本研究では, 捻り動作を含む荷物持ち上げ作業における身体各部位の運動変数を算出し, 作業条件がそれらに及ぼす影響について調べた. 持ち上げ作業動作は2台の高速度ビデオカメラを用いて撮影した. 実験要因として, 荷物持ち上げ作業開始前における作業者と荷物との距離 (初期距離: 30cm, 60cm), 荷物を持ち上げる高さ (65cm, 105cm), および荷物の重さ (4kg, 12kg) の3要因を取り上げた. 実験要因はいずれも被験者内要因とした. 身体各関節部位の3次元位置はDLT法により算出した. また, 身体各部位の3次元位置に基づき, 各関節の屈曲・伸展角や上胴の傾斜角, 体幹の捻り角などを算出した. 本研究の結果から, 捻りを伴う荷物持ち上げ動作の特徴として, いずれの作業条件においても基準化時刻20%から荷物の床からの持ち上げが開始され, 基準化時刻30%から作業者を中心とした荷物の回転移動が開始され, 基準化時刻70%から荷物を台の上に置く動作が開始されることが明らかとなった. さらに, 捻りを伴う荷物持ち上げ動作において荷物の初期位置, 持ち上げる高さ, 荷物の重さが身体各関節部位の角度変化に大きく影響を及ぼすことが示された. すなわち, 初期距離は主に, 上肢の角度および腰の伸展角度に影響を及ぼし, 高さは主に, 左上肢, 体幹の傾斜角度, 捻り角度および腰の伸展角度に影響を及ぼし, 重さは主に, 体幹の傾斜角度および下肢の伸展角度に影響を及ぼすことが示唆された.
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