日本気管食道科学会会報
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64 巻, 5 号
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特集:気管食道科領域における切除不能癌の対応
  • 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 米川 博之, 福島 啓文, 佐々木 徹, 新橋 渉, 田中 宏子
    2013 年 64 巻 5 号 p. 313-319
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル 認証あり
    気管食道科領域において切除不能と考えられる状況は,頭頸部癌についてみると,1)頸動脈,腕頭動脈などの血管浸潤,2)気管浸潤,3)深頸部浸潤の状態がポイントとなる。動脈壁浸潤については,CT,MRIなどの画像で一般に腫瘍と動脈壁の最大接触角度が270度を超えると切除不能とされ,180度以下であれば切除可能とされるが,実際には,360度腫瘍に取り囲まれているものでも動脈壁に浸潤が見られないものもあるため,これだけで判断することは困難なことがあり,特に甲状腺癌など扁平上皮癌以外の腫瘍では,この基準だけでは判断をあやまる場合もあることに注意する必要がある。
    また,気管浸潤については,皮弁を用いることによって気管の全切除に対しても対応が可能であり,腫瘍の性質とその他の部位での根治性を考慮に入れたうえで切除不能かどうかを判断する必要がある。
    深部浸潤については,深頸筋の深部への進展が椎骨や腕神経など,深部組織に進展する場合は根治切除不能と考えられる。
  • 豊増 泰, 不破 信和
    2013 年 64 巻 5 号 p. 320-326
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル 認証あり
    放射線治療は機能温存の点で優れており,頭頸部癌領域において極めて重要な役割を果たしている。切除不能頭頸部癌においては放射線治療が唯一の根治療法となるが,放射線単独治療では極めて予後不良であったため,多分割照射,化学療法との併用が試みられた。相対的に良好な成績が報告されたことを受け,現在では化学放射線同時併用療法が標準治療としての地位を確立している。
    近年,分子標的薬が開発され,放射線治療との併用による有効性が示された。ただし,化学放射線同時併用療法と比較した場合における有効性はわかっておらず,初回治療におけるcetuximabの位置づけはまだ確立していない。
    予後改善,有害事象軽減を目的として強度変調放射線治療や粒子線治療など治療開発が進んできている。唾液分泌障害のリスク軽減は報告されたが,治療成績の改善には至っていない。ただし,放射線治療抵抗性の腫瘍に対する粒子線治療の有効性は証明されつつある。
    切除不能頭頸部癌の標準治療は化学放射線同時併用療法だが,治療成績はまだ十分とは言えない。古くて新しい動注療法の再評価,分子標的薬の開発,IMRT,粒子線治療の登場により,今後さらなる進歩を遂げるものと思われる。
  • 榎田 智弘, 田原 信
    2013 年 64 巻 5 号 p. 327-337
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル 認証あり
    切除不能局所進行頭頸部扁平上皮癌の根治的治療において,化学療法 (殺細胞薬) や分子標的薬は中心的な役割を担っているが,多くの臨床試験により化学療法と放射線療法の併用が現在における標準治療と位置づけられている。放射線と併用される化学療法についてはさまざまであるが,現時点ではシスプラチンを含む化学療法が標準的とされており,これについての検証も多い。一方,より良好な治療成績を目的として,導入化学療法やsequential chemoradiationなどに代表される新たな取り組みが試みられている。さらにはより適切な治療方針の決定やより安全な治療の提供を目的として,バイオマーカーの探索や支持療法の充実などについても開発が進んでいる。本対象の治療に従事する医療スタッフは,これらの知見について十分な理解を持ち,それぞれの患者に最適な治療を提供できるよう努める必要がある。
  • 小野澤 正勝, 秋元 哲夫
    2013 年 64 巻 5 号 p. 338-344
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル 認証あり
    食道癌に対する治療は主に外科治療,放射線治療,化学療法よりなっている。近年では国内外のさまざまな臨床試験の結果よりこれらの治療を組み合わせた集学的治療が有用であるとされている。その結果,食道癌に対する治療成績は向上しているが,その成績はいまだ満足できるものではなく,特に局所高度進行切除不能食道癌の成績は外科治療が主な治療となりえないこともあり,化学放射線治療による治療成績は3年生存率25%程度である。治療成績が向上しない原因としては,原病の制御率の低さが最大の原因であるが,一方で治療による有害事象も無視できないところである。これらの問題を解決すべく,近年では化学療法において薬剤の多剤化,分子標的薬剤の導入,放射線治療においては多門照射や強度変調放射線治療 (IMRT) および陽子線治療などの粒子線の導入による治療強度を上げつつ,有害事象の軽減を図っている。さらには化学療法や放射線治療が奏効し切除可能となった場合には積極的に外科手術を行うという考え方も出てきており,今後の報告が待たれる。
  • 澤田 亮一, 加藤 健
    2013 年 64 巻 5 号 p. 345-353
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル 認証あり
    食道癌は男性に多い疾患であり,占居部位は胸部中部食道に多い。組織型は扁平上皮癌が圧倒的に多く,危険因子としては喫煙,飲酒があげられる。予後因子としてはTNM stage, 10%以上の体重減少,嚥下障害,腫瘍の大きさ,年齢,リンパ管浸潤が独立した因子とされている。また,PSは予後因子として一般的であり,また予測因子とも考えられている。他臓器転移・高度リンパ節転移を伴う進行癌に対しては日本においてはCDDP+5-FU (FP) 療法 (80/800 mg/m2) を3週ごとに投与するスケジュールが標準治療である。腫瘍による食道狭窄が原因で経口摂取困難となった患者,あるいは疼痛などの有症状患者に対しては,症状緩和目的で,原発巣や疼痛部位に限局した放射線治療や化学放射線療法が施行されることもある。分子標的薬に関しては現在のところ有効性は示されていない。JCOGでは現在JCOG0807「切除不能または再発食道癌に対するDocetaxel,Cisplatin,5-FU併用療法の臨床試験第I/II相試験」の登録が終了しており結果が期待されるところである。
  • 前原 幸夫, 大谷 圭志, 筒井 英光, 池田 徳彦
    2013 年 64 巻 5 号 p. 354-358
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/25
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    呼吸器インターベンションは悪性疾患による中枢気道狭窄に対する治療,症状緩和に有効な手段である。肺癌の約30%に中枢気道狭窄が引き起こされるとされているが,インターベンションの統一された適応基準は存在せず,施設ごとに適応を決めているのが現状である。呼吸器インターベンションの主なものとして,ステント療法,Nd-YAGレーザー,APC,マイクロ波凝固療法などがあり,特に硬性鏡を用いる場合,手技的に容易とは言えず習熟を要し,また合併症も存在する。本稿では,当院においての各種治療の適応,実際には,どのようにNd-YAGレーザー,APC,マイクロ波凝固療法などを使い分けているか,ステントの使い分けはどのように行っているか,予後を考えた場合にインターベンションはどのような役割をはたしているか,など呼吸器インターベンションの現状について述べる。
  • 増本 愛, 秋山 博彦, 小林 国彦
    2013 年 64 巻 5 号 p. 359-365
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル 認証あり
    局所進行非小細胞肺癌は一定の割合で治癒が望める疾患である。根治的放射線治療が行える場合,放射線療法と化学療法を同時併用することが,現時点での標準治療である。本稿では,局所進行非小細胞肺癌に対するガイドラインの内容,著者らの施設での治療成績に加え,新たな治療戦略についても概説する。
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