日本気管食道科学会会報
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61 巻, 3 号
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原著
  • 高野 真吾, 二藤 隆春, 溜箭 紀子, 木村 美和子, 田山 二朗
    2010 年 61 巻 3 号 p. 273-281
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    1996年から2005年までの10年間に東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科専門外来を受診した声帯麻痺症例の中から,混合性喉頭麻痺を認めた症例を対象とし,検討を行った。期間中外来を受診した声帯麻痺は579例,平均年齢は56.4歳であった。このうち混合性喉頭麻痺は86例で,全体の14.9%,平均年齢は49.4歳であった。術後症例は51例 (59.3%) で,非術後症例は35例 (40.7%) であった。麻痺神経は,迷走神経のみが45例 (52.3%),迷走神経と舌下神経が19例 (22.1%) などであった。自然回復は14例 (16.3%) に認めた。手術治療は24例 (27.9%) に施行し,披裂軟骨内転術,輪状咽頭筋切断術などを単独または組み合わせで行った。
    混合性喉頭麻痺症例は,声帯麻痺症例と比較し平均年齢が低い結果であった。麻痺の原因は頭部手術後が多く,過去の報告より著明に増加していた。手術治療は28%に施行され,症状の改善を得た。個々の症例において麻痺神経,麻痺の程度を正しく評価し,症状の改善が期待される例には,手術治療も考慮すべきと考えられた。
  • 山内 彰人, 大木 雅文, 加藤 央, 岸田 櫻子, 北野 睦三, 熊谷 譲, 中井 淳仁, 福岡 久代, 田山 二朗
    2010 年 61 巻 3 号 p. 282-290
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは2003年6月から2007年10月までに当科外来を受診した混合性喉頭麻痺症例を対象に臨床的検討を行った。検討した症例は32例 (男性23例,女性9例),平均年齢60±3歳 (21~86歳) で,25例に嚥下困難,17例に嗄声を認めた。基礎疾患は,脳血管障害8例,ウイルス感染8例 (全例水痘帯状疱疹ウイルス感染),頭頸部腫瘍6例,頭頸部腫瘍術後5例であった。声帯麻痺は13例が右側,16例が左側,3例が両側であり,24例が完全麻痺,8例が不全麻痺であった。咽頭麻痺は32例で,舌下神経麻痺が10例,顔面神経麻痺が7例,副神経麻痺が5例で見られた。平均経過観察期間は9.5±2.2カ月 (0.1~50.0カ月) で,声帯麻痺は3例が治癒し,12例が改善した。ウイルス感染による症例は予後良好であったが,脳血管障害,頭頸部腫瘍,頭頸部腫瘍術後による症例は予後不良で,これら18症例中10例が手術治療を行い,手術した10例は症状が改善した。
  • 喜友名 朝則, 長谷川 昌宏, 比嘉 麻乃, 新濱 明彦, 鈴木 幹男
    2010 年 61 巻 3 号 p. 291-298
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    2005年1月から2008年10月の3年10カ月間に当科を受診した未治療中・下咽頭癌症例のうち,化学放射線同時併用療法 (以下CCRT) を行った40例に生じた粘膜炎,嚥下障害の経時的観察を行った。CCRT開始後粘膜炎,嚥下機能はともに悪化し,CCRT終了時に最も悪化した。粘膜炎はCCRT後6カ月で治療前と差がなくなったが,嚥下状態はCCRT後6カ月でも治療前よりも有意に悪化していた。CCRT後6カ月の時点で3例でGrade3以上の嚥下障害を認めたが,その他の症例では治療前と同等の嚥下状態に回復した。臓器温存が達成できた症例でも遷延する嚥下障害をきたす症例があることを認識し,患者への十分な説明を行った上で治療法を選択する必要があると考えられた。また,CCRT後に計画的頸部郭清術を行った症例では嚥下障害が残存しやすい結果であったが,頸部郭清術が直接的に長期的な嚥下障害をもたらす可能性についてはさらに検討が必要と考えられた。
  • 佐藤 克郎, 富田 雅彦, 松山 洋, 高橋 姿
    2010 年 61 巻 3 号 p. 299-304
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    気管に発生または浸潤した悪性腫瘍に対し,当科で気管切除を施行した8症例につき検討した。病態は4例が原発性気管癌,4例が甲状腺癌気管浸潤で,病理組織診断は気管癌が腺様嚢胞癌2例,扁平上皮癌と粘表皮癌が各1例,甲状腺癌は4例とも乳頭癌であった。原発性気管癌の術式は4例全例で気管喉頭合併切除が行われ,3例が前腕皮弁,1例が遊離空腸で再建,気管切除範囲は5~8気管輪であった。甲状腺癌気管浸潤では2例で気管環状切除と端々吻合,2例で気管部分切除と前胸壁皮弁,耳介軟骨を用いた2期的再建を行い,気管の切除範囲は4~6気管輪であった。気管癌の4例中3例が無再発生存,1例が他因死,甲状腺癌は4例中3例が無再発生存,1例が遠隔転移で死亡しており,全例で局所は制御され呼吸困難の残存した症例はなかった。気管の悪性腫瘍の治療においては,局所制御と気道狭窄の回避のため,気管切除と再建を含めた手術を積極的に行うことが重要と考えられた。
  • 西村 俊郎, 辻 亮, 岡部 陽三
    2010 年 61 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    誤嚥が疑われる高齢者症例に対して速やかに,かつ正確に嚥下状態を評価して,嚥下リハビリを行うことは入院期間の短縮に有用であると考えられる。実際の臨床場面では嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査は必ずしも実施できない場合があるため,嚥下障害ガイドライン (日本耳鼻咽喉科学会2008) の簡易検査でのスクリーニングの効率を検討した。当科において嚥下評価を依頼された337例を対象とし,唾液飲みテストと改訂 (3 ml) 水飲みテストの結果を,評価後最低3カ月以上経過した時点の嚥下の状態と対比させた。両方の簡易検査が正常なものをA群 (96例),反復唾液飲みテストのみ不良をB群 (85例),改訂水飲みテストのみ不良をC群 (28例),両方が不良なものをD群 (128例) とした。実際に将来的に経口摂取が可能になった割合は順に86%,69%,64%,31%であった。スクリーニング結果でAB群を経口摂取可能と判定すると感度0.71,特異度0.71,陽性的中度0.78,陰性的中度0.64であった。簡易検査は嚥下造影検査や,嚥下内視鏡検査を要する患者の選別に有用で,ある程度の正確性も確保されていた。嚥下障害にはガイドラインに沿った診断手順が有用であると考えられた。
  • 前田 明輝, 梅野 博仁, 千々和 秀記, 三橋 拓之, 千年 俊一, 中島 格
    2010 年 61 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは甲状腺未分化癌に対する根治手術の有用性について検討した。対象は1999年1月~2009年1月までに当科で治療した甲状腺未分化癌17症例 (性別は男性5例,女性12例,年齢は54~94歳) で,治療方法,在宅期間,生存期間,転帰などの検討を行った。治療方法は,6例に根治手術治療を行っていた。放射線治療は全例に行っており,そのうち化学療法併用は5例であった。根治手術を行った6例は全例退院後の在宅生活が可能であった。生存期間は根治手術症例が8~36カ月,平均17カ月,非根治手術症例は1~8カ月,平均4カ月であった。転帰は生存が1例で,原発巣死8例,肺転移死7例,自殺1例であった。甲状腺未分化癌症例の中には,手術可能な症例もあり,在宅期間や生存期間の延長が得られる症例がある。
  • 坂東 伸幸, 後藤 孝, 加藤 誠一, 鎌田 一
    2010 年 61 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    近年FDG-PETを用いたがん検診が多くの施設で施行され,甲状腺癌の発見される頻度が高いとされている。2005年7月から2009年3月までにFDG-PETに超音波検査などを加えたがん検診を受けた5,746名を対象とした。最終的に癌と診断された症例は80例 (1.39%) で甲状腺癌が20例 (25%) を占めていた。20例中女性12例 (60%),男性8例 (40%),年齢が30歳から78歳 (中央値58歳) であった。FDGの集積ありが16例 (80%),standardized uptake value (SUV) は1.0から15.1 (中央値4.1) であった。超音波検査では腫瘍径が1 cm以下の微小癌が11例 (55%) を占めた。SUVと腫瘍最大径に有意な正の相関を認めた (R=0.534,p=0.019) 。FDG-PET陰性甲状腺癌4例について全例腫瘍最大径が1 cm以下であり,3例 (75%) で石灰化病変を認めた。FDG-PETがん検診では甲状腺癌の転移病変を含めたあらゆる部位の癌が検出され,有用性が高い。しかし,がん検診で発見された甲状腺腫瘍症例において約20%のFDG-PET陰性甲状腺癌もみられることを考慮し,診療に当たる必要がある。
症例
  • 山本 一宏, 金 泰秀
    2010 年 61 巻 3 号 p. 323-327
    発行日: 2010/06/10
    公開日: 2010/06/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,他院で行われた初回の狭帯域光観察 (Narrow Band Imaging,以下NBI) 内視鏡検査で診断できなかった下咽頭梨状陥凹癌2症例に対して一次治療を行う機会を得たので報告する。
    症例1は47歳男性で,右上頸部腫脹を主訴とし,耳鼻咽喉科で初回NBI内視鏡検査が行われたが,下咽頭領域には異常所見は認められなかった。当院での消化器科での検査で,右下咽頭梨状陥凹部の小病変が判明した。
    症例2は82歳男性で,消化器科で初回NBI内視鏡検査が行われ,左下咽頭梨状陥凹部に小腫瘤性病変が認められるも,癌ではないと判断された。当科で直達鏡下に観察したところ,左下咽頭梨状陥凹部に浸潤癌が認められた。
用語解説
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