民具は. 長年にわたる生活経験の積み重ねの中で, 使用者の身体の延長として, 最も使いやすいように, 身体寸法, とくに手の大きさや作業条件にあわせてつくられてきているこれらの民具について, 人間工学的観点から, とくにその機能性を追求するために, 手で操作する部分を中心に形態面の計測を行なった. 調査の対象とした民具は, 853点で, きこりが使用する道具や農具である.
計測の結果, 1) 柄の把持部分の横断面形はほぼ楕円形で, 形態は (1) 作業動作の方法, (2) 作業方法, (3) 用途の多少などに制限されるが, とくに (1), (2) による規制が, 民具の機能性に最も結びついている. 2) 柄の太さは, よこ径20~35mm, たて径, 25~40mm, 周囲長85~115mmの範囲にあり, 片手作業や大きな力を必要としない作業の用具は細めである. 3) 直接, 生産と結びついていない日常用具では, 使いやすさより, 装飾性など他の要素が優先されていることなどが判った.
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