 年 21 巻 4 号 p. 381-386
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    肺切除術後早期の肺機能回復過程および術前後における運動耐容能の変化を明らかにすること,また肺機能回復率の関連因子を明らかにすることを目的に研究を行った。術後肺機能はFEV1.0では術後12病日まで,VCは術後8病日まで術後予測肺機能値よりも有意に低下しており,この間での積極的な理学療法の展開する必要性が示唆された。また術後FEV1.0の回復率には年齢,BMI,座位・歩行開始日数が関与しており,術後可及的早期より離床を促す必要性が示唆された。運動耐容能は術前後では有意な差はなく,術後早期より運動療法を積極的に行ったことにより,術後運動耐容能の低下が最小限で抑えることができたことによるものと推測された。以上の結果より,術後の理学療法の展開としては,術後早期より離床を促し,運動療法を積極的に行うことが重要と考えられた。術後肺機能の回復率を高めること,術後合併症を防ぐ可能性があることが明らかになった。
  • -機能的MRIによる分析-
    松田 雅弘, 渡邉 修, 来間 弘展, 津吹 桃子, 村上 仁之, 池田 由美, 妹尾 淳史, 米本 恭三
    2006 年 21 巻 4 号 p. 387-391
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    手指対立運動時の感覚運動野(sensorimotor cortex: SMC)の賦活の左右差を,機能的MRIを用いて検討した。対象は右利きの健常成人12名で,1秒間に1回の速度で連続的に手指対立運動を自発的に行う課題を右手,左手各々において行った。右手,左手運動時の対側SMCの平均賦活信号強度は,右手運動より左手運動で有意に高かった(右手,左手,各々11.68,16.82, p<0.05)。さらに,右手運動時は対側SMCのみに賦活が見られたのに対して,左手運動時は両側SMCに賦活がみられた。以上の結果は,巧緻性の低い左手は右手に比べ、多くの神経活動を必要とすることを示唆している。
  • 前田 慶明, 東 祐二, 米井 聡, 奥山 聡, 加藤 順一, 村上 雅仁, 古川 宏
    2006 年 21 巻 4 号 p. 393-397
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    短下肢装具を装着した慢性期脳卒中片麻痺者12名を対象に6分間歩行を施行し,歩行速度の相違が歩行能力ならびに歩行時エネルギー消費に及ぼす影響について検討した。最適および最速歩行において歩行距離・歩行速度・歩行時の酸素消費量(VO2)および心拍数(HR)を測定した。歩行時の運動エネルギー効率として1 mあたりのVO2とPhysiological Cost Index(PCI)を算出した。その結果,歩行距離・歩行速度・VO2およびHRは,最適歩行と比較して最速歩行において有意に高値を示した。また,最速歩行において1 mあたりのVO2は有意に低値を示したが,PCIは変化を認めなかった。これらより脳卒中片麻痺者において歩行速度により歩行時エネルギー消費が変化することから歩行時の運動エネルギー効率を考慮した歩行訓練の指導が必要であると考えられた。
  • 太場岡 英利, 越智 亮, 片岡 保憲, 森岡 周
    2006 年 21 巻 4 号 p. 399-404
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,重量の漸増および漸減に対する肘関節筋の筋出力調節を筋電図を用いて明らかにすることである。対象は健常男性7名。課題は,20秒間の漸増・漸減的負荷に対して,肘関節屈曲90度を等尺性に保持するものである。上腕二頭筋および腕橈骨筋それぞれの課題開始時から終了時までの1秒毎の筋積分値を求め,重量と回帰分析を行った。結果,両筋の筋活動は,重量と高い相関を示し,負荷変動に対応したものであった。両筋活動の時系列変化は,両者が相互に平行して変化するパターンが大部分を占めた。しかし,一部の被験者において,相補的に変化するパターンが認められた。すなわち,一方の筋活動が増加すれば,他方は相対的に減少するパターンを示した。この特殊な活動パターンから,両筋間における代償の可能性が考えられた。また,二つの活動パターンが認められたことから,単関節運動であっても,その収縮様式には複数の自由度が存在することが示唆された。
  • 山野 薫, 大平 高正, 薬師寺 里江, 都甲 純, 井上 博文, 秋山 純和
    2006 年 21 巻 4 号 p. 405-410
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,理学療法中に発生したインシデント・アクシデントについて,レポートの分析を行い,理学療法中に発生する事故の要因分析を進めた。また,事故発生時や患者の状態変化時におけるリスク管理体制整備の具体的取り組みについて再検討した。レポート50件の分析により,リスク管理システムの改善の具体的な試みを行った。リスク管理システムの問題点を,「医療機器の整備」,「スタッフの教育」,「システムの構築」,「日常業務の調整」の4点に整理し,今後の具体的課題を検討した。我々PTは,患者の状態変化に即時対応(一次救命処置)できることと,救命を第一とした体制整備を行っておく必要がある。
  • ―整形外科疾患患者に対するアプローチ―
    小林 薫, 佐藤 仁
    2006 年 21 巻 4 号 p. 411-415
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,整形外科疾患患者(以下整形患者)に対し抵抗構成運動を施し,歩行能力向上に関して検討した。対象は,介入目的を説明し同意を得た歩行自立レベルの高齢者7名(男性3名,女性4名)であり,中枢性運動麻痺および認知症を既往とする者は除外した。方法は,両膝関節への抵抗構成運動を同一検者で10回2セット実施し,アプローチ前後の歩行能力について検討した。結果,歩幅と歩行率,歩行速度がそれぞれ向上し,整形患者に対する抵抗構成運動の有用性が示唆された。
  • 宮原 洋八, 竹下 寿郎, 西 三津代
    2006 年 21 巻 4 号 p. 417-420
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,脳卒中片麻痺患者(10名:継続者群,10名:非継続者群)を対象に,運動介入を実施しその1年後,3年後,5年後に運動能力(握力,膝伸展力,最大歩行速度)とバーセルインデックス(Barthel Index: BI)に及ぼす影響を検討した。その結果,継続者群の運動能力,BIは有意な低下が見られなかったが非継続者群では全ての測定値で有意な低下が見られた。 運動の継続が脳卒中片麻痺患者の運動機能を維持した。
  • ─奄美大島における事例─
    宮原 洋八, 小田 利勝
    2006 年 21 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,高齢期におけるライフスタイルと運動能力および生活機能の関連を明らかにすることである。測定に参加したのは奄美大島笠利町在住の高齢男女116名(平均年齢:78.1歳)で,ライフスタイルに関する22項目,運動能力に関する3項目,生活機能に関する13項目について調査,測定をした。分析の結果,ライフスタイルと運動能力,生活機能,主観的健康感とは相互に有意な関連が認められた。この結果は,ライフスタイルは運動能力や生活機能に規定されているとともにライフスタイルの改善が高齢期における運動能力や生活機能の低下を予防し,サクセスフル・エイジングの促進につながることを示唆している。
  • 越智 亮, 坂野 裕洋, 金井 章, 森岡 周
    2006 年 21 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    立位で頚部に振動刺激を与えると,頚部固有受容器からの感覚変化が生じることで頭部位置の混乱を引き起こし,自己中心参照枠が変更され,姿勢変化が生じるとされている。本研究の目的は,健常者を対象に頚部振動刺激の介入を行い,その残存効果によって起立動作の身体重心変位が生じるかどうか,被験者の内省報告と三次元動作解析装置,および床反力計を用いて検証することである。計測は,座位で頚部後方へ振動刺激を1分間与え,被験者に頚部前屈の運動錯覚を生じさせた後,起立動作とそれに伴う重心変位を記録した。その結果,起立動作における重心位置の前方変位が生じ,さらに6分後までその重心前方変位が確認された。振動刺激によって誘発される,頚部固有受容器からの継続された感覚変化が起立動作後の重心位置に影響を及ぼすと結論した。
  • 浅川 康吉, 高橋 龍太郎, 遠藤 文雄
    2006 年 21 巻 4 号 p. 433-436
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢者の浴槽入浴中の心・血管反応のうち入浴中急死事故のリスクとなりうる反応を探ることである。対象は,高齢男性42例(75.5±7.6歳)とし,湯温41℃から42℃,5分間の浴槽入浴における収縮期血圧,拡張期血圧,脈拍,ダブルプロダクト,脈圧および平均血圧のデータを得た。各項目の変動パターンと年代との関係を二元配置分散分析により分析したところ,年代との交互作用を認めた項目は脈拍のみであった(p<0.05)。60歳代と70歳代の高齢者では浴槽入浴中に脈拍が増加するのに対し,80歳代では増加しなかった。80歳代の高齢者では,浴槽入浴の際に必要な脈拍の増加反応が十分でない可能性がある。脈拍の増加反応は入浴中急死事故のリスクとして注目すべき現象と考えられる。
  • 村田 伸, 甲斐 義浩, 溝田 勝彦, 山崎 先也, 弓岡 光徳, 大田尾 浩, 武田 功
    2006 年 21 巻 4 号 p. 437-440
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,地域在住高齢者男性21名(平均年齢70.7±5.4歳)を対象に,開眼片足立ち保持時間,上下肢筋力,柔軟性などの測定と転倒歴の調査から,開眼片足立ちで30秒間保持できることの臨床的意義について検討した。片足立ち位での保持が30秒間可能であった11名と不可能であった10名を比較すると,足把持力は30秒間保持可能群が有意に強かったが,握力,足関節背屈角度,柔軟性には有意差は認められなかった。また,本研究における転倒経験者は,すべて30秒間の片足立ち保持が不可能な者であり,片足立ち保持が30秒可能な者には,最近1年間に転倒した者はいなかった。これらの結果から,地域在住高齢者男性において,開眼片足立ちが30秒間保持可能であれば,転倒を予防できる可能性が示唆された。
  • 田中 幸子, 高木 憲司, 吉村 理
    2006 年 21 巻 4 号 p. 441-446
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,第6頸髄(C6)損傷者における寝返り動作可否の要因を,3次元動作解析装置を用いて分析することを目的とした。C6損傷者11名を対象とし,寝返り動作時の力源である頭部と上肢の手関節の動きを分析した。寝返り可能群と不可能群における頭頂部の変位・速度・加速度が水平・鉛直・奥行き成分すべてにおいて可能群の方が有意に大きかった。手関節の変位・速度は水平・鉛直・奥行きの3成分において共に寝返り可能群の方が不可能群より有意に大きかった。加速度においては水平・鉛直成分でのみ寝返り可能群の方が有意に大きかった。このことから,C6レベルの寝返り動作において,肩関節屈曲方向に振る上肢の振りに続く,大きく・速く・強い頭頸部の動きが必要ではないかと考えられた。
  • ─音楽家へのアンケ-ト結果より─
    齋藤 里果, 秋山 純和
    2006 年 21 巻 4 号 p. 447-451
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,国内の職業音楽家の身体的症状・治療状況・治療効果を調査することを目的として,延べ138名にアンケートを行い81名の有効回答を得た。内69名(85%)は何らかの身体症状を持ち,40名(有症状者の58%)は治療を受けたことがあると回答した。治療経験者のうち33名(83%)は鍼灸院・整体院またはカイロプラクティック院など,いわゆる治療院を利用しており,治療にマッサージが最も多く用いられていた。しかし,症状が完全に回復したと回答したのはわずか4%で,90%以上の対象者は完全治療に至っていないという結果になった。欧米では施術とともに,医師による医学的治療や理学療法士による身体トレーニング指導など音楽家のための医療が積極的に行われている事から,今後日本でも医療・リハビリテーション分野での治療,研究が必要であると考える。
紹介
  • 齋藤 里果
    2006 年 21 巻 4 号 p. 453-457
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/11
    ジャーナル フリー
    音楽療法は近年医療・福祉において急速に発展し,現在音楽療法士が全国2300以上の病院,施設で活動しているといわれる。音楽療法とは音楽を聴取すること・演奏することによる心身に及ぼす効果を利用し,小児から高齢者,精神障害から身体障害と広範な対象者に対応することができる。現在ノルウェー,カナダ,オーストラリア等ではコメディカルとして医療に携わっている。国内でも音楽療法士の需要は増えており,今後福祉,医療現場で共に働く可能性は高いと考える。そこで今回,音楽療法について調べたので紹介したい。
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