船舶が安全な航海を行う上で, 航海者が行う最も基本的な行動パターンである避航行動に着目し, 目視および各種航海用機器類 (レーダ, ARPA) から得られる情報について, これら情報の流れと航海者が行う避航意思決定の関係を具体的に示し, 航海情報を相互情報量によって定量化する一手法を提案した. この相互情報量は航海者が目視・レーダ・ARPAから得る航海情報の不確実さの尺度として用いることができ, 航海者が他船に対する衝突のおそれを判断する時に目視・レーダ・ARPAから得られる相互情報量を求める方法および具体的な一例を示した. さらに陸地等の無い広い海域で視界良好な晴天時における一隻の他船に対する避航行動のような環境条件下で, かつ航海者の技能 (経験, 知識) により異なる情報を除外し, 目視・レーダ・ARPAから得られる航海情報を距離・距離変化・方位変化に限定すると, 目視-レーダ間の相互情報量の差は約6ビット, レーダ-ARPA間の相互情報量の差は1ビットとなり, 目視から得られる情報はレーダおよびARPAから得られる情報に比べて相当不確実であることを示した.
抄録全体を表示