日本化学療法学会雑誌
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47 巻, 5 号
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  • 小林 寅哲
    1999 年 47 巻 5 号 p. 249-256
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    各種の臨床材料 (血液, 尿, 膿, 喀痰, 糞便) より分離された59株のPseudomonas aeruginosaのlipopolysaccharide (LPS) をsodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE) 法で分析し, 各菌株のLPS構成と試験菌を分離した臨床材料および薬剤感受性との関連性を検討した。臨床分離株59株をLPS構成の相違により3群に分類した。すなわち35株は長鎖 (B-band) LPS保有株, 14株は短鎖 (A-band) LPS保有株, そして残り10株はLPS欠損株であった。血液由来の13株のうち12株 (92%) は長鎖LPS保有株, 尿および便由来には長鎖LPS保有株がともに67%存在し, 喀痰由来株にはLPS欠損株が42%と高率に存在した。LPS構成の異なるP. aeruginosaのうちLPSが欠損した10株中7株はgentamicin (GM) に対し高度耐性を示し, 1株は中等度耐性, 残り2株は0.78μg/ml以下の感受性であった。GMに感受性を示した2株に対する菌表層部へのGMのイオン結合性を [3H] GMを用いて測定し, LPS化学組成が既知のPAC 1 Rシリーズ株を対照として比較した。その結果GMに感受性を示した2株のうち, No.45株はLPSが欠損するにもかかわらずLPS長鎖株と同様に [3H] GMと高い結合性を示した。一方, 対照菌株として用いたPAC 1 Rシリーズ株のうちLPS欠損が拡大し, core-oligosaccharideの中性糖残基が欠損してlipid Aが露出したPAC 605株では [3H] GMに対する結合性が高かった。またLPSのO-polysaccharideの繰り返し単位の欠損が高度になるにしたがい菌体表層の疎水性は高くなり, さらに欠損が拡大すると逆に疎水性は低くなった。さらにGMに感受性を示す臨床分離のLPS欠損株2株の糖組成を分析したところ, No.45株には中性糖残基がまったく検出されずPAC 605株と同じ構造を示した。これらの結果はP. aeruginosaのLPSのO-polysaccharide部位よりも深部構造の陰性荷電部位が. GMなどの多価カチオン性物質の結合に関与することを示唆し, 臨床分離No.45株は, このタイプの菌株であると推定された。次に, 長鎖LPSを保有するPAC 1R株とそのLPS変異株を, GM (20μg/ml) と短時間 (10分間) 接触させた場合の殺菌性を比較した。PAC 1 R株では生菌数は最初の70%に減少したが, LPS深部の中性糖残基にまで欠損がおよんだPAC 605およびNo.45株では, それぞれ3.6および11.0%にまで減少し, これらのLPS欠損株はGMにより強く殺菌されることが判明した。治療の場における抗菌薬との接触, その他の環境要因の影響によってP. aeruginosa臨床分離株の表層部の構造, 特にLPS構成は多様に変化し, その結果O-抗原構造が変化するのみではなく, 多価カチオン性抗菌物質, GMの結合性および感受性に変化が生じることを確認した。
  • 横澤 光博, 池野 廣幸, 佐野 和三
    1999 年 47 巻 5 号 p. 257-263
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefditoren (CDTR) に関する臨床分離株の感受性の推移を, 2次にわたる収集により検討した。被験菌は第1次調査の測定用として, 1995年4月より6月までの3か月間に臨床材料より分離された23菌種805株を収集した。さらに1996年7月より1997年6月までの1年間に収集した24菌種803株を第2次調査の被験菌とした。CDTRに対する第2次調査時に分離された各種の被験菌のMIC分布は, 第1次調査時に分離された被験菌のそれらとほぼ同様な傾向を示した。しかし, 一部の菌種, Streptococcus pneumoniae, Proteus mirabilis, Providencia rettgeri, Morganella morganiiの第2次調査時のMIC80値は, 第一次調査時のそれらに比べ, 4から8倍高かった。第2次調査時に収集した菌種のうち, 呼吸器感染症の主要な5菌種 (methicillin susceputible) Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, S. pneumoniae, Haemophius influezame, Moraxella (Branhamella) catarrhalisに対しCDTRは強い抗菌力を示し, H. infzuenzae, S. pyogenes, spneumoniae, S. aureusおよび M.(B) catarrhalisに対してそれぞれ0.05, 0.10, 0.39, 0.78および0.78μg/mlで試験したすべての株の発育を阻止した。以上の成績は, 開発時に各施設から報告された結果と同様であった。
  • 高山 吉弘, 新井田 昌志, 平野 文也, 後藤 直正, 西野 武志
    1999 年 47 巻 5 号 p. 264-270
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas aeruginosaにおける薬剤排出システムの発現を制御する遺伝子として, nfxB, nfxC, nalBが同定されている。今回われわれは, P.aerginos PAO 1を親株として, norfloxacin (NFLX) 3.13μg/mlを含有する寒天平板培地で選択することにより, NFLX耐性変異株R2を得た。R2に対する, NFLX, ofloxacin (OFLX), cefepime (CFPM), cefozopran (CZOP), cefpirome (CPR), tetracycline (TC) およびchloramphenicol (CP) の最小発育阻止濃度 (MIC) は, 親株のそれらに比し2~32倍上昇した。しかし, R2に対するfosfomycin (FOM) やceftazidime (CAZ) のMICに変化は認められなかった。この得られたR2から外膜蛋白質を分離し, 抗OprJマウス単クローン抗体を用いたイムノブロットを行ったところ, OprJの産生が確認された。R2およびPAO1に対してFOMとCFPM, CZOP, CPR, CAZ, NFLXとをそれぞれ併用すると, それぞれの薬剤単独の殺菌作用に比し, 両菌に対する殺菌作用の増強が見られた。R2に種々の濃度のFOMを作用させた結果, OprJ蛋白質の量的変化は認められなかった。FOMで処理したR2は, 処理しないR2に比し, CFPMの菌体内取り込み量が増加していた。以上のことから, FOMは, nfxBの排出システムを有するP. aeruginosaの薬剤排出には直接関与していないものと考えられたが, なんらかの機構によりCFPMの取り込み量が増加した結果, FOMとCFPMの併用効果が現れたものと考えられた。
  • 紺野 昌俊, 旭 泰子, 生方 公子
    1999 年 47 巻 5 号 p. 271-286
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Penicillin-binding proteins (PBPs) については多くの研究があるが, 臨床上にもたらす利点については十分に検討されていない。そのため, 基本骨格の異なるいくつかのβ-ラクタム薬を選び, 大腸菌のPBPsに対する親和性を検討し, その相違がMICや殺菌作用, ならびに菌の形態変化におよぼす影響について検討した。各種β-ラクタム薬のPBPsに対する親和性は, Sprattの方法に準じて行った [3H] benzylpenicillinの結合阻止率 (Ir:%) で表現した。各種β-ラクタム薬の1/32xMICから32xMICまでの2倍階段希釈液を大腸菌の膜画分に添加し, 添加薬剤濃度とIrとの関係を検討すると, もっとも相関が高いのはPBPlBであるが, 相関係数はIr10%で0.4661, Ir90%で0.7569という凹型の線形を示し, MICをPBPlBに対する親和性のみで説明するには飛躍がありすぎる結果であった。このため, MIC時点における各β-ラクタム薬の各PBPに対するIrを求め, それらとMICとの相関を調べた。相関係数はPBPIBにおいて0.8257ともっとも高いが, その他のPBPsにおいても0.5以上の値が示され, 各β-ラクタム薬のMICはMIC時点におけるすべてのPBPに対するIrによって説明されるべきであることが示唆された。このため, MICを基準変数とし, Irを説明変数とする重回帰分析を行った。その結果, MICは [1B+4] と[3]([]内に示す文字または数字はそれに該当するPBPのIrを示す) が有意に関与していることが示された。同様に, 殺菌作用ならびに菌の形態に関する検討を, 4×MICのβ-ラクタム薬添加2時間培養後の成績をカテゴリー化して判別分析を行った。殺菌性については [4] が増すほどに殺菌性は増強し, [2+3]が増すほどに乏しくなることが有意であった。菌の形態変化については [3] が増すほどにフィラメント化し, [2] が増すほどに球状化することが有意であった。一方, bulge形成については [4] と [1B] が増すほどに観察されることが有意であった。この結果, 従来β-ラクタム薬の致死的標的としての評価が低かった低分子PBPに対する認識を新たにする必要があることに言及した。
  • Bacteroides spp.の増殖抑制株に対するPseudomonas aeruginosaの影響
    加藤 高明, 中川 良英, 佐藤 毅, 古畑 久, 奥村 光治郎, 大塚 一秀, 加藤 るな, 伊藤 裕美子, 岩井 重富, 矢越 美智子
    1999 年 47 巻 5 号 p. 287-295
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    消化器外科領域において嫌気性グラム陰性桿菌による腹腔内感染の発症頻度は高い。また, このほとんどの場合は他菌種との複数菌感染である。そこで, 臨床的にもっとも問題となる菌種の1つであるBacteroides spp. と, 検出率が高く治療に難渋するPseudomonas aeruginosaを混合培養して, Bacteroides spp. の増殖状態に関して検討した。臨床材料から採取されたBacteroides 14菌株 (Bacteroides fragilisが9株, Bacteroides thetaiotaomicronが2株, Bacteroides caccaeが2株, Bacteroides eggerthiiが1株) から低栄養状態またはsub MIC下 (cefmetazole 6.25μg/ml) で作製された種々の程度の増殖抑制株の菌液および, これとPseudomonas aeruginosaとの混合菌液を嫌気条件下, 37.5℃で振盪培養し経時的に生菌数を測定した。Bacteroides spp. 単独培養では, 増殖抑制の程度により種々の増殖曲線を描いた。高度増殖抑制株は増殖が不安定で, 途中で増菌が完全に止まった。中等度増殖抑制株では増殖は比較的安定していたが, 109CFU/mlまでは増菌しなかった。軽度増殖抑制株では生菌数は109CFU/mlに達したが. 培養に時間を要した。高度増殖抑制株を継代培養すると徐々に増殖の抑制の程度は軽快し, 中等度増殖抑制株から軽度増殖抑制株に移行した (増殖抑制因子は継代されるも徐々に消失した)。これらの菌株に106CFU/mlのPseudomonas aeruginosaを加えて培養すると増殖抑制の発現が制御され, 生菌数は全株とも109CFU/ml以上となった。増殖初期では速度が遅い場合もみられたが, その後は増殖が良好となった。以上の結果から, 感染巣に感染している増殖抑制状態にあるBacteroides SPP. がPseudomonas aeruginosaとの混合により再び対数増殖の状態に戻ってしまう可能性が示唆された。
  • 地主 豊, 木村 美司, 宗景 正, 吉田 勇, 佐々木 緊
    1999 年 47 巻 5 号 p. 296-302
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1995年~1997年の3年間に臨床分離されたmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 560株に対するvancomycin (VCM) とflomoxef (FMOX), cefpirome (CPR) およびimipenem (IPM) のβ-ラクタム薬とのin vitro併用効果をchecker board法により測定しMICおよびfractional inhibitory concentration index (FIC index) を求め検討した。MRSA 560株に対するVCM単剤のMICはMIC90値で3年間とも1μg/mlを示し, 4μg/ml以上を示す菌株は1株もなかった。β-ラクタム薬単剤の感受性も3年間で変化はなく, MIC90値はFMOX 128μg/ml, CPR 64μg/mlおよびIPM 64μg/mlを示した。最小FIC indexの検討では, VCMとFMOXおよびVCMとIPMの組み合わせではそれぞれ90%以上の菌株に対して各年度ともにFIC indexが0.5以下の相乗効果が認められ, 残りの菌株はすべて, FIC index 0.5から1.0以下の相加効果を示した。VCMとCPRの組み合わせでは多くの菌株に対して相加効果を示した。また, いずれの組み合わせにおいてもFIC indexが2.0以上の不関および拮抗作用を示す菌株は認められなかった。VCMとFMOXの併用による一定濃度殺菌作用ではVCM 0.5μg/mlとFMOX 2, 4, 8μg/mlを併用した場合にVCM単剤に比べ殺菌作用に増強がみられ, 殺菌作用の面からも併用効果が認められた。これらの成績からVCMとFMOXおよびVCMとIPMの併用はMRSA感染症の治療に有効であることが示唆された。
  • 1999 年 47 巻 5 号 p. 303-306
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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